俺達のダンジョン 4
僕はホクト・・・女神さまがメグミを導くために創造した神狼だ。
そして、僕の前には・・・
「くぅーん」
なぜか白狼ナントがいる。最近、僕がリビングなんかで寝ているといつの間にかそばで一緒に寝ている。
今も、僕が食事をしていると横でよだれを垂らしている。君の肉は、そっちにあるだろう・・・いや・・・もう食べ終わっているのか・・・
僕は、仕方なく僕の肉を分けてやる。
ああ・・・あの日から僕の生活は一変した。
タクミがテイムした白狼ナントの教育は、なぜか僕に一任された。僕は、理不尽だと思ったけど・・・メグミに頼まれて断れなかった。テイムされた証の首輪は僕が偽装した。ついでにナントは、白狼ではなくグレイウルフの亜種ってことにしておいた。まあ、見た目はそんなにかわらないから大丈夫だろう。
ダンジョンから戻る間、魔物からナントを守るため僕はつきっきりで世話をした。途中でパーティーになっているせいかナントのレベルも上がり始め、ダンジョンを出るころにはレベルは10になっていた。
ナント 白狼亜種
レベル10
力 39
体力 30
器用 19
素早さ 46
魔法 17
抵抗 19
スキル 噛みつきレベル2
僕と違ってナントには、レベルがある。成長するとかなり強くなる気配があるな・・・
でもまだまだ子供だ・・・。僕にじゃれてくるし・・・遊んでくれと甘噛みしたりしてくる。僕は、暇じゃないけど、大人だから仕方なく付き合ってやるのだ。
テイムしたのは、タクミなのにナントは僕といる時間が長い・・・。街に外出するときも僕が面倒を見る。ナントは、目を離すとすぐにはぐれそうになるので、その都度僕は注意しなきゃならない。
タクミ達が店に入るとナントは、一緒についていこうとするので、僕はナントを捕まえて一緒に外で待っていなければならない。
まったく僕の負担ばかり増えているじゃないか・・・。
家に戻るとメグミがナントをだっこしたり、撫でたりしている・・・ナントは子供だから確かに可愛いところがある。別に僕は大人なんだからうらやましくなんてない・・・。
今日の夕食は、僕の好きなオーク肉だ。タクミがたまに奮発して出してくれる。タクミが出す異世界の牛肉とかも美味しいけど僕はこれが一番気に入っている。味わってオーク肉を食べているとまたナントが僕のオーク肉を狙っている・・・。キミの肉は・・・もう食べたのか・・・食べるのが早いな。だけど、僕はお肉をあげないのだ、くせになったら困るからね。
「ホクト!ナントがかわいそうでしょ!」
メグミが僕を責める。
『メグミ・・・ナントに変な癖がつくからけじめはつけないとだめだよ』
僕は精一杯反論する。
「そうだな・・・」
タクミは賛同してくれたようだ。
「でもナントは成長期なんだろ?どれ・・・」
そう言うとタクミは、追加のオーク肉を出してナントのお皿に乗せた。前に僕が、お肉の追加を頼んだらタクミは贅沢はだめだと言ったのに・・・本当に理不尽だな・・・
次の日、事件が起こる。
僕は、朝、いつもどおり目を覚ますと側にナントがいないことに気がついた。いつもならメグミの部屋で一緒に寝ているはずなのに・・・。
『メグミ・・・ナントがいないのだけど知らないかい』
僕は、心当たりがないかメグミに聞いた。
「え?ナントいないの?」
メグミも知らないようだ。
僕達は、ナントが部屋の中にいるのではと探したが、部屋にナントは見当たらなかった。部屋のドアが少し開いていたので部屋の外へ出たようだ。完全に閉まっていなかったのかもしれない・・・。
メグミと僕は、ナントを探す。
リビングにもいない・・・。なぜか嫌な予感がする。
僕達がナントを探していると何事かとタクミも起きてきた。
「どうかしたのか?」
タクミが僕達に声をかけた。
「タクミ!ナントが見当たらないの・・・」
メグミが心配そうに答える。
タクミと僕は、索敵スキルを使い自宅内を探るが・・・気配がない。まさか・・・家から出たのか・・・。不安が高まる。
「ホクト!臭いを追えないか・・・」
家の中には、ナントの匂いがたくさんあるのでわからないけど・・・外ならわかるかもしれない。僕は、家の外へ出ると匂いをたどるように飛び出した。
わずかに残るナントの匂いをたどる。後ろからタクミ達がおいかけてくる。ナントの匂いは、外周の外へ向かって続いている。一体どこへ・・・
僕は、ナントの匂いを追って走った。定期的に索敵も駆使してナントの気配も追った。無事でいてくれ・・・。
だけど・・・なぜか途中でナントの匂いが弱くなり、匂いが途切れる・・・。
『タクミ、匂いがこの辺りで途切れている』
僕は、念話で匂いが途切れた事を伝える。タクミは、索敵を使っているのか周囲に集中したようだ・・・。僕は、わずかな匂いに集中する。
突然、タクミは、後方に向かって走りだし、1台の馬車を静止させた。御者の男が驚いて馬車を止める。
「あ、あぶねえだろ・・・」
御者の男がタクミに文句を言う。
「いや、悪いな・・・ちょっと馬車の中の奴に用事があってな・・・」
まさか・・・僕は、ゆっくりと馬車に近づき気配を探る。
「何を言ってやがる・・・俺には関係ねえ」
男がタクミに文句を言っている間に僕は、馬車の中に顔を突っ込むとはっきりとナントの匂いと気配を感じた。ナントは、眠らされているのか呼吸はしているようだがまったく動かない。
『タクミ!ナントがいた。眠らされているのか動かない』
タクミにナントの様子を伝える
「悪いがその馬車の中の狼は俺がテイムした奴だから返してもらうぞ」
男がびくっと反応した。
「なんの証拠があって・・・」
僕は、怒っていた。もし、ナントに何かあったら許さない。馬車の後ろから僕は男に近づき、御者台の後ろに飛び乗った。僕に気がついた男に向かって牙を立てる。
「ヒ、ヒィ!」
悲鳴を上げる男に
「ほら、家族を奪われると思って怒っているぞ!どうするんだ?」
タクミが男を脅す。
「わ、わかった。狼を返すからこいつをどうにかしてくれ」
ようやく男は、ナントを返す事を認めた。僕は、馬車の中に入りナントの無事を確かめる。メグミがナントを抱きかかえ馬車を下りる。
タクミは、男を問いただすと、街中でテイムされた珍しい色をした狼が1匹で歩いていたので、連れ去って売ろうと考えた。睡眠薬の入った肉を与えたら食べたので、眠ったところを馬車にのせ運んでいるところだった。
タクミは面倒ごとをさけ、男を解放した。男も後ろめたいのだろう足早に立ち去った。
タクミがナントを抱えて、家に戻り、家のリビングナントを休ませる。しばらくするとナントは目を覚まし「くぅーん」と鼻先を僕につけてくる。
タクミが
「少しきちんとしつけないとだめだな・・・ホクトに任せっぱなしにした俺の責任だ」
僕がきちんとナントを見ていなかったからだ。タクミだけのせいではない。
何事もなかったかのように僕達の顔を見るナントを見て僕たちは決意を新たにした。




