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ンザンビの召喚士  作者: 鰯 寛之
プロローグ1
49/113

ウィトの特訓

 市街地から遠く離れた森で、ウィトはコーネリアス・ウィザードの指導のもと、力のコントロールの仕方を学んでいた。

 右手を前方にかかげたウィトが、一本の大木にむかって雷を放出する。雷は放射状に散っていき、その大木をわずかにかすって消失した。かすった部分に焦げ目がついた。


「ええ、だいぶ良くなってきました。雷のエネルギーはうまくコントロールしないと、あたりに分散してしまう性質があるので、糸をつむぐように、雷のエネルギーを一本にまとめなければなりません。その感覚をつかむには、こうやって実際に何度も的を狙う必要があります」 


 二人から少し離れた場所で、アイリス・クローシスが折りたたみ椅子いすに座って読書している。そのかたわらにアース・サンドロビッチが腕を組んで立っていた。


「別にあんたはいなくてもいいのよ」


 アイリス・クローシスが本から目を離さずに言った。


「俺は、お前を完全に信頼したわけじゃねえからな。お前たちが少しでもみょうなマネをしたら、すぐに戦闘態勢にはいれるよう、監視しておく必要がある」


「今のあなたに何ができるの? はやくその腕、治してくれない? 穀潰ごくつぶしもいいとこよ」


「そういや、あのちっこいヤツはどうした? お前の肩に乗ってたやつ」


「レオン・ド・シールズは別の仕事をしてるわ。あなたよりもよっぽど仕事ができるわよ」


「何の仕事だ?」


「どうしてあんたにそんなこと言わなきゃならないのよ?」


 アース・サンドロビッチが疑いの目をむける。


「・・・まあいいわ。彼は今、ウィトン・シュタールが住んでたマンションにいる。ウィトン・シュタールそっくりに擬態ぎたいしてね」


「なんでそんなこと?」


「どうやら、あの部屋は24時間体勢で監視されているようなの。レオン・ド・シールズは私たちの目には見えない不可視ふかし光線も見えるらしくて、彼が言うには、壁のいたるところから人工的な光線が伸びているそうよ」


「ってことは、国の機関がウィトン・シュタールを監視してるってことか?」


「間違いないわね」


「なんのために?」


「彼の能力が貴重だからよ。あの雷神すらもあっけなく消失させてしまう能力なんて、前代未聞の大事おおごとよ。多少の知識がある者だったら、誰だって彼に興味を抱くと思うわ。敵、味方問わずね」


「お前もそのひとりってか?」


「否定はしないわ。私も彼の能力には興味がある。その能力の仕組みを研究できるのならば、月100万クーンツなんて激安もいいとこ」


 そのとき、ウィトの手から放たれた雷が一直線に大木の根元にあたり、大木は破裂音とともに真っ二つに割れると、ゆっくりと地面にへし折れた。


「すばらしい!」


 コーネリアス・ウィザードが言った。

 ウィトはその光景を見て、呆気にとられていた。


「すばらしいわ」


 アイリス・クローシスは立ちあがると、二人に近づいた。


「ウィトン・シュタール、あなたの成長ぶりには目を見張るものがあるわ」


「あ、ありがとうございます」


 ウィトが軽く会釈しながら言った。


「まるで泉のようにエネルギーがき出てくるようです」とコーネリアス・ウィザード。「この分だと、私なんてすぐに追い抜かれてしまいますよ」


「この調子なら、半年後の召喚獣能力検定試験にチャレンジできるかしら?」


「実技に関しては問題ないでしょう。あと学科試験をどうパスするかですね」


「学科に関しては私が教えるわ」


「なんだ、召喚獣能力検定試験って?」


 アース・サンドロビッチが言った。

 それを聞いて、アイリス・クローシスがどん引きする。


「・・・あんた、本気で言ってるの? 何年召喚獣やってんのよ? どれだけ世間知らずなの?」


「仕方ねぇだろ。養成学校は3ヶ月で辞めちまったんだから」


「はっ? あんた、履歴書に嘘書いたの? 最終学歴は養成学校卒業になってたわ」


「あっ・・・そうだったか?」


「それ、完全に犯罪よ。経歴詐称けいれきさしょうは、召喚獣にとっては大罪よ」


「別に強けりゃいいだろ。なにも、敵とテストの点数で戦うわけじゃねえしよ。腕っぷしさえありゃ、勉強なんてできなくてもやっていけんだよ」


 アイリス・クローシスがニヤリとした。


「いいこと考えた。あなたも一緒に召喚獣能力検定試験を受けなさい。ライバルがいたほうが、いい刺激になるし。もしそこで不合格になったら、今度こそクビよ」


「ちょっ、待てよ! なんで俺が、そんなひよっこが受けるような試験を受けなきゃならないんだよ!」


「当然受かるわよね? なんてったってひよっこが、召喚獣としての一般的な能力をはかる試験なんだから。まさか経験豊富なあなたが、そんな試験で落ちるなんてことはないわよね?」


「・・・」


「よし、決まりね。検定料は私が持つから安心して。あなたたちは残りの時間をフルに活用して、訓練にはげむように。それがあなたたちにせられた当面の仕事よ」


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