魔術技実験
またまた遅くなりました。
すみません。
今回も楽しんで頂ければ幸いです。
「それはね・・・」
学校の室内とは思えない程の豪華な装飾に彩られた部屋で、豪華なソファに二人の女性と一人の男性が机を挟んで向かい合うように座っていた。
部屋は豪華だが、部屋の空気は剣呑な空気だった・・。
「それは・・私が魔術技実験を行ったからだよ・・・」
砂月は勇気を出し、絞り出すような声で言ったが嶺緒には分からないようだった。
「な、なんだよそれ?魔術技実験?・・・ってそんな顔で見ないでくれよ!!ああそうだよ知らないよ!悪いか!」
嶺緒のあまりに無知な発言に、少しの間だけ疲れた顔をした砂月と生徒会長だったが、気を取り直したのか嶺緒の質問に答え出した。
「嶺緒くん、魔術技実験っていうのは・・」
「待ってください、ここまで良いところがない私が話します」
砂月が説明しようとしたが、それを遮って生徒会長が話し始めた。生徒会長が言った通り会長らしい良いところをまだ見せられていないからだ。
「魔術技というのは、その名の通り魔術と技術の力を合わせて作った装備品のことです。その効果は魔術の使えない人も魔術が使えるようになるというものでしたが、あまりに強力すぎて使用者が限定されるという物になりました・・・」
「そ、それじゃあ?」
嶺緒も魔術技実験とはどんなものなのか察したようだった。
「そうです、魔術技実験とは魔術技の適合者かを見極め、装備させるための実験です。その実験を高校に入るため先日行ったところ、魔術技と砂月さんの家の血筋の魔力が反発してしまって・・・」
生徒会長がそこで話を止める。だが嶺緒は先が気になり、体を若干前のめりにしながら聞いた。
「そ、それで・・・ど、どうなったんですか?」
「最終的には中和に成功して、騒動は静まり魔術技実験は成功し、その証拠に耳にピアスとして魔術技を装着しています。ですがその代償といいますか・・原因は解明されていませんが、砂月さんの髪は変色していました」
生徒会長の言葉に頭を抱える嶺緒は、緊張しながらもしっかりとした声で砂月に聞いた。
「なんで魔術技実験なんかしたんだ?・・と聞いていいか?」
何故嶺緒が遠慮しながら聞いたかと言うと、なんとなく分かっていたからだ。
そう・・・砂月が俺のために魔術技実験をしたことを・・。
「それはね・・・自分のためだよ」
砂月は非常に綺麗な笑顔で言い放った。それはもう・・・天使のような笑顔で。
「う、嘘だろ?そんな訳あるかよ・・・砂月が自分のために実験を行っただって!?」
嶺緒は最初は驚いていたが、何かに納得させられたかのように口を開いた。
「分かった・・・嘘だとは思うけど、そんな笑顔で言われたら反論できねーよ、ずるいな・・本当に・・お前は」
「ふふ、ごめんね・・やっぱり嶺緒君と一緒の学校行けて良かったよ!」
砂月の方も自分の選択は間違っていなかったと、確信できて嬉しかったのか、少しだけ涙が目から零れ落ちていた。
だが、このような雰囲気は二人だけなら良かったのだが、ここにはもう一人いる。
「あのー・・・そろそろ良いですか?砂月さんの話も終わったことですし、そろそろ嶺緒さんの話にいきたいのですが・・むしろ、そっちの方が本題なんですが・・・」
そうなのだ。元々嶺緒の話で呼び出しているわけだから、砂月の話が本題であるはずが無い。
「ああ、そうでしたね・・で?その話というのは・・・」
嶺緒は砂月の事で頭がいっぱいだったせいか、自分の事を思い出したかのように生徒会長に質問した。
「全部話せば長くなりますので、省略して伝えさせていただきます。まず、嶺緒さんは昔立ち入り禁止区域の事件に巻き込まれていますね?」
「巻き込まれたっていうか・・・事件の主謀者だったりするんですけど・・」
嶺緒は昔のことを思い出し、過ちの重圧に押しつぶされそうになったが、必死で堪えて話の続きを促した。
「どちらにしろ関与してることは明白です。貴方は事件のせいで高校に推薦入学・・ほとんど強制で入らされたとお考えですね?」
「は、はい・・」
嶺緒は自分の考えを見事に当たられたことに動揺しながらも、表情になるべく出ないように心掛けたが、無理だったようだ。
「その考えは当たっています。貴方を・・いえ、お二人を監視するために陽光高校は魔術の使えないお二人を入学させたのです。ですが、砂月さんは魔術技実験の成功・・・と言えるか分かりませんが、魔術を少しは使えるようになりました。そこで、良ければですが・・」
会長の言いたいことを察した嶺緒は、会長が言うよりも早く答えた。
「魔術技実験を受けろ・・と?喜んで受けさせて頂きます。砂月も受けたのなら俺も受けたいですよ!」
「いいのですか!?魔術技実験とは、砂月さんの…う、受けた…非常にあ、危ない実験でしてね!?」
会長が嶺緒の不意の一撃に、声を裏返しながらも必死で実験の危険度の説明に、取り掛かろうとしているのに、嶺緒は・・・。
「はい!大丈夫です!」
・・・と毎日磨いている綺麗な歯を輝かせながら爽やかにokの返事を出した。
だが会長の心は治らなかったようで、そのやり取りが数分続いた後に痺れを切らせたのか、砂月がドッと立ち上がった。
「あのぉ〜!会長落ち着いてください!嶺緒くんが良いって言ってるんですから、いいじゃないですか?それでも納得がいかないのでしたら・・・」
砂月が怖い顔したと思った次の瞬間。
「私からもお願いします!この通りです!」
砂月は腰を九十度に腰を曲げてお願いしていた。
ああ、そうだったな・・砂月は昔っからこんな奴だったな。
忘れてた忘れてた。本当に変わらないんだな。ということで〜〜。
「お願いします!砂月も魔術技実験を受けたのなら、俺にも受けさせてください!砂月に置いていかれたくないんです!」
「そこまで言うなら、いいですよ?でも無理はしないでくださいね?」
二人の必死の頼み込みに、ようやく納得した会長は少し心配そうな顔で、そう言い放った。
その言葉を聞き二人は手を取り合い舞い上がった。
魔術技実験を受けることにより、ちょっとした事件に巻き込まれるとは知らずに・・・。
次話投稿は今月中にはできると思います。
気長に待っていてください ・・・。
宜しくお願い致します。