13話〜開戦、湿地での戦い〜
オウカさんの調査によるともう少しだけ時間はある。そのうちにある程度戦力と自分の力も鍛える。オウカさんはそれを眺めてマジメだね〜とかちょいちょい何か言ったり俺を揶揄ったりして遊んでる。暇なのかこの人。
そんな中でいくつかの魔法は使えるようにはなっていたが使用が可能なのであって使いこなせる訳でもない。例えばフィールアピール。感知魔法や観測魔法相手に自分の能力値や魔力を大きく見せる工作魔法。これは相手に警戒させるくらいは出来るかもしれないが、まず俺には感知魔法なんかで感知されてる事を知覚する事が出来ない。それに、相手にどんな風に映るかもイマイチ分からない。そもそも工作魔法とか言う類の魔法が使いづらい。魔法の起動条件とかを設定するトラップ系とか乗っ取ったり書き換えたりするくらいはまあ理解出来るのが多い。それぞれがピンポイントだったりするのも多いけど。相手の杖やオーブに干渉して強化補正属性を書き換えるとか難易度高過ぎだろ。
まあこの際それはいいや。ってかこの戦い、工作魔法そもそも必要か?いや、相手魔法自体ほぼ使えないらしいって感じだしその辺要らなそうだよな。とりあえずなんとかしなきゃならないのは魔法じゃなくて剣術。今の割と自己流プラスゲームキャラ詰め合わせ刀剣術とか言う雑に生んだ基礎も何もあったもんじゃない剣術。
とりあえず暇なので散歩してみる。少し離れたところでヒイロとノーラちゃんが剣術の特訓をしている。すげえな。この2人。
「中々だな。ノーラ嬢、軽やかな身の動き、柔軟性を活かした剣術、流石だ」
「ヒイロさんこそ、その力溢れる一閃、素晴らしいです」
「ほえ〜」
「あ、フブキ様。フブキ様の剣術もすごいですよ!」
「あはは、ありがと。でも、アレは下手なの魔法で結構誤魔化してるとこあるし元の世界で見た人間の創作の模倣とかもあるし個性なんてない気もするけど。それに動作にどうしてもムダが出来ちゃうし」
結局、個性なんてものは存在そこには無い。元々戦闘、殺陣なんかとは無縁の世界で生きてたんだ。自分の技術なんてまあ漫画とかアニメの見た事くらいだ。
「でもあそこまで魔法を活かした剣術は間違い無く個性ですよ!」
なるほど、そう言うのはアリか。
「多彩な魔法を操りながらも上手く魔法と調和された刀とダガーの二刀の扱い。アレは間違いなく他に無いセンスかと」
「もっと綺麗なフォームでやれるように頑張るよ」
「あと無闇矢鱈に特攻仕掛けるのはやめた方がいいかと。お身体はお大事にして下さい」
デスヨネー。
自分の戦い方を見つめ直しながら2人とは別れて歩き始める。すると手が真っ赤な血で染まってるメルナさんを見つける。イノシシをバラしてるところか。見慣れたと言うか慣れた光景ではあるが人がやってたところを急に視界に入ると言うのは驚く。
「あ、フブキちゃん。何やってんの?」
「ただ歩いてるだけと言うか」
「よし、んじゃ川行こう!」
まあそうなるよね。近くの川で肉を洗ってついでに手足…どころか服脱いで全身洗ってるこの人。
「よし、これで大丈夫。あとはどうするかな〜。もう何頭か欲しいけど。これから戦だし力つけてもらわなきゃ!ただでさえ痩せてるフェルパー達にもっと食べてもらわないと!」
この後、何匹か色々と狩ったり食べられる植物とか集めて戻る。そして料理を手伝い、特訓して決戦の日を迎える事となった。
来たる決戦当日の夜。何かが起こる前触れ程嫌な静けさは無い。野鳥の声と風の音は聞こえる。この森林の北東部に位置する湿地帯。現在の化け猫率いるフェルパー軍の拠点だ。オウカさんが見つけた。すげえ数いる。これ。ホントにやんの?無理じゃね?
(大丈夫だ、そろそろ俺を出せ)
あ、忘れてた。分身を作り出して憑依させる。
「…うむ。だいぶ分身の質も上がってる」
「せいやー!」
コンパさん急に出てくんなよ。
「こんなとこで早々にフブキ様を死なせる訳にはいかないんです」
なんかの魔法でアサルトライフルを召喚してるこの女神。
「おい女神」
「何でしょう?」
「んなもん持ち出していいのか!?」
「大丈夫ですよ。私の戦闘許可、およびその関連でフブキ様の記憶から取り出せる範囲の武器の許可は得てます。あ、こいつは使ってください。後で回収しますが」
んで拳銃2丁、ソ連の自動拳銃とドイツのセミオートマチック拳銃。
「拳銃、ライフル、ロケラン、グレランなんでもお任せ!」
世界観ぶっ壊してんぞ。チートの度が過ぎて。それにしてもこのライフル良くできてんな。実弾を用いずに魔力を変換してそれを銃弾とする武器か。
「お、カッケー!」
ガルドさん拳銃めっちゃ好きそう。まあ、男だもんな。
「ガルドさんはドイツ系もいいけどロシア系かな」
「対戦車ライフルとかいいですね。ロシア系の」
アレか。
「ロシア系の対戦車ライフルって何だ!?」
「フブキ様の元の世界のロシアと言う国の戦車、鋼の砲台と装甲の付いた乗り物を攻撃する事を前提とした狙撃銃、火器です」
「鋼の砲台と装甲の乗り物が存在する世界か面白そうだな」
「魔法は使えないですけどね」
「らしいな。まあそこはいい」
群れを見る。
「行くぜ。お前らぁ!配置につけぇ!闇の力を持って痺れを与えよ!パラライズ!」
今、100人くらい麻痺させなかったか!?この人!?
「かなり性能は上がったがまあまだ行けたか」
「鋼の泉よ、魔を持って縛れ!メタルバインド!」
なんか液状化してる金属がフェルパー共を大量に捕縛してる。怖え。この魔法。
「んじゃ、ボクもやりますか!」
多数のワイヤーを一度に操り次々と拘束していく。流石英雄様方。相手を殺さず行動不能にするのはすごい。
一応カーディアさん、アイリスさん、アステルさん、ガルドさん辺りから相手を行動不能にする魔法は教えて貰った。ってか割と広範囲教わってる。大半の魔法は使えるのだが下手と言うか苦手なのも割とある。
「ここはこいつでどうだ?闇よ誘え、眠りの連鎖、ヒプノシスチェイン!」
催眠にかかると催眠にかかった者の魔力で催眠魔法が発動する連鎖系の魔法。自身の魔力は最初のみで案外お手軽だったりする。バタバタと数十人は倒れるがまあ催眠魔法って個人差あるからな。効かなかった奴らをパペッターの糸で動けなくする。こいつら使うか。生きたまま操るのは結構魔力いるけど出来なくはない。
横を見てみると女神がパンパンと拳銃を乱射してる。実体の無い魔力の弾に麻痺の性質を付与しているのか。えげつねえ。ついでに魔力撃ってるんだ。装填の隙も無い。側から見ればやべえな。ほぼ無意味に急所当ててる。
っと、他の様子見てる場合じゃない。猫又2人っすか。まずは構成隠蔽してパペッターを仕掛ける。回避された。んで向こうは突っ込んでくる。オーブを取り出し、ダガーと脇差を取り出しオーブを通してファイアアドとウィンドアド、ウィンドブーツをかける。側面、左右から同時攻撃、それぞれを刀とダガーで防ぐも大きなダメージは入っていない。猫又は攻撃力や機動力だけでなく攻撃耐性も魔力で補っている。そう見て間違い無いだろう。なんらかの魔法耐性もある。そう考えると殺すしか無い、か。こっちに寄ってきたフェルパー共がウザいからまずは刀で始末する。猫又2人は厄介だな。
回し蹴りを飛んで躱し、腕は受け流す。体術に持ち込まれるのはキツイが間合いを取りづらい。どうしたものか。っと、フェルパーの死体に魔力を通して操り、猫又の背後から襲わせる。が、猫又2人はすぐに反応して吹っ飛ばす。なるほど、操られてる味方同士であっても躊躇無しか、そりゃそうか。感情も何もその行動には無い。殲滅第一に動いてる奴らがその程度で躊躇うと言う思考が生まれる方がおかしい。試しに高速演算と干渉魔法を組み合わせて魔法を叩き出してみるか。猫又の攻撃を受け止め、捕まえる。そのまま接触系の分析の魔法を調べ、ガルドさんの魔道書と照らし合わせる。この力はヒプノシスより強い。そしてチェインが含まれる。連鎖の発動条件は分からないが。禁忌、禁呪、禁術系の魔道書、ルール系、チェインを持つ魔法だ。連鎖条件は分からない。とりあえず分身をテレポートで送る。今転移系で使えるのこいつしか無い。本当は転移系自体使いたくもない。三半規管弱いからな。
テレポート先。
「お、フブキってかその魔力量分身だな!?どうした!?」
「解析の魔法とガルドさんの魔道書と演算能力である程度絞ったのですが、おそらく、ルール系のチェイン効果のある魔法の類がこのフェルパー達を操っているのではないかと。力を与えるのは操っているモノとは別かと」
「ルール系、チェイン、化け猫から下位への連鎖、力を与えているのは別…魔力の性質…。なるほどな、多分それで当たってるだろうよ。辻褄合ってる。となると、術者を殺しても無理な可能性は高い。アステルとオウカにはテレパスで伝えた。お前が自信を持てない理由は何だ?」
「チェイン効果の発動条件や仕組みです」
「そこか。まあお前がそこまで解析しただけでも上等だ。あとはアイツらに伝える方法を俺が探って何とかする。分身体は消えろ!」
「はい」
さてと、伝達は任せるとして、こいつらをどうやって殺すか。いや、行動不能にさえ持っていければ殺す必要無いんだけど。
えっと、催眠失敗、麻痺そもそも当たんない。ワイヤーブチ切られるからなぁ。試してみるか。エンチャントを付与してワイヤーの強度を上げる。で、最終手段!猫又2人のパンチをまとめて受ける。そこをワイヤーで絡めて縛り上げる。エンチャントで強化してるんだ。力尽くでもぶち切られまい。にしても2人まとめてパンチ受けるのは流石にキツいな。折れてはいないだろうけどヤバイのは分かる。猫又2人相手でここまで苦戦してるとなるとキツイな。念を入れて複数の魔法で拘束する。
「大丈夫!?フブキちゃん!」
駆け寄ってくれたのはメルナさん。
「いやいや、嘘でしょ!?いくらフブキちゃんが強いからって猫又2人まとめて縛っちゃう?」
「流石にしんどいですよ」
「これ飲んで。体力ポーションと魔法ポーション」
何気にポーション飲むの初めてなんですけど。いつの間にかコンさんが駆け寄って2人がかりで魔法で守ってくれてるしさっさと飲もう。アレだ、薄荷と言うかミントと言うか、そう言う類の清涼感ある味だ。割と甘いけど。でも、傷や痛みは引いていってるし、魔力もそれなりに回復している。
「ありがとうございます」
「いよーし、元気になったね。んじゃ!目指すはあそこ!」
指し示す方向には大きな猫、アレが化け猫なのだろう。めっちゃデカイのがじっとしている。そこまでに立ち塞がるフェルパーは結構多い。回復したとは言え、次また猫又とやり合うのは辛い。精神的に。
「結構遠い」
「私でも流石に無理かな〜、ってかフブキちゃんのが強いし」
「うわぁ、どうしよ」
すると突然、空から猛吹雪が吹いてフェルパーのみが凍り付く。
「え!?何!?」
親方!空から女の子が!黒いロングの可愛い女の子。誰!?
「援護に来たわよ!さーこの前の恨み!晴らそうじゃない!」
え?誰?
「あぁ、この前は人型は見せてなかったものね、氷龍ヒルダ!この前の治療と食事の恩義、返しに来た所存であります!」
あの蒼く美しいドラゴンがこんな美人になるか。衝撃的だな。
「来ましたよ〜」
「どうせなら察知して猫又シバいて欲しかったよ。どっか抜けてるよな。お前」
「うぐ!それは否定出来ないのは悔しいですが。とりあえずこいつは使ってください」
アサルトライフルAK–47か。使えるな。
「あと出来れば、ワルサーかトカレフ辺りでも」
「サービスですよ」
「ワルサーPPK 、これもAK−47も魔力を弾にするタイプか」
あとトカレフTT−33も受け取る。
「これ、どっちかガルドさん辺りにでも持たせてみても?」
「いいですよ?レンタルですしフブキ様の支配下にある方なので」
「支配下言うな」
まず、こっちに来るフェルパー数人の胸目掛けて麻痺系統の魔力弾を撃ち込む。
「つっよ。普通に射撃速度出てそうだし。ホント猫又にも効きそうだし。まあいいや」
「うっ。そこはホント申し訳ないです。しかし中々の射撃の腕ですね」
「ゲームや漫画、アニメで得た情報通りにやってるだけだ」
数十撃ってコンパが結界魔法で安全地帯を作ってくれてる。
「魔力、体力、身体ダメージは大丈夫のようですね」
「メルナさんからポーション貰って…。アレ案外初めてっぽい味じゃないのには驚いたけど」
「ハーブティーとかと似たようなものですからね。意外と」
言われてみれば納得できる。
「まあ作り手や薬草で効果の差や味も結構違うので。試しに作ってみてもいいでしょう」
「いや、うん。そんな事言ってる場合じゃなく」
「っとそうでした。んじゃこいつで一斉掃射致しますね」
ミニガンとか出してくんなよ。怖えよ。女神の所業じゃねえよそれはもう。悪魔だよ。
「なんか失礼な事考えてません?」
「それぶっ放す女神を女神と認識していいのか」
「うっ」
結界魔法を解除して銃火器の女神様が掃射を始める。粗方片付いたところで化け猫へ向かう。
「あたしも行くわ!」
まず氷ブレスを吐き出す。ピキピキと正面数十人のフェルパーがまとめて凍りつく。続けて槍を召喚する。
「吹雪よ纏い、我が器に凍てつく力をもたらせ、ブリザードアドD!」
強い冷気を纏った槍で次々とフェルパーを斬ってゆく。
「行って!」
「あ、はい」
なんとかガルドさん達の下に辿り着く。
「お疲れ。随分余裕ありそうだな。お前の魔力受けてるから分かるぜ」
「メルナさんからポーション頂いたので。意外と初めてっぽくない味でむしろ驚きました」
「あぁ、そう言う。まあアレは案外茶を嗜む文化があれば似たような味になったりするからな。あ、アステルのはやめとけ。効果はちゃんとしてるがクセのあると言うか独特な味だからな」
それ、今言っちゃって大丈夫な奴だったのか…。
「ここからどうするか。フブキ、案は?」
「作戦があります」




