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俺に異世界にいく資格はあるのか?  作者: 花山 保
俺達の国を造ろう
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クーデター

 王の間に怒声が響く・・・


「それでおめおめと逃げて来たと言うのだな!」


「はい。残念ではありますが、現状の兵力ではあの街を落とす事は困難と思われます」


王の前で膝をつく男達の最前列にいるバラカム将軍が報告する。


「かの街には、予想をはるかに超える技術が使われており、奇襲、夜襲、正攻法とを組み合わせ兵士達も果敢に攻めましたが、落とす事かいませんでした」


「だまれ!この無能どもめが・・・お主らの無能のせいで国民からどのくらい笑われていると思っておる」


 言い訳など聞く耳持たないと言った様子で怒鳴り散らす。先日来、王都で蔓延する王を避難する国民の声や王女の誘拐事件・・・次々と降りかかる難題に王の怒りは限界を超えていた。


「恐れながら・・・。敵の街に潜入する事に成功した冒険者の報告によれば、街中で2人の魔族を確認したとの事でございます。獣人ども程度が、あのような力を持つとは到底考えられませんので、魔族が何らかの形で加担しているものと推測いたします」


「ほう・・・やはり、魔族の可能性があるようですね」


 クライス審議官がセイオスの報告に食いつく


「はい。冒険者サントスの報告によれば潜入した街で遭遇したのは年若く見える女と言う事ですが、その力量はサントスを越えるものであったと・・・。これを魔族と呼ばずなんと呼べばよいか・・・」


「魔族が加担したとなると・・・」


「もうよい。・・・そのようなことはどうでもよいのだ。何を言っても負け帰った言い訳にすぎん。貴様らは、罷免じゃ・・・そして逃げ帰った罪は極刑をもって継ぐなってもらうぞ。連れて行け・・・」


 もはや王の耳には何を届けても響かないのか・・・。周囲が諫めても頑として受け入れない。


「やはり仕方ないですね・・・」


 小さな声でセイオスがそう言うと。王の間へ伝令兵が駆け込んでくる。本来ならば王の間へは立ち入りを許されない兵だが、緊急時に限り入室が認められる。


「ほ、報告します。一部の兵士と冒険者が、場内に潜入し城内各所を占拠。一団となってここへ詰めかけてきております」


 一部の者を除き報告に驚愕する幹部たち・・・


「な、なにを言っておる・・・ここは王城じゃぞ」


 後ろずさりながら王が慌てふためく


「な、なにをしておるのじゃ・・・さっさとわしを守るのじゃ」


 すでに王の間は混乱しており、保身に走る者は、廊下へ走りさっている。残っているのは、クライス審議官と敗戦の報告に来たバラカム将軍とセイオス審議官を覗けば数名の兵士だけだ。数名の兵士は、すぐに王の間の外を守るために部屋を出ていく。


「残念ですが・・・罷免されてしまった後ですので私達は罪を償うべく退室させていただきましょうか?」


 セイオスが不敵に笑う。クライスはこの背後にセイオスがいると気づき・・・


「君の差し金か・・・ならば私も君に協力しようじゃないか」


 あっさりと裏切りを決めセイオス側につこうと画策する。


「クライスおまえ・・・」


 長年連れ添った腹心の部下に裏切られた王は言葉を失う


「いえ・・・クライスさんにもご退場願いますよ」


 冷えた笑いでクライスを拒絶する。


「そうか・・・それは残念だ」


 言うや否やクライスは、王の間の本棚へ走ると本棚に仕掛けられた装置を起動して抜け穴を開くとそこから離脱する。王の間に残ったのは、3人だけ・・・


「おやおや・・・王様は、家臣に恵まれていないですね」


 もはや王の身を守る者はいない・・・王の間の外では兵士の悲鳴が聞こえる・・・。


「お前たちのような佞臣を抱えていたようだからな・・・」


 王が負け惜しみとも言える言葉を吐くと王の間に数人の冒険者風の男達が入ってくる。


「自分の無能を責めずに人を責めるからですよ・・・」


 ちらりとバラカム将軍をセイオスが見るとバラカム将軍がこくりと頷く。バラカム将軍が、王の前までゆっくりと歩いて王を羽交い絞めする。


「バラカム貴様も・・・」


 セイオスは、冒険者たちに指示し、持ってこさせた袋の中から黒い鎧を取り出させると王の前に置いた。


「あなたにはこれを着ていただきましょう」


「な、なにをする気だ・・・」


「たまには、王城から出て働いてもらうだけですよ。そのだらしなく膨らんだ腹を少しは引っ込めてください。じゃあ、さっそく着せちゃいましょう」


「や、やめろ・・・なんだこの鎧は・・・」


「ああ。それはグリフォールさんの新作ですよ。なんとその鎧を着ると力も素早さも数倍に高まるって言うすばらしい物なのだそうです」


 冒険者たちは、王の服を引きはがし裸にむくと鎧を頭からかぶせる。鎧の首回りや胴回りには何か怪しく蠢いており、いやな音を立てている。


「やめろ・・・や、やめてくれ・・・」


 真っ青な顔をして拒否するが、拘束されていて逃げることもできない。


「いいじゃないですか・・・あなたのような何もできない人でも化け物のように強くなれるのですよ・・・。まあ、もう二度とその鎧は脱げないそうですが、そんなこと些末な事じゃないですか」


「ぐひ!」


 すぽっと鎧を着こんだ途端、王が変な声を出す。すると見る見るうちに顔色が変わり、血の気が失われていく。やがて土色になった顔からは表情は消え・・・とろんとした目だけがかろうじて生きている事を説明している。


「さあ、あなたにはこれから王のまま傀儡兵団の団長としてしっかり働いてもらいますからね」


 セイオスが、懐から取り出した黒い宝珠に何かすると、王は、返事することもなく立ち上がり姿勢を正した。


「さあ。これで邪魔者は、あと数名ってところですかね・・・。バラカム将軍にお願いがあります。クライスさんとはじめとする審議官他文官達を全員拘束してください」


「了解した」


 バラカムは、セイオスの提案に乗り王の簒奪に手を貸す事を決めた。拒否しても王に処分されることがわかっていたので不満はなかった。そしてなによりもセイオスの恐ろしさを肌で感じ、逆らう事を本能が許さなかったのだ。


「さて、これでこの王都は私のおもちゃになりましたね」


 元王を連れて王の間から王都を見渡せるバルコニーへ歩み出る。


「本当の戦いは、これからですよ・・・」





 クーデターが発生して数時間後には、セイオス達は王城内の制圧を完了する。手向かう兵士は、殺すか拘束してよいと言っておいたのでところどころには死体が転がっている。

 捕らえられた審議官や文官達は、王の間へ連行され後ろ手に縄で拘束されている。


 セイオスは、王の間で集まった人達を見下ろす。しかし、審議官や文官達の目は、玉座に座る王へと注がれる。しかし、見たこともない黒い鎧を着た王は、何を言うわけでなくうつろな顔でこちらを見ている。


「ごくろうさまです。さて・・・あなたたちの処遇ですが・・・」


「お、王よ。なぜこのようなことをされるのですか?」


 審議官の1人がセイオスの話しを遮り、直接王に問う


「あなたの処遇は決まりましたね」


 セイオスがそう言うと


「おう!」


 と言ってサントスが今話しをした審議官の首をポーンと跳ねた。


「ひいいいいい!」


 すぐ隣につながれている男が情けない悲鳴をあげがたがたと震えだした。


「話しの途中ですから少し黙っていてください」


 頷く男達の歯が震えてカチカチとなる。


「あなたたちには、これまでどおり働いてもらうつもりです。但し、すべてにおいて私の言葉が優先するものと理解ください。私が、命じた事に対しては「はい」だけで結構です。余計な質問や詮索は必要ありませんから。・・・わかりましたか?」


「は、はい」


「はい。そう言う事ですね。それでは、あなた方には、これからいくつか仕事を与えます。 


「はい」


「まずは・・・」



 セイオスは、次々と審議官や文官だった男達に指示をしていく・・・。その内容は、これまでの王都では考えられないような内容の物ばかりであったが、すでに逆らうと言う気にはなれなかった。

 兵役や税負担の見直し、スラムへの対応、予算の配分、軍の編成・・・ありとあらゆるものが見直されることになる。


 翌日、体制の見直しなどが王都の街に掲示される


「な、なんだこれは・・・」

「こんな事できるわけないだろ・・・」

「無茶苦茶だ」


 掲示された布告文を読んだ男達が、そんな事を言っていると兵士たちが男達を拘束する。


「王がなされる事を侮辱する行為は厳罰にするぞ」


「や、やめてくれ・・・」


「連れていけ」


 布告文の後ろには兵士が整列しており、布告文を読みに来た王都の住民も布告文を読み終わると逃げるように帰宅する。

 王都では、布告文を読んだ後、密かに王都からの脱出を図る者が増加したが、王都の門を抜けるにも王の許可が必要となり、容易に門を抜けることができなくなる。

 王都の中には最初こそ不満や不平を言う者がいたが、ほんの少しでもそれを口にすると兵士に捕らえられ、捕えられた者は二度と帰ってこなかった・・・。



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