俺の一人旅 2
共に夕食を囲み食べた。それだけだ。
獣人の男達は、ここで少し待てと俺に言った。だから、俺はここで待つ。あれから3日、俺はただ男たちを待った。ひょっとしたらこのまま誰も来ないかもしれないが、俺は待ち続けた。
俺があの日から数えて4回目の夕食を作っていると、獣人のリーダーの男が現れた。
「すまない。ずいぶんと待たせてしまった・・・」
リーダーの男が俺に頭を下げた・・・
「いや、俺は、気にしていない。大変なことを頼んだ自覚があるからな・・・苦労をかけたのだろう」
俺は、逆に労いの言葉をかける。
「せっかくだからまた一緒に肉を食べないか?」
俺は、席を勧める。
「お前の作る飯や肉は、うますぎる・・・お前といると俺たちはおかしくなってしまうかもしれない」
男は、そう言って席についた
「俺は、おまえのことを里の長に伝えた。長は、最初は何を言っていると大変お叱りになられたが・・・たまたまその長の娘が話を聞いていて話が変わった。お前が助けたと言っていたのは長の娘だ・・・まあ、お前に助けられたことはそれまで口にしていなかったそうだが・・・」
「そうか・・・」
ヒルデかミリアかわからないが、縁ってのはあるもんだな・・・
「お前については、長も許可を出した。里にも案内しよう。ただし、幾つか約束してほしいことがある」
「ああ。こっちの無理を聞いてもらうんだ。たいていのことなら了解だぞ」
「なら頼みは2つだ。。まず、里には客として招くが自由に動くことは制限させてほしい・・・俺か俺の代わりの者が、側にいることを里に入れる条件にしたからな・・・。あとは・・・そうだな・・・もしお前に石やなんかが飛んできても・・・その石を投げた奴を許してやってほしい。お前には何の恨みもない・・・ただ・・・俺達の人族への恨みは根深いのだ・・・。それと俺は、ダルカスと言う。」
俺のためにいろいろと掛け合ってくれたのだろう・・・。条件と言うが、俺のために考えてくれたのだろう。
「わかった。苦労をかけてしまうな・・・。俺の名は、タクミと言うよろしく頼むダルカス」
俺は、そう言って頭を下げた。俺たちは、肉を食べながら最低限の打ち合わせを行う。その後、獣人の男に案内されて、俺は獣人の里に足を踏み入れた。
ダルカスはは、里と言っていたが・・・なかなかに大きな街だな・・・。規模からして千人は間違いないなくいるだろうな・・・。獣人と言っても耳が少し独特だが、他は人族と大きな違いがない。あ、しっぽがあるな・・・。だが、俺にはその程度の違いしか感じられない。
ダルカスに案内されて俺は、街の中を歩く・・・。俺を見る獣人たちの目つきはきつい・・・。石は飛んでこなかったが、それ以上に強い敵意を感じた。
ダルカスは、俺を里長の元へ連れていくと言ったので俺は、後ろを黙ってついていく。
里の中央部に他より少し大きな屋敷が見えた。里の他の建物は全部平屋のようだが、この屋敷だけは屋根が高く作られている。そして、どうやらここが長の屋敷のようだ。
ダルカスが、俺を玄関先に待たせ中に取り次ぐと、40代くらいの逞しい男が出てきた。
「入れ!」
それだけ言うと奥に戻っていく・・・俺達は、指示に従い家の中に入る。逞しい男についていくと板張りの広間に席が設けられていた。どこか剣道の道場のような雰囲気がするが、俺達の他にも席には逞しい男達が数人座っていた。幹部か何かか・・・
板張りの床に丸い座布団のような敷物がいくつか並んでおり、どうやらそれに座るようだ。全員が、席につくとダルカスが話しを始めた。
「長、この男が話しをした男です。」
「わかっている・・・」
長の言葉は深く重い。
「まずは、名乗ろう。この里の長をしている。ロドスだ」
「俺は、タクミだ。今回は、このような時間と機会をいただいた事にまず感謝する」
率直に礼を伝え頭をさげる。
「ふん!人族が・・・なんの機会を望む・・・」
長の側に座った男が言う。俺はその男を見て
「俺に話しを聞く機会を与えてほしい」
と答える。するとまた違う男が
「何を聞きたいと言うのだ?」
と俺を問いただす。俺はゆっくりと姿勢を正し
「俺は・・・旅をしている。それは、この先、俺がこの世界でなにをすべきかを見つけるためだ。そのために、お前たちの話を聞きたいと思った。だからここまでやってきた」
「・・・」
長は答えない。目を閉じ・・・考えているようだ。
「話しを聞いてどうする?私達を根絶やしにするのか?」
また、長の隣の男が俺に問う
「そうだな・・・」
俺の言葉に緊張感が走る・・・
「話しによっては、根絶やしになるのは人族になるだろう」
男達はあっけにとられた顔をする。
「な、なにを言って・・・」
予想外の返答だったのだろうな・・・
「もうよい!」
長がようやく声をあげる。
「タクミと言ったな。滞在を許す。条件は、ダルカスが伝えた通りだ」
俺は頭を下げ
「感謝する」
とだけ伝えた。他の男達が、長に再考を促すが、長は頑として聞き入れなかった。
「今日はもう晩い。旅の疲れもあるだろう寝所を用意する。まずは休め、話しは明日付き合ってやる」
長はそう言うと目配せして席を立った。他の男達も長について部屋を出ていった。
「肝が冷えたぞ・・・」
ダルカスが俺に言う。
「心配させたな・・・」
素直に謝っておこう。
その後俺は、寝所に通されたので布団に入る。俺には、どこか懐かしい感じがした。まあ、布団で寝るのもしばらくぶりだからな満喫させていただこう。




