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俺に異世界にいく資格はあるのか?  作者: 花山 保
俺達の国を造ろう
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東門の攻防

『サラ!消火を急ぐように指示してくれ!』


 火矢や油を染み込ませた玉のような物が、次々と門や街の中に打ち込まれ投げ込まれる。いくつかは叩き落すが、数が多いので処理しきれない。

 水の中から目立たないように水の眷属たちが消火にあたる。街の中まで投げ込まれた物は、ドワーフ達が消火にあたってくれた。


 正攻法を用いての巧みな用兵を駆使する相手の指揮官は、昨夜から休憩もとれていない守備兵を一層疲弊させるように攻めたてる。皆、必死に抵抗しているが、疲労は集中力を低下させ、士気を低下させる。

 向こう側は、夜襲に参加していない兵士が中心だろうし士気も高い。


 何度目かすらわからない相手の波状攻撃は、徐々に防衛側のほころびを見つけるように効果を発揮し始める。


「矢がつきかけております・・・」


 伝令兵の報告。すでに何本相手に射ったかわからないほど使った矢が足りなくなった。矢の脅威が減れば、相手はより大胆に行動することができる。盾兵に守られながら堀を越える工兵が次々と作業を進めていく、堀を泳ぎ渡ることに成功する者も現れだし、ロープや板を渡されてしまう。近接攻撃に特化した獣人兵に遠距離攻撃の手段は弓しかない。このままだと各所で壁を乗り越える敵兵も増えるだろう。


「二の丸を使う。あえて門を開き迎え撃つから各隊は二の丸にて迎撃の準備をしろ!」


 これ以上待っても良いことはない。むしろ入り口を開き相手の人数を絞って二の丸で戦った方が、獣人たちの力を活かせる。


 指示に従って迎撃用に作られた二の丸に獣人たちが集まる。準備が完了すると同時に跳ね橋が降り、門が開かれる。


「門が空いたぞ!」


 こちらの事情を知らない敵兵が歓声をあげ一気に門へとなだれ込んだ。ひょっとすると仲間が門を開けたと勘違いしたかもしれない。


 なだれ込んだ敵兵は門を抜けて街に潜入したつもりなんだろうが、そこには獣人の兵士が戦闘態勢で待機している。しかも周囲には再び壁がそびえており、街中と言うよりは再び城壁に阻まれたように感じる事だろう。


 十分に備えて待機していた獣人兵士は、地の利と数の利を得てなだれ込む人族の兵士を次々と倒していく。1度に門をくぐる事ができる人数は、限られており数の利を活かせない人族に対して、それを包囲した形で当たれる獣人兵士は一方的な戦いを続けることができた。

 門をくぐり抜けた兵士が、中の様子に気がつく事ができても、そうとは知らない人族兵士は次々と門を抜けて殺到してくるので戻る事もできない。もともと1対1でも負けないだけ力のある獣人兵士が、3人で1人の兵士にあたる事ができるのだからほとんど被害も出さずに殲滅していくことができた。

 門を越えたあたりには、人族の屍が積まれていく。


「もう少しだ!」


 門の上から様子を見ながら声をかける。門の外に目を向けるとまだまだなだれ込む人族兵士が続く。一方的な戦いが続き、ようやく異変に気がついたのか人族の指揮官がなだれ込む兵士を止める。

 しかし、その時には半数以上の兵士が門の中で倒され、殺されるか重傷を負わされていた。なだれ込む人が途絶えたのをみて


「閉門!」


 と叫び、門を再び閉じさせる。人族の兵士たちは、門がくっくりと閉じていくのを黙ってみることしかできなかった。


「見ろ!人族の軍が撤退を開始したぞ!」


 物見の兵士が報告すると再び門の上まで上がってきた獣人兵士たちが雄叫びをあげる。こうして夜襲から続いた戦闘は終わりを迎える・・・。


 



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数刻前



「おや・・・サントスさんどうしてここに?」


 門へなだれ込む兵を見ながら大方の勝利を確信していたが、サントスの姿を見つけて考えを改める。


「ああ・・・わりい・・・しくじった」


「門を開けたのは、サントスさんかと思いましたが、どうやら違うようですね」


 セイオスは、すぐにバラカム将軍に伝令を出し、巨大な街への侵攻を中止させるよう指示を出す。指示を出し終えると


「それで、何があったのですか?」


「ああ。熊族を囮として西門からの潜入には成功したんだが、街の中に化け物がいやがったんだよ」


「化け物・・・ですか?サントスさんでも適わない化け物となると街の中にドラゴンでもいたんですか?」


「ああ。ある意味ドラゴンよりもやっかいだ・・・。仮面をしてやがったが、人族の恰好をした若い女だ」


「サントスさんよりも強い女性ですか・・・それはまた・・・。それで他の冒険者の方は?」


「半分は潜入後にやられちまった。半分はもうすぐ戻るはずだ」


「・・・なら今回は、こちらの負けですね。すぐに撤退しましょう」


 伝令の兵に撤退をバラカム将軍に伝えるように指示する。


「ああ。その方が良いだろう。あそこにいる化け物を何とかする方法を考えてからでないと占拠どころじゃないからな・・・」


 いつもなら自信たっぷりのサントスが撤退を支持する。セイオスもこれ以上無理だと判断すると早々に退却を決めた。これ以上無駄に戦力を低下させるつもりはないからだ。


「夜襲からの正攻法による攻めで陥落させられると踏んだのですが、どうにも化け物対策までしないといけないようですね。私もクライス審議官の魔族論も信じたくなってきましたよ」


「ああ・・・あの女が魔族だって言われても俺は疑わねえよ」


「撤退後に詳細を教えてくださいね。まずは、少しでも早く撤退して体制を整える事にしましょう」


 セイオスは、すぐに頭を切り替え情報をまとめ始める。最短で最善の一手を導き出すために・・・





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「それで・・・熊族はどうなったんだ?」


『僕が念話でリーダーの男に話しかけたら、この街を攻めないと家族を殺すと人族に言われているって・・・』


「また人質か・・・人族も懲りないな」


『熊族は、王都の南西に住んでいたみたいだね。人族の遠征軍は、盛んに周囲へ攻勢をかけているようだから他にも同じような犠牲者が出るかもしれない』


「それで、どうしたんだ?」


『人族が撤退したからついていくかどうか迷っているってさ・・・だから扱いを捕虜って事にしておいた』


「なるほどな・・・俺達に捕えられていたと言えば・・・人質がすぐに殺される事はないだろう。わかったよ。あとで熊族のリーダーと会ってみる」


『そうしてあげるといいよかなり心配していたからね・・・熊族はもともと温厚な種族なんだ』


 熊族のリーダーと会談し、受け入れが決まると熊族300人を名目上捕虜として街へ誘導する。とりあえず住む場所と食べ物を与え、今後については熊族の意向を尊重する事にする。特に拘束もせずに街の中の活動は自由にしてよいと伝えた。


 また、捕えた人族も同様に捕虜とした。門の付近で怪我をしていた者や逃げ出せずに捕えられた者は、100名ほどいたが最低限の治療を済ませた後、新たに設けた捕虜収容所に連行した。さすがに人族を自由にさせるわけにはいかないとの判断からだ。一部からは、殺してしまえとの声もあったが、俺はそれを許さなかった。当然、抵抗すれば容赦はしないが、捕虜となる事を受け入れた者には捕虜として扱う責任がある。


 捕虜収容所は、将来的には、刑務所として扱うつもりだ。捕虜は、すべて独居房に入れ1日3食を与える。洗面台とトイレは各部屋に備え付けてあるから不自由はないだろう。


 その後も戦いの後の処理は多忙を極める。いつまた人族が、襲ってくるかわからないので、その備えを行いながら堀や壁の修理点検を行う。ガスターンの報告では、人族は、元エルフの里に駐屯しているようだが、今後の動きが気になる。


「矢が足りないな。周辺で矢の回収と増産を頼みたい」


 街の外で周囲を警戒しながら放った矢を回収していく、同時にドワーフは休む間もなく矢の生産を急ぐ。今回の事で大幅な数の矢が必要なことがわかったからな・・・。


 街内の巡回も徹底して行っている。広い街の中に侵入した人族がいないかを徹底的に調べさせた。鼻のきく犬族兵士やホクト達にも手伝ってもらって調査は行ったが、侵入者は発見できなかった。


 人族が撤退してから2日後、ガスターンから人族が撤退を開始したと報告を聞き、ようやく警戒を緩めることができた。


 獣人兵士数名が怪我を負ったが、治癒魔法で完治できる範囲だ。ミクス側の犠牲者は0人・・・1人もかける事なく、相手人族兵士1800名を死傷させる。捕虜とした人族兵士は100名を越え、熊族300名も捕虜とする事ができた。


 途中、危機もあったが、結果的にはミクス側の大勝となり、2度目の街を巡る攻防は終結する。 

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