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俺に異世界にいく資格はあるのか?  作者: 花山 保
俺達の国を造ろう
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試練

 南門の周囲には、多くの人が集まっている。


 セレスを先頭に門を抜けようとする人族を門を警護する獣人兵士が止める。セレスと共にメグミやミールがいるためいきなり襲うと言うことはないが、ピリピリとした空気が流れる。


「人族が何をしに来た?」

「また、俺達から奪うのか?」

「親の仇だ!」


 あまりの怒気に人族の男達もしり込みする。その中、セレスが前に出て皆の視線を一手に引き受ける。


「皆さんにお願いがあります。私達人族は、皆さんに謝罪してもしきれないほどひどい事をしてきました。罪のない皆さんを傷つけ、大切な家族の命を奪い、みなさんの尊厳も故郷も奪いま・・・」


 誰が投げたのか石がセレスの額に投げつけられる。額が切れそこからは血が流れる・・・。メグミとミールがかけつけようとするが、セレスが手で制止する。


「うちの人を返してよ!」


 獣人族の女が叫ぶ・・・。セレスが頭を下げ


「ごめんなさい・・・。あなたの大切な人を奪いました」


「我らの故郷を返せ・・・」


 エルフの男が拳を握る。


「ごめんなさい・・・あなたの大切な故郷を奪いました」


 セレスが再び頭をさげる。額から流れる血が大地を染める・・・それでも・・・


「私には皆さんに頭を下げ謝る事しかできません・・・。皆さんの家族と取り戻す事も故郷をお返しすることもできないのです。私達の中に悪しき者がいる限り、皆さんにも私達にも安らげる場所がないからです。どうかお願いします・・・私達人族の中にもあなた方と共に歩みたいと願う者がいる事を信じてください」


 セレスは、再び頭をさげる・・・


「ねえ・・・もうお姉ちゃんがかわいそうだよ・・・」


 誰も声を出さない中に獣人の子供の声が聞こえる。


「あのお姉ちゃんが悪い事をしたんじゃないんでしょ?あのお姉ちゃんは一緒に遊んでくれたよ」


 セレスを取り囲む獣人達の顔に戸惑いが生まれる。


「俺達を襲い・・・仲間を奪ったのは人族だ。・・・だが、俺達を助け救った王もまた人族なのだろう?」


 魚人族の男が・・・


「最後まで仲間のためにって言って人族から救ってくれたのは、王様だったわ・・・姿は人族でもいつの間にか人族だって考えることもなくなっていたけど・・・」


 狼族の女が・・・ 


「王様が言っていたわ。どんな種族にも良い奴と悪い奴がいるって・・・」


 猫族の女が・・・


 ひたすら頭を下げ続けるセレスにそれ以上石が投げられる事はなかった。南門に集まった住人達は、静かにその場を去り、そこにはセレスたち人族とメグミ達が残された。


「あなた・・・大丈夫?」


 ルールを守ると言って賛同した若い女が、セレスに駆けより傷を心配する。


「ええ。大丈夫だと・・・」


 と言ったところでセレスは倒れ意識を失った。




-----------------------------------



「セレス!セレス!」


 どこかで自分を呼ぶ声がする・・・。そっとセレスは目を開くとメグミ達が涙しながら自分の顔を覗き込んでいた。


「よかった。意識が戻ったわ!」


「ああ、ちゃんと呼吸もしていたしメグミは大げさだよ。きっと緊張と出血で貧血を起こしたんだろう」


「タクミと違ってセレスは、普通の女の子なんだよ!顔に傷でも残ったらどうするの!」


「それは、ちゃんと治癒魔法で治しただろう」


「気持ちの問題よ気持ちの!」


 メグミが心配してくれている


「ここは・・・?」


 ようやくセレスが声を出すと


「あの後ね・・・セレスが倒れちゃって大変だったの」


「そうじゃなくて・・・みんなは・・・大丈夫なの?」


「あ、人族のみんなは、ちゃんと用意した住宅に案内したから大丈夫だよ。今はミールがついているから・・・さっきまでミールもセレスの事心配していたんだから・・・」


「私・・・何もできなかった・・・な」


 セレスの目から涙が流れる。


「俺はそうでもないと思うけどな・・・」


 タクミが返事する。


「簡単に許してもらえない事はわかっていたけど・・・みんなの顔を見たらね・・・。人族が犯した罪はとても大きいわ・・・大切な人や故郷を奪われるってことがどれほど辛いか良くわかったわ」


「ああ。例え、自分たちが犯した罪でなくとも止められなかった罪は、種族が背負わなければならないからな・・・」


「タクミが言っていた意味がわかったわ・・・。あのまま王城にいたら私は・・・」


「それよりも元気になったらやる事がいっぱいあるぞ。セレスは、人族の代表者だからな・・・朝の会議への参加や緊急時の対応・・・人族の要望や苦情のとりまとめも仕事だからな」


「私が、代表者?」


「人族の者は、セレスが代表者で良いと言っていたからな・・・」


「そう・・・」


「なんだよ。うれしくないのか?みんなおまえを認めたってことだぞ」


「それはうれしいけど・・・責任重大よね・・・」


「そりゃそうだ。仕事も責任も人一倍だろうな」


「あ~あ。また、覚悟しなくちゃだめね・・・」


「覚悟なんてそのうちできる今は夢中になって取り組めばいいだけだ」


「そうね。じゃあ・・・ここでゆっくりと寝ているわけにはいかないわね」


 セレスは、むくりと起き上がりベッドから立ち上がる。もう傷もふらつくこともない・・・


「セレスの戦いはここから始まるんだ」


「ええ。ちゃんと責任を果たして見せるわ」



------------------------------------



「じゃあ。みんなの意見を聞かせてくれ」


 10日後に開かれた朝の会議で予定通り議題が提出される。会議には、セレスも加わり、これで狼族、猫族、犬族、熊族、魚人族、エルフ族、ドワーフ族そして人族と8種族の代表者が席についた。


「決をとるまえに少しだけよろしいですか?」


 セレスが挙手する。


「ああ。かまわないぞ」


「では・・・。この数日、私達はたくさんの方からご意見等をいただきました。中には厳しいご意見もありましたが、そのほとんどが暖かいものであったことをこの場を借りてお礼申し上げます」


 セレスがぺこりと頭をさげる。


「では、決をとる。人族を受け入れる事に賛成の者は挙手してくれ」


 ひとり、またひとりと手があがる・・・ドワーフ族・・・犬族・・・エルフ族・・・


「手を挙げる前に一言だけよろしいですか?」


 挙手の途中でサラが発言を求める。一旦挙手を戻し・・・


「私は、人族だからと言って恨むことも憎むこともいたしません・・・ですが私の仲間を傷つけ奪った者は何があっても許すことはできません。あなた方は、もしミクスが人族に攻められたらどうされるおつもりですか?」


 サラの言う事はもっともだ・・・。いずれここに攻め寄せる日も来るだろう。だが・・・


「はい。その時は、全力で撃退させていただきます。そうすることが私たちミクスに住む人族ができる人族への優しさだと考えています」


「同族に刃を向けるのは、決して簡単な事ではありませんよ。その覚悟はありますか?」


「これまで止めたくても止められなかった同族を止める事ができるのです。座して見ている時よりも覚悟しやすい分大丈夫です」


「ありがとう・・・これで心置きなく挙手できるわ」


「ほかに言う事があるやつはいるか?」


 どうやらサラが皆の気持ちを代弁してくれたようだ・・・懸念もなくなったのだろう。


「では決をとる。人族をミクスに迎え入れることに賛成する者は挙手してくれ」


 1.2.3.4.5.6.7人・・・これでセレスを除く種族の代表者から賛同を得る事ができた。


「全員だな・・・。ならばこれで人族をミクスに受け入れる事を決める。他の種族と同様に扱うつもりだからそのつもりでいてくれ」


 全員が頷く・・・


「それともう1点だが、人族の捕虜の処遇についてだ。このまま無駄に捕虜としておいておくのも気が引けるからな・・・そろそろ俺も結論を出そうと思っている」


「処刑するのか・・・それとも解放するのか?」


「そうだな・・・これも皆の意見を聞きたいが、先に俺の提案を聞いて欲しい。王都には、まだ俺達の仲間や知らない種族の捕虜がいるかもしれないんだ。そしてそこで仲間がひどい扱いを受けている可能性もある・・・。だから応じる可能性は高くないが、王都へ捕虜の交換を打診してみたいと思う」


 ちらりとセレスを見る。セレスが頷き


「王都の情報を仲間から聞いたところ、王都の中にまだ数名の獣人が捕えられている可能性があります」


 生きている仲間がまだいるかもしれない・・・少ない望みだが獣人達の顔に別の期待が生まれる。


「そこで、捕虜の中から1名を選出し王都へ帰還させる。向こう側から捕虜を返せば、こちらも返した捕虜の人数に応じて捕虜を返すと言う風に手紙を持たせるつもりだ。もしかすると1人でも解放される可能性がある」


「確かにそれならこちらに損はないな・・・。少ない可能性でも、助かる仲間がいるかもしれん」


「ただ、憂さ晴らしに殺しても仲間が戻るわけではないからな・・・」


「じゃあ・・・提案どおり進めても良いか?」


 一斉に挙手があがる。どうやら不満はないようだ。


「最後の議題だが・・・今街にある店がさすがに1店舗だけじゃ間に合わないようだ。それで、もう2店か3店増やしたいと思う。できれば、子供がいる夫を失った女性を優先しようと思う」


「王は・・・優しいな・・・確かに夫を亡くした女は子育てに仕事もせんといかんから大変なようだ。種族の中でも応援はしているが、家の税まで負担してくれる奴は少ないだろう。店なら子供を育てながらでも仕事できるからちょうどよいのだな」


「ああ。できるだけ弱い立場の者を優先してやってくれ・・・。役所の事務関係も含めできるだけ未亡人や母子家庭に任せたい。少しでも子供たちには不自由しない生活を送ってもらいたい」


「ならば、うちにも数名思い当たる者がいるから相談してみるとしよう」


「ええ。私の種族にも似たような立場の者がいますから声をかけてみます」


「ああ。みんなで暮らし安い街を作っていこう」


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