82話〜星を読むシャーマン〜
公共浴場からの帰り道。
「あ、師匠」
「フブキか。どうかしたか?」
「キメラの事で色々」
「ん?ああ。分かった」
フブキ邸。
「俺もその事は調べようと思ってたところだ。フォルネイアじゃ聞いた事無いからな。シクサリスなんかじゃ記録してるが。これも100年は昔の話だ。俺の知り合いに生物学に詳しい奴がいるから聞くつもりだが。オウカに捜させてる」
「仕事早いですね」
「キメラについては俺自身もそれなりに知識は得てきたつもりだが、どうやらこれまでとは事情が違ってくる可能性もある。クロウもこっちに呼んどくか」
「あの人殺し屋…アサシンですよね?」
「表向きは冒険者だ。普通にそっちでも食っていってるような奴だ。かなり多くの種の武器魔法を操る。武器魔法だけなら俺以上だ。隠密能力は俺より下だがそれでも高い方と言える」
「そう言えばユウが魔法剣使えたのも」
「そーゆーこった。まあそれは今はいい。オウカ戻って来るまでのんびりしようぜ」
そう言うとヒルダに乗ったオウカさんが上空のヒルダの背から飛び降りる。
「ありがとヒルダちゃん。お疲れ〜もう大丈夫だよ〜」
「はーい」
飛び去って行った。
「みんなまとめてファイランドに集めといたよ。ガルドの友達と言うか仕事仲間というか。クロウさんこの街だけど」
「そう言えばヒルダがファイランドの山からこっち来たって言ってたし」
「らしいね。あの山、上の方はめちゃくちゃ寒いよトゥリナの雪山くらいには」
めちゃくちゃ寒いじゃんそれ。魔法でなんとか出来るとはいえ。
「ファイランド自体はそこまで寒く無いんだけどね。むしろ暖かいくらいだけど、結構高い山があるからね」
「なるほど」
「まあそれはある程度準備出来たらだ」
「ガルドの仲間って結構ブラックな職業多いよね」
「そりゃ元々そういう事やってたらそうなるだろ。殺し屋、暗殺者、錬金術師、密猟者、狩人、降霊術師、隠密、まあ挙げればキリないが、非合法の合成生物や人造生物の研究者もいる」
確かにラインナップエグい。
「クロウさんはこの街来てるけどね。何でもフブキちゃんに用があるとか」
「まだ会ってないんですけど」
「どこで道草食ってんだ探してくるか」
数分後。
「いてーよ引っ張んな!」
「で、お前はフブキに何の用があんだ?」
「出来ればここで作ってる武器を売ってくれればと」
「銃とマナブレードですか」
「おうよ」
「こいつに渡したところで複製する技術はねえしその辺の心配は要らん。ただものにもよるが最低100万マナ取っていいぞ」
「それくらい構わん」
「値段交渉はマシュ、マシュマロにして下さい。管理は彼女に委ねてるので」
「りょーかい。っと、ガルドどうせ銃の武器魔法作ってんだろ?」
「フブキに頼まれてな」
「んじゃ、その辺も頼むわ」
「フブキ、魔導書複製してやれ」
「はい」
銃の魔導書を複製して渡す。
「どうぞ」
「ほい。100万マナでいいか?」
ポンと白金貨を渡される。
「まあこれにそんな価値があるのか分かりませんが」
「ほんとならそれ以上だがフブキがいいならいいわ」
「魔法銃を使えるのは俺、師匠、アイリスさん、ヤトナさん、あとマシュマロです」
「そのマシュマロってのが開発に携わってんだろ?相応に強そうだが」
「銃の扱いってだけならトップクラスだぞ。威力はそうでもないが命中精度、扱いに関しては俺らより高い。射程もかなりある。試しに視覚強化の類、千里眼系付与の魔法を教えてみたら、おっそろしいくらい撃ち抜くぞ。この銃とマシュマロともっと早く逢えてれば」
「千里眼系や望遠系の魔法も結構色々ありますよね」
「おまえもいくつか使えたな」
「それはまあ、使う事まず無いですけど温度感知とか反響感知も一応」
「まあそれだけ出来りゃ上出来だろ。占道系もいけそうだが」
「占道系とは?」
「所謂占いに関わる魔法だな。占術とも言う。魔力を用いない占いもあるが、魔力を用いるものもある。マナの流れを読み状況を捉え、予測する。極める者は予知の領域になる事もある。触媒をとして発動するものが多い」
「なるほど」
「まあお前には無限の可能性と数えきれん、見えん選択肢がある。何を武器にどう強くなりたいか、それはお前の自由だ。俺の思い描くお前の未来とお前の望む未来は必ずしも一致しない」
「一致も何もそもそも無いんですけどね。この世界でただ何をしたいだの無く、ただただ生きる。いい加減趣味の1つくらいって。魔法も剣術も楽しいですけど趣味になるかと言えば」
「まあ好きにすればいい。その上で必要な事は、闇魔法で出来ることは叩き込んでやる。その気があるなら禁忌にでも足踏み入れるか?」
「今はやめときます。禁忌に手を染める気はありますが、師匠の得意分野でも無いですし。まあ、必要無いなら無いでいいですが」
「何しようとしてんだ?」
「死体蘇生術。これだけ会得出来れば。何かあってからじゃ遅いですし」
「そう来たか。いい事教えてやる。確かに死体蘇生は存在する。問題はそれが倫理云々の話じゃない」
「じゃないんですか」
「扱える者が限られてんだ。コーデリア一族禁忌錬金術、スメラギ一族、もう滅んだカーマイン一族なんかな。幸い魔導書は揃ってる。暇な時に著者の亡霊でも捜してみっか」
色々衝撃的だが置いておこう。
「とりあえず今は目の前のあのキメラの事」
「分かってるなら俺はとやかく言わん。せいぜい頑張りな、若人」
夜。
ちょっと風に当たりたくて抜け出してしまった。コンとトウカにはバレてるだろうけど。テレパス使えるのに文句を言ってこないのはまあよく分からないが。
いや〜冷えるな。軽装で来たのは普通にマズった。
適当に歩いてると岩の上で空を眺める青年…。何か女の霊に取り憑かれてる。
「ん、こんな時間にこんなとこに1人で出歩いてると危ないですよ。お嬢さん」
「あ、はい」
「…お嬢さん、ジャンヌが見えてるんですね」
「霊の友達とか家臣的なのがいて」
「っと、僕はロイ。ジャンヌとはまあ色々あって出会ったシャーマンです」
「フブキ」
「森の姫君ですか。噂は僕も存じ上げております。僕は最強のシャーマンを目指す」
「はあ」
「それなら、取るべき道は。僕を貴女の家臣の末席に加えて下さい」
「何故そうなる?」
「星がそう導いた。とでも言いましょうか。僕は星の位置から選ぶべき道が読める。さてと」
ロイも気付いているようだ。
アレはキメラか。狼の身体と蛇の頭、蝙蝠の翼。あの翼じゃ飛べんだろうが。
「丁度いい。アレを潰して実力を示しましょう。今回はこれで。我が身に宿るは錬金術の戦姫。今、霊器の力と肉体を触媒とし力をもたらせ。ポゼッション!」
肉体に霊を降ろす術。魔力の流れからして魔法なのか?
「行きますよ!ロイ。あの禍々しき魔獣を討ちます!」
ジャンヌに人格を委ねてるらしい。
「銀よ、あらゆるものを断ち切る剣となれ、シルバーブレード!」
銀の剣を生み出す錬金術か。
そこからさらに炎の魔法剣を付与する。そう言うことか。
炎の剣で敵を断ち斬る。
「僕は剣以外の武器も扱えますよ」
「あ、はい。とりあえずくる?」
「はい」




