気がつくと
山脈で新たに見つけたダンジョンに立ち入る。雑魚の魔物を剣だけで切り捨てるように狩りながらどんどん奥へと進む。
「ナントみたいなのがいるといいんだけどな」
俺は、テイムできそうな魔物を探しているうちにダンジョンを見つけたので、勢いで単独攻略することにした。レベルが低い魔物は倒しても放置し、食糧や素材になりそうな魔物は回収していく。
ダンジョンには、大した罠もなく奥へと進むことができたので少し拍子抜けしていたが、階段を3階ほど降ると様相が一変した。
「ここってボス部屋か?」
そう思うほど広い空洞が目の前に現れる。気配もあるし、この雰囲気は普通じゃない。
「ああ・・・こんなところに珍しいな・・・おまえは人族か?」
そして、声をかけてくる相手が当たり前ではない雰囲気をさらに盛り上げる。影のような闇を纏った人型の魔物・・・
リッチ
レベル 76
詳細不明
鑑定が何かで防がれているのか、表示されない。
「リッチは、テイムしたくないからいらないぞ」
「ほほう・・・テイムとは・・・恐れ入ったわ」
「いや、お前はいらないからな。さっさと帰ってテイムしたくなるような魔物を探す事にする。邪魔したな・・・」
背を向けて本当に帰るつもりで階段まで進むが、階段の前の扉が開かない。仕方なく戻って
「扉開けてくれよ。帰れないだろう」
「我を無視して帰れると思うな小賢しい人族の分際で・・」
少しイラッとする。するとリッチは、指をパチンと鳴らす・・・暗がりに灯りが灯るとその中から氷の柱が現れる。氷の柱は、十数本見えた。
「これは、我のコレクション。無謀にも我に挑みし者をこのようにしておくのが我の楽しみなのじゃ。お前もこのコレクションに加えてやろう」
俺は、仕方ないので剣を構える。
「先に言っておくが、我は不死ゆえ、物理攻撃など意味はない。せいぜい、もがき苦しんでから仲間に加えてやろう」
そうか物理攻撃は無意味か・・・。ならばリュックからオリハルコンの剣を出す。
「聖なる光よ我が剣に邪なる者を排除する力を与えん」
神聖魔法を発動しオリハルコンの剣に光を纏わせる。
「ちょ・・・おま・・・それは・・・」
「ああ。うるさいからお前はここで消えろ」
身体強化と気功術で一気に強化して懐まで飛び込むとリッチを両断する。真っ二つになったリッチは、光に包まれるように燃え尽きていく・・・。カラン・・・コロン・・・
「うん?」
何かが落ちたので手を伸ばし確認すると指輪が2つ転がっていた。鑑定すると
氷の指輪
永久に溶けない氷を造る 術者は任意で解凍可能
対魔の指輪
相手の魔法を無効化する もしくは弱体化させる
氷の指輪は、この周りのコレクションを作っていたやつで、もう一つは魔法の無力化か・・・。リッチは、物理無効だからこの指輪があればほとんど無敵だったのかもしれないな・・・。神聖魔法を剣に纏うなんて攻撃できるのは俺かメグミくらいだしな・・・。まあ倒せたからいいか。
あたりを見るとリッチのコレクションが気になったのでひとつひとつを解凍することにする。すでに死んでいる三つ首の犬ケルベロスだな・・・これは素材だな。次は、頭がいっぱいある蛇か?これも素材だな・・・。で、この水龍っぽいやつは・・・
「ぐ・・・」
生きているのかよ。
『あー言葉通じるか?』
『ここは・・・そうかリッチめにやられたのか』
『あーすまないが、そのようだな。氷漬けになっていたが大丈夫なのか?』
『我は水龍。氷ごときに閉じ込められたくらいでは問題ない。それにしてもお前はよくリッチを倒したな』
『ああ。運と相性ってのが良かったんだろうな』
『面白い人族だな・・・何よりも天龍の加護を持つとは・・・』
『面白いかどうかはわからんが、好き勝手やさせてもらってるよ』
念話で水龍と話す。どうやら天龍のように知的な龍のようだ。徐々に回復してきているのか纏う雰囲気が重みを増していく。当然俺の鑑定もレベルしか見えないが、水龍のレベルは230だった。
『まあ、お互い運がよかったってことで・・・俺は残りの氷を解凍したらここから立ち去る予定だから好きにしていいぞ』
『そうよの・・・何年くらい氷に閉じ込められていたのかはわからんしな』
俺は水龍を放置して、氷の柱を解凍していく。残念ながら他の氷の中には死んだ魔物しかいなかったのですべて素材として持ち帰る事にした。
『じゃあ。俺はこれで』
一応挨拶して立ち去る。
『うむ・・・』
ダンジョンから外に出るとすでに夕暮れだったので、急いで帰宅することにした。途中まで飛行魔法で飛び近くからは歩いて街へ戻る。
「ただいま」
自宅に戻ると
「おかえりなさーい」
メグミが迎えてくれる。ああ、ほっとするな・・・最近は慣れてきたのかもしれんが、自宅でくつろげるようになった。
「テイムは、どうなったの?良い従魔は見つかった?」
「ああ。ガルイーグルのガスターンって言う大きな鷹型の魔物をテイムしたよ」
「鷹かー」
「ああ。頭もよさそうだしナントみたいに会話も通じるしな。そうだ、テイムしながら考えていたんだけど、この国の旗印を決めたんだ。2対の狼に鷹が描かれた旗にすることにした。国の守護としてホクト達を前面に出そうと思うからな」
「そっか。ホクト達が旗になるんだ。融和の象徴ってのもいいかもね」
「まあ、意味なんてのは後で付け加えてもいいからな。そのうち旗も作っておくよ」
メグミの作った夕食を食べながら今日あった事を話していると
『ただいま』
とホクトとナントが帰ってきた。
「お、戻ったか。ずいぶんと奥まで行っていたようだな」
『主様、ご心配をおかけしてすみませんでした』
「ナントもおかえりなさい。怪我とかしなかった?」
『山沿いに東へ向かって進んでいたらシルバーウルフの群れに会ったから少し行動を共にしていたんだよ。山脈の東側の情報収集をかねて結構遠くまで移動したんだけど、どこまで行っても山脈は続いているみたいだね』
「そうか山脈は天龍の言っていたとおりか」
『あとね。シルバーウルフ達は、僕の配下になったからこの国の裏手の山脈側に住むことになったからね』
「なんだ、ホクトが群れのリーダーになったのか」
『どうしてもって頼まれたからね。ついでにこの国の裏側は、僕達が警戒するから安全になるし、妖精のいた池あたりに出るスノーエイプもこれで近づけなくなると思うから心配はなくなるよ』
「それは、ありがたいな。妖精たちもようやく帰ることができるな」
後でホクト達と報告してやろう。
「俺も新たにガルイーグルをテイムしたからな。後で紹介するよ」
『空の王か・・・タクミらしいね』
「これで、少しは戦力も整ったが・・・何よりも誰も住んでいないままだからな」
まあ。急がなくてもいいか・・・
「さあ、今日はホクト達も戻ったし、少しごちそうを奮発するか。俺もしばらくぶりに料理するぞ!」
『じゃあ。群れの仲間たちの分も肉を出してほしいな』
「了解だ。挨拶代わりに好きな肉を出してやるよ」
この後、シルバーウルフ達の群れとガスターンも呼び出して盛大に宴を催した。




