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俺に異世界にいく資格はあるのか?  作者: 花山 保
異世界で俺は・・・
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獣人たち

「ねえ、お姉ちゃん」


「何?」


 ミュアがヒルデの声に顔を向ける。


「タクミが言っていた国ってどんな国なのかな・・・?」


 ヒルデは考えるように空を見ると


「さあね・・・でもひょっとすると母様が考えていたような国の事かもね」


 2人の母であるリリアが夢見ていた世界は、争いがなく獣人も人族も暮らす事ができるものだった。


「国って簡単に作ったりできるのかな?」


「うーん。私にもよくわからないよ。父様にでも聞かないと・・・」


 ヒルデがそう言った時、不意に後ろから気配を感じ振り向くと獣人の男にヒルデは口をふさがれる。


「静かにしろ!」


 そう言ったのは、里に住む獣人の男だった。


「お、お姉ちゃんを離して・・・」


 ミュアが獣人の男に懇願するが、すぐにほかの獣人の男が現れミュアも羽交い絞めされる。


「ちょ・・・ミュアに手を出さないで」


 ヒルデも必死に振りほどこうともがき叫ぶが、獣人の男たち力ではかなわない。


「静かにしろ!さもないと妹の命がないぞ!」


 ミュアを取り押さえた男が、ヒルデに怒鳴る。


「わ、わかったから。ミュアには何もしないで!」


 ヒルデは暴れるのをやめ、獣人の男に従った。


「俺達だっておまえたちに危害は加えたくなんかない。人族の男と女が、ここにいるってのに何もしない長に不満があるだけだ・・・」


 ヒルデ達は、つかまれたまま奥へのと連れていかれる。その先では


「長!あんたのやり方には納得できない。なぜ?そいつらを庇う?」


 他の獣人の男がロドスに剣を向けていた。後ろには、タクミ達がいる。


「何度も言わせるな。人族と言うだけで物事を捉えれば、この先に待つのは殺し合いだけなのだぞ」


 ロドスが一喝するが、獣人の男たちは引き下がらない。


「だがな、俺の姉貴は、こいつらの慰み者にされて殺されたんだ。人族を・・・許せるわけがないだろう!」


「それを許せと言っているのではない。ただ、関係のない人族を襲っも意味はないだろう」


 ロドスは説得を繰り返すが、男達は受け入れない。


「う、うるさい。だまってそいつらを引き渡せ。さもないと・・・」


 獣人の男達の中でロドスに声をかけていた男が、振り返ると拘束されたヒルデとミュアが連れ出され、首には、剣が付きつけられている。


「お前達がやっている事は、なんだ? 同族にまで剣を向け、関係のない人族を巻き込んでその先に何があるというのだ?」


 ロドスが男を責める。ちょうどそのときヒルデ達の後ろからダルカス達がやってきて男達を囲んだ。


「お、俺達だって・・・」


 獣人の男が膝をつくと、その姿を見た他の男達もヒルデ達を解放した。後ろからダルカス達がやってきて獣人の男達を引き連れて出ていく。


「ヒルデ、ミュア、大事ないか?」


 ロドスが2人の安否を確認する。


「だ、大丈夫です」


 ヒルデの返事にロドスもほっとした顔をする。周囲がようやく落ち着きを取り戻したのを見て


「申し訳ない。自分たちの滞在で里にご迷惑をかけているようです。これ以上の長居は余計なトラブルを生むでしょうし、自分達の次の目的も決まりましたからそろそろ旅立とうと思います」


 タクミがロドスに頭をさげる。


「里の事は、気にするな、どのみち我らも考えねばならぬ事だ」


 ロドスの気遣いはうれしかったが、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないとタクミは明日には里を立つ事を告げた。ロドスは、タクミの申し出を受け入れると、ささやかながら旅立ちを前に宴を催す事を決める。但し、あまり派手にすることもできないため、ロドスの家族とダルカス達と言った顔見知りだけの宴になった。


 宴は、タクミの提案もあり、タクミ達が材料を含め準備をすることとなる。


「こ、これは・・・」


 タクミがとっておきの魔物肉をいくつか取り出し串焼きしている横で、それに負けじとメグミもスープを作る。肉をやく間に、余裕のあるⅯPでハンバーグやコロッケなどの肉料理を出す。

 獣人の男達は、自分達で用意した酒を飲みながらそれらをつまむが、どれも口に入れると食べたことのないうまさに驚きの声をあげる。


 タクミの事をある程度知っていたヒルデ達もパンくらいしか食べた事がなく、2人がふるまった料理を口に入れるたびに固まっていた。なぜか会話が盛り上がらず、黙々と食べる不思議な宴は、食べ物があらかたなくなるまで続いたが、最後にタクミがデザートと言って出した「アイスクリーム」や「ショートケーキ」を食べた獣人たちからはすでに言葉がなかった。


「あーなんだ・・・。すまんな・・・」


 ロドスの最後の締めの言葉も隣でデザートに夢中の娘2人の姿にかき消された。


「俺は、人族は嫌いだがおまえたちは嫌いじゃないぞ」


 少し酔ったダルカスがタクミの肩をたたきながらそう言ったのが、最も印象的だった。


「ずいぶんうまくなったな・・・」


 タクミがメグミの作ったスープを飲みながらそう言うとメグミが笑顔になる。酒を飲まないタクミ達は、宴の後始末をしてから自室に戻ると


「明日にはここを立つ。そして山脈を越えて魔族とやらに会いに行くつもりだ」


 タクミが、メグミ達にそう説明すると


「了解。また一緒に旅することになりそうだね」


 とメグミが答える


「そうだな・・・今度はどんな旅になるのかわからないけどな・・・」


 










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