公務員
ようやく自分の街にたどり着く、南門が目に入るとそこには、メグミ達が勢ぞろいしている。どうやら出迎えてくれるようだ。後ろには獣人たちも多く立っているきっと仲間が戻ると聞いて迎えにきたのだろう。しかし、何かこの出迎えは恥ずかしいな・・・
距離が近づくと気持ちを抑えきれない獣人たちは、互いに走り出しちょうど中間くらいで再開を果たした。仲間の姿を確認した獣人たちは再開を喜びあい泣き笑いする。
「よくぞ・・・よくぞ仲間を助けてくれた」
ロドスが、走り寄ってきて礼を言う。
「ああ。ロドスに変わりに連れてきたぞ」
がっしりと握手を交わす。
「もう。私が一番だと思ったのに・・・」
後ろですねるメグミが1人文句を言う・・・
「奥方よ。すまないな・・・」
「気にするな、後でメグミには、ちゃんと時間をとるからもう少し待っていてくれ」
「うん」
側で頷きピタっと張り付いた。動きにくいが、仕方ないな。
「ロドス。すまんが、一度家に戻ってさっぱりしたい。その後、今後について話しがあるから声をかけるまで待っていてく」
「ああ、急がず奥方の事も考えてやれ」
「わかったよ。じゃあ後でな」
門の周りでは、獣人たちがまだ喜びあっていた。
自宅に戻るとホクトとナントが待っており
『おかえり。無事のようだね』
『主様、お戻りをお待ちしておりました』
「ああ。心配かけたな。ホクト達のおかげで、多くの獣人を助けることができたからな。助かったよ」
しっかりとお礼を言ってから自宅の風呂に入る。
「ふいー」
さすがに疲れたな。体力には心配ないがほとんど眠る事もなく、緊張の連続だったからな。やっぱり自宅の風呂は安心することができる。
「ねえ?背中流してあげようか?」
風呂に使っているとメグミが乱入する。まだ日が高いのだがな・・・。少し、新妻を甘く見ていたのかもしれないな。一緒に風呂に入り、メグミのフォローもきちんとしておく。かわいい嫁は大事にしないと罰があたるからな。
つやつや顔のメグミを見てホクト達は、やれやれと言った顔をしているような気もするが・・・黙っていてくれる優しさに甘えて無視を決め込む。
「さあ、あまり待たせるのもなんだしな。メグミもホクトも一緒に来てくれ、少しロドス達と込み入った話しをするからな」
ロドスに声をかけて自宅の離れに作った会議室で話しをすることにした。
「まずは、きちんと礼を言いたい。これは種族の長としてだ」
「ああ、それは受け取ろう」
「そして、頼みがある」
「ああ」
「我らは、いつしか人族から里を取り戻すつもりだが、今それをかなえる事は難しいだろう。住居も行くところもない以上その日まで暮らす場所が我らには必要だ。我らをこの街においてはくれないか」
「街に住むには条件がある」
「当然だろう。条件もなく頼む事はこちらにもできない」
「条件は、この街に住む以上、この街のルールに従う事だ」
「街のルールとはなんだ?」
「まずは種族差別の禁止だ。この街ではあらゆる種族の差別や特権を認めない。次に法に従う事だ。この街は、法によってルールが定められている。詳しくは後で話すが、犯罪行為に対する刑罰や税金についての取り決めなどだな」
「種族差別と犯罪行為への罰についてはわかるが、税とはどうすればよいのだ?」
「この街の建物や土地を利用するにはそれぞれ税を納める必要がある。納める税は、住む場所の広さや便の良さで違い、便利なほど高くなる。税は、この国の通貨を発行するのでそれで納めてもらう」
「通貨とは、人族の街にあるものだな」
「ああ。人族は金貨や銀貨を使っているからな。それと同じ仕組みだが、この国の通貨はミールと言う名前の貨幣を使ってもらう。」
「我らは、それを持っていないぞ」
「その話は、次の話しの後だ。今、この街の国のルールについて話をしたが、実際にはまだ住民はいない。街はまだ機能しているとは言えないんだ。そこで、住民がある程度増えるまでの間、ロドス達には、この国の公務員として働いてもらいたい」
「公務員とはなんだ?」
「ああ。国に雇われた者ってことだ。国の仕事をしてもらう代わりに、国は対価としてさっき話したミールを公務員に支給する。支給されたミールで税を納めたり、ほしい物と交換してもらっても構わない」
「おまえの手伝いをして、対価までもらえるのか?」
「なんだ?ただで働くつもりだったのか?」
「ここまでしてもらって、対価など要求できるわけがないだろう」
「いや。それはだめだ。ロドス達は、働いた分だけ対価を要求してくれ。その代り、この街に住む以上、対価として得たミールを税として納めてもらうからな」
「なるほどな。そう言う仕組みか・・・」
「まあ、細かい事はそのうち理解できるようになる。説明もゆっくりしていくつもりだからな。すぐにも頼みたいのが、この街の警備を兼ねた門番と獣人たちの衣食住を賄えるだけの生産活動だ。門は3つあるからそれぞれの門を何人かで交代しながら警護してくれできれば1つの門につき2人ずつ配置してほしい。対価は、1つの門につき1日に4800ミール出すから担当した者で公平にわけてくれ」
「それが、国の仕事と言うわけか」
「ああ、こんなふうに仕事をすると対価が手に入る。仕事の種類や負担によって対価は違うからな、大変な仕事ほど対価は高くなるようにするつもりだ。獣人たちが今住んでいる3階建ての建物の1部屋の税は、1年間で10万ミールだ」
「あまったミールは、どうするのだ?」
「まだ、先になるが街に店ができたらそこで食べ物や服と交換するんだ。逆に服をたくさん作って売れば、ミールが手に入るようになるってことだ」
「そうなると女どももミールを稼ぐことができるのか」
「そういうことだ。狩猟でも採集でも対価は得ることができるからな。子供だって働けば対価を得ることができるようになる。店が立ち並ぶようになるまでは、俺が店代わりをするからほしいものがあったら俺に言ってくれ大概のものは用意できるからな。それまでロドス達は、この国のためにできる事をしてほしいんだ。そして働いてくれたぶんだけ俺はロドス達に対価を払う」
「わかった。詳しくは他の者と一緒に教えてもらう必要があるが、我らはこの街のルールには従おう」
「助かるよ。これから他にも種族が増えるかもしれないからルールはできるだけ覚えてもらいたいんだ」
「メグミも時間があれば、ルールを教えてやってくれ」
「うん。女性陣は、私に任せて。こういう事は女性の方が早く覚えちゃうんだから」
確かに女性は逞しいからな。この世界で同じなのかはわからないが・・・
「しばらくは、一緒に俺も動くから少しずつ覚えていけばいいよ。あと、一応種族代表は、ロドスって事にしておくから、俺に要望や意見があったらまとめて言ってくれ要望にはできるだけ応えるつもりだからな」
「ちょっと待ってくれ。こちらからも1つ条件がある」
「条件?」
「そうだ。これは我らの総意なのだが、お前はこの国の王だ。だから、我らは、この街の民となっている限り、お前を王と認める。だから、お前は俺達の王だ」
「俺が・・・王か・・・わがままな王だぞ俺は、本当にいいんだな?」
「皆が良いと言うのだ、遠慮なく王を名乗れ」




