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俺に異世界にいく資格はあるのか?  作者: 花山 保
俺達の国を造ろう
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難民

熊族をミクスに迎え入れて数日が経過する。熊族もミクスに住むことを決めたので、住居の手配を行ったが、すでに熊族の戦士がミクスで生活していたので思ったよりも時間をかけずに手配が終わる。


 熊族は、狩りや農業の他、細かな作業も得意なのだそうだ。足は他種族に比べれば遅いが、人族よりは早いくらいで、力は獣人族の中で一番強い。ミクスでは、主に重装歩兵として戦ってもらえるように頼んだら快く引き受けてくれた。


メグミとミールと一緒に熊族に街の説明をしていると


「タクミ様・・・前から気になっていたのですが、この国の通貨と言うものは、なぜ私と同じ名前なのですか?」


「この街を作った時にミクスで使う通貨をなんて名前にしようか考えたんだが、偶然ミールと同じ名前を思いついたんだよ」


「そうね・・・その後にミールと会って名前を聞いた時少しびっくりしたもんね」


「何か運命的なものがあったのかもな・・・一緒なのは嫌か?」


「いえ・・・そんなことはありませんが、ただ不思議だったもので・・・」


「まあ。ミールとの出会いは、俺にとってもこの街にとってもそれだけ大きな物だってことだ」


「そうよ。ミールがいないとみんな困るんだから」


「私が?」


 ミールは少し戸惑っていた。自分と言う存在が何をもたらし、何を期待されているのか・・・。水龍の一族として考えていた自分のイメージとの違いに・・・


「私は、もっと色々な事を知りたい」


「あまり、根を詰めるなよ。俺達だって同じようなものだ。ミールは今までどおりでいいと思うぞ」


「わかりました。ここにいれば色々なことがわかりますから・・・」




「さてと・・・。おっ!」


 アーケード街まで来るとリル達の店の前に人だかりができていた。ほとんどが客のようだが・・・ずいぶんと繁盛しているな・・・


「すごいじゃないか」


「王様!ちょうどいいところに来た少し手伝って」


 リルに頼まれたので


「わかった。じゃあ・・・俺は買い取りを担当するか・・・。リル達は商品を売ってくれ」


 買い取りを望む客と商品を求める客を分けて列を作るように指示する。ちょうど半分半分に列に分かれる。


「そっか。買い取りと分ければ効率も良いんだね」


 客を次々と流していく・・・メグミ達にも手伝ってもらいようやくひと段落する。


「ずいぶんと客が増えたな。やはり店が1つだけだともう厳しいな」


「売上も買い取りもすごい金額になっているから私達の手数料もすごいことになっているんだけど、もう身体が持たないって感じね」


「そうだな・・・できれば3店舗くらいはほしいな。明日、会議でみんなに提案してみるよ」


 人口の増加により生産力も向上している。気候も良く水が豊かな街の周辺での農業や酪農業も順調のようだ。冷凍や冷蔵設備が整っているミクスでは、生産したものは無駄なく処理することが可能だ。狩りでたくさん獲物が狩れても値崩れすることはない。

 生産品も基本受注生産に近づいている。リル達店舗で希望を欲しい物を聞いてから発注しているので無駄はない。だが、そろそろ受注生産だけでなく並べておく店舗があっても良いかもしれない。


 金物雑貨店、食料品店、素材の売買を行う買い取り屋あたりがあれば便利だろうな。そのうち酒などの嗜好品を扱う店ができれば街の楽しみも増えるだろう。


 店の事をあれこれ考えてながら街の北側に作られた捕虜収容所へ向かう。今、セレスが人族の捕虜たちを面接しているためだ。

 セレスは、街に来てすぐに活動を開始した。セレスは捕虜なっている兵士一人一人と面会し話しを聞くと言った。兵士の中には、金を目当てに参加した者もいれば、強制的に従軍させられた者もいる。セレスはそんな中から自分と似た考えの人を探すつもりなのだろう。


 捕虜収容所に入るとちょうど1人の男と面会を終えたところのようだ。


「セレス」


「あれ・・・タクミ達も来たんだ」


「どうだ?何か手ごたえはあったか?」


「うーうん。なかなかうまくいかないね・・・。みんな不平不満を言うだけで・・・今後の事を話したら帰りたいとか解放しろとかばかりだよ」


「まあな・・・家族や友達が王都にいる奴はそう考えるのが普通だからな」


「あ、でもね・・・今の所2人ぐらいだけど話を聞いてくれた人もいたんだ。家族もいないし・・・スラムに戻ってもろくな仕事がないからって・・・」


「そうか・・・」


 どうにもぱっとしないな・・・。セレスも頑張っているのだろうが条件が悪すぎる。しかし、このまま長期間捕虜のまま放置するのも問題だ。いっそのこと解放してしまった方が問題はないのかもしれない。目隠しして南まで連行して解放してしまおうか・・・


『主・・・少しいいか?』


『ガスターンか・・・どうした?」


『南から人族が接近してきている』


『もう早か・・・次の戦いまでには時間があると思っていたが』


『いや・・・人族だが、兵士ではないようだ。無秩序に北を目指しているようだ』


『兵士ではない?何かの罠か・・・それとも・・・」


『俺も様子を見に行くから少し観察を続けてくれ』


『心得た』


 一人悩むような顔をしていると


「何かあったの?」


 とメグミが顔を覗き込む。


「南から人族が接近してきているとガスターンから報告があった。兵士ではないようだし、これから様子を見に行くつもりだ。メグミ達も来るか?」


「うん。ついていくよ」


「私も連れて行ってください」


 セレスが同行を希望する。


「ああ。構わないが・・・そうだなアイオロスに頼むか。セレスはアイオロスに騎乗してくれ、俺たちはこれから南下して人族に接触する」


『アイオロス!聞こえるか?」


『なんだ?主か・・・聞こえるぞ』


『悪いが、ミクスの南門まで来てくれ頼みがある』


『仕方ないな・・・今から走るから少し待ってろ』


『悪いな・・・お礼はちゃんとするよ』


『楽しみにしているぞ』


「今、アイオロスがこっちに向かっているから到着を待って出発する」


 そばにいた獣人兵士に各種族代表者に伝令を頼み念のため、門を1つ残して閉門するように指示する。周辺で農作業をしている者にも知らせるように伝令に頼んだ。


「セレスは、戦闘はできるのか?」


「私は、修道女だから刃物の携帯は禁止されているの・・・治癒魔法と神聖魔法が使えるわ。レベルはあまり高くないけど・・・」


「そうか・・・刃物はだめと・・・防具はいいのか?」


「防具なら問題ないわ。でも重たい鎧なんかは私じゃ着れないわよ」


「ならこれを着てくれ・・・あと杖なら大丈夫か?」


「ええ。杖は修道士たちの装備として問題ないわね」


 セレス用に作っておいたドレスアーマーとスタッフ、マジックバックを渡す。ドレスアーマーは、ミスリル製で軽量化を付与しておいたので力の弱いセレスでも着用可能だろう。スタッフは、オリハルコンとミスリルの合金で作り魔法強化を付与してある。瞬間装着機能がついているから鎧は一瞬で着ることができる。あと、ダンジョンで見つけたマジックバックを渡した。メグミの持っているものと比べると性能は低いがそれでも部屋1つ分くらいは収納できるものだ。最後にセレスにもマスクを渡し、顔を変える事についても説明する。


「これって・・・国宝レベルの装備じゃない?」


「俺が作ったってのは内緒にしておいてくれ。他の種族の代表者にも似たような物を渡してあるから遠慮なく使ってくれ・・・」


「ありがたく使わせてもらうね」


 セレスは、すぐに鎧を装着してくるっとまわり問題がない事を確かめる。


「うん。軽くて・・・でも目立ちすぎない?」


「ああ・・・大丈夫だと思うぞ・・・たぶん」


「う、うん。そうだよ。私たちのも似たようなものだから」


 装備の使い方やマジックバックに各種ポーションを詰めたりして準備を整え、南門へ向かう・・・。南門へ着いたときにちょうどよくアイオロスの姿が見えた。


『主よ。到着したぞ』


『ああ。ちょうどよかったよ。頼みは、ここにいるセレスの警護と移動支援を頼みたい』


『簡単なことだ』


「セレス。アイオロスが乗せてくれるから騎乗してくれ。アイオロスは強いから戦闘は任せてくれて構わない。じゃあ一緒に行くぞ」


 タクミ、メグミ、ミールは、ステータスが高いのでかなりのスピードで走り続ける事ができる。アイオロスはさらに早いが、ペースを合わせてくれるので4人は一緒に南へ向かう。

 かなりの距離を走ったが、汗ひとつかかずに走るタクミ達を見て


「だ、だいじょうぶなの?」


 とセレスが聞くが3人とも平気そうだし余裕すら感じられる。


「まあな・・・それよりも索敵に反応がある・・・もう少しで接触するぞ」


 タクミの声に緊張感が高まる。ほどなく前方に大きな荷物を背負った人族の姿が目に入った。


「止まれ!」


 タクミが人族に警告する。いきなり声をかけられた人族達は驚き身構える。子供を守る親や年寄を連れた者もいるが数百人くらいか・・・。こちらを警戒しているが・・・武装らしい武装もしている者もいないな・・・まさかとは思うが・・・


「どこへ向うつもりだ?」


「あ・・・あんたらは・・・何者だ」


 勇気を振り絞って声を出した男がこちらの素性を確認しようとする。そうだな・・・確かに向こうにとっては重要な事だろう。


「俺はミクス国の王でタクミと言う。これより先には、我らの街がある・・・ここから先へ進むならば目的を教えてほしい」


「あ、あんたは・・・人族か?」


 人族かどうかは難しいな。


「お、俺達は、ただ王都から逃げてきただけだ・・・。特に目的地もない・・・。どこか安全な場所で暮らせればよいと思って歩いている」


「逃げてきた?」


「ああ。もう王都は当たり前じゃない。辺境の町もその他の町も王都のようになる日が近いからな・・・」


「王都で何があった?」


「あんたらは知らないかもしれないが、急に王様が滅茶苦茶な命令を出すようになった。反対したり不満を言えば捕えられる・・・。自由に街の出入りもできなくなった。あのままじゃ俺達もいつか殺される・・・」


「王は健在なのか?」


「あ、ああ。当たり前だろ・・・その王の命令でおかしな布告が続いているんだ」


 何かがおかしい。それだけのことがあれば、諌める幹部もいるだろうし、下手をすればクーデターだって起きかねない。王都で何があった?


「お前達は、国を捨てたのか?」


 セレスが、男に尋ねる。


「ああ。もう俺達はあんな国では生活できないからな・・・。どこか安心して暮らせる場所を探すつもりで逃げてきたんだ」


 セレスが俺を見る。そう言うことか・・・セレスがそうしたいなら。セレスに頷き返す。意味を理解したのかセレスが


「もし、あなた方が、国を捨てたと言うのなら私があなたたちを保護しましょう。住む場所も仕事も手配します。そしてあなたたちが安心して暮らせるように努力します。そのかわり、あなたたちにはそこのルールに従ってもらいます。あなたたちはそのルールを守る覚悟がありますか?」


「そ、それは、そのルール次第だ・・・」


「ルールは簡単です。が、あなたたちには覚悟が必要なものです。そのルールと言うのは・・・種族差別の禁止です」


「種族・・・差別の禁止・・・何を言っている?」


「はい。私があなたたちを保護しようと考えている場所には、人族以外の多くの種族が共に暮らしています。そこには、種族差別をする者は住んでおりません。ですが、これまで人族は、種族差別を繰り返し多くの種族に多大な迷惑をかけています。当然、他の種族の方々から人族は嫌われている事でしょう。その中で種族差別することなく暮らす覚悟はありますか?」


 男は返事に困る・・・ほかの家族の顔を見てどうしたものかと考える。暮らす場所や仕事がなければ、簡単に生きていくことはできない。だが、見知らぬ他種族の中で恨まれながら暮らす事ができるのだろうか?誰も答えを出せないまま時間がすぎていく。


「私は、つい先日まで王都で暮らしていました。私は、人族が他種族の皆さんを傷つけたり、大切な人や物を奪う事を止めたかった。だけど・・・私にはそれを止める事も助けることもできなかった。だから今、私は、ここにいます。人族の中にも他種族と共に暮らせる人がいる事を証明したいのです。強要は致しません。もし、勇気をもって多種族の皆さんと共に歩めると言う方は、私と一緒にそれを証明してみませんか?」


 セレスが精一杯踏み込んでいる。今の提案でセレス自身が背負うものは決して軽いものではない。おそらくはつらく厳しい道になるだろう・・・。


「私は、ルールを守ります」


 大勢の人達の中から声があがる。若い女性のようだ。


「私も同じ思いです。いたずらに他者を傷つければいつかその報いを受けるのでしょう。それは、私の子供や孫になるかもしれません。ですから私は他の種族の方を差別したりはいたしません」


 勇気が必要な言葉だ。若い女性の言葉で人族の中がざわつき始めた。


「少し聞いてくれ」


 ざわつきが静まる。


「俺は、このように人族の容姿をしているが、それで人族だとは思っていない。俺は、種族なんて違いに意味すら感じていないからな。人族も含めどんな種族にも良い奴と悪い奴がいるだろう?おまえたちが悪い奴じゃなければ俺の国へ来ると良い。自信がない奴は無理してくることはない。俺は、仲間は必ず守るが敵対する奴には容赦しないからな」


 少し脅しにもなるが、これ以上だらだらと話しても進みそうにないからな。


「セレス・・・。賛同する奴は連れて行ってもいいが、無理強いはだめだぞ」


「ええ」


 俺はメグミとミールと倒木に腰をおろし、休憩をとる。アイオロスに肉でもやろう・・・か・・・肉食べるのか?


『アイオロス・・・肉食べるのか?」


『おお。俺は肉食だからな・・・喜んで食べるぞ』


 そうか・・・馬なんだけどな。まあいいや特別にドラゴンの肉でもやるか


『ほら。アースドラゴンの肉をやるよ』


『なっ!ドラゴンの肉か・・・さすがだなさすが俺を倒す主は違うな・・・』


 アイオロスはうまそうに肉を食べる。


 セレスは、みんなに声をかけ質問に答えたり、今後の事の相談にのっている。王女って名乗ればまた違うのだろうが、それはセレスが決める事だ。


 1時間近くをかけて話しをまとめると人族の男達もルールに従う事を約束した。行くあてのない逃避行には未来がない。じゃあどうするの?と女子供に聞かれても答えられないのだろう。

 つまりは、覚悟が必要なだけで答えは決まっているのだ。結局、王都から逃げてきた人族一向は、ミクスに保護されることになった。しかし、問題があるとすればここからだ・・・


「セレス覚悟はいいのか?」


「ええ。覚悟はとっくにできているから大丈夫・・・」


 そう言いながらも不安でいっぱいなのだろう。


『メグミ、ミール、それとなくセレスを頼む。俺があまり前面に出るとセレスの立場がなくなるからな』


『うん。セレスはちゃんと守るよ』

『承知しました』


 街へ行くことが決まり、移動を開始するが女子供の足での移動のため移動には時間がかかる。仕方ないな・・・。


「俺は一足先に街に帰り迎える準備をしておく、急がずゆっくりと進んでくれ」


「わかったわ」


 メグミ達に人族の誘導と護衛を任せ一足さきにミクスに戻る。すぐに代表者を集め臨時会議を開く事と伝令に伝える。


 タクミが会議室で思案していると次々と代表者たちが集まってきた。


「すまないな・・・忙しい中呼び出した」


「人族が攻めてきたのか?」


 南方から接近する人族の情報は、伝えてあったのでロドスがすぐに確認する。


「少し違うが相談したいことができた。南から来ていたのは人族の難民だ」


「難民?人族のか?」


「ああ。どうやら王都で人騒ぎあったらしい。国を捨て逃げ出した人族が、たまたまこっちへ逃げてきたようだ」


「王は、その方々をどうするのです?」


 アリヒアが質問する。


「・・・俺は、あらゆる種族差別を禁止すると言った。その中に人族も含めるべきかを少し迷っている」


「国の方針は皆最初に聞いている。この街に住む以上は、それが根幹となるルールだと。だからどのような種族が来ても俺は受け入れるつもりでいた。だが・・・そこに人族が加わると言うのは・・・」


 ヘイストが言う事はわかる。


「そこで少し皆に頼みがある。セレスとは話しをしたことがあるか?」


「ええ。何度かお話ししましたよ」


 アリヒアが答える。


「あいつは、王都に住む王女だった・・・」


 周囲の代表たちも驚きの顔を見せる


「他種族を攻める事に反対し、必死に王を止めようと努力したが、あの国の王やその取り巻きはセレスの言う事にまったく耳を貸さなかった。セレスは、獣人達への償いの気持ちと人族をなんとか止めたいと願いここにいる。それは、人族の中にも良い奴はいるってことだ・・・今はろくでもない奴が国を取り仕切っているが、すべての人族がそう言う奴らじゃない。セレスのように共存を願い努力する奴もいるんだ」


「・・・」

「・・・・」


「俺は、セレスにチャンスを与えたいと思っている。本当に他の種族を差別することなく共存することができるのか・・・見極めたいと思っている」


「ですが・・・家族を・・・故郷を奪われた者たちが人族と暮らす事を許せるかは・・・」


「ああ。それで俺からみんなに頼みがある。人族を受け入れるかどうかの最終的な決断は代表者会議に一任したい。10日後、もう一度この会議で議題にあげるつもりだからそこで決めてもらいたい」


「王が決めるのではないのかにゃ?」


「カイル達に決めてほしいんだ。俺が強要するのはおかしいからな・・・」


「わしらは、直接被害にあわんですんだが、獣人のみんなの気持ちを考えるとのう・・・」


 ボンゴも腕を組みながら悩む。


「俺への気遣いは無用だからな・・・自分たちで考えてみてくれ」


 会議を終え各自議題を持ち帰る。警戒を解くように伝令に伝え、各門を開放するように指示する。


 ちょうどそのころに南門に人族の一団が到着した。




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