俺達の道へ
「タクミ。メグミと言う女を知っているか?」
ロドスの家に現れたダルカスがタクミに確認する。
「なんでメグミの名前を知っているんだ?」
「ってことは、嘘じゃないのか。いや、お前と同じように森で俺達を探しているところを見つけ連行してきたんだ。抵抗もしなかったしお前の名前や特徴も知っていた。おまけにお前と同じように狼を連れていたからな・・・」
「うん?メグミがここに来ているのか?」
タクミは、疑問を感じながらもダルカスに確認する。
「ああ。言ったとおり、里に連行してきた。お前を探していると言っていたからな・・・。一応拘束はしたが、手荒な真似はしていないから大丈夫だ」
「そうか・・・また無理をかけてしまったな・・・」
タクミは申し訳なさそうにダルカスに頭を下げた。タクミは、四次元ポケットから王都のダンジョンで手に入れたオークナイトの肉を取り出すと
「何もできないが、手間賃だと思って食べてくれ・・・」
とダルカスに渡した。タクミと一緒にバーベキューをしたメンバーは、タクミが提供する肉の味を覚えていたためダルカスの後ろの男たちはごくりと喉をならす。
「気にしないでも良い・・・と言いたいがおまえの肉は格別だからな・・・遠慮なくもらっておくよ」
後ろの男たちから歓声があがる。その様子にため息をつきながらダルカスは
「おい。人族の女を連れてこい」
と後ろの男たちに指示した。
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長であるロドスの家には、ロドス親子とタクミ、メグミ、ホクト、ナントが揃った。
「して・・・その女が、おまえの連れ合いか?」
ロドスが、メグミを見たあとタクミを見てそう言うと
「はい。まだ婚姻はしていませんが、先々そうするつもりでいます」
とタクミが答える。ヒルデやミュアが興味深々と言った様子で2人を見ている。
「それで、なぜタクミを追ってこの森まで来たのだ?」
「はい。少し話が長くなりますが、説明しますね」
メグミは、タクミの顔を見る。タクミが頷くのを確認してから話し始める。
「王都にある自宅で・・・その・・・おっ・・・タクミを待ちながら何事もなく生活していたら冒険者ギルドから呼び出されたのでギルドへ向かう事になりました。冒険者ギルドの会議室で、王都のダンジョンを攻略したのが誰かと言う話になり、それが私達だと冒険者や兵士に詰め寄られて最終的に私は王城に捕えられました。その後、ホクトと何とか王城を脱出しましたが、その結果、私とタクミは指名手配されてしまい人目をさけるようにここまで来ました。」
『メグミの補足だけど、王都のダンジョンはどうやら機能を停止したようなんだ。それで、王都の経済はかなり打撃をうけたようで、その犯人捜しにメグミが巻き込まれたみたいなんだ。ダンジョンで、僕たちを見たりしていた冒険者がいたようで、そいつらがメグミを攻め立てたみたいだよ。王の部下は、メグミを魔族だと認定して周辺各国へ捕えるようにふれを出したみたいだね』
メグミの話しとホクトの補足でようやく事態を理解したタクミは
「冒険者ギルドは、中立で個人情報は守ると言っていたが・・・」
タクミの指摘に
「一応、ギルドマスターのような人が、色々と兵士なんかには不満を言っていたけど、王の監察官?って人が無理やり話を進めてしまって、そこからはもう一気に・・・責め立てられちゃったよ」
そう言ってうつむくメグミを見てタクミは頭をポンポンと叩くと
「俺の配慮不足だな・・・ダンジョンの事もそこまでは考えなかった。無事にここまでたどり着き情報をもってきてくれただけでも大したものだよ」
とメグミを慰めた。タクミは少し考えるそぶりを見せると
「さて、どうしたものかな・・・」
「お前が知りたいと言っていたのは、こう言うことではないのか?」
考えるタクミにロドスが声をかけた。タクミはしばらく口を閉じ沈黙するもゆっくりと話しはじめる。
「俺は、獣人も人族もおそらくは魔族も目に見える違い以外に変わりはないと考えている。そして、どんなやつらの中にも良い奴と悪い奴がいる。これは、俺のわがままかもしれないが、俺は俺が気にいった奴らが安心して暮らせる場所を作りたいと思っている」
「安心して暮らせる場所か・・・ならそれはおまえの国だな。お前が器を作りお前が守る・・・そうすればお前の望む暮らしもできるのだろう」
ロドスがタクミにそう言った。メグミやヒルデ達の視線がタクミに向かう。
「そうだな・・・俺はこの世界に国を作りたいのだろうな・・・」
「国を作ると言ってもそれにはいくつかの方法がある。今ある国を乗っ取るか新たな場所に国を興すかだ。だが、住む者のいない国は国と呼ばんぞ」
「ああ。それはわかっているさ。なあメグミ・・・小さくてもいいから俺達の国を作ってみないか?これは俺のわがままだけど一緒に暮らすなら協力してほしいんだ」
「国ってそんな簡単に作れるものなの?」
メグミが、心配そうに尋ねる。
「簡単じゃないと思うけど俺達ならな・・・」
タクミは、自分達の力やスキルがあれば建国すら可能と考えていた。無論、いくつか解決しなければならない課題も把握していたが・・・
「だったら協力するよ」
メグミの返事はあっさりとしていた。
「助かる。それまでは、そうだな。魔族にも会いに行ってみるか?俺達はどうせお尋ね者だしな」




