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家牢   作者: 詞奇
飛師家編
4/14

飛師 栞サイド 二話 独占

栞サイドの二話目になります。

亜来を家に残して学校へ行った栞の話です。

その関係で栞と亜来の絡みは序盤だけになります(亜来サイドの二話もこんな感じでした。すみません・・・)。

そして、亜来サイドの一話目の冒頭で登場した委員長さんが栞の前に・・・。

『栞、お腹空いたぁ~。ご飯にしてよぉ~』

 鳥かごの中にいる先輩は鳥かごをカンカンと鳴らしながら訴えていた。

 そんな先輩にあたしは人差し指で先輩の胸を突く。

 それだけで転んでしまい、先輩はわんわん泣き始めた。

「ダメだよぉ、亜来ちゃん。栞ちゃんって呼ばないと餌をあげないんだからね」

 先輩はゆっくりと体を起こして、泣きながらこっちに近づいてきた。

『・・・栞ちゃん・・・、餌・・・ちょうだい・・・』

 顔が赤くなって目を擦りながら、先輩は甘えてきた。

 物凄く可愛いですぅ・・・先輩・・・。

 満足したあたしは食パンを少し千切って、鳥かごの中に入れた。

 あたしにとっては指に乗るほど小さなパン屑でも、先輩はそれを両手で持って、ハムスターのように齧っている。

 その姿を見ているだけであたしは興奮し、鼻血を出してしまった。

『栞ちゃん・・・・・・もっと・・・もっとちょうだい・・・』

 食べ終わった先輩は上目遣いでさらに餌を要求してきた。

 今の先輩だったらあたしの思い通りにできる。

「あたしの指にキスをしてくれたらあ~げ~る」

 調子に乗ったあたしは普段の先輩には絶対しない要求をした。

 あたしは鳥かごの隙間に人差し指を入れる。

 先輩はその指を両手で掴んだ。

 その感触は本当に最高だった。

 そして、先輩は小さな唇を指先に当てた。

 指先に小さな、でも気持ちいい感触がしてあたしの興奮は臨界点を超えた。

 理性を失ったあたしは鳥かごを開け、先輩を捕まえると、その小さな唇に何度も何度もキスをした。

 それでも満足できなかったあたしは、先輩を捕まえたまま、ベッドに入った。

 ・・・・・・これは現実であって欲しかった。

 

『栞、起きなさい!! 遅刻するわよ!!』

 小さい声が耳元で聞こえ、目を開けると、眼前に制服を着た小さな女の子があたしの顔の前で腕を組んでいた。

 あたしのペットの亜来ちゃんだった。

「あれ・・・亜来ちゃん・・・どうして、服を着ているのぉ?」

 さっき全部脱がした筈なのに。

『えっ!? ぬっ、脱いだ覚えはないんだけど! さ、さては寝ぼけているわねぇ。しょうがないんだから・・・』

「イタッ、何するのよ、亜来ちゃん!」

 何故か亜来ちゃんはあたしの顔を蹴った。

『そう呼ぶなって言ったでしょ!! さっさと目を覚ましなさい!!』

 亜来ちゃんは更に蹴ってきた。

「痛い!? やめてください先輩、起きました!? もう起きましたから!?」

 ようやく目が覚めた・・・っていうか夢と現実の区別がついたあたしは体を起こした。

 飼い主の顔を蹴るなんて・・・そんな子に躾けた覚えはないんだけど・・・。


 登校準備を一通り終えて(当然、洗顔もしたし、先輩に汗臭いと言われないためにもスプレーも撒いた)、今は朝食中。

「先輩、机の上に運びましょうか?」

 パンを齧りながら、先輩に聞いてみた。

『結構よ。このベッド座り心地がいいからここにいるわ』

 まるで、トランポリンのようにベッドをピョンピョンする先輩。

 ただ、あたしにはその光景は机の上を怖がっているのを悟られたくないためにやっている、としか思えない。

 昨夜、一緒に寝たいがために即興で作ったデマを先輩はまだ怖がっているのかなぁ?

 でも、嘘とはいえ、起こらないとも限らないし、先輩は綺麗で可愛いから、本当に攫われてしまうかも。

 だから、そうさせないためにも学校に連れて行こうとしたんだけど。

 先輩ってば学校嫌いなんだから・・・(あたしも人のことは言えない)。

 だがしかし!! もし、先輩を学校に連れて行って、他の奴らに見つかったらと思うと恐怖が・・・。

 あたしだけの先輩じゃなくなるし、もしくは先輩が別の奴(特に女)に誘拐されるかもしれない。

 やっぱり大事なモノは家に置いておかなきゃ。

 本当は学校なんて休んで先輩と一日中遊びたかったけど・・・そんな我儘は先輩に一蹴された。


『学校に行かない栞ちゃんなんて嫌い!! 絶対に遊ばないんだからぁ!!』


 そんなことを言われたら逆らえないよねぇ。

 私はそんなことは言ってない、とプンプン怒っている先輩が頭に浮かぶけど気にしない。あたしは先輩の発言をそういう風に解釈しているのだから。

「ところでどうですかぁ? 先輩。あたしのポニーテールは似合ってます?」

 赤色のシュシュで纏めた後ろ髪をベッドの上にいるペットに見せつける。

『ふーん、可愛くていいんじゃない?』

 興味無さげに答える先輩。

 この子は自分の髪以外は全然興味がないみたいだった。 

「せめて、カッコいいくらい言って下さいよぉ」

『いや、あんたの子供っぽさは髪型を変えた程度では消えないから。もうちょっと背丈を伸ばすとか、ぶりっ子キャラを捨てるくらいしないと無理だから』

 小さい先輩に言われたくない。

 ツインテールにしただけで幼く見える先輩に言われたくない。

 あんな上目遣いで餌をおねだりしてきた先輩には言われたくない(夢の中の話だけど・・・)。

「先輩はいいですよねぇ? 学校に行かなくていいんですからぁ。ママに捨てられたのは嘘で、本当は学校へ行きたくないから魔女さんにお願いして小さくしてもらったんじゃないですかぁ?」

 腹が立ったあたしは軽い反撃に先輩を挑発。

『どこをどう間違えても、あんたみたいな変態に飼われることを願う馬鹿がいるとは思わないけど・・・』

 また、あたしを変態って言った!!

「いるじゃん、そこに・・・」

 ベットの上の小さな少女に指差す。 

 遠まわしにあたしは先輩を馬鹿って言っている。

『なっ・・・』

 察した先輩はあたしを睨んできた。

 お風呂の時に比べたら全然怖くない。

「嫌々言っているけど、本当はこの生活も気に入っているんじゃないんですか?」

『別に気に入ってないわよ!! 気に入っているのはあんたでしょ!』

 まあ、確かに・・・。

「あたしは満足ですよぉ。大好きな先輩と、どんな形であれ一緒に暮らせてるんですからぁ」

『ふ、ふ~ん。そ、そうなんだ・・・』

 さっきまで睨んでいた先輩の顔は真っ赤になって照れていた。

 そのギャップを朝から見れたあたしはもう満足!

 やっぱり先輩もこの生活を気に入っているのでは・・・?

「じゃあ食べ終わったし、あたしは行ってきますね? あたしが帰るまでずっと眠ってていいですからね。先輩があっためてくれたベッドで寝たいですからぁ。ククク・・・」

『は、早く行けぇ!! 変態!!』

 先輩の怒った声を楽しく聞きながら、あたしはドアをゆっくりと閉めた。



 四時限が終わり、すぐに教室を出た。

 授業中は学習に集中する傍らで、脳内は帰ったら亜来ちゃん(先輩がいないときはそう呼んでいる)と何して遊ぼうかと妄想していた。

 しかし、想像力が貧困なあたしでは単純なことしか思い浮かばず、何か妄想を手助けするものがないかと思い、普段は行かない図書室へと向かった。

 部屋は教室二つ分ほどの広さで・・・・・・どこもかしかも本棚だらけだ。

 初めて入るあたしはどこにどんな本があるかは分らない。

 こうなったら一つ一つ調べてそれっぽい題の本を引き当てるしかない。

 こんなに一杯あるんだもん。小さな女の子が出てくる本くらいあるはず・・・。 

 

 結果。どれも難しそうでわかんなかった・・・。

 十分ほど調べた辺りで頭が痛くなっちゃいました。

 普段本を読まないせいかなぁ?

 そして、本棚で唸っているあたしを見かけた、一人の女子が近づいてきた。

「・・・何を探しているの・・・? ・・・絵本ならこの図書室にはない・・・」

 絵本!? あたし、子供扱いされた?

「失礼だよぉ! あたしが探しているのは別のなの!!」

 長い前髪のこの女は確か・・・亜来ちゃんと同じクラスの・・・・・・誰だっけ?

 教室の入口に近い席に座っていて・・・あたしは彼女に度々亜来ちゃんが来ていないかと聞いていた。

 一度も日光に当たったことがないんじゃないかと疑うくらい白い肌をしていて、その口調と言い、まるで人形みたい。もし、亜来ちゃんと同じ大きさになったらこの人を人間だと気付く人がいるのかなぁ?

「・・・昨日は来なかった・・・。そして、今日も来ていないと思ったらここにいる・・・」

 『しかも・・・髪型変えているし・・・』とついでと言わんばかりに彼女は付け足した。

「だって、あ・・・たしの先輩は学校に来ていないって知ってますし。昨日はあたし、学校休みましたし・・・」

 危うく亜来ちゃんと言いかけた。危ない、危ない。

 しかし、彼女はこめかみに指を押さえて不思議そうな顔をしていた。

「・・・二学期が始まってから・・・私のクラスで欠席者は出ていない・・・・・・」

 えっ、嘘! だって、亜来ちゃんはあの日から学校に行ってないじゃん。 

「・・・あなたが訪ねた先輩って誰? ・・・なぜか思い出せないの。・・・私はあなたが訪ねた生徒を欠席していると言ったことは覚えている。・・・でも、それが誰なのか思い出せない。・・・しかも欠席者は出ていないはず・・・おかしい・・・これでも私は委員長でクラスメイトの顔と名前は全て覚えている・・・だのに・・・変だ・・・矛盾している・・・」

 腕を組み、険しそうな顔で彼女は考えていた。

 ひょっとして・・・亜来ちゃんの存在が消されてる?

 えっ、でも前にこの人に訪ねた時は『縞さんは欠席している』って言っていたし・・・。

 それじゃあ、亜来ちゃんの存在が消されたのって昨日あたり?

 それなら、この人が戸惑う理由もなんとなくわかる。

 う~ん、でも、このまま問い詰められて亜来ちゃんの存在を思い出されても困るし・・・さっさと退散しよう。

 しかし、彼女はあたしの肩を掴んで引き留めた。

「あの・・・あたし、そろそろ行きたいんですけど・・・」

「・・・・・・いや、もっと詳し・・・ってどうして私はここまで気にしている・・・? 別にクラスの連中が消えようがどうなろうが知ったことではないのに・・・」

 彼女はあっさりと手を離した。

 なんか委員長にあるまじき発言を聞いた気がするけど・・・・・・離してくれたからいいや。

「ところであなたはどんな本を探しに来たの・・・? よければ手伝うけど・・・」

 あっ、そうだった。もともとそれが目的だったっけ?

 この人、物静かな性格で委員長だから、きっとここの本を全て読破しているほど詳しいに違いない(凄い偏見)。

「じゃあ、お願いしていいですかぁ? あたし、先輩の女の子をペットにする話を探しているんですが・・・」

 もっと亜来ちゃんをあたし好みの女の子に調教する方法が書かれた本を・・・、とは流石に言えない。

「・・・・・・それは先輩の私に聞いていいのか・・・? 生憎、そんな如何わしい本はここには置いていない・・・。どうしても欲しければ書店の成年向けコーナーで探せ・・・」

 彼女は変なものを見る目であたしを見ていた。

 なんか変なこと言ったかなぁ? あたし・・・。

 それに成年向けってなんだろう?

 言い方が悪かったのかなぁ?

「じゃあ、小さくなった女の子が出てくるお話ってありますぅ?」

「さっきとは全然ジャンルが違うメルヘンになった・・・。それなら結構あるはずだけど・・・」

 あるみたいだ。

「借りるなら案内するけど・・・どうする?」

「もちろん、お願いしますぅ! ここに来るの初めてでどこに何があるのかさっぱりで・・・」

「・・・じゃあ、付いてきて・・・」

 彼女(まだ名前は知らない)があたしの手を引っ張った。

 手を握られたとき、一瞬あたしは胸がドキッとしてしまった。

 えっ、うそ!? なんであたしは亜来ちゃん以外の女でドキッとしているのぉ!? そ、そりゃあ、あたしも亜来ちゃんに手を握られるのを妄想したことあるけど・・・(今の亜来ちゃんの大きさでは不可能だとも知りつつ)。

 よりにもよって別の女にドキドキするなんて・・・。

「・・・どうした・・・?」

「えっ、い、いや、な、何でもないから! べ、別にドキドキなんてしていないんだから!!」

 あっ、言っちゃった!? どうしよう・・・。

「・・・そういえば、あなたが訪ねていた人って・・・確か女子だった・・・。もしかして・・・あなたは百合・・・?」

 なんかストレートに聞かれた・・・。

「うん・・・そうだよ。あたしは男子じゃまくて女子が好きなの」

 別に隠しているわけでもないから白状した。

「・・・じゃあ、私に浮気したらダメ・・・」

「しないよぉ!!」

 ドキっとしたことは認めるけど・・・。

 あたしって先輩の女の子に弱いのかなぁ?

 あたしより背が高くて(今の亜来ちゃんは小さいけど・・・)、頼りになって(今の亜来ちゃんは頼りないけど・・・)、かっこよくて(今の亜来ちゃんはかわ・・・・・・)。・・・あれ、おかしいなぁ。あたしの好みっていつの間にか変わってる? ・・・・・・と、とりあえず、今は本だ! そう、本を借りないと!!

 小説とかは国語の教科書でしか読んだことはないけど、そういうジャンルのお話なら読めそう。

 何より、好きな人のためなら尚更。


 あの先輩が教えてくれたのは小さくなった魔法使いの女の子が大きくなった世界を冒険するお話。

 小学生向きの小説なので、あたしが妄想しているようなことはないと思うけど、パラパラと適当にページを捲ってみたら人間(巨人)に捕まった場面があるし、なにかは参考になりそう。

「ありがとう。教えてくれて・・・」

「気にしないで・・・。私はただ、あなたに興味を持っただけだから・・・」

 興味を持った・・・? まさか!? あたしに・・・。

「ちょっと!? 浮気はダメって言ってたじゃない!!」

 あたしには亜来ちゃんという大事なペットが・・・。

 しかし、彼女は『何言ってんだ、コイツ』という顔をしていた。

「・・・そういう意味ではない・・・。すぐにそっちの方向へもっていくな・・・この百合ガキ・・・」

 ゆ、百合ガキだって・・・!? 

 ようやく芽生えてきた尊敬心が全て崩れ去った。

「・・・そんなわけで・・・あたしは飯島 李可。 よろしく・・・百合ガキ・・・」

 彼女は捨て台詞を吐いてすぐに去っていった。

 百合ガキ・・・? あたしの呼び名が・・・?

「誰が百合ガキだぁああああああ!!」

 あの女に聞こえるように力一杯叫んだ。

 あいつは敵だ。間違いない。

 えっ、『図書室では静かにしましょう』だってぇ?

 そんな掟知るかぁ!!!


 ムカつくムカつくムカつくムカつく!!!!

 何よあの女・・・ぜぇ~ったいに許さない。

 あたしにあんな変なあだ名をつけるなんてぇえええええ。 

 学校が終わり、帰宅中も飯島 李可に対する怒りが消えなかった。

 子供扱いされた上に、百合呼ばわり・・・(百合なのは認めるけど)。

 亜来ちゃんに言われるならともかく(むしろドンドン言ってほしい。悪戯する言い訳になるから)、あの女、飯島 李可に言われると凄く頭に来た。

 まさか、あんな奴に一瞬でもドキッとしてしまうなんてぇ・・・・・・あっ、いけないいけない。子供扱いされるのは今に始まったことじゃないし、それですぐに向きになるから子供なんだ。

 こんな時は亜来ちゃんで遊んで平静を保たなきゃ!

 今日は何しようかなぁ・・・?

 一応、借りた本は一部分は読んだ。(巨人に捕まるところ辺り)

 主人公の女の子がジャムとかを入れる瓶の中に閉じ込められ、売り物にされそうになっているシーン。

 あんな小さな瓶に入れられただけ何にもできなくなるのかぁ。

 女の子は巨人の隙をついて、魔法で脱出できたけど、もし、これが亜来ちゃんだったら、魔法が使えないから売り物になるのを待つしかないのかぁ。

 魔女さんに頑丈な体にはしてもらっているらしいけど、それ以外は普通の中学生女子と同じ身体能力。

 この本に出てくるような悪い奴らに亜来ちゃんを絶対に見つからないようにしないと。

「・・・というわけで亜来ちゃんを守るためにずっと瓶詰して携帯しようかなぁ?」

「それじゃあ、チビちゃんが酸欠で死ぬよ?」

「あっ、魔女さん。いたんですかぁ?」

 九月でも気温が高い今日。それでも暑そうな黒ローブを羽織っている金髪少女がすぐ近くのゴミ捨て場に立っていた。

 あたしを見かけた彼女は、こちらにゆっくりと近づいてきた。

「何か捨てにきたの?」

「チビちゃんがワタシの所にいた時、遊んでいた玩具。もう壊れちゃったし、チビちゃんもいないから捨てに来たんだぁ」

 亜来ちゃんが遊んでいた玩具? ・・・すごく気になるけど壊れてるんだよね? それに捨てた本人の前でゴミ漁りなんてしたくない。

 あっ、聞きたいことがあったんだった。

「ねぇ、魔女さん。亜・・・先輩のいたことが忘れられているんだけど何をしたの?」

 ちょっと前まで学校に通ってた生徒を忘れるなんてありえない(ただ単に飯島 李可が忘れているだけかもしれないけど・・・)。

 何かした可能性が高い。

「・・・場所を変えようか・・・」

 確かにここでするべき話ではないのかも。

「あっ、うん、どこにする・・・?」

 魔女はその場を動かずにただ手をポンと叩いただけ。

 それだけでさっきまでいた場所とは全然違う場所になった。

 コンクリートの上にいたはずが良く磨かれた木材の上にいるし、なんか目の前にあたしの五倍ぐらい大きなケーキがあるんだけどぉ・・・。

「チビちゃんが見ている世界に合わせたんだよ」

 ケーキの裏から金髪少女が現れた。

 えっ、つまり亜来ちゃんと同じ大きさに小さくなったの?

「安心しなよ。ただ周りが大きいだけさ。どう? この世界は?」

 魔女に言われて、辺りを見回してみると、あたしよりちょっと大きなティーカップやスコップよりも明らかに重そうな、大きなスプーンやフォークも置いてあり、何よりこちらを見下ろす巨大で不気味なマネキンが両手に大きなナイフを持ってこちらを見つめていた。

 正直言って気持ちのいいものじゃないよぉ・・・。普段、見下ろしているものを見上げているし、肩手で掴めていた食器が、今のあたしでは両手で掴めるかどうかも怪しい。そして、巨大なマネキンの目を見ただけで危うく腰を抜かしそうになるほど怖かった。

「これが先輩の見ている世界なんだ。あたしには到底耐えられないよ」

「そぉ。こんな世界でもあんな強気なチビちゃんだから、生意気で虐めたくなるんだよねぇ」

「いや、さすがに虐める気にはならないかなぁ」

 こんな世界でも折れない先輩は凄いと思うし・・・。

 すると、何故か魔女は悪戯っぽく笑った。

「ジャムを塗り付けたり、ホットミルクが入ったカップの中に放り込んで虐めていた人は誰だったかなぁ?」

「えっ!? なんで知ってるの!?」

 まさか見られてた? 

「あなたの左目から見てたよ。そのために交換したんだから」

 じゃあ、あたしが見ていたものを魔女も見ていた、ということなの?

 亜来ちゃんと一緒にお風呂に入ったり、ベッドで眠ったりしたことも全部見ていた、ということ?

 うぅ~、なんか二人だけの時間が汚された気分・・・。

「ちなみにチビちゃんの弱点が髪だってことも知ったよ。あの時、髪を重視していればチビちゃんをもっと調教できたのに。今朝、チビちゃんをからかったときは敢えて内緒にしていたけどね?」

 満足そうにしている魔女を見る限り、今朝はチビ・・・じゃなかった亜来ちゃんをさんざん苛めたってことだよね?

 亜来ちゃん、泣いてなきゃいいけど・・・。

 ・・・って、亜来ちゃんはあの部屋から出られないから・・・ってことは・・・。

「今朝、あたしの家に入ったの? 不法侵入だよぉ!!」

 お姉ちゃんは寝ているはずだから、インターフォンに応答するわけないし。

 つまり、朝、あたしの部屋に入って亜来ちゃんと遊んでたってことだよねぇ?

 羨ましい・・・。 あたしはその時、亜来ちゃんと遊んでいるところを妄想していただけなのに・・・。

「チビちゃんにも同じようなことを言われたんだけど・・・。ただ、チビちゃんに洋服とかをプレゼントしただけだよぉ。別にあなたの私物なんて興味もないし・・・」

 本当に興味がなさそうに言っている。あたしのことも興味がなさそうだしぃ。

 でも、亜来ちゃんの洋服をくれたんだ。それは感謝しないと・・・。

 だって、これでようやく亜来ちゃんで着せ替え遊びができるんだから。

「さて、本題だけど・・・。あなたにチビちゃんを渡したと同時に、チビちゃんの存在を知っている人間の、チビちゃんが存在していたという記憶は搾取したんだ。変に記憶が残っていて捜索届けとか出されたらあなたも困るよね? チビちゃんという人間がいたってことはワタシとあなたと他の小さくなった奴しか知らない」

 飯島 李可だけの言い分だけでは信じられなかったけど、魔女の言い分で確信した。

 亜来ちゃんを知っている人間はあたししかいない。

 つまり、それは亜来ちゃんを探す人間が現れる心配がないってことかな?

「仮にチビちゃんが元の大きさに戻っても居場所がないってことだよ。そういうことをしっかりとあの小動物にわからせてあげなきゃダメだよ? 飼い主さん。あなたがチビちゃんを外へ捨てたら、どうなるかはわかるよね?」

 あんな小さな亜来ちゃんを外へなんか放り出したら危険だってことぐらい知ってる。

 猫とかの動物に見つかったら食べられるし、人間に見つかったら捕まって玩具かペットにされるか、踏み潰されるか・・・。どれにしろ亜来ちゃんが危険な目に遭う。

「人間に踏み潰されたぐらいでは死なない体にはしてあるけど、動物か何かに食べられたら終わりだね。あの体に胃酸の耐性はないからすぐに溶けちゃうし、さっきあなたが言ってた瓶詰にしてもいずれ酸欠になって死んじゃうよ」

 絶対に動物に近づけさせないようにしよう。

 亜来ちゃんを脅すために、と考えたことはあるけど、危なすぎる。

 瓶詰の件もやめておこう・・・。

「・・・ねぇ、魔女さんは先輩をどういう体にしたの? 飼い主としては知っておきたいの」

 それを知ったら亜来ちゃんとの関わり方(飼い方)も少しはわかるはずだしぃ。

「まぁ、知る権利はあるかなぁ。 いいよ。まず、餌も水もいらない体にしたよ。栄養や水分を摂らなくてもチビちゃんは生きていけるから。その関係で排泄もしない。おまけに年も取らないからずっと十四歳の体のままだよ。あっ、ちなみに別に食べさせたり、飲ませたりしても大丈夫だよ。食べたり飲んだりしたものは胃の中で消える仕組みにしてあるから」

 亜来ちゃんは凄い体になっていた。

 そういえば、お腹空いた、とか、トイレに行かせて、なんて言ったことなかったっけ。

 それはそれで残念かなぁ?

「・・・理想の体だねぇ。ご飯も食べなくていいし、水も飲まなくていい、トイレもしなくていい。しかも年を取らないって・・・・・・まるでお人形みたい・・・」

 魔女が亜来ちゃんを人間として見ていない理由も納得できる。

 たしかにそれは人間なの? とも思う。

 でも、あたしはペット扱いはするけど、亜来ちゃんは一人の人間だと・・・・・・言えるのかなぁ?

 ・・・・・・自信が無くなってきちゃった。亜来ちゃんには申し訳ない!!

「だって、お人形みたいにしたんだもん。ワタシは生きているお人形で遊びたいんだよぉ。人間には興味ないし・・・」

 人間に興味ないから小さくして人形みたいな体にして遊ぶ、ということかぁ。

 凄い自分勝手な理由だなぁ。

 魔女に目をつけられたらその人はもう人間じゃなくなるってことだ。

 亜来ちゃんもその一人。

 でも、そのおかげで亜来ちゃんと一緒に暮らせている。

 ・・・・・・なんか複雑・・・。

 亜来ちゃんにとって、魔女は自分を小さくして後輩のあたしに渡した憎い相手。

 でも、あたしにとっては亜来ちゃんとの関係を繋いでくれたいい人。

 だから、亜来ちゃんは憎んでいても、あたしは憎むことが出来ない。

「じゃあ、これで話すことは全部かなぁ? もうないなら元の場所に返すけど?」

「・・・ねぇ、先輩は元に戻せるの・・・?」

 改めてあたしは魔女に聞いてみた。

「・・・逆に聞くけど、仮に元に戻ったチビちゃんをあなたはどうする気? 皆から記憶を消されて、母親に捨てられたチビちゃんに居場所なんてある? さすがに等身大のチビちゃんはあなたとの同居も嫌がるよね? 元の大きさに戻ったら飼い主なんていらないもんね? 大きくなったチビちゃんにとってあなたは用無しも同然。それを覚悟で聞いているの?」

「・・・・・・・・・」

 何も反論できなかった。

 ただ、あたしは亜来ちゃんと等身大で恋人同士のお付き合いをしたくて聞いただけ。そんな覚悟も何もない、身勝手な思いだけで元に戻せるか聞いた。

 そう、亜来ちゃんの存在は皆から忘れられていて、あたし以外、誰とも繋がりを持たない。

 行く場所も帰る場所もないってことだった。


『ごめん。・・・そっちの趣味、ないから』

 

 亜来ちゃんの言葉が脳裏に蘇る。

 こんな状況にならなかったら亜来ちゃんはあたしなんて見向きもしなかったと思う。

 まだあれから数日しか経っていない、しかも亜来ちゃんと同棲を始めてまだ二日目。

 そんな浅い関係の状態で元の大きさに戻しても、亜来ちゃんは絶対に同棲を嫌がる。

 亜来ちゃんには悪いけど、あたしは亜来ちゃんが元の大きさに戻ることよりも、亜来ちゃんと一緒に暮らしたいという身勝手な思いの方が強かった。

 つまり、亜来ちゃんにはまだ小さいままでいて欲しいと思っていた。

 そして、何より関係が終わってしまうことが怖かった。

「そんなに真剣に考えているところ悪いけど、元に戻す方法をワタシは知らないからね。そういうことは元に戻す方法を知ってから考えてよね」

「はぁ!? 最初に言ってよ!!」

 あんなに考えた自分が馬鹿みたい・・・。

 自分で魔法をかけて、亜来ちゃんをあんな体にしたくせに魔法の解き方を知らないって・・・。

 呆れた上に、そんな魔法を掛けられた亜来ちゃんがかなり気の毒だ。

「とにかく、あなたはチビちゃんと仲良くなることだけは考えればいいんじゃないかなぁ? 独占しているわけだし、飼い主がいないと生きていけないってぐらいチビちゃんをあなたに依存させればいいんじゃないかな?」

 まあ、今も依存させようと頑張ってはいるけど・・・より攻撃的になっているような・・・亜来ちゃんが(今朝も蹴ってきたし・・・)。

「・・・そうだね。先輩ともっと仲良くなって、元に戻してもあたし無しじゃいられないってぐらいにしなきゃね」

 とりあえずは魔女の言い分に納得しておこう。

 いつか、先輩にこの手を引っ張ってもらえるように・・・。


 

 気付けば、元居た場所より少し進んだゴミ捨て場付近に立っていて、魔女はいなくなっていた。

 亜来ちゃんのことで頭が一杯なあたしを止めるものは・・・・・・いた。

「百合ガキ・・・いつの間に・・・?」

「誰が百合ガキだぁ~~!!」

 反射的に声の方向を向いた。

 そこには赤く塗られた小箱を持った飯島 李可が驚いた表情でこっちを見ていた。

 



 

 

   

 

  

 

 

 次の話ではもっと亜来と栞の絡みを入れられるように頑張ります・・・。

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