1話
シュレンは炎竜様のもとへ向かって歩いていますが、動物達や、妖精達も、シュレンの体から燃え上がる火を怖がって、誰も近寄って来ません。
ひとりぼっちでつまんなかったシュレンは、転がっていた小石をけりあげました。
すると、シュレンの真上を通りすぎようとしていた旋風に小石があたりました。
「あいたっ! 誰だ、俺に石をぶつけるのは」
旋風は人の形になると怒りだします。
「あっ、ごめんなさい。僕はシュレンといいます……」
シュレンは慌ててあやまりました。
「なんだ、火の妖精の子供か、このあたりで火の妖精はめずらしいな、しかもひとりとは何をしてるのかな」
シュレンは冬がながいことや、自分が火の山にいる炎竜様の所に向かっていることなど、いままでのことを話しました。
「ふーん、しかしまだ子供のシュレンをつかいにやるとは……よし、俺が協力してやろう」
「でも……協力してくれるのはありがたいけど……あなたのことをよくしらないし」
シュレンがもじもじして答えた。
「そういうことなら、俺は風の妖精のプーだ。今日から友達になればいいだろう」
プーがにっこり笑って言いました。
「本当に? 友達になってくれるの?」
「もちろん、もう友達だよ。よろしくな、シュレン」
「うん、ありがとう、プー」
こうしてシュレンには、初めての友達ができたのです。
「そうときまれば、この先には大きな川があるからな、火の妖精のシュレンには渡れないだろう。俺が運んでやろう」
そういうと、プーは旋風になって、シュレンをもちあげました。
「大丈夫なの」
シュレンが心配そうに聞くと、
「これぐらいへっちゃらだよ。シュレンの火も風の俺には、温かくて気持ちいいぐらいだ」
プーが笑って答えます。
「それより、ほら下をみてみろよ」
プーに声を掛けられて、シュレンが下を見てみると、シュレンがひとりでは渡れそうにないほどの大きな川が流れていました。
「本当だ。僕ひとりだったら、とても渡れそうにないや。プー、ありがとう」
「どういたしまして、ははは」
プーは笑ってこたえました。
シュレンの冒険は、こうして仲間をひとり加えて、火の山へと向かうのでした。