ミクスの王
犬族の元に向かったロドスが帰還した。
ロドスの後ろにロドス達の仲間の姿があった。聞けば、落ち延びた一部の仲間は、犬族のもとに身を寄せていたようで20人近い狼族を連れて戻った。また、同様に犬族のところにいた猫族およそ100人、エルフ族10人もこの街にカイルやアリヒア達が住んでいる事を伝えると同行を希望したのでロドスは犬族のリーダーであるヘイストに許可を取り街へ連れてきた。今回はそのヘイストも一緒に来ている。
門を潜った瞬間、駆けよった仲間たちに囲まれ涙の再開を果たす姿を見ながらヘイストに頭を下げた。
「よく保護してくれた・・・感謝しかありません」
「気にするなお互い様だ。それよりもあんたがこの国の王か?」
「挨拶が遅れてすまない。俺はタクミ・・・この国のこの街の王だ。まずは、腰を落ち着けて話しをしたい。俺の屋敷で他の種族の責任者も集めるから。少し街を見学した後ロドスと一緒に来てほしい」
側にいた兵士にカイルやアリヒアに集まるように伝えてもらうように頼み、自身は会議室で接客の準備をする。メグミにも来てもらうか・・・
1時間ほどすると皆が会議室にそろったので改めて挨拶する。
「この街の代表・・・一応国王って事になるな・・・名をタクミと言う。そして妻のメグミだ。この国を作ったのは、俺のわがままが発端なんだが、色々な種族が協力してよりよい国を作りたいと思ったからだ」
少し間をおき
「今日、犬族の責任者であるヘイストがこの街に来てくれた。保護してくれていた仲間とこうして再開できたことは、ヘイスト達犬族のおかげだ。まず、このことに最大の感謝を表したい」
「それは私からも・・・」
「こちらもにゃ~」
エルフ族や猫族も頭をさげる。よほどうれしかったのか、兄の死後元気がなかったアリヒアにしばらくぶりの笑顔があった。
「いや・・・このような状況だ。きっとお互いそのようにするだろう」
「そう言ってくれると助かるが、誰にでもできることじゃないからな。どれほど礼を言っても言い足りないくらいうれしいんだ」
ヘイストも少し照れている。
「そして、今ここにいるのは、狼族、猫族、エルフ族、ドワーフ族だが・・・犬族はどうするつもりだ?」
「ああ。今、ロドスとこの街を見て回ったが、住むには申し分ないだろう。保護した者から散々人族の脅威については聞かされていた。多少数が多いと言っても俺達犬族だけで1000人もいないだろうから単独で人族に立ち向かうのは難しいと考えていたからな。ロドスから色々と聞いているからこの街のルールもきちんと守るつもりだ」
「そうか・・・すぐに受け入れの準備を始めるから住まいの希望なんかがあったら教えてくれ」
少しほっとする。これで、ドワーフ族に加え犬族も悲劇を見ないで済むかもしれない。
「俺達は、狼族と似たような生活をしているからな同じような環境があればそれでいいぞ」
「ならロドス達が使っている中央のマンションあたりがいいな・・・まだかなり空きがあったから好きなところを使ってくれ」
「男どもは、狩りや農耕、女どもは牧畜なんかをしていたが、ここでも続ける事はできるか?」
「ああ。問題ないな。狩りは他種族もしているし、農耕用の畑や牧畜できる場所も作ってあるから使ってくれて構わない。育てている魔物なんかがいるなら連れてくるといいさ」
種族や人口が増えようやく街の体裁が整いつつある
「ドワーフ族の移住もあと少しかかるだろうし、犬族の移住にも時間がかかると思うけど皆で頑張って欲しい。新しい仲間がすぐにこの街に馴染めるように協力してくれ」
全員が快く返事してくれたので気持ちよく会議を終える。今のところ種族間のトラブルもないが、これは1つの大きな目標があるからだろう。人族を敵にしている間は、案外問題はすくないのかもしれない。
「なんかすごいね・・・」
メグミがそう評価する。
「ああ。みんなすごいよ。住み慣れない場所に必死に慣れようとしている。住み慣れた場所を離れるには、勇気が必要だからな」
「うーうん・・・そうじゃなくてタクミが言っていたことが少しずつ現実になってきている事がだよ」
「そうか・・・そうだな。街を作ってこれだけの間にもうこんなにも人が増えた。同じ考えを持つ仲間も増えたな」
「そのうちきっと、ホクトやナント達みたいにこの街で子供を産んで育てる人も出てきて・・・ここがその生まれた子供の故郷になるかもしれないね」
「そのためには、俺にはまだまだやらなきゃならない事がたくさんありそうだ」
「もう・・・ほどほどにしておいてね」
「そうだ。今度、魚人族のところへ行くんだけど一緒に行かないか?」
「え?一緒に連れて行ってくれるの?」
「ああ。今回は2人だけで行こうと思う。新婚旅行みたいなつもりで行かないか?」
「魚人族との交渉って大切なんじゃないの?」
「それはそれだよ」
「そっか・・・じゃあ楽しみにしておくね。いつ出かけるの?」
「そうだな。犬族の居住区の事を少し調整して・・・。ドワーフに炉の使い方を教えて・・・。そうだ水龍のところへ行かないとな・・・出かけるのは2日後あたりにしよう」
「気がついたらすっかりタクミは王様だね。みんながタクミを見ておいかけてる。私も置いて行かれないように頑張らなきゃだめだね」
王か・・・守る者が守りたい人が増える度に責任も重くなっていく・・・
「俺のわがままで始めたんだ。やれるとこまでやってやるさ」
翌日、予定通り犬族の居住区を確認し、ドワーフに頼まれていた炉の調整と使い方を説明に走る。ドワーフには、金物作りを中心に頼むつもりだが、武器や防具作りも頼むつもりでいる。すべての防具を俺が作るわけにはいかないからな。リル達の店に並ぶ商品が増えた・・・リル達の店に取ってきたものや作った物を売ればミールに交換できる。ミールで税を支払い終えた後は、自分たちの取り分になるから、あとは好きな物を買うなり飲食に充てても問題はない。ミールの流通量を調整するためリル達の店においた両替機が活躍している。狩りで得た肉を売りに来た狼族の男が、帰りに子供の服を買って帰ると言う・・・そんな暮らしが始まりつつあった。単独種族で暮らしていたときよりも多くの種類の物があふれている。
人族の侵攻で夫を失った未亡人世帯を中心に税の取り扱い事務を任せる事にした。彼女らには、役所で勤務してもらい納税事務を担当してもらう。また、役所に併設してまだ規模は小さいが、保育所と学校の機能を付加した建物を作った。
今のところ治安に問題はないが、人口が増えれば色々なトラブルも増えるだろうから治安維持組織を作る案を出している。各種族毎に数名ずつ代表者を出し細かなルール作りから解決方法までを考えてもらう事にした。すべてを押し付けるつもりは俺にはない。揺るがないのは、種族差別の禁止だけだからな。
門番をはじめ、兵士が行うような仕事は、男達が交代で行うことになった。給料もきちんと出るから不満を言うものはいない。定期的に防衛戦を意識した避難訓練や門の開閉訓練などを行い非常時にも備えている。訓練後に王である俺が差し入れに炊き出しをする事にしたら、皆が喜んで参加するようになった。訓練だが、種族間の交流もできるので無駄がない。
獣人族を中心とした兵士を幾つかの部隊に編制した。犬族戦士を中心とした赤隊は、およそ400名。装備を赤色に統一し、隊長をヘイストに依頼した。ロドスと同じようにレッドドラゴンの素材を使って作った装備を渡すと感動した?のかしばらく動かなかったが、後日の訓練で着用していたので問題はないだろう。
ロドス隊長を中心とした狼族200名は、緑隊として装備を緑で統一した。せっかくなので猫族のカイルにもブラックドラゴンの素材を使って作った装備を渡し、猫族は黒で統一した。カイルの装備は、カイルの適正に合わせて忍者っぽいものにした。軽量化に特化した猫族装備は、斥候などを行いやすい工夫を施した。
エルフたちには、治癒魔法や薬の調合を教える。治癒魔法を使える適正がある者を集めイメージの仕方や治療法を教える。アリヒアは、説明を聞くと見る間に上達していった。
ドワーフ達は、新たな炉の扱いに苦労している。これまで以上の火力が出るためできる事は増えたが、その調整が難しいのだ。玉鋼の作り方などを一緒に行うと目をキラキラさせた子どものように熱心に聞き入っていた。彼らの物づくりへの情熱は熱いものがある。ドワーフにも戦士はいるが、足が遅いので防衛戦時のみの兵士とした。重装備に身を包み戦車のように戦うのがドワーフの戦い方だ。
「さて、水龍のところへ行くか」
街での作業を終え、水龍に相談に行く。魚人族について知っている事を聞くためだ。水に関わる種族だから水龍も知っていると考えてのことだ。
妖精たちのいる池まで来ると俺の到着を知らせるために妖精ガールズが水の中に消えた。水面から水龍が顔を出す。
『おお。タクミか。丁度良いな。用事があったから呼ぼうと思っていたところだ』
「ああ。俺も用があってきたから丁度いいな。それでそっちの用はなんなんだ?」
『まずは、お主が作ったため池と堀の事じゃが、ようやく眷属も住めるくらいまで整いつつあるようじゃ。少しずつ我の眷属も住み始めるじゃろう。お主らには迷惑をかけぬように言ってあるから心配はいらん。それとな・・・これが本題なんじゃが・・・」
そう言うと水龍が顔を出した隣に同じ顔をした少し小さい水龍がもう1つ首を出す。
『お前がタクミか・・・』
小さい水龍が念話で確認する
「ああ。俺はタクミだが・・・」
『ほう・・・確かに人としては、破格じゃな・・・』
俺を鑑定したのか?
『この若い水龍は、我の一族のものじゃが・・・『おじいさま!少し私にお話しさせていただけません?』』
どうやら若い水龍は、水龍の孫のようだ。
『あなたは、おじいさまよりもお強いのかしら?』
「いやさすがに敵わないだろうな」
『なぜ、あなたがおじいさまを捕らえていたリッチを倒すことができたのです?』
「たまたま相性が良かったんだろうな」
『私達は、おじいさまを取り戻そうとリッチに何度も挑みましたが、ついには傷を負わせる事ができませんでした・・・それをあなたのような人族が倒すなど、納得もいかないと言うものです』
「じゃあどうすれば納得するんだ?」
『私と戦いなさい』
「戦う理由もないのにか?」
『あなたになくてもこちらにはあります。一族の名誉のためにも私達が人族より劣っていると認めるわけにはいかないわ』
はた迷惑な話しだな・・・。水龍をちらっと見るが目をそらした・・・。孫に勝てないのは、この世界でも同じなのか・・・
「俺は、ここで死ぬわけにはいかない。背負うものが多いからな・・・付き合ってやりたいけど命をかけるわけにはいかないんだ」
水龍
レベル 162
測定不可




