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断罪  作者: RIO
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六十四話 対峙

深夜の公園で輝く小さな光、オレンジ色に光る閃光が映し出したのはあっと驚いた顔で倒れる女とその女を泣くようににらみつける少年の顔だった。

どさりと倒れる女は、受け身など取らず頭を思いっきり地面にぶつけたようだったが痛がる素振りなど見せず、ピクリとも動かない。

その光景に飲み込まれた俺は先ほどの全力疾走などどこに忘れてきたのか、まるで五十キロはあるだろうベストを突然着させられたように体の動きは鈍り走るスピードは急速に減速し、銃を持つ少年の前でぴたりと止まってしまった。

そんな俺に少年はゆっくりと冷静に、俺へと照準を向ける。

ここで俺は初めてきちんとその少年の顔を見ることができた。

ボサボサした髪に細い目、体格はそれほど大きくなく陰険そうな偏見だが引きこもりっぽい奴だった。

「お前は?」

銃を向けながら俺に聞く少年、だけど俺はうまく口が回らずそこに立ちすくむことしかできない。

意識は銃のほうへと自然にむく。

引き金にかけられた指は今にも動きそうで、恐怖が体を縛る。

銃口はゆっくりと俺の心臓あたりに向けられる。

やばい死ぬ。

理解、絶望、諦めそれらが一斉にお前は死ぬんだと教えてくれた。

「奈佐さん!!」

その声とともに俺の肩に衝撃が走り体勢を崩した俺は地面に倒れこんだ。

とっさに体を守ろうと右手を地面につくが反応が遅すぎたっため勢いを殺すことはできずほとんど倒れた勢いのまま顔を地面に打った。

地面とこすれた顔が熱くずきりと痛んだが不思議なことにそれ以上の痛みはこの体にはない。

始めに衝撃を感じた肩、おそらく撃たれた箇所なのだろうけどそこにも痛みはない。

おかしい。

本当に撃たれたのか?

それを確認しようとうつ伏せの状態から体を起こし、自分の体を見るとその視界の端に物陰に待機していたはずの法事が倒れている姿が目に入った。

「ほうじ、オイ!法事!」

「邪魔が」

法事に駆け寄る俺と、口をへの字に曲げ不快感をあらわにする銃の少年。

俺はそんな少年に意識を向けつつも法事をかばうように二人の間にしゃがみ倒れる法事の盾となる。

まるごしで銃を持つ相手に背を向けるんだ撃ってくださいと言っているようなもの怖い怖くてたまらない、けれどこいつをほっとくなんてできない。

「おい!法事どうしたんだよ」

「アンタ馬鹿でしょ。さっさと逃げろよ」

俺と同じようにうつ伏せに倒れる法事は耳を澄まさないと聞こえないほどか細い声でそう言ってきた。

まさかと思い、彼の体を仰向けにするとそこには予想通り右わき腹に赤いしみが広がっていた。

撃たれたんだ、俺の代わりに俺をかばって。

俺が大志さんの言いつけを守らずに勝手に飛びだしたから。

「早く逃げろ、大志さんには連絡したから早く」

うわごとのように繰り返す法事、しゃべるのも苦しいのか口を開くたびにか細い呼吸音が漏れる。

怪我の度合いは分からないけど撃たれたんだ軽いはずがない。

早く救急車を呼ばないと。

この状況で無理だ。

俺のせいだ俺が勝手に動いたから。

ならあの女を見殺しにしろっていうのか?

でも結局死んだ、何もできずに。

「あっ」

視界がぐわんぐわんと揺れ、今にも倒れそうになる。

罪悪感でおかしくなりそうだ、狂いたい狂ってしまおう。

そう思ったとき後ろで声が聞こえた。

「ゴミどもが!邪魔しやがって、生きる価値もないゴミなんだから素直に死ねよ!ゴミのくせに人助けだと、吐き気がする!!」

法事の行動がよっぽど頭にきたのか、少年は歯茎をむき出しにしながら吠え俺の頭に銃口を突き立てた。

さっきまで冷酷そのものに見えたこの少年は意外と激情家なのかもしれない。

だけど今の言葉はいただけない、ゴミとこいつは俺たちのことを言った確かに俺はゴミかもしれない、けれど、必死で仲間を俺を救ってくれたこいつを法事をゴミ扱いすることは許せない!

その怒りが、狂い消えそうになっていた俺の理性をつなぎとめてくれた。

「あー!!!」

叫び声とともに恐怖心を消し去り、振り向きざまにパンチを繰り出す。

正直撃たれるかどうかは賭けだったが、俺の突然の行動に驚いたのか少年は硬直したまま動けず、俺のパンチは見事に右ほほに食らい後方へよろける。

こんなチャンスはないと追撃をくらわそうとさらに詰め寄る。

大丈夫だ銃はこちらを向いているけど照準が全然あっていない、いける!

ダン!と地面をける右足はバネのごとくその反動を利用して叩き付ける拳は槍だ。

この勢いの俺の全体重を乗せた一撃、手の骨はぶっ壊れそうだけど死ぬよりましだろ?

そして、俺の拳が奴の顔面に届く寸前で再び俺のほほに激しい痛みが走った。

「ぎっ!」

衝撃のあまり後方へとよろける。

ジワリと唾液を侵食する血の味、どうやら今の衝撃で右頬内部の肉が歯とぶつかりすりおろされたようだった。

殴られたのだろうか?

だけどその割にはあまりにも衝撃が強すぎる。

ふらつく視界に入ったのは銃をまるでテニスのバックショットのような形で銃を振り抜く少年の姿があった。

グリップ部で殴ったのか?

顔を抑えながら体制を立て直す俺に怒りの表情で銃を向ける少年。

「まずっ・・・!」

そう思った次の瞬間にはダン!ダン!と二発の銃声が鳴り俺は死んだ。



恵子が目を覚ましたのは俺がコイツを連れて帰ってから十分後と意外と早い目覚めだった。

寝入る前の取り乱しようがまるで嘘のように、落ち着いていた。

「私、寝てたの?」

「ああ、そりゃぐっすりとな」

ああ、このまま目を覚まさなかったらどうしようと思うほどに。

「そっか、ありがとねそばにいてくれて」

「なんだよ、俺に礼とか。らしくねーな」

その言葉に恵子は少しむすっとした表情をした。

そのほうが恵子らしい。

「なによ素直にお礼してるのに馬鹿」

やっといつもの調子を取り戻してきた恵子に一安心したところでそんな安心は与えんとばかりに俺の携帯が警告するようになった。

それは俺が待ち望んでいた電話だ。

それをうれしくは思わないが。

恵子に断りを入れ電話を見ると相手は予想通り法事からだった。

電話が来たということはおそらく司の発見に成功したんだろう。

なら後の手順は簡単だ、奴らをそこから遠ざけ俺が司のもとに行けばいい。

幸い恵子もこうして目を覚ましたんだ、この場を離れても問題はないだろう。

そう決断した俺だったが、電話の向こうの法事によってその計画は見事に破たんすることになる。

「は?奈佐のやつが飛び出した?」

人は話が頭に入っていないとき、相手の言葉をオウム返しするというが今の俺はまさにそれだった。

いや、頭に入っていないわけではなかったが理解できなかった。

飛び出したって司を追いかけたってことか?

なんで、そんな命令俺はしてない。

方角は三丸公園のほうです。

最後にそれだけ伝えて法事の奴は電話を切った。

たぶん電話をしている状態では奈佐に追いつけないのだろう。

「司の件?」

そう聞いてくる恵子に俺は何も言わない。

「行きなよ、でも今度は私も行くから」

「それは!」

だめだと言おうとして口ごもる。

彼女はこいつは今まで何も知らずに知らされずにいた。

俺がそうしたから、それが一番いいことだと思っていた。

こんな、血なまぐさいことにかかわらず好きな奴と平和にただ生きていくことが正しいんだと思ってた。

けれど結果こいつはこんなにも傷ついた。

俺もこれ以上コイツに隠し事はしたくはない。

「言っとくけど、待ってるなんて絶対できないから」

ああ、止めても無駄か。

諦めというよりもいつもと変わらない恵子に安心を覚える。

「わかった、勝手に動かれても困るしな。ただ、これから行く場所が安全とは思わないでくれ」

「どうゆうこと?」

「さあな、ただ何が起こるかわからない。お前に何かあったら秋瀬にも合わせる顔がないしな、いつもみたいに突っ走んなよ」

キョトンとする恵子けれどその顔も数秒後にはぷっと吹き出し崩れる。

「心配してくれんだ大志。けど、それはアンタもじゃん」

それを言われると痛い。

「まぁ、互いに無茶はしないようにってことだな」

そんな、俺の思いが無駄になることを知るのは今から数分後。



タッタタッタ!

暗い夜道に二人分の足音だけが響き渡る。

先頭を走る大志は私に気を使っているのだろう時々後ろを振り向きながら私のペースに合わせてくれている。

申訳ないが、その心使いはありがたいものだった。

まだ目覚めたばかりのせいか、いまだ頭にもやがかかっているようでどこか夢を見ているような気分だった。

そのせいだろうか、あれだけ混乱していた頭は特に何も考えれず、乱れまくっていた心はまるで穴が開いたかのように空っぽだ。

どうしてこんな気分になっているのだろう?

意識を失っている間に何か私の体に変化があったのだろうか?

そもそもなんで私は意識を失った?

あの話を聞いた後の記憶がうまく思い出せない。

なんだろう、何か記憶という扉に鍵がかけられているようで思い出せないというよりその記憶をうまく引っ張り出すことができない。

無理に思い出そうとしようにも脳の中心から締め付けられるような頭痛が襲い思考を停止させる。

この感覚は一体何なんだろう?

そんな自身の体の違和感を感じつつ、気づけば目的地の公園はもう目と鼻の先にまで迫っていた。

大志は公園前で立ち止まり、こちらに振り返ると。

「ここからはなるべく音を立てずに、慎重に動け」

と、耳打ちしてきた。

私もそれに素直にうなずく。

見知ったはずの場所なのに何なんだろうこのいいぐるしさは。

まるで地面にへばりつくように這うように、腰を低くし猫のように足音を立てず公園の中心部へと向かっていく。

辺りはいまだ静かで、大志が慌てるようなことなどまるでないと言いたげだ。

けど、それが不可解に不気味だった。

あの後、大志は何度かその法事って人に何度か電話をしているが、一度も通じない。

今かけている電話でいったいなん度目だろうか?

すると、あたりから突然携帯の着信音が響き私たちはギョッとその身を固くし立ち止まる。

「た、大志。今の」

不安のあまり私は大志に呼びかけるが大志はそんな私を無視し周囲を見渡している。

どうやら音源を探しているようだ、私もそれに倣いあたりを見渡す。

そして私と大志はその一点に釘づけになった。

公園の中心、タコの足の前に四人の人影があった。

それは異様な光景だった。

地面に倒れ伏せる三人の人影、それをまるで覗き込むようにかがんだ姿勢のもう一人の影。

その影が私たちに気づきゆっくりと立ち上がる。

「司」

司は目を見張り驚いていたが、一切声を上げずにその代わりの返答のように手にある黒い何かを私たちに向けた。

それが何なのかわからないうちに大志は手に持っていたスマフォを司に向かって全力投球し、見事にそれが司の額に的中した。

「ぐっ!」

額を抑えよろける司に大志は素早く駆け寄ると、その突っ込んだ勢いのまま今度は司の右頬に強烈なパンチを食らわせた。

その衝撃で後方へと倒れそうになる司、けれど大志はその手を引き無理やり自分のもとへと引き戻すと間髪入れずに今度はみぞおちに膝蹴りを食らわせた。

苦しさからだろう膝を崩し地面に這いつくばる司に大志はのしかかりさらに殴り続ける。

最初に倒れていた三人は自分たちのすぐ隣で殴り合いが起きているというのにピクリとも動かない。

寝てるわけじゃないよね・・・。

とても嫌な予感がする。

そんな考えをしているうちに二人の争いはさらに激しさを増していた。

とはいっても殴っているのは大志だけ、司は一方的に痛めつけらていて何とか片腕で頭をかばっている状態だ。

そう片腕で。

なんで両腕じゃないんだ?そう思い、司のもう片方の腕を見ると彼はっくりと右手に持った何かを大志に向けているところだった。

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