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俺に異世界にいく資格はあるのか?  作者: 花山 保
異世界で俺は・・・
32/128

俺達の王都攻略 5

「これは?」


 俺が尋ねると店の男が答える・・・


「それなら銀貨5枚だな・・・」


 なるほど・・・だいたいこんなもんか。


 俺は、商業区で鉱石や薬草、魔物素材の価格情報を集めながら王都のダンジョンの情報を求めた。


 鉱石や薬草などの価格は、ダンジョン上層で手に入る物は比較的安い。数が出回るからな・・・

 逆に中層以降でしか手に入らない物は、値段が高いようだ。


 王都は、ダンジョンの影響が大きいな・・・。俺は、商業区の真ん中にある噴水の前に腰掛け思考を巡らせる。


 王都のダンジョンは、大きく分けると3層構造になっている。上層と中層と下層だ。上層は全部で5階で構成されていることがわかっており、それぞれの階層のマップもほぼ完成しているとのことだ。1階から2階は、レベルの低い冒険者が多く、3~5階にはベテラン冒険者が多い。

 中層に挑める冒険者は、冒険者全体の1割程度と少なく・・・かなりの実力がないと中層の魔物には歯が立たないようだ。中層へ挑めるようになることが王都の冒険者達の目標になっているとも聞いた。中層帰りの冒険者は、ギルドでも一目置かれるとかね・・・

 そして下層だが・・・。近年、下層にたどり着いた者はいないそうだ。ではなぜ?下層がある事を知っているのかと言うと・・・この王都を建国した初代国王が、下層に達しているからだ。今の国王は、10代目と言うから下層に到達したのは100年以上前の事だろう・・・。


 ダンジョンは、マップこそ変わらないようだが、日々活動しており、魔物が急に出現したり、宝箱がある日突然現れることもあるようで、その仕組みや法則はまだわかっていない。


 さて、この状況なら俺達がすべきことは・・・そうだな・・・。


 ひとつは、冒険者として、中層以降に挑めるように強くなること。次は、ダンジョンでは手に入らない物は高額になるのでそれらを選んで換金すること。ダンジョン攻略に必要な装備を整える事だな。


 冒険者としてレベルを上げる事は、俺達の目標を考えても都合が良いし問題はない。自宅も買ったからここを拠点にしてダンジョンの攻略を進めよう。


 少し現金が減ったので・・・今、所持している大量の素材を、換金額の良いものから選んで売り現金に換える。


 装備か・・・武器は、鍛冶で作るか・・・防具はその様子によってだな・・・。作れるもんなら作るが・・・買った方がいい時は、覚悟して買うか・・・。


 なら、最初は、換金額の良さそうな素材の売却だな・・・この3ヶ月と旅の途中に手に入れた素材の大半が四次元ポケットに収納されている。これである程度の資金が得られるはずだ・・・


 俺は、素材の買い取りをしている店に向かう。


 素材の買い取りは、冒険者ギルドに納める方法と直接店に持ち込む方法がある。ギルドのクエスト対象の素材は、ギルドに納めなければギルドポイントがもらえない。しかし、冒険者ギルドが中間マージンを取るため、直接店に売るよりもギルドで買い取りしてもらう方が買い取り額は安くなる。クエストに関係なく素材を売るなら直接店に持ち込んだ方が高く買い取ってもらえる仕組みだ。


 俺は素材の買い取りをしている店を探しているとどこかで見たマークが目に入った。少し寄り道だな・・・


「すまないが、ここはロドリコ商会でいいのかな?」


 店員は、


「はい、そうですが・・・今日はどのような物をお求めですか?」


 俺は、四次元ポケットを開く


「おや、収納スキルですか・・・うらやましいですね・・・」


 俺のスキルを見て店員が言う


「ああ、自慢のスキルだからな・・・。えっとな、俺は旅してきたんだが・・・」


 俺はそう言いながら四次元ポケットから箱を取り出し店員に見せる・・・。


「あの?これは・・・なんでしょう?」


 店員が不思議そうに俺に尋ねる


「実は・・・、俺は、王都に来る途中にロドリコさんって商人とトライムの街まで一緒に馬車で旅を共にしたんだ。俺とロドリコさんは、トライムの街で別行動することになって、俺達はロドリコさんに1日遅れてトライムを出発したんだが・・・峠の王都側の道で、ロドリコさんの馬車を見つけたんだ。俺が馬車を見つけた時には、馬もロドリコさんも見当たらなかったんだが・・・馬車は間違いなくロドリコさんの馬車だった。馬車の中でこの箱を見つけたので・・・届けさせてもらったんだ」


 店員は、驚き言葉が続かない


「残念だが・・・ロドリコさんは・・・」


 俺が言いかけた時、店員は我に返り、店の中に入っていった


「お、奥様!だ、旦那様が・・・」


 どうやらロドリコさんの奥さんがいるようだな・・・。ばたばたと音が聞こえ妙齢の女性が現れる。


「しゅ、主人はどうなったのですか?」


 転げるように現れた妙齢の女性が俺にそう確認する


「俺が、馬車を見つけた時にはもう・・・ロドリコさんの姿はありませんでした。馬車は横転していて、中には積荷がそのまま残されていましたから・・・おそらく魔物に襲われたのではないかと思います。馬車の中でこの箱と生地を見つけたので今日はそれを届けにうかがいました」


 俺はそう言って箱を開け奥さんに渡した・・・ 


「これ・・・」


 奥さんが箱の中に入っていたブローチを見て・・・


「私が・・・お土産にねだった・・・赤いブローチ・・・なの?」


 奥さんの顔は、すでに涙であふれていた。


 俺は、四次元ポケットから馬車に積まれていた生地を出し店員に渡す。


「あとは、この生地が馬車に積まれていました。他は申し訳ありませんがそのまま馬車に残してきました」


「いえ、ここまでしていただいただけでも・・・」


 店員が申し訳なさそうに俺に言う・・・奥さんは、しばらく泣き続けるのだろうな・・・


「それでは俺はこれで・・・」


 これ以上は、俺には何もできないしな・・・


「あ、あのせめてお礼だけでも・・・」


 店員が俺に声をかけるが、俺は背を向けたまま店を後にする。



 ロドリコさん・・・義理は果たしたよ・・・



 俺は、重たい気持ちを引きずりながら素材の買取をしている店を探し歩く。ようやく目的の店を見つけた俺は、店の中に入るとすぐに店員に声をかける。


「すまないが、買取を頼みたい」


 すると店員は、


「はい、今日はどのようなものをお売りいただけるのでしょうか?」


 店員は、手もみしながら答える・・・


「そうだな・・・今、買取したい素材や鉱石はあるか?」


 俺は店員に逆に質問を返す。


「え?ああ・・・そうですね。えー・・・薬草とかですと・・・月見草や月光草あたりが品薄ですね。鉱石なら銅鉱石や鉄鉱石以外の鉱石は年中品薄状態です。あと、魔物素材なら中層以降で手に入るものやダンジョンでは手に入らない素材は良い値段で買取させていただきます」


 なるほどね。月光草はないが・・・月見草は大量にあるな・・・鉱石はおつりがくるくらいあるから相場次第だな・・・。魔物素材から行くか・・・


「では、色々と出しますので値段をつけてくださいね。良い値をつけてくれたら売りますので・・・」


 俺がそう言うと店員の目が厳しくなる。商人の目だな・・・


「まずは、そうですね皮素材で、ホークラビット、レッドベア、ブラックウルフ、ビッグボア、ジャイアントリザード、フォレストウルフ、ビッグバイパーがありますね」


 俺が次々と素材を出すと店員が


「いやはや・・・それだけの量が入る収納スキルにも驚きますが、ビッグバイパーの皮なんかはしばらくぶりに見ましたよ・・・辺境あたりで手に入れたのですか?」


 さすがだな・・・魔物の生息域まで把握しているのか。


「俺は東の辺境の街から来たからな・・・あの辺で手に入る素材は大体持っているぞ・・・」


 店員の動きを見逃さないように注視する。


「なるほど。そうですね~ビッグボアとホークラビットあたりは、王都の周辺でも手に入るので正直価格は大したものにはなりませんね。レッドベアやビッグバイパーは、この辺では稀少ですし、素材の用途も多いので良い値をつけられます」


 俺の持論だが、交渉の秘訣は、情報の有無と駆け引きだ。


「ほかにも色々と素材を持っていますが・・・俺は王都に来たばかりでこちらの相場に疎いのですよ。それで、信頼できるお店を探していたので・・・もしこちらで良い値をつけてくれるなら、今後もこちらの店を使わせてもらおうかと思っています」


 先にある程度の情報を渡し・・・実際の引出の中身は隠す。でも引出が多い事がわかれば・・・


「も、もちろんですよ。私達は、お客様から買い取る素材を転売して利益を得るわけですから、どれだけ良質な素材を買い取れるかで店の信用や価値が高まるのですから・・・。少しお待ちください」


 店員は、店の奥へ一度下がり、もう一人の男を連れて現れる。店員に連れられてきた男は


「どうも・・・この商会の代表を務めております。ゼセルと申します。お話は、店員から聞きましたので場所を変えてご商談をしたいと思います」


 俺は、ゼセルと言う男に案内され店の奥の応接室に入る。手際よく女性が飲み物を用意し机に並べていく・・・


「さて、改めまして私が、この商会の代表を務めるゼセルと申します」


 なるほどね、ある程度は認めたって事か


「ああ。丁寧な対応に感謝する。俺は、タクミと言う。冒険者をしている。つい先日辺境の街から王都にやってきた」


「なるほど、それで珍しい辺境の素材をお持ちですか・・・これは楽しみですね」


 ゼセルが営業スマイルで応える


「買い取りを頼む前にいくつか相談があるのだが・・・」


 俺はゼセルを試す


「どういったことでしょうか?」


「まあ、頼みと言うかな・・・俺が持ち込んだ事や俺の事をできるだけ伏せてほしい」


 首を傾げるゼセル・・・


「それはまたなぜ?」


「ああ、いやな・・・冒険者なんかをしているとな・・・ほら・・・俺は若いだろう。色々と詮索されたり、嫉妬されたりが煩わしいんだ」


「ああ、そう言うことですか・・・それでしたら私の責任においてあなたの情報は伏せるようにいたしますよ」


「それを聞いて安心したよ・・・」


 さて、最低限の言質はとったし


「なら、商談を始めようか・・・」


 そのあと俺は、次々と価格を確認しながら素材を売っていく・・・わかったことは、解体スキルの効果だな・・・レベルの高い解体スキルで魔物を解体すると傷も汚れもなく最高の状態で素材が手に入るので買い取り額が高くなるそうだ。


「で、では・・・総額で・・・金貨272枚と銀貨70枚ですね」


 店員が計算を終えた・・・俺も疲れたよ・・・正直最後の方はもう集中力がなかったな。ゼセルさんもさすがにぐったりしている。


「いやいや、これほどの量を買ったのは記憶にないですね・・・。しかもどれも状態が良いとは・・・うちで専属で雇いたいくらいですよ」

 

 ゼセルさんが俺に言う。買い取り屋では、専属の冒険者を雇い顧客のニーズに合わせて素材を集める事も多いそうだ・・・


「まあ、今回はたまたまですよ・・・」


 結局俺は、魔物素材と薬草類の一部を換金したが、鉱石やマジックアイテムには手をつけなかった。さすがに・・・これ以上は、色々とまずいだろうしな・・・。





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