揺れる王都
「では、セイオス審議官は、帰還するまでの詳細について報告してもらおう」
クライスが遠征から帰還したセイオス審議官に報告を求める。
「はい。それでは順を追って報告させていただきます。まず王都を出た遠征軍は一路、狼族が占拠する森へ向かいました。グラム将軍は迅速に狼族の住処を包囲殲滅せんと試みましたが、屈強な獣人戦士に阻まれ、一進一退の状況となりました。グラム将軍の指示で脱出を図った女子供を捉え人質とし、獣人戦士に降伏を勧告する事でわが軍が勝利することができました。」
「続けよ」
「グラム将軍より捕らえた獣人の女を辺境の町まで護送するように指示を受けましたので、獣人の女7名を辺境の町まで護送し、辺境の町の兵士に引き渡しました。その後、占拠した狼族の住処に戻りますと、護送している間に、鳥型の魔物に急襲されたとのことで、遠征軍は一時森に身をひそめる必要があったと聞きました。鳥型の魔物は、はるか上空から襲ってくる高レベルの魔物で、対抗することができなかったと兵より報告を受けました。残念なのは、その魔物が急襲したことで、捕らえていた狼族の頭目を含めた獣人が檻から脱出してしまったことです」
「ほう・・・魔物の急襲とは・・・そのような魔物の存在は聞き覚えがないが」
「はい。これまでに確認された魔物に一致するものはありません」
「逃げた獣人は見つからないのか?」
「兵士の報告では放った斥候や追跡した兵士は、ことごとく殺されたようです。この逃げた獣人については報告の最後に改めて報告させていただきたいと思います」
「ならば報告を続けよ」
「はい。狼族の住処を拠点とした遠征軍は、軍を二手にわけ一軍は狼族の南方を住処とする猫族を攻めこれを占拠しております。狼族に比べれば非力な猫族にはほとんど抵抗も受けず一方的に蹂躙することができました。捕らえた獣人は多くを王都へ搬送しております。一軍は念のために狼族の住処を防衛しておりましたが、報復や反撃もありませんでした。南方へ向かった兵士が再び狼族の住処に戻り、遠征軍は北上を開始します。北上した遠征軍は、エルフが住む村を急襲し抵抗するエルフを蹴散らし村を占拠しました。逃げたエルフを追撃せんとグラム将軍が大半の兵を率い向かいました。私は、グラム将軍の指示で占拠したエルフの村の始末をして待つこととなりましたが、エルフを追撃したグラム将軍が、エルフが逃げ込んだ巨大な街からの攻撃を受け戦死されました」
「そこよの・・・。大きな街とは?」
「戻った兵からの聞き取りと斥候を多数放ち情報を求めましたが、兵士の報告では、高い城壁を備えた巨大な街に逃げた狼族の獣人がいたと・・・。また、放った斥候は1人としてもどりませんでしたので、始末されたものと思います」
「先ほどの獣人どもか・・・」
「はっきりとはわかりませんが、その可能性が高いものと思われます」
「あのような場所に本当に大きな街などあるのか?そのような街があれば知る者も少なくないだろう・・・」
「そのことについて捕らえたエルフを尋問したところ、ここ最近できた街のようです」
「ならばそれほど大きな街ではないだろう・・・1年や2年で街が作れるわけがないからのう。兵士が負けた言い訳に吹聴しているだけではないのか?」
「そうかもしれません。ですが・・・グラム将軍が率いた遠征軍はほぼ全軍の三千人の兵士です。それが、何もできずに逃げ帰ると言う事実だけは考えておく必要があるものと愚行いたします」
「確かにセイオス審議官の言うとおりだな・・・。して・・・セイオス審議官は王都に戻りすでに報告を受けたと思うが、王城への警告文をなんと見る?」
「はい。驚きましたが、おおよそ人外の者の仕業としか・・・。獣人やエルフにあのような真似はできないでしょう」
「最後に一つ聞こう。その巨大な街を攻め落とす事は可能か?」
「いくつか方法はあると思います」
にやりとゆがんだ笑みをセイオスが見せた事に気づくものはいない・・
「翌月の誕生祭に合わせ第二次遠征軍を編成することが決まった。セイオス審議官には引き続き参謀として帯同してもらおう。指揮官は・・・それにふさわしいものをおって報告させよう。何か要望があるか?」
「1つだけお願いしたい儀がございます」
「遠慮なく申せ」
「それでは、冒険者サントスを帯同させる許可をいただきたいと思います」
「ほう・・・英雄を所望か・・・」
「サントスとは、知った仲ですのでお許しいただければ心強いのですが・・・」
「ふむ。許可しよう。本人には、セイオス審議官から頼んだほうがよさそうだな」
「ありがとうございます。必ずや良い報告を・・・」
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遠くの空を王城の自室から眺める・・・
はるか先にあるものは、見知っていてもけっして手が届かない。
「はああぁ~」
気の抜けたため息をつく・・・王城に戻ったセレスは、何をやってもつまらなく・・・物足りない思いで日々を過ごしている。わずか数日滞在した夢のような街・・・王都の城で何不自由なく暮らしているつもりだったが、あの街の一般市民の方がはるかに良い環境で生活を送っている・・・
王城に戻ったセレスは、できる事は限られていたが、まったくできることがないわけでもない。密かに同じ考え方をする仲間を探しその輪を広げる計画も進めている。
王城に住む女官や兵士は、給料が増えた事や珍しい宝石が手に入ったと浮かれている・・・。それは、誰の犠牲の上に成り立っているか知っているの?
この国に・・・この国の人に魅力を感じられない自分がいる。王都にもきっと良い人はいる・・・私もそう思うけど・・・今の私の周りには見当たらない。
始めて食べたジャムパン?って言ったかな・・・素直に美味しいって言えなかったけど。人生で一番おいしかったかもしれない。
メグミやアリヒアさんともっとお話ししたかったな・・・。
「きっとまたチャンスが来るわ・・・」
気合を入れて部屋を出る。足取りは依然よりも軽い・・・
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「おう帰ったぞ!」
「おお。ようやく帰ったか・・・サントスがいないと盛り上がりにかけちまうよ」
そう答えたのは、痩せてひょろっとした男だ。
「何言ってやがる・・・遠征軍についていくって言ったらノールは、面倒だなんだと言って王都に残ったじゃねえか」
「ああ。獣人の嬢ちゃんたちを弄れるって聞いたからな・・・まあ散々遊んだが飽きちまってな」
ノールと呼ばれた痩せ男の側に控えているは、黒いローブをまとった陰湿な男と派手な鎧を着こんだ男2人だ。ローブの男はボルド、派手な鎧の男はゴールと呼ばれている。
「また、どっかに遊びに行くんだろ?今度はちゃんとついていくから」
ノールがサントスの肩をたたきながらそう言うと
「お前たちはどうする?」
サントスが残りの2人に聞くと
「・・・」
「ああ。ついていくさ」
ローブの男の声は聞き取れないくらい小さい声だったが、2人ともついていくことを承諾する。
「なら、またこのメンツで遊びに行こうじゃねえか。今度の遊び相手はこの前の魚人どもとは少し毛並みが違うかもしれないからな」
サントス
レベル 125
HP 3025
MP 730
力 103
体力 98
器用 95
素早さ 97
魔法 64
抵抗 74
戦闘スキル 剣術レベル8 槍術レベル6 身体強化レベル7 金剛レベル3
経験値取得上昇レベル8
王都の人族最高レベル保持者。冒険者としても最高ランクを持ち、英雄の称号を王から得たこの男は、黒剣と呼ばれる4人パーティーのリーダーとしても知られている。
「さあ俺達の遊びの始まりだ」




