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Two Ships  作者: いすぽん
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PROLOGUE

Two Ships


どちらを選ぶのか


そして


その日常から届く手紙 …

ぼくは迷っていました。


大きい船は綺麗で、豪華で、楽しそうなものがたくさんある・・・


乗ってる人もたくさんいて、みんな笑顔だったりして


もちろん泣いている人も、哀しそうな人もいるけれど、それも含めて人生だよねって言ってるし・・・


もうひとつの船は、なんていうか


ちゃんとした船なんだけれど、地味で、ところどころ汚れていたりして、そもそも人が乗っているのかどうかも分からないんだよね


大きな船には、知ってる人もたくさんいて、みんな楽しそうにしていたり、時々苦しそうにしていたり、それぞれの人生を謳歌して、人間らしい?暮らしをしている感じ


それに、便利な道具とかシステムが導入されて、どんどん快適な暮らしになってき、より自由な時間が増えているように見える


これって科学が人間に対して出来ることだし、これこそ進化だよね


そうそう、このパソコンだってさ、インターネットを介せば、世界中どこからでも最高の叡智につながって、無限に近いくらいそれらを吸収することが出来る


本当に素晴らしいよね


これを否定する根拠を探す方が難しいって分かるよね(笑)


じゃあ、なんでもうひとつの船と迷うの?


そうなんだよね・・・


本当に何でさっさと大きい船に乗らないのか・・・って自分でも笑ってしまうんだよね


大きい船に乗ってしまえばさ、ある程度の大波が来ても揺れないしさ、中の劇場(ってか劇場まであるんだよ)に入ってしまえば、そこが船の中だって忘れてしまうから


もう何の心配もなく、目の前の素晴らしいショーに夢中になればいいんだ


お酒は飲まないから、美味しいコーヒーとケーキ。チョコレートがいいな・・・がありさえすれば、それでもう全部OKだよね


だから


なんで迷うの?


実はさ、もうひとつの船


この前、体験乗船したんだ


ちょっとした好奇心でさ


その時点では、もう大きな船に乗る気マンマンだったから、思い出づくりと、経験?くらいの感じだったんだ


感想?


そりゃ~最悪だったよ(笑)


いや、本当に最初っから最悪


いや、だってこっちはさ、客のつもりで行っているのに


いきなり掃除だ、修理だ、給油だなんだって、次から次へと仕事を言いつけられるの


「え?客だよ?」


とは言わなかったけど・・・正直、意味がわからなかったよね(笑)


でも


やってみたよ・・・


そしたら、楽しい


わけないじゃん(笑)


辛いだけ、苦しいだけ、重いだけ、眠いだけ、疲れるだけ


最初の日の夜に、用意されたベッドで


って、一応気を使ってベッドって言ったけど


あれはさ、簡易ベッドって言うのかな・・・あの、簡単な治療室にあるような


あ、そうそう点滴用ベッド?みたいなものに


一応横になりながら、考えたよ


いや、考えたっていうか、思いっきり後悔したよ


「最初から大きい方でよかったじゃん・・・こんな経験なんて意味が分からない・・・もう無駄、無理・・・アホくさい。大きい船なら、今頃お腹いっぱいになってさ、食後のコーヒー飲んで、お笑いでも見ながら寝落ちしそうになってるだろうな・・・クソ」


って


本心だよね、本気の本音


んで、次の日も同じ感じ(笑)


あ、体験って言っても、なぜか二週間コースしかないの


あ、そう、しかも、お金払ってるからね(笑)


これ、意味わかんないでしょ?


こっちがお金払って、仕事してるんだよ(笑)


三日目も、四日目も同じ


あ、一応気を使っていうけど、その船の乗組員たちはみんな優しいし、暖かいし、基本的にはいい人たちだよ


でも、仕事のことになると


鬼だね(笑)


一切の妥協も躊躇もないし


基本的に無理難題・・・ってか無茶振りが多い(笑)


途中で止めればいいって思ってたけど


よく考えたらさ


大海原のど真ん中なんだよ(笑)


一応、途中で降りることもできるけど


その場合のヘリのチャーター代金は自分持ちになるの(笑)


馬鹿みたいな値段だったから


思わず要請するのは止めたけど


2万くらいだったらしてた(笑)


ゼロ何個足すんだよ?って笑っちゃったよ


一応一週間たって


さすがに要領もなんとなくわかってきて


出来ることも増えていって


慣れただけだと思うけど


ちょっとずつ自分自身で考えるようになっていったりして


あ、でも、イライラもしてるんだよ(笑)もちろん


んで


最初の休日


ってかさ、もう一回言うけど、お金を払っているのはこっちだからね(笑)


最初の休日の朝にデッキに出たら


ものっ凄い快晴で


よく見たら、なんか見たことないような島に寄港してて


そこに降り立ってみたらさ


ビーチは無人で、でも、驚くほど


いや、言葉では説明が出来ないくらいの美しさのビーチなの


天気のせいもあると思うけど(笑)


あ、それに、あれだけ苦しい仕事?の後なら


どこだって天国だよって思いもするけど


それにしても、強烈な美しさ


こうして話をしているだけでも、ニヤニヤしてくる(笑)


変態みたいだ・・・


いや、変態じゃないし・・・(笑)


そこで、船長みたいな人と初めて逢って


ちゃんと話をしたんだけど


よくわかんなかった


いや、ウソはついてないし、ってかつけそうにない人だった


ヘンなとこ抜けてたりするから


「え?この人船長?」って思ったけど


自分自身でも「船長」って思ってないみたいで


「船長」って言われるの嫌だって言ってた


なんか不思議な船だなって思ったよ


その人、船長なのに、全然船長っぽくなくて


いや、怒ったら怖そうだし、鋭いとこは本当に鋭くて


所々の判断は的確だと思った


あ、これは、その後の話ね


そう、その後、なぜか突然操舵室の仕事になったんだよね(笑)


突然


別に自分を売り込んだわけでも


操舵室が良いって思ったわけでもなく


まあ、力仕事とかよりは良いと思ったけど


でも、どのみちエアコンなんてないからね(笑)


その操舵室で、その船長ちっくな人


寝てるんだよ(笑)


それか船長室で風呂に入ってるの(笑)


自由か(笑)


でも、なぜか肝心なタイミングになると、いつの間にかそこにいて


周囲が驚くタイミングで、完璧な指示を出すの


完璧なタイミングって言ったけどさ


それ、全部結果的にってことだからね


つまりね


その場では、みんな「え?」って思うような指示を出すの


でも、周囲の人はなんだかわかったように


「了解」って言って、その謎の指示にしたがうの


で、その時にその船長ちっくな人見ると


言い切った後で


不思議そうな顔してるんだよね(笑)


あれは笑ったよ(笑)


だって、自分で指示出して、その指示に自分自身で困惑してるんだよ(笑)


一人ジャンケンで、自分に勝てないって言ってるみたいでしょ?


でも


でもね


なぜか、進んでみると、その指示通りに動いたからこそ成し遂げられたこととか


回避できたこととか


後々になって


いくらでも出てくるの


あれにはさすがにビックリしたよ・・・本当に


ってか、毎回そんな感じで


そんな結果になって、その船長ちっくな人も、自分で驚いているからね(笑)


「なるほど・・・この人、船長だね」って思ったよ



操舵室でしてたのは


なんてことはない仕事?だよ



書類をつくったり、そこの窓磨いたり、なんとなく床掃除したり(笑)


・・・


そこで数日たってさ


ビックリしたことがあったんだけど


・・・


いや、今でも信じられないんだけどさ


・・・


なんか


楽しいって思ったの


(笑)


いや、アホみたいでしょ


出だしに戻って普通に考えてみて!


お金払ってるの、こっちだからね(笑)


それがいつの間にか仕事させられて


いいようにこき使われて


いつの間にか操舵室に入って


楽しいって思ってる


洗脳されたのか?って思ってもみたんだけど


さっきのその船長ちっくな人


洗脳させるようなこと、言ってもないし、やってもないんだよね(笑)


だって


ただ、謎の指示を出して、それがなぜかドンピシャで


それ以外は、寝てるか、風呂だからね(笑)


でも


悔しいけど(笑)


楽しいって思っちゃったんだよね


自分自身が


その場の役に立ってるって


そこで役割をこなしてるって


こき使われたって言い方したけど


実際には、丁寧に頼まれてるからね(笑)


「すみません」って


いや、仕事自体は大変だよ


サボったら、それがそのまま、その船の運命に直結ってのは


ド素人の自分でも分かったからね


だって


乗組員が圧倒的に少ないからね(笑)


でも


みんなたくましいんだよね


頼りになるんだよね


ここぞってときに


一回、めちゃくちゃに海が荒れた日があったんだけど


そんな中でも、みんなはいつもと変わらずに


淡々と仕事してるんだよね


こっちはヒドイことになってたけど(笑)


みんな平然として


いつもと同じ笑顔


そんときに、船長ちっくな人が部屋に来てくれて良く効く薬でもくれるのかと思ったら


部屋には来たけど


笑って話して、どっか行っただけだったよね(笑)


呆れたけど


なんか嬉しかったし


悔しかったね


正直


自分・・・弱いなって思ったね・・・



強くなりたいって、初めて思った


いや、あんな船長ちっくな人みたいにはならないけど(笑)


でも


格好良かったんだよね


出ていく背中


あ~悔しいって


悔しい悔しいって思ったけど


でも


そんな自分の顔は


笑顔だったんだよね


もう


なんだよ自分って、どうしちゃったんだよ自分って(笑)


認めたくなかったけど


ってか


今でも、認めたくないけど


その船にあるって思ったんだよね


なりたい自分になるための


すべてが


その船にあるって


「お金払って、仕事して、辛く苦しく疲れることする船」


なんだそれ?(笑)


・・・


一応、大きな船にも乗ってみたんだよ


その後ね


いや、なんか言われたよ


例の船から降りた日の夜に


家族に逢ったら


「なんか、たくましくなったな」って


そりゃね(笑)


「もう最悪だったよ、最初から最後まで」


って父親に言ってる自分の顔


笑ってるんだよね(笑)


もう、やになった(笑)


あ、で、そう、その後乗ったんだよ、大きな船


二泊三日で、両親と


おつかれさま会みたいなノリで


いや、もう至れり尽くせりで


乗船したら乗組員が丁寧に案内してくれて、華麗にチップとか渡して(笑)


食事も豪華で


そうそう、エルビスのショーやっててさ(笑)


いや、もちろん本人じゃないよ(笑)


いや、本人か?(笑)


それがめっちゃ上手いの!


コーヒーも新鮮で、ケーキもパティシエが乗船してるから、その場で作るの


ってか三ツ星か四ツ星のシェフとパティシエだから、最高なんてもんじゃないよね



大浴場


海を見ながら


夕日を見ながら


イルカが並走するのを見ながら



最高でしょ・・・


ってか


最高でしょう(笑)


もう


最高なんだよ


文句なんて一切ないし


思わず「最っ高っ」って言ったよね(笑)


・・・


でも


ぁあああああ


でもって言いたくない(笑)


でも


でもおおおおおおおおおおおおお


全然つまんない(笑)


分かる?


全然飽きる(笑)


もちろん、翌日はエルビスじゃなかったし、食事のメニューも別の素晴らしいものが出てきてるんだよ


飽きないように


でも


飽きた(笑)


一瞬で飽きたね(笑)


ってか、あの船


食事なんて、ほとんど似たようなものだけだったよね(笑)


あ、その場で釣った魚とかメインの日が多かったけど


釣れる魚って限られるから


実際はほぼ同じ食事


飽きなかったよね


なんで?


オカシイでしょ(笑)


ねえ、やっぱりなんかダマサれてる?


いや、絶対そうだって(笑)


だってオカシイもん・・・


わかった!


あの釣った魚になんか、そういう成分があって



ではないけど、なんか


そういう成分があってさ


なんか


はぁ・・・


飽きるんだよ(笑)


大きな船


めっちゃ楽しいはずなのに


あれだけ豪華なのに


あれだけ輝いているのに


あれだけ綺麗なのに


なんか


薄っぺらく見えてしまったり


なんか


安っぽく見えてしまったり


いや、実際はものっ凄い家具とか何だよ!きっと(笑)


なんか


偽物っぽく感じてしまったんだよね


あれ?


病気?


(笑)


だってみんなそこで幸せそうなんだよ


実際


それが悪いとも思わないし


それが求めているものなら


何の問題もないしね


でも


なんか


つまんなく感じちゃう子になっちゃった(笑)


なんだそれ?(笑)


ってズラズラ書いてる時点で


結論決まってるじゃんって思うよね(笑)


もう


自分自身で言い切ってるよね(笑)


じゃあ


なんで書いてるのかって


そりゃさ


楽しいものを見つけたら


教えたくなるでしょ?


自慢したくならない?(笑)


「やっべ、これ楽しい」って


あ、もちろん秘密にしたくもなるから


みんなにはツラツラ言わないけどね(笑)


一応


そんな感じだよ


ってか


この手紙も操舵室で書いてるけどね(笑)


ってか


こんな手紙書けるくらい暇なの?って


今は


船長ちっくな人も寝てるからね(笑)


いびき


ものっすごい(笑)



起きた


じゃあ、仕事するね


またね


                                うんこ




P.S. うんこって「運呼」だから、「運を呼ぶ」んだって!良かったじゃん(笑)

選択のあと


ゆったりと


でも


たしかに進み続ける日常から


手紙が届き始める


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