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ンザンビの召喚士  作者: 鰯 寛之
プロローグ1
7/113

イントルーダー

「ここならジャマなものがない」


 一面、天然の(しば)がはえたフィールドの中央にウィトとサンはやってきた。先ほどここで訓練くんれんをしていた者たちはみな校舎こうしゃに引きあげたため、あたりには誰もおらず、フィールドは二人だけだった。


「それでは続きをいたしましょう。スプーンを手のひらにつけてください」


 ウィトが言われたとおりスプーンをつけると、手のひらを地面にむけた。


「さあ、それが地面に落ちれば、とりあえず力の制御せいぎょは成功です。もう一度、ひとみを閉じ、心を落ちつかせ、エネルギーの流れを意識いしきしてください」


 ウィトは瞳を閉じると、大きく息をはいた。


「”落ちろ”と念じるのではなく、むしろ無を意識するのです。そうすれば、自然とエネルギーの流れの方向がわかるようになると思います」


 しばらくすると、ウィトの手のひらにくっついていたスプーンのが徐々(じょじょ)に離れはじめ、スプーンの先端せんたんだけがくっついて、ちゅうぶらりんのような状態になった。


「いいですよ。その調子です。だいぶエネルギーの流れがゆっくりになってきました。今度は、その流れを完全にとめます。そのために、その流れの方向とは逆向きの方向に、あえてエネルギーをぶつけるのです」


 その途端とたん、ふたたびスプーンが手のひらに完全にくっついた。


「違います。そちらは正のエネルギーの方向です。真逆まぎゃくのエネルギーを意識するのです」


 するとふたたび、スプーンが宙ぶらりんの状態になった。


「そう。その方向です。いいですよ。もう一息です」


 ウィトの眉間みけんにシワが寄る。と、スプーンがまた手のひらに戻りはじめた。


「力んではダメです。気を落ちつかせてください」


 スプーンが完全に地面と垂直すいちょくの状態になり、先端せんたんが手のひらから離れた瞬間しゅんかん、スプーンは重力によって地面に落下した。


「できた!」


 ウィトが瞳を開け、笑みを浮かべた。


「第一関門かんもんはクリアです。ですがよろこぶのはまだはやいですよ。その地点を常に意識し、どんな状態でもそのエネルギーの拮抗きっこう状態をたもたねばなりません。もう一度、スプーンを拾って、今度は左の手のひらで同じ事をくりかえしてください」


 ウィトは言われた通りスプーンをひろい、左手につけた。

 そのとき、地面全体がとつぜんれはじめた。

 サンがおどろきとともにあたり見渡した。


「・・・地震じしん?」


 ウィトがスプーンをにぎりしめながら言った。

 と、ウィトとサンのいるちょうど真下の地面に、巨大な漆黒しっこくのサークルがあらわれた。


「まずい!」


 サンはそう叫ぶと、ウィトにむかって手のひらをかざした。その途端、ウィトの体はすべるにように吹き飛ばされ、フィールドのすみの壁に激突げきとつした。

 サークルから出てきたのは、全長20メートル以上もある大きなつばさをもったドラゴンだった。ドラゴンが翼を羽ばたかせて飛ぶと、ウィトのところまでちりが舞いあがった。

 ウィトはなにが起こったのかわからず、ただ上空を見あげていた。


「イントルーダーです。職員の者はただちに所定の位置についてください。これは訓練ではありません。り返します。イントルーダーですーー」


 その館内かんない放送とともに、サイレンの音があたりにひびいた。

 ドラゴンが闇雲やみくもに炎をきだした。その炎によって、ドーム状の天井てんじょうに大きな穴があいた。

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