僕は、心配で
僕は、タクミの言葉に反論できなかった・・・
「なあ、ホクト・・・。わかっているんだろう?このままじゃあいつは・・・今のメグミには、この世界は厳しすぎる・・・。俺やお前がいたら・・・あいつの覚悟は、ただの言葉になっちまう」
そう。今のままじゃメグミは、ダメだろうね・・・
『でも、危険だ。危険すぎる・・・。もし、万が一にも・・』
「だからだ!厳しいようでもお前は甘い。なんだかんだ言って、あいつを甘やかしている・・・。このままならあいつは・・・死ぬぞ・・・」
また、失うのか・・・大切な人を・・・
『わ、わかった・・・提案に乗ろう』
タクミの言うのは正論だ・・・。このまま、メグミが、冒険者になれば、どこかで僕やタクミを当てにするだろう。それは、冒険者にはとっては致命的だ・・・覚悟のない判断は、自分や仲間の命をいつか危険にさらす。
『だ、だけど、本当に大丈夫なんだよね・・・』
「聞かなくても俺のスキルを見れば、治癒魔法があるのはわかるだろう・・・ホクトもメグミが絡むとおかしくなるな・・・」
・・・僕が、冷静にならないとな・・・また、大切なものを失うわけにはいかない。
僕は、タクミの提案に乗り、メグミを死地に追いやることにした。メグミのために・・・自信を持たせてあげたいな。やっただけ動いただけ、結果はついてくる・・・
計画通りに進み、メグミには、試練が訪れた。メグミの細い腕から血が流れる。僕は、正直生きた心地がしなかった。すぐにても飛び出して、魔物から守りたい・・・
飛び出したい想いを噛み殺す・・・
メグミは、覚悟を決めたのか、自らの腕を犠牲にして・・・魔物に止めをさす・・・
『タクミ!頼むよ!』
僕は、意識を失うかのように倒れ込むメグミに駆け寄る。よかった気を失っただけだ・・・
タクミは、駆け寄ると治癒魔法を発動した。みるみるうちに傷が消えていく・・・
『す、凄いな・・・』
正直、驚いた。ここまで強い治癒魔法は、知識にない。
「ああ。これでも医者だしな・・・」
医者?怪我を治す仕事か何かか?。いや、今はそんなことよりもメグミだ。
『傷・・・残らないよな・・・』
「ああ。心配なさそうだ」
よかった・・・
メグミの鑑定をして、無事なこととレベルが、上がったことを確認する。そして、新たに剣術スキルを得たことを・・・
『メグミ・・・剣術スキルを手に入れたよ。レベルも上がった。加護の効果で凄い勢いで成長しているよ』
タクミは、僕の顔を見て
「これで、こいつも変われるな・・・」
と言った。僕もそう思う・・・これで、メグミも・・・
宿までタクミが、メグミを背負ってくれた。同時にメグミを背負えない僕は、悔しかった。
メグミの意識が戻る
『おはようメグミ・・・』
僕は、タクミが傷を治した事や結果をメグミに伝えた。メグミは、しばらくの間、泣いていた・・・。きっとほっとしたのと仲間と言われた事がうれしかったのだろう。
『どうだい?身体に、痛みやおかしなところでもないかい?』
メグミは、身体を動かし一通り確認すると
「うん。大丈夫。むしろ、調子がいいわ。そうだ・・・タクミにもお礼言わなきゃね・・・ありがとう・・・なのかな?」
『そうだね・・・。君が強くなれたのは、タクミのおかげだからね』
「剣術スキル・・・か。私にもできたんだね・・・。ねえ? ホクト・・・私にも魔法とかのスキルも身につけることができるかな?」
『君次第だよ・・・わかっただろう?』
「そうね。この世界は厳しい・・・けど、努力や成果が、目に見えるってのは悪くないわね」
ニコリと笑うメグミを見て、僕はメグミの変化を感じた・・・
『良いことも・・・悪いこともあるさ・・・』
あくる日から早起きして剣を振るメグミがいた・・・
たまに寝過ごすのか、慌てて出ていくときもあるけど・・・。メグミはあきらかに変わった。きっとあれが、きっかけになったんだ・・・な。今は、貪欲にスキルやレベルを上げようと工夫する姿が見られる。その工夫は、女神さまたちの加護を受けさらに効果を発揮した・・・
メグミ・タカキ
レベル9
HP 105(105)
MP 120(120)
力 20
体力 21
器用 20
素早さ 19
魔法 28
抵抗 27
追加スキル
剣術レベル3 身体強化レベル2 水魔法レベル3 氷魔法レベル1 光魔法レベル2
種族によって大きな違いがある基礎値だが、加護のあるメグミは、異常なスピードで上げていく。このままいくと人族の基礎値をはるかに飛び越えていくだろう。
スキルやレベルの上がり方も早い。いや、早すぎるな・・・わずか数日の訓練と実践ですでに剣術はレベル3に上がった。実践の中で身体強化も身についている。魔法に至っては、実践で数回試用したら使えるようになり、数匹の魔物を狩るとレベルが上がった。確かにレベル3くらいまでは、短期間で上げることも可能かもしれないが・・・それにしても数年かかるのが一般的だろう。
タクミとこのことについて相談するとタクミは
「すごいな・・・俺もうかうかしてられないな・・・。」
「メグミは、今、楽しくて仕方ないのだろうね・・・」
「次の壁にぶつかるまでは好きにさせたらいいさ・・・」
と言う。そうだね・・・。
メグミは、強くなれる事に気が付いた。どうすれば強くなれるかを知った。次は、強さの意味を知るだろう・・・。
僕は・・・
そうだね・・・僕は、しばらく彼女の影だ。メグミが強くなり、本当の意味で僕を必要としたとき、メグミの隣に立てるように努めよう。その日がくるまでは・・・」




