20話〜神無月咲夜2−やるしかない。▷はじめから−〜
えっと、確か…イノシシに挑んで死にかけてたら狙撃となんかあって…。ん?なんか揺れてますわね。
「ここは…」
「馬車の中だよ。あたしはユリア。商人だよ〜。街に帰るとこにキミが襲われてたらしくて護衛で雇ってた弓兵さんと魔法使いさんにキミを助けてもらったんだよ」
やはりここが異世界というのは確定でしょうね。死にかけの傷や痛みは完全にありませんもの。服が変わっているのは気になりますが。
「私はサクヤ・カンナヅキと申します。猟をしていたのですが自分の実力を見誤ってああなった次第で」
「うーん。流石にフォレストボアはキツいと思う」
あのイノシシ、フォレストボアって名前ですか。
「森のどの辺の集落か分かる?」
「いえ、集落とか見た事無いですが。目が覚めたら森の中にいたもので」
「異世界なんちゃらってやつだ!」
異世界なんちゃらとは!?分かりません。私には。魔法に対する知見も無いです。勿論。
「で、まあこの世界の昨日?でいいんですかね。そのあたりの時間でこの世界に来てそれで肉を得る為に」
「なるほど〜。とりあえず街に一緒に来てもらうけど、いい?」
「はい。あの、少し寝てていいですか?傷は癒えてるんですけど疲れが取れないと言うか」
「いいよ〜」
「その前に、私の服は?」
「あ〜、血が落とせそうにないから多分着れないかなあ、もう。あ、男の人には見せてないから大丈夫だよ。あたしと雇った魔法使いの女の子に手伝ってもらって着せ替えたから」
確かに血液の汚れって中々落とせませんよね。この世界のレベルでは尚更難しいのかもしれませんね。
「承知しました。とりあえず寝させていただきます」
眠気に身を委ねて眠りに落ちる。
見知らぬ桃色の髪の少女、異なる種族の女性達と共に怪物と戦う姿。誰なのかわからないはずなのに、どこか知っている表情。あれは…一体…。
しばらく眠って身体が揺すられて起こされる。ここで休憩を取るとのこと。
誘われて外に出ると日の光に目が一瞬眩むが心地良い。
「おー、リトルスの嬢ちゃん元気そうで良かった」
人間のお兄さん…でしょうか。そこそこイケメンですわね。
「私はサクヤと申します」
「俺はアル。狩人だ。弓がメイン。魔法は下手だが」
「私はリノ。魔法使い。あたしの魔法すごい!傷1つ残さない!」
「あ、ありがとうございます」
「っと、ほい、お水」
「あ、どうも」
魔法使いさんですか…。この方なら。
「そう言えばフォレストボア相手に手作りの槍で挑んでたけど…」
「リフレクションや守護結界で守りつつって思ってたんですが、まさかぶち抜かれるとは思ってなかったもので」
「えっと、言いにくいんだけど、サクヤちゃんの魔法能力が低いんだと」
ですわよね〜。最弱スペックでこの世界に放り込まれてやったこともない魔法使って身体フルに動かしてこの様。まあ勝てる訳ありませんわ。いわゆるはじめからスペック。
「ま、まあ知ってましたけど餓死か戦って死ぬかの2択だったので」
「そう言えば、ボアは処理は済ませといた。だいぶ弱ってたからまあ仕留めるのも楽だったし、殆どの取り分はサクヤちゃんが持ってきな。馬車にある」
「はぁ…。えっと、あまり聞く意味が現時点で感じられませんが、おススメの食べ方は?」
「焼いて香辛料振って食うんでも十分美味いが女子供は好かねえか。固えしクセあるからな。煮込む方が多分食べやすさはある」
元の世界のイノシシの肉と似たような感じでしょうね。おそらく。
「ウサギ食ってた方がよっぽど美味いからな。摂れる肉は少ないが」
え?
「この辺りだとあとは野鳥の選択肢が多いな、鴨、鳩、アヒル、カラス」
鳩やカラスって食べられるんですのね。鳩…鳩。
「んじゃ俺は先戻ってるわ。まだしばらく休んでで大丈夫だそうだ」
「あ、はい」
数分後、馬車に戻って移動を再開する。リノさんに勧められてあんな事になるとは思ってませんでしたがまだしばらくかかる以上正解だと信じてますので。
馬車の中でリノさんから頂いたよく分からない餅を食べる。美味しいですけど米ではないのは確か。炭水化物ですわね。
食事も必要ですが今必要なのは情報。この世界の情報とこの世界にどれだけ知った顔がいるか。とりあえず如月さんか桜井さんと合流したいですけど。さて、どうしたものですかね。とりあえず、色々考えねば。
「あのさ、サクヤちゃんがこれからどうするかは分からないけどしばらくうちで働いてみない?ご飯と寝る場所とお給料出すから」
「いいのですか?」
「じゃないと街に着いたところでって話になるし」
まあそうですよね。ここはお言葉に甘えさせて頂きましょう。
「1日銀貨1枚、1万マナね。まあ遊ぶには丁度いいと思う。10日で休みは3日続けて、1日で大体8時間くらい。あとはあたしがやるから大丈夫」
この世界週10日…。地味に衝撃ですわね。
1万マナの価値がどれほどかも分かりませんが。
「この世界のことについて色々聞いていいですか?」
「あ〜、週10日の事出たからついでにその辺から。1日24時間、週10日、月25日、年16ヶ月の年400日周期、この大陸は四季があっておよそ100日単位って感じ」
月単位では短いですけど日数は長い、それ以外は日本の気候に近いのかもしれませんね。
「なるほど。元の世界の生活環境に近い地域で良かったですわ」
「近いなら良さそう」
「あとはこの身体の生理周期とこの世界の病とか知った方が」
「何歳?」
「7歳らしいです」
「10年くらい来ないよ。リトルスは。この世界の病気、風邪とかそういうの意外だと伝染病の類で気をつけなきゃいけないのはフェルパーみたいな獣人系種族の毛や爪から伝染する病気みたいなやつ。今じゃ殆ど聞かないけどゼロじゃないから」
「リトルス…遅いですのね」
「実はそうでもないのだよ。寿命に対してやたら早い。400〜600年は生きるからまあかなり。結婚適齢時期は100年後半〜200年前半だし」
平均寿命が人間の5倍以上…そんなにどう生きろと?
「な、長いのですね。そこまで長いとちょっと…」
「元何系の人?」
「人間、ヒューマン系でしょうか?80〜90生きる程度の」
「なるほど」
「ぶっちゃけますとこんな野蛮…というかファンタジーというか戦いを必要とする世界ではなかったので自身の能力が環境についていけてないのです」
桜井さんならこういう世界観強いでしょうね。他はどうか存じ上げませんが。…でも桜井さんって運動神経は低かったような…。あれ?
「まあそれはいいのです。今私に必要なのは情報ですわね。自身の戦闘能力なんざ期待してないので自身を守る為に情報が必要なのですわ」
結界魔法とやらにはどうやら攻撃能力は無いようですし新しい魔法を習得する術が分からない以上魔法戦闘が期待出来ない。ついでに身体を活かした体術や武器術も期待出来なさそうですし、センスが無いので。
「そっか」
でも何かしら攻撃手段は欲しい…やっぱ武器を覚えるしかないようですね。…街に着いてからでいいですね。
しばらくして街に着き、ユリアさんの店に入る。一般的な…のかはちょっと分かりませんが、見た事のない物が多いですね。説明のない限りは怖いので触れたくはないです。武器とかではないですが。
「やってもらう事を説明するね。って言っても簡単な事だけど。朝、掃除して商品の陳列、お昼摂ってもらって商品補充、夕方に掃除と管理とか諸々」
18時には店は閉めるらしい。そこから好きにしてくれて結構!との事。お給料は9時間労働で銀貨1枚、銅貨5枚。15000マナ。一応他のこの世界の物の値段を聞いてみた辺りから換算すると日本円のおよそ1倍〜1.5倍がこの世界の通貨の相場っぽいですね。とすると日給2万円、結構お高いと考えていいんでしょうか?
まあそんなこんなで無事異世界ライフは始まってしまったと考えてよろしいんでしょうか?




