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断罪  作者: RIO
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五話 三丸町空き地殺人事件

現場である三丸小学校付近の空き地についた岸野真人は寒さにかじかむ手をさすりながら状況を近場の刑事に聞く。

「被害者は近所に住む時実泰三(34)死因は頭部打撲による脳挫傷です。前頭部に二か所、後頭部に三か所殴られた跡がありました」

「ふん、凶器は?」

「現場に落ちていた石のようです。大量の血痕が付着してました」

若手の澄乃刑事は淡々と説明する。

「そうか、それでこちらの仏さんは誰?」

岸野警部の視線には老婆の遺体、首が一文字に切り裂かれどうやら出血死したようだった。

「それが、どうやらこの時実泰三の母、時実早子らしく・・・」

「他殺か?」

「いえそれがどうやら自殺のようで」

だろうなと岸野警部も思う。

「澄乃、お前このばあさんが被疑者だと思うか?」

「状況的に見て。凶器の石からも彼女の指紋が検出されたようですし」

「なら決まりか。ちっ!子殺しの事件でしかも被疑者死亡か・・・おい!とりあえず被害者と被疑者について聞き込みに行くぞ」

「なら、時実養護施設に行くのが良いかと」

「なんだそこは?」

自身の話に割り込んできた澄乃刑事ににらみを利かせながら岸野は振り返った。

「この老女が運営していた施設です」

何時の間に調べたのか?

澄乃刑事の情報に多少驚きつつ他に当てもないのでとりあえずはその施設に向かうことにするのであった。


「ここが時実養護施設か・・・」

その施設は現場の空き地から目と鼻の先にあった。

外観は昭和の木造校舎、この付近にある三丸小学校と間違ってしまいそうなほど酷似していた。

職員は五名、子供は十名それがこの施設の全人口だった。

「そんな、院長が死んだって・・・まさか!」

応接室へと集められた職員たちは驚愕の余り目を大きく見開いていた。

「ええたいへん残念ながら。息子さんの泰三さんと共に」

「泰三さんもですか」

早子の時とはうって変わって職員たちに大きな反応はない。

「どうやら泰三さんとはあまり親しくなかったようですね」

「そんなことは」

そう言い目をそらす、神山京香。

他の職員たちも似たような反応を示す、どうやら余り快く思っていなかったのは事実らしい。

動機は、誰にあってもおかしくはないか・・・。

ふむと、岸野刑事は顎をさする。

急いで現場に来たためひげをそり忘れていたため手には不快な感触が広がった。

「時実泰三さんはよくここに?」

「ええ、よく院長にお金を借りに」

「ほう、返しに来たことは?」

「ありませんよ。いつも借りたままです。元から返す気なんてなかったんでしょ」

心なしか神山京香の声は少し鋭くなったいた。

「でわ、ん?」

次の質問に移ろうとしたところで岸野刑事はこちらをうかがっている人影に気付いた。

「誰ですか?」

視線の先に立っていたのは学ランを着た少年だった。

目元まで伸びたおかっぱ頭の少年は目を驚き見開いた後有無言わさずにげ出していった。

「大介君!」

京香が声を荒げる。

「今のこの施設の子ですか?」

「はい、すみません。どうも立ち聞きしてたみたいで。ちょっと様子を見に行ってもいいでしょうか?」

「いいですよただし同行はさせてもらいます。もしかしたら何か知っているかもしれませんしね」

「子供たちからも事情を聴く気ですか!?」

とたんに険悪な表情をする京香、それを岸野は何のそのと流す。

「事件解決の為です、どうかご理解を。澄乃刑事、そちらは頼みますよ」

コクリと頷く澄乃にあとを任せ、岸野は京子と共に部屋を出ていった。

ギシリと板踏みのする廊下を歩いていく。

昼間だというのに薄暗く感じてしまうのは気のせいだろうか?

さながらお化け屋敷だな。

そんな感想を岸野は抱く。

前方にいる京子は一言も言葉を発さず、どうやら子供たちから話を聞くという俺のことを内心は相当面白く思ってないようだ。

時々射抜くような目でこちらを見る、くくっなかなかに気の強そうなお嬢さんだ。

「神山さんといいましたね。あなたはこちらに務めてから長いのですか?」

あまり警戒されるのもやりずらいので何気ない会話を振ってみる。

「いえ、まだ一年ほどです。前は・・・」

「前は?」

「ある学校で教師をしていました」

「ほう、先生でいらしゃいましたか。どうりで子供の扱いに慣れているわけですね」

「あの子たちをものみたいに言うのはよしてください!」

キッと睨まれる。

おっと、また地雷を踏んでしまったようだ、ここはおとなしく黙っているか。

しかし教師ね~。

意外ではないがこの年でもう転職とは何かあったのだろうか?

それとも単に意志が弱いだけか?

まぁ、それも調べればわかるか。

「こちらです」

案内されたのは施設北側、一階の最奥にある部屋。

扉の向こうからは子供たちの声が聞こえてくるがどれも明るさのない沈んだものだ。

そしてその声は扉が開くとともに止まり同時に二十の瞳がこちらへと向けられた。

沈黙の時間、こういうのは正直苦手なので早めに自分から切り出してみる。

「やあ、みんなこんにちは。私は岸野と言ってまぁ警察官です」

子供にとって見知らぬ大人とはそれだけで恐怖の対象となる、なので出来る限りにこやかな顔であいさつをした。

それに対した子供たちの反応はそれぞれだ。

驚く者、不安そうな顔をする者、興味なさげな者、本当にそれぞれ。


「刑事さんが何の用ですか?」

初めに声を上げたのは林田恵子だった。

顔は少し不安げな感じだったが声ははっきりと通っていた、なかなか勇気のありそうな子だなと岸野は思った。

「う~んと。今日はみんなにちょっと聞きたいことがあってきました。みんなもおじさんのお仕事に協力してくれるかな?」

岸野はそう笑いかけ部屋へと入っていった。


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