80話〜道〜
部屋の準備を終えて。
「さてと、2人の住むとこも何とかしますか」
「いいんですか?」
「野垂れ死なれても困るからな。あと100万。数ヶ月分の生活費な。そっからは自力で何とかしろ」
「ありがとうございます」
「みーちゃん暇か?」
「暇じゃねーよ。何しに来たレンレン」
「コイツレンレン!?」
「おうよ」
「コイツら十束兄妹な」
「だいぶ揃ったな。ここらで一発パーティでもすっか!」
「はぁ。やるのは構わんが、お前肉負担しろよ」
「がってん!」
「誰呼ぶんだ?」
「あとはるーたまともももとゆーがいれば大丈夫だろ」
「そう言うメンツになるかやっぱ。まあそれでいいっしょ」
「んじゃ、俺も料理すっか。トウカには伝えとく」
「甘いもん作れそうか?」
「乳製品が縛られてるせいで結構キツいが出来なくはない」
「卵はあるんですか?」
「コッコポッポって言う変な鳥の卵があるんだが1番メジャーだな。鳥類の肉としてなら他当たった方がいい。麦も何とか出来てる」
「アヒルの燻製美味いよな。メルナちゃんに交渉に行ってみっか」
「誰だよそれ」
「この街で店構えてる商人のねーちゃんなんだが普通の料理も美味いが燻製がやたら美味くてな」
「俺もアヒルの燻製食った事あるけどたしかに美味い。半分以上ノーラちゃんにあげちゃったけど最初は」
「でもそれで最強の剣士仲間にできてるんなら正直儲けもんじゃねーか」
「最強なのな」
「まあ魔法抜きであの速さを出しながらもあんだけ丁寧、無駄のない正確な剣術は少なからず俺には出来ん」
「そこまでか。みーちゃんも結構ヤバいが」
「俺はお前と違って魔法で誤魔化してんだよ。今使える魔法の位階はお前の神剣以外は大体上取ってる」
「まあ器付与星落としや器魔法剣までやるからなみーちゃんは」
「器ってなんだよ?」
「魔力の根本的な性質を決める要素だ。まあ込みで体感1.5倍の差は出る」
「マジか」
「試してみっか?」
「いや、遠慮しとく。今の僕じゃ一瞬で塵されるのは目に見えてる」
「たまとは違ってまともで安心したわ」
「え、ジュン勝負ふっかけたの?」
「ああ、だからるーとまとめて吹っ飛ばした」
「容赦ねえ」
「向こうが相応の力を使ってたしまあそれの中でも上級の使い方をしただけだ」
「ただの星落としでも十分容赦ねーんだよなー」
「スターストーム的な」
「大体そんな感じ」
「超火力じゃねーか」
「そりゃそうだろ。魔法の師匠の防御を剣で斬ってダメージ与えるレベルの魔法能力あんだぞこの姫は」
「マジで?」
「割と最近の話だけどな。まあメインの師匠のほうが多分強いだろうしそっちはまだ勝てる気しないけど」
「黒ねーちゃんってそんな強えか?」
「禁忌とされる魔法の中でも最高レベル攻撃力まで出せる。それで本来魔法の通りの悪い相手を実際倒したらしい。それを考えると魔法の位階とかに依らずに純粋に魔力の変換効率や効果、性能のレベルじゃ多分アイリスさんより遥かに高い。今の身体でそこまでやれるかは知らんが、技術面でも勝ち目無いな」
「マジかよ」
「明確にどっちが強いとか聞いた事無いけどアイリスさんと師匠だと確実に師匠のが強いな。多分完全な状態ならこの世界最強まで有り得そう」
「すげえな」
「まあそう言うのに頼らずにめちゃくちゃな強さ持ってるレンレンがヤバい気はするが」
「そんなか」
「基礎スペックからバグってる。物魔両刀ぶっぱのブッ壊れスペック持ちながら耐久がエグい。足遅いのが欠点だが」
「以前のみーちゃんの魔法普通に耐えてたな。星落としを覚える前だが」
「いやいや、おかしいからな?」
「まあそんなバグレベルのスペックになれとは言わんがももも以上、いや、ゆー以上にはなってくれれば」
「もももか。強えの?」
「新しい特訓にゃ俺も付き合ってるが。才能はあるぞ。体力、身体能力は良いとは言えんが魔法能力はゆーやレンレン以上の才能はある。もももに装器があるならその辺も活かせるからそのうち調べる」
「今魔法回路やってんだっけ?」
「ああ。それに合わせて体力づくりと最低限の干渉魔法も手出してる。で、面白い魔法見つけたからそれさえ覚えれば騎士とは違う唯一無二の魔法使いになれる」
「もももはそれでいいのか」
「こっち来て最初からイマジンアート主体の魔法使いだったし問題無いだろ」
「イマジンアートって?」
実際にやって見せる。別に戦う訳じゃないし適当に球体を作る。
「イメージしたものを作る。それだけの魔法」
球体を消す。
「もももは結構使いこなしてる。生き物を形成して使い魔のように行使出来てる。俺は武器を作るくらいだが。まあ今は別の魔法で代用出来る事は出来る」
「それ代用じゃなくて上位互換じゃねーの?」
「いや、武器が作れなくなるから上位互換とも言い切れん。あとはイマジンアートに比べて系統付与も難しい。あと触媒を核にすると言う致命的な弱点もある。スペックはかなり高いがな」
「みーちゃんは行けんの?」
「今のところ単体ではな。オーブなんかの普通の魔法触媒や一応ゴーレムの核も使える」
まあ、オーブの破片で十分強いのは作れる。
メルナさんから貰った色々な魔法系オーブとかの宝石を出す。細かいのは不慮の事故とかで売り物にしようとしたのをドジって割ったやつだとか。状態のいいのもあるけど。
「例えばこれ、海晶石。あの人どっから持ってきたんだか。んじゃ、やってみせますか。武器を彩る力を宿し、生命を形作れ、マナマテリアルライフ」
装器魔法、マナマテリアルライフ。色々勉強する上でとりあえず習得してみた。試しにフーミットを作ってみる。まあ普通に色は魔力の色でフーミットの色じゃないが。
「フーミットだ」
「触媒と魔力。この2つの調和を定着で支える。使い様でこの魔法はとんでもない事になるな」
今度はゴーレムの核。アースクリスタルに魔法回路を入れたミスリルの器具を取り付けた装置のようなもの。コイツならもっと多くの魔力を取り込める。
自分の分身をマナマテリアルライフで作ってみるが。
「おお、分身だ」
「服が身体と一体化してよく分からん事になってる。魔力で衣類と言う薄い物を接触する状態で作るのは難しいな」
「戦闘能力はどんな感じだ?」
「物質を触媒とする事で実体を形成するんだが、触媒と使用者の能力に比例する感じか。実体の触媒を核にする事で物理で殴れるし、結構やりたい放題出来るかも」
「感覚共有まで行けそうなら覚えたいが今はいいか」
「難しいな」
しばらく駄弁り続けて夕方。
「みーちゃん、燻製アヒル頼んだらイノシシと鴨付けてくれた。あとその為諸々」
「もらいすぎでは…。まあいいか」
台所にゆーと俺とトウカで料理に入る。
「フブキ様の料理がお上手なのは存じ上げておりましたがユウ様もこれほどとは」
「向こうで生きてた頃もしてましたし、こっちでも色々覚えました」
「あとはイズミさんも上手ですよね」
「こっちでやってるか知らんが、向こうじゃ俺より美味いんだよな」
「フブキー手伝おっか?」
「噂をすれば」
「んじゃ頼むわ。ってか暇な時に包丁作ってくれ。金貨1枚で収まる料理包丁なほらよ」
「あ、うん。10万マナなら包丁としての最高スペックこの世界なら作れると思うけど。包丁にミスリル使わないし。10万だとドラゴンクラスをぶつ切りにでもするの?」
「いやいや。そこまでしなくていい。余った分報酬として取っとけ」
「素材頑張っても半額で普通に食べる分の食材は大概切れるかな。ぶつ切りもいけるだろうし。っと、トウカちゃんが使ってるやつ暇ある時に持ってきてくれたらサービスで研ぐよ」
「なんなら金貨1枚足すからトウカの包丁発注していいか?こっちはもうちょいいいやつ」
「了解。2本で9万いかない気はするけどまあ受け取っておくよ。あ、そうだ。たまにこの世界の料理学びに来てもいいかな?シクサリスのギルドのメニューは色々覚えたけどこの大陸の料理も少しずつ手出してみたいし」
「もちろんです」
「んじゃ、僕は自前の包丁で、レンって子が持ってきた肉を、燻製はそのまま切って野菜と盛り付ければいいんだけど。えっとショクヨウショクブツはあんま生食向かないんだよね。確か。食用の割に」
「ついでにメインも難しいんだよな」
そう聞いてとりあえず天ぷら作ってる。さっと冷まして塩振って食べてる。
「うーん。スープかなぁ。極力食材を減らしてかきたまかトマト、サタンハートにショクヨウショクブツだけで。1番ショクヨウショクブツ感強く主役に出来るならポタージュかな。冷製でもいいかも。乳製品は無いっぽいから、ミルクルミベースで確かやる技が」
大量のミルクルミを擦り潰して濾してる。で油を取り除いた物を水で伸ばしてる。
「あとこれに何か足せば。何か足りない」
試しに舐めてみる。
「スープにするなら何か出汁になる物欲しいかな。ポタージュって出汁に依存するものじゃないけど。ミルクルミ自体に塩味からくる味が無いから確実に何処かで調整すべきだな」
「出汁は野菜からのが良さそうかも」
そこから何やかんやあって数時間後。
まともな料理が揃った。割と何とかなるものだな。そしてパーティは始まる。
「いや、これ作れんのかよ」
「まーなー」
「これ酒じゃねーよな?」
「んな訳あるか!果物のミックスジュースだ。アルココも入ってない」
「ちなみに何が?」
「アメリンゴ、オーナメントフルーツ、コンジキバナナ、ミルクルミ、ルビーベリー」
「この一杯に何千マナかかってんだよ」
「そのレベルなのか」
「そこまでかかってねーよ。総量で3万くらい、それをこの人数で割ってんだから」
「どっちにしろ4桁確定じゃねーか」
「アメリンゴとルビーベリーがこの中だと高いな」
まあ菜園産だが。そもそも他は割と流通してる。この辺でオーナメントフルーツは無いが。
「んじゃとりあえず乾杯!」
「乾杯!」
ノリと勢いで乾杯スタートしてる。
「この緑のスープなんぞ?」
「ショクヨウショクブツのポタージュ。試しに作ってみた」
「すげえ草の味だけど食えんくはない」
「頑張ったんだけどね〜。個人的に納得してるけど好みは割れるかも」
「俺は割と好きだけどな」
「まあフブキは割と好き嫌いしない方だし」
「んな事はないが」
「あ〜、そう言えば比較的甘いものは食べたがらないねそう言えば」
「なん…だと!?」
「ガッツリ甘い菓子類は嫌だな。果物とかの自然な甘さは好きだが。和菓子は物によっては食べる」
「何があった?」
「うちの両親製菓会社のトップだもんで試作品とか色々持って帰ってきて俺らに評価の一部をさせててその時に甘いもんがキツくなってトラウマになりかけた」
「結構ハードなやつじゃね?」
「結構じゃ済まないんだよな。残すのもめんどいし勿体無いから飯食えんくなるまで食う場合あるし」
「お、おう」
「そう言えばそうだよね」
わいわい喋って食べてパーティを終えて解散して片付け終えて。
「やっと落ち着いた」
「お姉様、お願いがあります」
「ん?どした?」
「私とはぴちゃんとケットとお姉様4人でお風呂入りたいのですが」
「んー?あー。俺は構わんぞ」
「いやいいのか?マスター」
「問題無い問題無い」
「何処かいい場所あるんですか?」
「この屋敷の風呂は一応プライベートの風呂だし6〜8人収まるから余裕あるでしょ」
「よーしいこー」
「お前はマスターを少しくらい見習え」
「ほへ?」
風呂。
「確かに広いですわね」
「ここ使う時は大体1人だが、普段は半分も広さ要らないんだよな」
「アレですわね。この屋敷を建てた者がお姉様の為に過度な努力を」
「だろうな」
「シャワーの魔道具も複数。多人数想定してますね」
「ああ。さてと」
自分の前にはぴこが座る。
「はいはい。やるよ」
はぴこの背中を流し、頭も洗う。
「さすが主様慣れた様子で」
「まーな。はぴここっちの方がもふもふじゃねーか」
「よく分かんないんだけどねー」
「お姉様の家臣の方も見た限り中々のもふもふに見えましたけど」
「ノーラちゃんね。奇跡か、運命か、必然か、それは知らんが意味のある事だとは思ってる」
「彼女は今どれほどの強さを?」
「剣術だけなら俺より強いさ。魔法能力が高いってわけじゃないが、俺がこの進化前で機動力を上げる魔法を使って向こうの素の速さと互角だからな。家臣と言う括りの中では最強だな」
「なるほどな。通りで。あの娘は直感的に強い方な気はしてた」
「今はいないようだがお前も何か霊的な術を身につけて来たのか?」
「いや、リオと言う亡霊を成り行きでな。変な剣士が墓に案内して」
「勇者リオか。で、あの剣神はそれに関与した。で、ついでにヤトナさん、ゲッカさんも行ってたと」
「進化には至らなかったが、相応の干渉魔法と魔法剣を身に付けてきた」
「ああ」
「まあそれは追々試すか。むしろ女2人がちゃんと魔法を身に付けて来れたかの方が心配だが」
「あはは」
「私はぼちぼち。はぴちゃんには少し早かったようで」
「無理もない。はぴこが向こうにいた時はまだ子供、こっちに転生するには新しい肉体を作り出し、向こうの魂を突っ込んでやってる。そうなると分からんでもない。まあこっちに来る分で間に合わなかった分は俺がなんとかしてやる。っと先入っとけ」
「はーい」
そう言うと浴槽に入る。
「やっふー」
「泳ぐな」
「うっ」
自分も身体を洗い終えてはぴこを捕獲して自分の前に引き寄せる。
「落ち着け」
「うっ」
「流石マスター」
「ほい、お父さんのとこ行きなさい」
「はーい」
「はぁ。で、これからどうする?」
ケットがはぴこに頭を撫でる。
「この世界に何かが起きてるのは事実なんだけど、その根源を突き止める手段はない。待つだけだ。まあのんびりしてていいだろ」
入浴後。
「今日は4人で寝ますわ!」
「あ、はい」
「わーい」
「はぁ」
とりあえず布団を並べる。
「それでは、失礼します」
「トウカさん優秀な家臣ですわね」
「本当にな。家事全般いけて街全体を感知出来るって」
「なるほど、サポーターとしても」
「暇な時に回復魔法も教えて使えるようにはしといた」
何か静かだと思ったらはぴこがもう寝てる。
「もう寝てますわね」
「まあまだ幼いし仕方ないか。はぴこは」
「ルーちゃんならしっかりしてそうですわよね」
「それは言ってはいけない」
「ルーミアはしっかりしてるな」
あっさり父親公認。まあ見てりゃ分かる話だが。
「さてと、やる事無いし寝るか」
「この世界は趣味的な物は無いのですか?」
「無いな」
「寝ますか」
「おやすみ」
数時間後。深夜。
はぴこに抱きつかれてる。
「んっ」
そっと脱出する。ケットがいない…。まあいいか。
トイレを済ませて外を見る。
「この世界はもうすぐ夏か」
「そうなのか」
上からケットが降って来る。屋根の上か。まあ、うん。
「あ、すまない。驚かせたか」
「いや、何してたのかと。驚いたってことはないけど若干ぼーっとしてた」
「まあ時間も時間だからな」
「まあそうだけど」
「この世界、そしてこの身体、この言語。マスターと的確に思いを交わす事が出来る。それだけでも有り難いが、あのよく分からん神という存在、何を考えていたのか。分かるはずもないのにな」
「お前らの転生に関与したのはポーラ。最高位の女神がそんな事言ってた。真意は分からんがこの世界で起こってる何かをどうにかして欲しいのだろう」
「出来るのか?」
「知らん。動くにも情報が足りん」
「そうか。まあマスターのやりたいようにやればそれに付いていく努力はする」
「それは有り難いがもっと自分本位で動いていいからな?」
「俺ははぴこの相手するだけで手一杯だ」
「お疲れ」
「でもまあ、狩猟辺りから手出してみるか」
「持ってきたら俺がいい感じにご馳走にしてやんよ。ふぁああ。寝るわ。トイレに起きただけなのに喋り込んでしまった」
「俺も寝るか」
第7章(第2部1章)〜生き残りの選んだ道〜 完




