それぞれ
「では魚人族の皆さんもここミクスで暮らすと言う事でよろしいですか?」
「はい。こちらからお願いいたします。お聞きしたルールなどについても承知しましたのでよろしくお願いします」
朝の打ち合わせ会議にサラが加わり、ミクスで暮らす種族の数も6種族に増えた。獣人が3種族、エルフ族、ドワーフ族、魚人族だ。
2000人を超える住民が暮らすようになったミクスは、時間の経過と共に発展していく。問題やトラブルも少なくないが、皆の知恵で解決し少しづつ協力できるようになっていく。タクミは王として提案することもあるが、細かなトラブルなどは、皆の合議に任せ自分たちで解決できるように促している。
「穀物はどうだ?」
「順調に育っているな。いくつか収穫できる畑もある」
「食糧は足りているか?」
「備蓄も含め問題はない。余剰分は各家庭の冷凍庫なんかに保存されているからな」
「兵士たちの訓練は?」
「各隊の連携も含め調整中だ。新たに加わった魚人族には、堀などうまく使った防衛隊を編成してもらった」
「居住区の税に問題はないか?」
「税もほとんどが払い終えたようだ。これから頑張った分は自分たちの実入りになるだろう」
「不足する物はあるか?」
「自宅が便利だから必要な道具は生活雑貨か武器くらいだろう・・・「酒だな」」
と概ね問題なく経過している。人族がいつかまた侵攻してくるのは確実だろうが、今は少しでも生活基盤を整え、有事に備えておきたい。
あと、ついにナントが子狼を産んだ。3匹のかわいい白狼が生まれた・・・。神狼と白狼から生まれる子供は神狼なのか白狼になるのか?と疑問もあったが3匹とも白狼だった。
そのうち名前を付けてほしいとホクトに頼まれたので考えておこう・・・
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「それで・・・無様にも逃げられたと言うのだな」
返答に苦しむ警備責任者に容赦のない叱責がとぶ・・・
「此度の件は、そちの失態だな・・・責をとって死ね・・・」
ついには死刑が先刻される。
「そ、それは・・・どうか死罪だけは・・・ご容赦を・・・」
泣くようにすがるが、誰も相手にしない。庇ったりしても無駄だと考え余計なとばっちりを避ける。
「連れて行け・・・」
命令を受けた兵士が警備責任者を連れていく。
「さて、無能な警備責任者のせいで、再び王城に賊の潜入を許したのだが・・・それはもうよい・・・新たな警備責任者に一任し改善させよう。それよりもこの賊が捕えた魚人を連れ逃げた事が問題だ。聞けば潜入した賊は人族の姿をしていたと言う・・・魚人族が奪還に来たと見るのが一般的だろうが、知ってのとおり魚人族は長時間陸上で生活することはできない。奴らが住む湖からここまで来る方法もそうだが、この広い王城に潜入して対象の魚人を見つける事など到底無理な話しだ。」
「そうですな・・・兵士の話しが本当であれば、賊は宙を舞い不可思議な魔法を使ったと言います。そのような所業が魚人族にできるとは思いません」
クライス審議官が王の言葉を促す。
「先日あった王城城壁への警告文の件もこの賊がからんでいるのではと愚行します。その賊が本当に宙を舞うのであれば城壁へあの文を残すこともできたでしょう」
内務審議官の男が付け加える。
「仮面をつけ人族の容姿で王国に牙をむくか・・・。賊に思い当たる者はいないのか?」
「私は、かねてから王都のダンジョンを攻略し逃走を図った魔族の仕業と考えております。ことさら、宙を舞い異形の技を使うとなればその筋を疑うのが一般的ではないでしょうか?」
王の問いにクライス審議官は、魔族論をとなえる。
「しかし、魚人とのつながりはあるのか?魔族が獣人や魚人と交流があるなどと言う話しは聞いたことがないが・・・」
「それについて1つ報告がございます。王都にいる商人の1人が先日面白い事を報告しました。その報告は、セイオス審議官が報告した北の巨大な街に関するものです。商人の男は、その巨大な街にたまたま入りこみそこで人族の姿をした男に会っています。その時、その男はこの街の代表者と言ったとのことです」
クライス審議官が報告する。
「ほう・・・あの報告にあった巨大な街とやらに行ったことがある者がおったのか?ならばその街の話しは本当の事のようだな」
「はい。その商人の話しによれば、その街の中に人の気配はなかったが、街はよく整備されており、見たこともないような設備があったと」
「人の気配がない街か・・・。しかし、そこに獣人族がいたと兵士が報告しておるな」
「はい。これは私の憶測ですが、その街の代表を名乗る男が魔族なのではないでしょうか?そして、その魔族はどのような目的かはわかりませんが、我々が攻めた異種族を囲い込み助けているのではないかと・・・」
「ふむ・・・筋は通るの・・・。しかし、憶測の域はでんな・・・。もし、クライスが言うとおりであったら第二次遠征軍が目的としている北方方面の制圧にもその巨大な街が影響するだろう」
「はい。その街がどのような物かまだ真偽はつきませんが、我々にとっては邪魔な存在と考えています」
「グラムが負けたのは、あの男の蛮勇かと思っていたが・・・果たしてどうなのか・・・。クライスよ・・・セイオス審議官が上奏してきた人選はいかがなっておる?」
「はい。軍は、さらに強化し5000人の兵士を用意いたしました。率いる将軍は、バラカム将軍を選任しております。また、冒険者サントスをリーダーに腕利きの冒険者100名を傭兵として雇って遊撃に使いたいとのセイオス審議官からの上奏がありましたので許可しております」
「サントスか・・・確かにあの男がいれば戦力として申し分ないが、あの性格だからな大丈夫なのか?」
「セイオス審議官とは旧知の仲とのことですから問題はないのでしょう」
「それで、その陣容で報告にあった巨大な街とやらを攻め落とせるのだろうな?」
「現状の王都では、最善の布陣と思われます。ああ、忘れておりましが、軍装にあのグリフォール卿が関わっております」
「グリフォールか・・・あの変わり者がなぜ軍装に関わるのだ?」
「どうにもグリフォール卿が長年の研究により得た技術を試したと言うのでそれを聞いたセイオス審議官が採用しております」
「それなりに使えると言うことか・・・」
「この度の北方方面への遠征は、巨大な街の攻略もそうですが、北部方面の平定にあります。報告にあったドワーフ族、犬族も攻略いたしますのでこれで王都から山脈までの間を我ら人族が占拠することになるでしょう」
「それに・・・逃げた魚人もその街にいるかもしれんな・・・。再び捕えわしの前に引き連れよ。逃げた事をたっぷりと後悔させてくれるわ」
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「ほう・・・なるほど・・・このような効果があるのですか?」
「ぐひひひひ・・・そうじゃよ。面白いじゃろう・・・」
醜く笑う痩せた男が答える。
「いいでしょう・・・。一部の兵士への使用を認めましょう。私も楽しみですからね・・・」
「うひひひひ・・おまえも物好きよの・・・こりゃいい奴を見つけたわい」
「それで、いくつ用意できるのですか?」
「そうじゃな・・・100いや200は用意してみるか」
「材料が必要なら言ってくださいね・・・私が確保してあげましょう」
「うひひひ・・・ほんとに話のわかるやつじゃな・・・。セイオスと言ったか・・・わしは、お主を気に行ったぞい」
「これは光栄ですね。鬼才と言われた魔法具作りの名匠グリフォール卿に誉められたのですからね」
「お主に比べればわしなど・・・ただの老いぼれにすぎんじゃろうが・・・」
談笑する2人の前には、黒ずんだ鎧?のような物が並べられている。ただその鎧が・・・まるで生き物のようにうごめく・・・
「今から楽しみですよ・・・」
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「おい。おまえら景気はいいか?」
「よお!サントスまたお前に世話になるとはな・・・」
「なーに・・・これも同じ冒険者の務めってやつだろう?うまい話しに乗れずになにが冒険者だってんだ。それとな・・・」
ぐしゃっ!と砕けた音が聞こえるとサントスに声をかけた男の顔が砕け散る。
「俺にきやすく声をかけんじゃねえよ」
がやがやと騒ぐ冒険者の男達の声が止まり静寂がおとずれる
「おまえら勘違いすんじゃねえぞ!うまい話しは本当だが、お前たちと俺は対等なんかじゃねえ・・・。お前らには俺がたんまりと報酬を用意してやる・・・だがな・・・俺の言う事を聞けねえ奴はついてくる必要はねえぞ・・・ここで最後だわかったか?」
男達の歓声があがる。
「出発は明日だ!準備をおこたんじゃねえぞ!わかったか!」
冒険者サントスを中心とする冒険者およそ100名は遠征軍特別遊撃隊として参戦する。癖のある集団だが、魔物討伐を日ごろから行う彼らは兵士とはまた違う強さを持っている。
「さあ・・・お楽しみの始まりだ」




