僕はホクト
僕は、ホクト。女神様が、創造した神狼だ。
僕は、少し前、別の世界に居た。こことは、違うけど、そこも厳しい世界だった。
「ベガ、こっちに!」
僕は、指示に従い駆ける。同時に無数の男たちが、弓を放った
矢は、僕が、さっき居た場所に降り注いだ。
『ハル、一度下がろう!このままじゃ・・・』
僕は、ハルを止めたかった。でも、ハルは、止まらないだろう。ここで引けば、僕たちの後にいる仲間たちが犠牲になるから・・・
「コールドアロー!」
ハルの魔法が、迫る男達を射抜く。バタバタと倒れる男達。しかし、後から後から男達は、現れる。
「この魔女め!死ね!」
ハルを魔女と呼ぶ男が、ハルを後ろから襲う。僕は、その男の首を牙で狩る。
「ありがと!。ベガ!」
ハルは、もう限界が近い。昨日からほとんど、眠らず、食べず、戦い続けているから・・・普段なら今みたいに襲われても余裕で対処できているはず・・・。
『ハル!頼むよ。お願いだ。下がってくれ』
僕は、ハルにそう願う。そう願うしかなかった。
再び、前方へ魔法を放つとハルは、僕を優しい顔でみる。
「ベガ・・・あなたにお願いがあるの・・・」
何を・・・
「お願い・・・後ろのみんなを助けてあげて・・・」
・・・僕は、君を・・・守りたい
「ベガ・・・。お願い・・・」
僕は・・・・
「うおぉーーん!」
僕は、叫び駆け出した。後ろで避難を続ける者達を守り、襲いかかる敵を牙で狩る。返り血で、染まる僕の身体は、すでに真っ赤に染まっていた。少しでも早く避難させて、ハルの元に戻る・・・そのことだけを考えた。
ようやく最後尾の避難に目処つくと、僕は、あらん限りの速さで駆けた。ハル・・・
戦場では、まだハルが立っている。間に合った・・・
『ハル!』
戻ったことを知らせる。ハルが、僕に振り向いた・・・
「ベガ・・・ごめんね・・・」
ハルの・・・ハルの身体の前面には無数の矢が突きさっている・・・ハルのすぐ後ろに逃げ遅れたのか・・・小さな男の子が・・・胸を貫かれて息絶えていた・・・
ハル・・・なんで・・・
この男の子をかばったのか? 受けなくてもいいだろう矢を・・・その身を盾にして
「ぐうぅ・・・があああ!」
僕は、膝から崩れ落ちるハルのもとに駆けようとしたが、男達の矢がそれを遮った。
よくも・・・よくもハルを・・・。僕は、駆けた・・・もはや容赦などしてやるものか・・・全部・・・全部狩ってやる。男達が、気が付けないように速く・・・風のように・・・首を・・・命を・・・刈る。もはや、僕を止めるものはいない・・・のだ。ハルだけが・・・僕を・・・
どれくらい時間が経ったか・・・気がつくと・・・もうあたりに立っているものはいない・・・
ハルの側に行かなきゃ・・・あれ・・・おかしいな・・・身体が・・・
「ハ・・・ル・・・」
僕は、そのまま・・・この世界から消えた・・・
この世界の女神様は、すべてを見て僕に聞く。この後、あなたは、私の加護の元新しい世界へと旅立ちます。あなたは、その世界で何がしたいですか?
僕は・・・ハルを守りたい・・・でもハルは・・・もういない・・・僕はハルを守れなかったから。
僕は、今度こそ大切な人を守りたい・・・
女神様が、そんな僕に課したのは、メグミと言う女の子を、導き、そして守ること。
メグミに出会った時、この子は、なにもしない・・・なにもできない子だって感じたから少し嫌だった。
だけど・・・まだ一日もつきあってないけど・・・今は、そんなに嫌な気はしていない。
メグミは、ようやく街まで到着できた。途中、襲いかかる気配が幾つかあったけど、僕が威圧して追い払っておいた。このことは、メグミには、伝えていない。
街中で、僕ができることは限られる。僕が目立つと、その分メグミが、ここに居づらくなるから。
だから、街中では、テイムされたただのグレイウルフになりきらなきゃいけない。
この街は、ある程度治安も整っているから、おかしな奴がいなければ大丈夫だろう。
街の入り口で、僕の予想通り、ひと悶着あった。この世界のルールは、女神さまの知識として知っていたけど、メグミに自分で対処してもらうつもりだ。
メグミは、色々あったけど、冒険者ギルドについた。メグミの第一目標は、冒険者になることだからね、ここから始まるのだろう。
テイムされた魔物は、ルールでギルド内には入れない。従属の証と言われる首輪が必要だが、僕は、偽装魔法で首輪をつけているように見せている。
一人で、冒険者ギルドに入るメグミ・・・。簡単には、冒険者にはなれないだろうな。メグミが、どうするのか?楽しみでもある。
少し休憩して待つか・・・。僕は、そう思って欠伸した時、その男は、やってきた・・・
れ、レベルは、まだ低いけど、スキルがあきらかにおかしい・・・人間が、この年齢で、どうやったらこんなスキルを身につけることが・・・できるのだろう。
僕は、気がつくとその場から立ち上がっていた。変な汗が・・・背筋を・・・つたう。
あ、こいつ、僕を鑑定した・・・、女神様の隠蔽が、あるからわからないだろうが・・・。こいつは、危険だ・・・僕の感がそう伝えてくる。
冒険者ギルドに入っていく男を見送り、中の気配に神経を集中する。なにが起きてもすぐにメグミを守る!
メグミは、何を考えてか、その男に自分から近づいた。僕の中に緊張が走る。
男とメグミが、冒険者ギルドから出てきた。メグミから
「この人に何とか頼み込んで冒険者になろうと思うの・・・」
と、メグミが言う。僕は、再び男を睨む。メグミに何かしたら僕は・・・おまえを許さない。




