山越え
エルフの村を出たタクミたちは、一路山脈越えのために歩いた。徐々に景色も森と言うよりも山の麓と言った様相に変化していく。
「ねえ・・・タクミあそこに煙が上がっているが見えるよ」
メグミが指差す方向に幾本かの煙が上がっているのが見えた。誰かが何かの目的のために火を使っている事はわかるが、木々に隠れて詳細はわからない。
「ああ。誰かがいるのは確かだろうな」
タクミは、遠くに煙を確認したが放置することにした。煙を無視し、さらに山へ向かって進むと遠くから「カーン」「カーン」と言う金属音が聞こえてくる。
タクミ達の視界に鉱山から鉱石を採掘するドワーフ達の姿が入る。
「ドワーフだな・・・」
「どうするの?」
メグミの問いにタクミもどうしたものかと迷っているとドワーフもこちらに気がついたのか声をかけられた。
「おお。珍しいな人族がこんなとこまで来るのは・・・」
そう言いながら近づいてきたのは、髭もじゃ顔のドワーフだ。
「ちょっと用事があってな」
タクミが無難な答えで返すと
「商人か何かか?まあこんなところまで来るのは根性のある商人くらいなもんだろうが・・・。俺達は、今鉱山で鉱石の採掘中だもんで、武器やら防具やらとかは、村にいかんとないから買付ならそっちに言ったほうがいいぞ」
商人に間違われたタクミは
「いや、俺達は商人じゃない。この先の山を越えるつもりで旅をしているだけだ」
「ほおお、なんとまあこの山を越えると言うだか・・・それはまた剛毅なことで・・・なら、この先に上り口になる場所があるからそこへ向かうといい。ただし、山にはかなり強い魔物もいるから十分に気をつけることだ」
山の入り口を聞いたタクミ達は、礼を言うとその場を去った。髭もじゃドワーフも鉱山へと戻って行った。
しばらく指示された方へ向かうとドワーフが言っていた山の入り口が見えてきた。入り口と言っても道があるわけではなく、なだらかに山へ向かう丘があるだけだ。タクミ達は、道なりにその斜面を登り始める。
「タクミ・・・。山のてっぺんが雲で見えないんだけど・・・」
登り始めてすぐにメグミが感想を伝える。メグミが言ったように上るタクミ達の前には、ゴールすら見えない山肌が延々と続いている。それでもタクミ達の足は、すいすいと平地を行くように前に進む。
人族をかなり逸脱したステータスとなっているタクミ達は、休憩をはさみながらもどんどんと道なき山を登り続ける。途中に現れる魔物は、確かに強いのだが、今のタクミ達にとっては特に問題なく倒すことができた。タクミ達は、日が暮れる頃に見つけた平らな場所にコテージを出すと夕食にする。
「かなり、登ってきたな・・・下を見れば入り口の場所がもうかすんで見えないぞ」
「そうね・・・あと私ってこんなに体力があるんだね・・・まだまだ歩こうと思えば歩けそうだよ」
「これがステータスの効果なんだろうな。俺には登山スキルもあるから高山病とかにも耐えられそうだし、メグミにも神様の加護があるからたぶん平気なんだろうな・・・」
「そっか、高山病とかあるんだっけ・・・私は高い山って登ったことないから。登山も初体験だね」
夕食を終えるとコテージでシャワーを浴びてベッドで眠る。疲れもしっかりととれるので、翌日にはリフレッシュした状態で登山を再開できた。
誰もが想像できないような速さでタクミ達は、山を登り続ける。
出てくる魔物の種類や周囲の樹木の種類も変わり、標高の高さを肌で感じるようになる。
「かなり温度も下がってきたな・・・もう防寒具を付けたほうがいいかもしれない」
「そうね・・・さっきから少しスースーするような気がしてたから」
毛皮のない人間2人は、毛皮をまとう
「ホクト達って寒くはないの?」
『僕達には毛皮があるし、温度調節もできるからね』
『はい。私は雪山でも平気ですので・・・』
ホクトとナントは、雪山でも平気なようだ・・・。タクミ達は、さらに険しさを増す岩肌をものともせずに登る。そして4日目・・・
「うお!あの先が頂上じゃないか?」
最も高い場所ではないが、少し先で登りが終わり、その先は向こう側へ下っていっている。
「ようやく登山もおしまいかー」
タクミ達がいる場所は、すでに雲の上、はるか下には雲の隙間から大地であろうものが望める。
「それで・・・いつまでそこから見ているんだ?」
タクミが山頂のさらに上に視線を向ける
「なんじゃ・・・我の姿を捉えておったか?」
「それだけ立派な身体をしてればわかるさ」
雲が流れるとタクミの視線の先に巨大なドラゴンが現れる。黄色?いや黄金色のドラゴン・・・
天龍
レベル264
測定不可
「天龍様か・・・」
「ほう。我を鑑定できるのか?なかなかどうして大したものよ」
タクミも鑑定した瞬間、勝利できない事を悟る
「それで、俺達に何かようか?」
「そうよの・・・人の身でここまで来たのは、お主らが初の事、祝いの言葉でもかけてやろうと思ったまで・・・」
「そうか・・・それはありがたいな」
「お主らは、この後魔国へ行くのだろう?この山を越えるくらいだからな」
「ああ。これから魔国へ行って見聞を広めるつもりだ」
「ならば少しだけ話しをしておこうかの。魔国には、魔族が住むそうお前さんたちは、聞いているだろう?」
「ああ、そう聞いているな」
「まず、それは間違っておる。この山の向こうに住むのもお主たちと変わらぬ住人じゃよ。同じように暮らし同じように生きておる」
「魔族ってのは、人族の事か?」
「そうとも言えるし違うとも言えるの・・・」
「よくわからんな」
「この世界はな、この山脈で大きく南北に分かれておる。その地形などは鏡のように瓜二つじゃ。この意味がわかるかの?」
「鏡・・・。そういうことか」
「え?タクミはわかったの?」
「ああ。この世界の意味が少しだけな・・・。この世界はこの山脈を中心に南北に同じような環境がある。そして、そこには同じようにさまざまな種族が暮らしているのだろう。違うのは、その中に住む種族の感情だけだ・・・。南北それぞれが、同じ環境を与えられても南北に住む者が、どのように発展していくは等しくならない」
「そのとおりじゃ神に作られしこの大陸は、そのような意味を持っておる。じゃからわしは、この山を越える者にこの世界の意味を伝える役割を担っておるのじゃ。この話しを聞いたお主たちが、この後何をするのかはお主らの自由じゃ」
「この先へは行くなと・・・」
「行くのを止めはせん。止めても向かった者は過去にもおるからの・・・。しかしな・・・それをこの山を越えた者は、反対側の人から見ればまさに魔族じゃろうの・・・。」
「魔族の言い伝えは、この山を越えた住人ってことか・・・」
「そうなるな・・・」
タクミは考える。この世界の真実・・・そして自分がこの世界に来た意味・・・自分にできる事・・・自分がすべき事を
俺にこの世界に住む・・・生きる資格があるのなら。
書き溜めておいたものがなくなったのでここで少し充電します。




