私は、何もできない!?
朝・・・
『メグミ・・・朝だよ』
「・・・」
『・・・メグミ・・・わざとじゃないよね・・・?』
突然、何かが私の・・・
「ほ、ホクト?」
『やあ。メグミ・・・おはよう』
私は、啖呵を切ったにも関わらず寝坊した・・・してしまった。き、昨日は、本当に色々あって・・・疲れてて、それで・・
・・・言い訳だよね・・・
「ごめんなさい・・・寝坊してしまいました」
私は、朝ごはんを一緒に食べる仲間に謝る・・・。タクミは無言で朝食を食べる。
「まあ、そんなことはいい・・・。早く食べてギルドへ行くぞ」
タクミにそう言われ、うなずくことしかできない私・・・。ホクトも私のことをちらっと見たと思ったらなぜか視線を外された・・・怒ってるのかな?
私は、本当に何もできない。かっこよく覚悟なんて言ったり、決意はするくせに・・・ひとつだって実現させたことがない・・・。前の時もそうだったな・・・中学に入ったとき、テニスを始めると言って両親に頼んでラケットやなんかを買ってもらった。テニス部をやめたのは・・・3日後だっけ・・・
走れない・・・動けない・・・なんて言い訳して、みんなに迷惑をかけた・・・
「この世界でも私はだめなんだろうか?」
そっとホクトを見る。きっと聞こえているのでしょ?私の声が・・・。でもホクトは返事をしない。わかっている・・・このままじゃだめだってこと・・・
私たちは、ギルドに着くと、タクミは受付で誰かを指名した。ついていくと買取カウンターってところでお金を受け取っていた。え?なに?すごいお金。金貨が何枚も入った袋をタクミは受け取っていた。
「ど、どうやってそんなに稼いだの?」
尊敬と興味が私にそう言わせる。
「ああ、ちょっと工夫してな・・・。ま、やれることを色々考えていたら、良い方法をおもいついたんだよ。」
いいな・・・やれることがたくさんあって・・・。私には何もできないのに・・・
「私も何か良い方法を考えなきゃな・・・」
一人、つぶやいてみる。ホクトは何も言わない・・・
「そうだな・・・始めなきゃ始まらないからな・・・」
タクミにそう言われ、自分に何ができるかを考える。
「あのな・・・考えるのもいいが・・・そうだ。もう剣は振らないのか?」
・・・
「ま、やめるなら。それまでだな。続けるのも辞めるのも結局決めるのは自分だからな・・・」
・・・
私たちは、タクミが換金した後、新しいクエストを探す。タクミが何か面白いクエストないかな?と探している。私も、見てみようかな・・・
「薬草採取・・・薬草採取・・・鉄鉱石の採掘・・・魔物素材の収集・・・色々あるんだね・・・」
「何かやってみたいクエストでもあるか?」
タクミに聞かれたが、私には、どれがいいのかもわからない。お任せ・・・!。ホクトと目が合う・・・ホクトが私を見ている・・・違う・・・私は・・・
「これ!魔物討伐依頼を受けましょう!私は、まだ、何もできないけど・・・うーうん違う・・・剣を振るわ・・・怖がっていても何も始まらないの。なら、多少危険でも剣で魔物を倒すの・・・が、わかりやすいわ。魔法だって剣だって同じはずよ。ちょっとしたくらいじゃどっちもできないまま・・・だもの」
もう一度覚悟しよう。何度でも覚悟するんだから・・・今度は、頑張らなくちゃ・・・
「そうか。なら・・・さっそく近くの森あたりで討伐依頼でも片付けるとするか?」
「い、いいの?ほかにも色々なクエストあるのに・・・」
「・・・決めたんだろ? ならいいじゃないか」
・・・私は・・・のかな・・・
「う、うん。決めたわ!」
私たちは、そのまま門を出て森へ向かう。近くの森なら日帰りできるので特に用意するものはない・・・タクミは収納スキルがあるしね・・・
森につくと私たちは、周囲を探す。タクミが索敵スキルを使うと言ったと思うとすぐに指を指した。
「向こう・・・そうだな・・・少し行ったところに4足歩行の生き物がいるな・・・おそらく1匹だと思うが狙うか?」
「1匹なら都合いいよね。行ってみましょ」
私は、マジックバックから剣を抜く・・・1回、2回と振ってみた・・・重いな・・・これで魔物を本当に狩れるのかな・・・
少し歩くとタクミが私を静止させた。静かにと言ったジェスチャーのあと小声で
「あれだ・・・ホークラビットだな・・・。何かあれば助けてやるからやってみな・・・」
え?私が一人で・・・ラビットってウサギだけど・・・見えているのはどう見ても魔物・・・く、口から牙?みたいなのが見えるけど・・・あんなので噛まれたら・・・
私は、ちらっとホクトを見る・・・つまらなそうに欠伸するホクト・・・
やるしかない・・・このままじゃ・・・だめだよ・・・
私は、剣を上段に構えて静かに歩み寄る・・・が、すぐに足音かなにかで私を察知したホークラビットは、私を見つけると大きな唸り声を向ける。
「ぐるぅるる・・・」
・・・こ、怖い、口から恐ろしい牙としたたる涎・・・がくがくと震える私の膝・・・に、逃げちゃだめかな・・・一瞬過る思い・・・でも・・・踏みとどまる私・・・
迷いや葛藤がばれたのか、先手を打たれる・・・
勢いよくとびかかってきたホークラビット・・・咄嗟に剣を振り下ろすが、あっさりとそれをかわされた・・・ウサギは私の左手に牙を立てる・・・。噛みつかれはせずに済んだが、左手は、牙で大きく切り裂かれ・・・たくさんの血が流れた・・・
「きゃあ!」
い、痛い・・・痛い痛い・・・。経験したことのない痛みが私の左手を襲う。気がつくと両手で持っていた剣もどこかへ行ってしまった。痛い・・・怖い・・・。でも、ホークラビットは、再びこちらに牙を向ける・・・。助けて・・・タクミを・・・ホクトを見る・・・。2人は動こうともしない・・・なぜ?助けてくれるって・・・
「おまえの覚悟はそれで終わりか・・・なら旅はここで終わりだな」
タクミの言葉・・・
『「君は覚悟したのだろう。君は・・』
ホクトが言う
痛いよ・・・。誰も・・・助けてくれない・・・
ホークラビットは、じりじりと私との間を詰める・・・こんな私でも油断しないのね・・・左手からは血が流れ続ける・・・こんな怪我をしたのは生まれて初めてかもね・・・、あれ?私って交通事故にあったんだっけ?あのとき私は痛かった? ただ、車がすごいスピードで迫ってきて・・・怖くて・・・。怖い・・・このままタクミやホクトに見捨てられる方がもっと・・・怖い・・・
私は、痛む左手をかばいながら、右手で剣を探す。なんだ、側ににあるじゃない・・・。右手で剣をつかんだ・・・どうせ両手でもうまくなんか振れないしね・・・。そうだわ、ウサギが飛び込んでくることなんて車に跳ねられたときに比べたら大したことないわ・・・。牙は怖いけど犬に噛まれるようなものよ・・・
私は、再び飛び込んできたウサギに痛む左手を突き出す・・・ウサギは予想になかったのか距離感を狂わせた・・・のか一瞬躊躇した・・・
「うぐっ!」
私の口から情けない声が・・・もれる。私は、うめきながらも左手をおもいきりウサギの口にねじ込んだ・・・左手は、もう十分痛いから・・・ね・・・。もう言葉にならない痛み・・・感覚が・・・おかしいな・・・
私は、暴れるウサギの首に剣を突き刺した・・・抵抗しようと暴れてくれたおかげで非力な私でも剣は徐々に首に刺さりこみ・・・そしてウサギは動くのをやめた。
そして、私は・・・
『おはようメグミ・・・』
ホクトの声に目が覚める。あれ・・・なんで私・・・布団から飛び起き左手を見る・・・
「あれ?おかしいな左手が痛・・・くない?」
あれほど、傷ついて血もいっぱい出ていたのに・・・。私の左手にはかすり傷ひとつなかった。
『タクミが治癒魔法で治したんだから傷はないよ・・・』
ホクトがそう言った。助けてくれたんだ・・・タクミ・・・
ホクトは、少し間を置くと話始める・・・
『そうだね・・・、僕は君に覚悟を聞かせてもらった。だけど・・・君は僕達がいると・・・覚悟が鈍るから・・・だから僕達は、君の覚悟のために少し試させてもらうことにした・・・。君は痛みを覚悟しなければならない・・・困ったとき・・・誰かに助けてもらえると期待してはならない・・・自分で決めたことは自分で乗り越えなければならない・・・そうしないとね・・・本当の意味で一緒には戦えないんだよ。』
「そうだね・・・私はいつも・・・逃げて・・・頼ってばかりだ・・・」
涙が止まらない・・・よ
『君は、今回、初めて覚悟を理解した・・・はずだ・・・。戦うことを決めたのは君で戦ったのも君だ。君がやり遂げたんだ。自信を持ちなよ・・・君は何もできないわけじゃない・・・実際に一人で魔物と戦い勝利しただろ・・・』
顔を両手で覆う。
『君が戦うのなら・・・僕は・・・僕達は君を君を守り助けるよ。今回のようにね・・・それが仲間だろ・・・』
私を仲間に入れてくれるの・・・何もできない・・・私を・・・見捨てないでくれるの・・・
『これから始めるんだ・・・いや違うね・・・もう君は始めたんだろ・・・戦う事をね・・・』
止まらない涙を拭きながら・・・私は・・・決意する・・・
「私は・・・」
メグミ・タカキ
レベル5
HP 62(62)
MP 68(68)
力 14
体力 15
器用 15
素早さ 13
魔法 25
抵抗 23
追加スキル 剣術レベル1




