21話〜神無月咲夜3−神無月咲夜の日常−〜
街に着いて数日、この街の住民としての身分を確立し、平穏な日々を送っている私…。これでいいんでしょうか?と言っても、他に出来ることは特にありませんが。商店でアルバイトをしてお金を受け取り夕方に街に繰り出す。店かギルドで食事を摂り、入浴し、開いてる店を見て回る。何というか、学業が前面に来ない今の生活に少しばかり違和感を覚えますわ。ギルドで両替してお給料の半分は貯金し、7000マナで生活する。それでも意外と余るものですね。食事と入浴代を使う場合で3000マナ。店、所謂現住所で過ごせばそれすら必要無くなる。門限は無いようですがおおよそ19時から20時には帰る習慣が身についてしまいました。まあ20時頃には街の店も閉まってしまうようなのでそれで問題無いですけど。そんなこんなで早々に貯金数万マナ…。誰かと合流するのに必要な経費と考えればまだまだですね。
いつものように店を見て回る。見た事のない道具や見た事のない果実、食料品。この世界に来て触れる初めてに気持ちが高ぶってしまいましたわ。お恥ずかしい。
そして気になったお店、所謂武器屋、でしょうか?今まで気にも留めた事は無いですけどこういう世界に来た以上こういうものも少しは触れてみてもいいかもしれませんね。
中に入り置いてある武器を見る。短剣、所謂ダガーにも色々あるものなのですね。波打つような刃のものもあります。今のお金なら弓、槍、短剣一式は十分余裕ありますわ。とりあえず今のうちに買い揃えてしまいましょう。
とは言うものの、これからの行動の指針も無いので、時間ある時に武器の特訓でもしましょう。
そしてお仕事と特訓の日々が続いて数ヶ月。弓の命中精度もかなり上がってメインで使用しても問題なく戦えるでしょう。ちょいちょい変なお爺さんや翼生やしたお姉さんが見ていたような気がしますけどそれは置いておきましょう。
「お疲れ様〜。はい。今日の分!」
「ありがとうございます」
お金を受け取り、服を着替えて街へ繰り出す。慣れましたわね、この習慣。
「さあさあ、速報だよ〜」
リトルス族の情報屋ですわね。新聞屋みたいな新聞出版社のような…。
「新しく森に出来た街にリトルスのお姫様!なんと化け猫を鎮め、ディアボロス、リトルス、フェルパー、エルフを束ねる最強のリトルス姫!聞いたことのない姓サクライ、名はフブキ姫!」
んな馬鹿な、そもそもフブキ姫って一体どう言う…。でも同じ名前で異世界にサクライと言う姓もそういないでしょうし。
「1部下さい」
「100マナね」
「はい」
「ありがとね〜」
受け取った新聞のようなものを読む。文字は勉強出来たのでとりあえず読めます。
えっと、要点をまとめるとあの森に再び戻るとそこに街が出来てて化け猫を倒した英雄フブキ姫とやらがそれを築き上げ、多種族を束ねる凄い人である事。
他に気になる記事は…。正体不明の女剣士の活躍。それと対称的な剣士少女、街を救う。剣士少女の…スライネ?違う大陸のディアボロスのレン・ユウキってあの人ですわね。あの人女になってんですか、桜井さんもですけど。生前何したらそんな事になるんでしょうか…。にしても桜井さんの化け猫とそれが率いる軍を桜井さんが軍を率いて勝ったも凄い話ですけど、結城さんの巨大サソリ討伐も凄いですわね。ってか結城さん凄いですわね、他にも色々…。違う大陸へ向かうのは無理でしょうね。とりあえず桜井さんだと信じて森の方に行ってみますか。
そのためにまず貯金、あと特訓ですね。あとはギルドで護衛を依頼するのに必要な相場も何処かで知れれば…。
結局そこから更にお金をためて数ヶ月。結局、この世界に来てかなり経過し、馴染んでしまってますわね。まあそれはいいでしょう。
とりあえずギルドの窓口に向かう。
「依頼を申し込みたいのですが」
「どの様な内容でしょうか?」
「森の中央のリトルスの築いた街までの護衛です」
聞いた話によると街道が整備されたという話は無いらしく、森の中を歩かないといけないようです。しかも3日ほどかかると言う事なので。
「御予算と護衛パーティの条件は?」
「30万マナで女性のみのパーティを片道で」
「えっと、問題無いかと思います。こちらで貼りださせて頂きます」
内容を確認し、承認する。そして透明な石を受け取る。
「これは?」
「連絡用の魔水晶石です。こちらからこのように魔力を送ると…」
ぼんやり光ってキーンという音がかすかに聞こえる。
「この状態で顔付近に近づけて見てください」
言われたようにすると。
(届いてますでしょうか?この状態でメッセージを微量の魔力に乗せてみてください)
(えっと…出来てますでしょうか?)
(問題ありませんね。ちゃんと届いてます)
あら意外にも簡単ですわね。
「これはここで受領者が決まった際に回収させて頂きます。報酬の支払いはどうなさいますか?」
「完了後現地で」
「承知致しました。以上で説明を終わらせて頂きます」
あとは任せて時を待ちましょう。この所謂ファンタジー世界で無い戦闘力でモンスターが襲って来る森林なんかに突っ込むのは愚かという事ですわね。
ついでに夕食も摂っておきましょう。
「おっ、サクヤちゃん。いらっしゃい!」
「肉入り団子スープ1杯お願い致します」
「あいよ。いつものな!」
うさぎの肉と果実、野菜の入った団子スープ。この世界の一般的な方の食事でこの団子は米ではないらしいです。というかこの大陸ではそもそも米は貴重との事。そして、豆や芋などの穀物からあの団子や餅を生産しているとの事。パンは普通に街なら買えますがちょっとお高め。まあしばらく食べる機会は無いですけど。
スープを受け取りいつも座ってる椅子に座る。まあ、そんなのどこでもいいのですが。そしてこの身体、なんと言ってもコスパが驚くほどいいという。人間、所謂ヒューマンの頃の食事の6〜8割程度で、3食で活動出来るというのは驚きです。むしろ2食で行ける説も…。
こんな世界で真面目に働いて美味しいご飯、あとはそれなりにカッコいい殿方を見つけなければ。でもアレですわよね?この身体で人間産むのは物理的に無理ですわよね?多分これ、生涯ちびっこっぽいですわよね?ちびっ子でイケメンって無理では?可愛い系美少年で妥協しろと…。まあそれはそれで。
食事を終えて食器を返却し、続けて宿泊施設の方の浴室を借りる。お金を払えばシャワールームが使える。この世界でシャワーが使えると言うのは驚きですわ。電気やガスではなく、体温を感知し、魔力が熱を出し、温度も調整できると言う。地味に便利ですわね。まだちょっと調整に慣れませんが。
「うっ、冷たっ」
あとはこの所謂ボディーソープを使って…シャンプーとそれほど原料は変わらないというかそもそも石鹸という概念からもちょっと怪しいですけど、この世界のものは。ふぅ。
シャワーで洗い流し、髪も洗い、身体を拭いて着替える。
その後、夜の街を歩くが結局特にする事なく店に戻る。
「おかえり〜。ご飯とお風呂済ませた?」
「はい。今、ちょっといいです?」
「ん?大丈夫だよ」
迷う事は無い。話さなくてはならない。
「実は森に新しく出来た多種族の街に知った名前の長が就いたという情報が情報屋の販売紙面に出てたので」
「確かめに行ってみたいと?」
「はい」
「大丈夫?ここら辺からこの場所だとそこまで強いのは出ないだろうけどボアより強いのもいない訳じゃ無いんだよ?」
「ここ数日、時間をかけて最低限の特訓はしてきたつもりですけど、それだけだと心許ないので、護衛依頼をギルドに出しました」
「分かった!実は色々準備してあったのだよ!サクヤちゃんがやりたい事見つけてここを出る時の為に!」
「へ?」
「お金とちょっとした食材、食べ物、日用品は当日渡すとして、まずローブ」
森林の保護色と言うか迷彩と言うか。緑の斑模様ですわね。と言うかこの世界迷彩なんてものあるんですね。驚きです。試しに羽織ってみると少し大きいが問題は無く普通に着れそうですわね。
「で、その他着替え一式。大体3〜4日分、鞄付き。あとは魔物避け香とか。着火剤と着火器、調理道具とか。それと守護結界符、あとは弱めの攻撃魔法符な禁呪符も入ってる。書いてあるからどれがどれかわかると思う」
結界符や魔法符は魔法の構成が紙に施され、魔力を流す事で魔法を発動できると言う。
「あの森はまあそこまで強いのはいないはずだけどディアボロスやフェルパーが生活してたりするしそれが盗賊とか追い剥ぎとかやってたりするから。その辺気をつけなきゃダメかな」
まあそう言う世界ですわよね。なんとなく分かってましたけど。
「狼煙用の発火材。一応危険信号のやつ。風無くて天気良けりゃ10分以上燃えるよ」
「遭難するんですか!?」
「多分大丈夫だと思うけど一応」
真っ赤ですわね。
「あと野営の道具」
「重そうですわね」
「じゃじゃーん、アイテムボックス!全部こっちに入れても良かったんだけどそれだと出すのが大変だから重そうなキャンプ用品を。食糧は3日くらいのを別の色のに。向こう着いて食べる必要なくなったら食糧は捨てていいから。適当に買って突っ込むから」
「いいんですの!?」
アイテムボックス。質量保存とかどうとかをガン無視した便利アイテム。ほいほいと見た目に合わないデカいモノを突っ込んで保存できると言う優れものらしいです。お高め。
「サクヤちゃん食細いから多分余るくらいだと思うし。丁度より多目くらいに入れた方がいいから。あと護衛さん方の人数にもよるけどそれなりの余分は入れるから確実に余るね。まあ護衛さんは多分自分で用意してくれるはずだけど」
「あはは…」
そんなこんなで準備を進めて3日。仕事を終えてギルドで食事中にそのままお呼びがかかる。と言うか連れてきてくださいました。
「えっと…こちらの方々がサクヤ様の依頼を受けて頂けると言うことですので」
「幼い…リトルスの子だね」
「ええ。サクヤと申します。姓はカンナヅキ。どうぞお掛けください」
3人の若い女性…。って言っても私よりは年上でしょうけど。
「リトルス族のアナ。光系魔法使いです。回復系と水、氷系統魔法が使えます」
アナさん。私と同じ種族ですね。少しばかり身体が大きいと言うことはまあ、そう言うことでしょうね。
「ディアボロスのフェリル。パーティリーダーさ。ボクは前衛でナイトやってるよ。ディアボロスのクセに魔法使えないのかよとか言わないでね?勉強怠っただけだから」
ボクっ娘悪魔系…。キャラ強いですわね。
「ユーリアだよ、よろしく。ヒューマンのアルケミスト。弓も使えるけど。錬金術以外だと攻撃は無いけど干渉魔法、工作魔法、観測魔法、感知魔法とか色々使えるね」
錬金術とは。この世界存在するのですね。
「…まあ私は結界魔法しか使えない上にまともな数ないので自力で目的地に到達出来ないと判断したので依頼した次第ですので」
「了解。目的地は新興のリトルス達の街。3日ほどかかるけど面倒なのってクマくらいだっけ?魔法抵抗あるやつとか魔法攻撃してくる魔物系統はいないよね?」
「ドラゴン、氷竜系統のが目撃情報あるけど」
「氷竜って本来いないはずだけど、この大陸には。どっかから飛んできたのかな。何故?…とりあえずそれに襲われたら多分ここの冒険者で太刀打ち出来ないと言うか普通に死ぬから素直に諦めよう」
ですわよね。ドラゴンと言えば最強の生物。空を駆け、魔法を操り、炎や吹雪の吐息を吐くと言う。まあファンタジーですしいますわよね。
「毒蜘蛛や毒蛇には気をつけないといけませんね。あとは」
まあ森ですしそう言うのはいますよね。
「あとはウサギとハト、シカ、ボアはいたよね」
所謂食材ですわね、その辺。
「この川に沿うルートはどうでしょう?」
「基本はそれでいいと思う」
「街の北の入り口目標でルートはこれでいいはず」
「街に入るのが無理でしたら倍出すので帰りも…。その辺は状況次第でしょうけど」
「了解」
とりあえずそのくらいの余裕はあります。
「そのドラゴンがこない限りはボク達でなんとかなるはずだね」
「おそらくは。と言うかこの街でドラゴンに太刀打ちってなると英雄様くらいしかいないかと」
ですわよね。かつて巨人から世界を護った英雄の方々。さすがにその方々の力を借りる訳にも…。いや、無理ですわよね。
「英雄って言えばこの大陸がガルド様の穴埋めにしようとしてるのがそのフブキって言うリトルスの子だとか。その子に会いに行くって言う」
「そう考えて頂いて結構です」
「お偉いさんらしいからね〜。難しいだろうけど」
「とりあえずさ、明日準備して明日中に出よっか」
「分かりました」
「じゃ、明日の朝集合ね!」
話まとまりましたわね。
翌朝。
「では、行って参ります」
「気をつけてね〜。いつでも戻っていいからね〜」




