第二次ミクス防衛戦
「それではバラカム将軍は、ゆっくりと前進ください。その変わり、街からの攻撃が届かないところで一端待機いただきます」
「了解だ・・・先ほどの戦略は見事だセイオス審議官。お主の期待に沿えるようわしは動くとするか・・・」
「将軍のご武運をお祈りいたします」
将軍の性格を現したように正確に兵士は並び進軍を開始する。
「さて、こちらの手配は終わりましたね。相手のお手並み拝見とまいりましょう」
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「伝令です。人族の軍が進軍を開始しました」
現場に緊張が走る。
「わかった各自持ち場についてくれ・・・」
昨日の開戦から1日、いよいよ敵の本軍が動き始めた。
『主・・・敵は軍を二手に分けたようだ。東と南側だ』
ガスターンが上空から敵の動きを知らせてくれる。
『わかった。敵の数は?』
『東側に前回と同じくらい。南側はそれよりは少ないだろう』
『わかった。そのまま索敵を続けてくれ』
それにしても二手にわけたか・・・相手の意図がまだはっきりとしないな。東側にこちらの戦力を集中しているから少ない兵をわける必要があるが・・・。狙いは分散か?
「東側敵兵がほどなく弓の射程圏へ入ります」
まずは、出方を見るか
「弓隊準備!射程に入ったら矢を放つぞ!」
間もなくと言うところで相手の動きが止まる。綺麗に整列した敵兵は、前列に盾を装備した兵士を並べ防御を固める・・・
「東側敵兵が進軍を停止したようです」
攻める側が、防御を固める意図は?
「そのまま警戒だ!南側はどうなっている?」
「はい。相手は同様に弓の射程圏から外れたあたりで停止しました」
何をするつもりだ?
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「こうして改めてこの街を見ると見事なものですね。この街を作った方の性格もわかると言うものです。几帳面で完璧主義なところがある方でしょうね~。それにしても近づいてわかりましたが、この堀は非常にやっかいです。深さはわかりませんが、幅は5m以上はありそうです。この堀のせいで近づけても梯子すらかける事ができません。唯一の通路となる橋は跳ね橋ですか?この世界に跳ね橋があるとは思いませんでしたが、作りもしっかりとしているようですね」
「おいおい・・・相手の感心ばかりしていないでそろそろ攻めちまおうぜ」
「いえいえ・・・準備していた策を使うにもあの堀があるとうまくないのですよ。用意した攻城兵器が考えたほどは、ほとんど役に立たない事になりましたからね」
「なんでえ・・・せっかく面倒な物を作ったのに効果がないのか?」
「いえ、効果がないのではなく・・・考えていたよりはないだけですよ。そろそろ向こうもこちらも準備が整うでしょうから・・・まずはあの街を丸裸にしてみましょう」
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「報告します。東側敵兵の後方にて何かを作る様子が見えます」
「こちらもです。南側敵兵の後方でも何かを作っているもよう」
包囲した兵士が作る物と言えば攻城兵器か・・・
「なあ・・・ロドス達は攻城兵器って知っているか?」
「すまんが、よくわからんな。城を攻めると言うことがないからな」
この世界で城らしい城は人族の王城くらいだしな・・・、それにしても何を作るつもりだ。こちらからあれを破壊すれば良いのだが・・・あれだけ兵士が防御を固めると迂闊に攻めるわけにもいかない。
魔法も弓も射程内では・・・
『ガスターン・・・すまないが東側で作業中の兵士に上空から何か落としてくれないか?』
『石か何かでよいか?どこかで石を拾ってこないとならんから少し時間をくれ』
『ああ。適当な大きさで良いからな』
「敵兵の奥に木製の構造物が立ち上がりました」
立ち上がったと言われたものは
「投石器か・・・」
「投石?と言う事はあれは石を飛ばすのか?」
「ああ。あれは城を攻める時に使う兵器で巨大な石を飛ばし、城壁を破壊したり、城の内部にダメージを与える物だ」
「どのくらい飛ぶ・・・そうだなあそこからなら十分に街の中まで届くだろうな」
「人族は恐ろしい物を考え作るのだな」
「そうだな・・・こちらからは手が届かず、向こうからは手が届く・・・」
予想していればこちらも投石機を作っておいたが・・・さすがに今からでは飛ばす石などを用意できない。あれは組み立て式だろう・・・高度な知識がないと現地で組み立てて使用するのは難しい。この前の用兵といい・・・相手に孔明でもいると言うのか・・・
「どうやらその投石器と言うものが完成したようです」
「王よ・・・どうするのだ」
「ここは俺が結界を張るから心配はいらない。街の中に若干被害がでるかもしれないが、女子供なシェルターに待機しているから被害は心配しなくても良い」
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「さて、そろそろ投石器が完成したようなので威嚇してみましょうか。もうひとつの方はもう少し時間がかかるでしょうからその時間も稼ぐとしましょう」
セイオスの伝令が走る。ほどなく伝令がもどり・・・
「東側の準備も整ったようです」
「では合図の狼煙をお願いします」
狼煙があがると東側から3基、南側から2基の投石器が投石を始める。
ぶん!てこの原理で放たれた石が独特な音を立てて空に向かう。
「敵城壁に多数命中を確認しました」
空をまった石がどん!と大きな音を立てて城壁にぶつかる
「おやおや・・・」
石の重量やその衝撃音から普通の木材などであれば・・・粉々に打ち砕くだろうその投石も城壁にぶつかるとわずかに傷をつけただけで壁を破壊することができない。
「あの壁は何でできているのでしょうね。このサイズの投石でびくともしないとは・・・」
セイオスが訝しげに壁を睨む・・・その後も数発投石するが、壁へのダメージがほとんどない。
「ありゃだめだな・・・何発撃ってもあの壁は砕けそうにねえな」
サントスもそう評価する
「趣向を変えましょうか・・・。伝達、角度を調整し街の中への投石に切り替えてください」
伝令兵が指示を伝えに走る。
「まずは、次の兵器で中を覗いてみてからですね・・・」
セイオスの後ろには足組された構造物が徐々にできあがりつつある。
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「どうやら被害はないようだな・・・」
ロドスが投石を受けた城壁を確認しそう言う。
「ああ。かなりの鉱石素材を駆使して作ったからな。投石くらいならびくともしないさ。この後は、街の中への投石に切り替わるだろうが、投石範囲に重要な建物はないから心配はいらないだろう。それよりも、その投石器の側に作っている奴の方が問題だ」
「あの骨組みされたものがか?」
「あれは、おそらく攻城塔と言う兵器だ。あそこである程度組み立てた後車輪を使って押し出しさらに高く組みあげる。こちらの城壁よりも高い位置まで作り、そこから弓などでこちらを攻撃したりできる。なによりも街の内部を見られるのがこちらとしてはうれしくないな・・・」
「人族は・・・よく考えるものだな・・・」
「そうだな・・・だが、街の中を覗かれるのは許したくないな」
『主・・・準備ができたぞ』
『いいタイミングだ。敵が作っている攻城塔の上に落としてくれ』
『あの石を飛ばすものでなくても良いのか?』
『あれは後回しでいいから今作っている攻城塔を攻撃してくれ』
『了解した』
はるか上空で目には見えない位置にいたガスターンがわずかに降下し視界に入る。敵兵はまったく上空など意識はしていないだろう。
俺の目には、ガスターンが運んできた丸い石がはっきりと見えたが・・・投下された石は、狙いすましたように正確に東側で作りかけの攻城塔の上に落下した。上空から投下された巨石は、落下速度も手伝い落下地点に大きな穴を穿つ・・・作業中の兵士も含め周囲の兵士も吹き飛んだ木片などにたたきつけられた。当然、落下の直撃を受けた攻城塔になる予定だった木材は木っ端みじんに吹き飛んでいる。
「よし」
『もうひとつだな・・・』
『ガスターン大変かもしれないが頼む』
『任せておけ』
ガスターンは再び投下する石を取りに向かう。
「王の僕たちの力は絶大だな・・・」
東側の人族の軍が混乱に陥っているのが目に入りロドスは感心するように言う。
「できれば無理はさせたくないんだがな・・・」
今は頼れるものは頼らないと仲間が犠牲になるからあれこれ考える余裕がない。ガスターンの存在が敵方に知られれば、ガスターンを危険にさらすかもしれない。
ほどなくしてもうひとつの巨石を持ってきたガスターンが南側の攻城塔も破壊することに成功する。
「これで、敵方の戦略も変わるだろう」
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「報告します。今しがた・・・バラカム将軍側で組み立てていたこちらの攻城塔が破壊されました」
「・・・どういう事です?向こう側からの攻撃はないと思っていたのですが・・・」
「はい。バラカム将軍側の兵士が混乱しており、詳細がつかめませんが巨石が落下し組み立てしていた攻城塔の上に落ちたそうです。破壊された・・・」
報告を途中に兵士の男が指を指す。指を指された方向を見ると
「退避しろ!」
サントスの怒号が飛ぶ
ズガガーン!!!
轟音が響き渡るとセイオス側の攻城塔が木っ端みじんに吹き飛んだ。木片が飛び散り周囲の兵士を襲う。吹き飛んだ木片を避け・・・
「なにが?」
「ありゃ・・・鷹だな・・・」
サントスの横から現れたのっぽの男がそう言う。
「鷹型の大型魔物だな。ありゃかなりのレベルのやつだぞ」
「鷹・・・ですか?それは魔物と言う事でよいのですか?」
「そうだな・・・確かに魔物なんだろうが・・・普通の魔物はこんな事しやしねえ。ありゃ・・・従魔だな」
「従魔とは?」
「誰かに使役されている魔物ってことだ。テイムってスキルを持っている奴が、魔物を使役する事ができる。だがな・・・魔物だってバカじゃねえ。あのクラスの魔物をテイムしたなんて話しを俺はは聞いた事がねえな」
「相手側にはそんな従魔を従えた者がいると言う事ですね」
「そう考えた方がいいだろうな」
「少し侮っていたかもしれませんね。仕方ありません・・・一度撤退しましょう」
「おいおいあっさりと撤退か?」
「ええ・・・これ以上いても無駄なようですし、攻める方法はまだありますからね」
「なら仕方ねえな。おまえら俺達もいったん戻るぞ」
伝令を走らせ全軍に撤退を指示する。混乱する軍を再編するためにもバラカム将軍も賛同し人族の軍は撤退していった。




