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俺に異世界にいく資格はあるのか?  作者: 花山 保
俺達の国を造ろう
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サントス

「冒険者サントスを英雄とする」


 サントスは、王都で催された祭典で王からそう報告され、王都の市民から歓声を受けた。王都に生まれた新たな英雄の誕生だった・・・


 サントスは、王都の南にあったダンジョンを単身で攻略し最深部でダンジョンコアを発見する。王都にダンジョンコア持ち帰ったサントスは、王の意向に従いダンジョンコアを王都内に設置して新たなダンジョンを王都の中に作った。

 ダンジョンコアが作った新たなダンジョンからの恵みは、王都の発展に多大な貢献をした・・・。別にサントスは金のためにそうしただけで、名誉や栄誉のためにダンジョンコアを王都へ持ち運んだのではない。ただ・・・王に言われるがままに金になると思ったからそうしたのだ・・・




 サントス・・・彼の人生は、王都のスラムで始まった。誰の子かもわからない子供たちが寄せ集まった雑踏の中で、サントスは暴力と窃盗で身を立てた。仲間や家族なんて言葉は知らず、自分が得かどうかで物事を判断する。口よりも先に手が出る性格で喧嘩にあけくれた少年時代には、すでに大人を圧倒するくらいの力を持っていた。


 サントスは、生まれながらに1つの恩恵を受けていた。誰よりも早く成長できる恩恵を・・・。金目当てに冒険者に雇われダンジョンに入りびたり魔物を倒す・・・。サントスは、それだけでメキメキと力をつけていった・・・。10歳にも満たない年齢でありながら大人たちよりも力があり、剣も使えるサントスを誰もが一目おいたが、サントスの価値観だけは変わらなかった。


 英雄と称えられても頻繁に刃傷沙汰をおこし、欲しいものがあれば暴力で奪い、気に入らない奴は切り捨てた。王都の住民から落ちた英雄と陰口を言われても気にすることはなく、ただ毎日好き勝手に生活する。 そして、暴れる度にその強さはますます他者を圧倒していく。いつしか治安を取り締まる兵士もサントスには近寄らなくなり、サントスが何をしても目をつぶるようになる。


 煙たい存在となったサントスを持て余した王は、英雄への依頼と言う形で高額な報酬を条件に王都から遠ざけるようになった。魔物の討伐・・・新たなダンジョンの攻略・・・魚人の捕獲・・・ サントスは、達成困難と思われた依頼もわずかな時間で攻略しさらに強くなって王都へ戻ってくる。


 そんなサントスにも変化があった。ある日、いつもどおり王の依頼で魔物討伐に出たときに森で見つけた一人の男・・・がサントスの生き方を変える。

 その男はサントスに楽しみや面白さを教えた・・・。何をやってもつまらない・・・稼いだ金も使い道がなくなったサントスは、その男の言葉に酔いしれた。


 悪魔が囁くようにまるでゲームでもしているかのようにサントスは、男の言葉どおりに従った。獣人を捕まえに南へ走り、捕えた獣人を人質にまた獣人を捕まえる。男が、必要だと言えば拷問もするし、あっさりと殺しもする。


 サントスにとって似た価値観を持ったその男の言葉は、どこか否定されていたサントス自身の存在を認め理解してくれる。男は、サントスにとって最大の理解者となった。




「また逃げられましたね・・・」


「ああ。近づくと湖にどぼーんだ。何かうまい方法はないか?」


「そうですね・・・少し誘ってみましょうか」


 魚人を捕えるために派遣されたサントスが、魚人を捕獲せんと挑むが何度も水の中に逃げられていた・・・。男がサントスに知恵を授ける・・・


「ほらかかりましたよ」


 魚人の子供が湖から顔を出す。そばにだれもいないことを確認した魚人の子供は湖から丘にあがり目当ての果物を手にした。そのとき、湖側から死角になる位置に隠れていたサントスと男が現れる。何とか逃げようとする子供の巨人も湖にたどり着けずにあっさりとサントスに捕まった。


「さすがだな・・・こんなにも簡単に捕まえられるとは・・・で、ここからどうすんだ?」


「この魚人の子供を餌に次の魚人を釣るんですよ・・・そうですね・・・あ~あそこの木に括りつけてください。あそこなら湖からも良く見えるからかっこうの場所ですね・・・」


 サントスは、暴れる魚人の子供の腹にこぶしを入れると魚人の子供の身体が跳ねる・・・。おとなしくなった魚人の子供を乱暴にロープで木に括りつけた。


「よし!これでいいか?」


「はい。上出来ですね・・・あとは簡単ですよ」


 そう言った男は、湖に向けて歩き出すもう数メートル進めば湖と言う場所まで近づくと


「魚人の皆さん~。さっさと出てこないとあの子を殺してしまいますよ!」


 男が湖に向けて声をかけるが、湖にはなんの反応もない。


「私の声じゃだめですね・・・サントスさんが言った方が効果的ですからお願いしますよ」


「ああ・・・そう言うことか俺にもやっとわかったぜ。任せておきな!」


 サントスは、男と同じ場所まで来ると


「魚人ども!さっさと出てこねえとガキが痛い目にあうぞ!顔を出すまで殴りつけるからさっさと顔をだしやがれ!」


 湖の対岸にも聞こえるような大声で叫ぶ


「これで聞こえただろ?」


「ええ・・・十分聞こえましたね・・・それまでは暇ですから言葉のとおりこの子でもいたぶ・・・ああ、もう顔が見えましたよ」


 湖から魚人の男達の顔がいくつも浮かび上がる。どの顔からも怒りを感じられるが、サントスも男も気にするようすもなく笑顔で魚人の男達を見ている。


「ね?言ったとおりでしょう」


「ああ。まったくだ。おいかけっこにはもう飽きてたからな・・・」


 魚人の男達の中の1人が


「子供を放せ!」


 と怒鳴ると、サントスは笑顔のまま気に括りつけた子供の鼻っ面を激しくぶった。顔がもげるのかとおもわれるくらい強烈な張り手で、子供の鼻や口からは大量の血が流れる。


「ああ!?なんて言った今?」


 それだけで、魚人の男は次の言葉を失った・・・この男は異常だ・・・


「だめですよ・・・殺しちゃったらまた振り出しにもどりますからね。こうするんですよ・・・」


 男は、子供の側に歩み寄り、懐からナイフを取り出した。ナイフを手に子供の片手をつかむと


「えーと。そこの魚人さん。歩いてこちらのサントスさんの前までお越し願います。他の方は動かないでくださいね」


 まるで友達にでも話しかけるように男は魚人に宣告する。躊躇する魚人を見て男はナイフを子供の手にあてるとスパッと小指を落とす・・・


「ぎゃああああーー」


 子供の悲鳴が湖に響く・・・


「あと10数えるまでに出てこなければ次の指を落としますよ~。いーち・・・にー・・・さーん・・・」


 青ざめる子供が恐怖で大きな悲鳴をあげ狂ったように暴れるが、男はゆっくりと数を数える。


「ま、まて・・・まってくれ今そっちへ行くから」


 指定された魚人の男がたまらず湖からあがりサントスとの前に歩み寄る


「じゃーサントスさんが好きにしてください」


「お?いいのかこいつには、さっき怒鳴られたからな・・・じゃあ遠慮なく」


 力を入れて握ったこぶしが魚人の男の腹部に突き刺さる。「うげぇ・・」腹を抱えて膝から崩れ落ちる。肋骨が数本折れたのでは思うくらいの一撃を受けて魚人の男は意識を失った。


「じゃーどんどん行きましょう。そうですね~次はそこのあなたにお願いします。じゃあ行きますよ。いーち、にーい、さーん・・・」


 もはや死のカウントダウンと化した男の声に魚人たちは顔を伏せた。


「ゴー。いいんですか~次はどの指がなくなるのかわかりませんよ~。あと9本しかないですからね~」


 もはや魚人たちの戦意はない・・・ただ目の前の悪魔になすすべなく従うしかない。このまま、自分たちの子供が犠牲になることも、指示に従って殺されても子供が解放されることはないことも・・・。


「お待ちください!私がそちらに行きます」


 悪魔たちになすすべない魚人の男達の前に浮かびあがったのは、魚人の女性だ。


「私がその子の変わりになりますから子供を返してくださいませんか?」


 湖から姿を現した魚人の女の美しさにサントスも一瞬驚いたが、側の男は気にすることもなく


「それは、こちらに何か良い事がある提案ですかね?」


 魚人の女をじっと見ながら男が問う。


「私は、魚人族の王です。捕らえればあなたたちの手柄となりましょう」


「子供を返さずとも捕まえれるのではないですか?」


「その子にこれ以上なにかすれば私は、責任をとって自害します。捕らえることができなくなりますよ」


「おや・・・面白い提案ですね・・・私は別にあなたが死のうが逃げようがかまわないのですが?」


「まあ私は、どちらでも良いのですが、いたぶるならあなたの方が面白いかもしれませんね。いいでしょう・・・どうぞこちらにいらしてください」


「その子を放すのが先です」


「じゃあ。もういいですよ・・・面倒くさいですからあなたが来ないならこの子を殺してそこに転がっている男を使うだけですよ」


 サントスが再び子供の手を取る。子供が暴れるが縛られた子供は何もできない。


「や、やめてください。わかりました私が先にそちらに行きますから子供をそれ以上傷つけないでください」


「いやですよ。あなた偉そうだし・・・その命令口調が気に入りません」


「お、お願いします。どうかお許しく・・・ださい」


「早く来てくださいよ・・・待つのも嫌いですからね」


 魚人の王は、湖から丘へと歩き出す。周囲の魚人たちが何とか止めようとするが、魚人の王は、首を振りサントスの前に歩み出る。


「お願いします。どうか子供だけは・・・」


 サントスの前に両手を組みひざまずき頭を下げ懇願する。


「じゃあ、サントスさんは、このロープでその魚人の王を拘束してください」


「ああ。了解だ」


 サントスがロープを受け取ると魚人の王の腕を後ろ側で縛りロープの先を握る。


「これでこの任務も完了ですね・・・あとは、適当に遊びちらして帰りましょうか?」


「ああ・・・」


 サントスは、魚人の王を拘束したロープの先を男に任せると子供を括りつけた木から子供を引きはがし湖に連れていく・・・


 ようやく解放されるのかと魚人の男達も子供も気を抜きかけたとき、サントスが子供の首を剣でスパッと切り落とした。


「ええ!?」


 魚人の王が、驚き声をあげるが


「さあ、次だ。今度はおまえたちの王が人質だ。お前たちもさっさと殺されにあがってこい!」


 サントスは、魚人の男たちを恫喝する。目の前で子供を殺され、王を奪われた怒りに火がつき魚人の男達がいっせいに湖から飛び出しサントスへ殺到するが、サントスの剣術の前に次々と倒れていく・・・捕らえられた身で泣きながらそれを止めようする魚人の王が何を言っても惨劇は止まらない。


「がっはっはっは・・・ああ・・・最高だぜ。こんなにすっきりしたのはしばらくぶりだ。あいつらにも見せてやりたかったぜ」


「そうですね・・・こんなことになるなら別行動なんてしなければよかったかもしれませんね」


「まあ。あいつらにも報酬は分けてやるからいいだろ!あとは、こいつを王にでも売れば。しばらくは遊んで暮らせるだろうからな」


 言葉もなくただ涙する魚人の王をよそにサントスの笑い声が湖に木霊する。




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