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断罪  作者: RIO
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三十九話 とある男、終わりの物語

罪には罰をなんて昔から言うけれどそれが実行されることなんていったいどれくらいあるのだろうか?

そりゃもちろん警察とかに捕まるような奴はそれなりの罰を受けるだろう、それが罪にあってるかは別として。

でも、なら警察に捕まっていない犯罪者は?

誰にもきずかないところで悪事を働いている悪人は?

警察に捕まるほどでないとしても人を苦しめているような悪には一体だれが罰を与えるのだろうか?

そもそも、何が罪で何がそうじゃないのかが分からない、一体なにを持って人は罪を決めるのだろう。

そして罰を受けた人間はそれですべてが許されるのだろうか?

許していいのだろうか?

許せるのだろうか?

許さなければいけないのだろうか?

なら、誰か教えてほしい。

憎むべきものが罰によって消え去った今、私の心にくすぶるこの黒い炎はこの消えない炎は一体誰に向ければいいのか?

誰か向けなければ自身すら燃やし尽くしてしまうこの憎しみを私はどうすればいいのか。

誰か教えてほしい。



こうして心を吐露すれば少しは気分が収まるかと思い、日記に己の内を書きなぐってみたが、なんだか自身の異常さを再確認できただけで心がさらに重くなるだった。

「ふー」

ため息とともにまるで全身の力まで抜け去ってしまったかのように住瀬章夫は机に頭を伏せる。

冷たい感覚が頬より伝わり反射的に身を縮ませる。

季節は11月に差し掛かり本格的な冬の到来を感じさせていたがこの家には暖房器具の類などひとつまなく、それどころか部屋に鎮座されているものはベッドとこの机だけ。

ベッドもマットを敷いただけのお粗末なもので、机にあるのは一枚の写真だけ。

写っているのは20ほどの青年、章夫の息子、星斗だ。

「星斗、星斗」

その名を呼ぶたびに涙がこみ上げてくる。

住瀬星斗、家族思いの優しい子だった。

特別勉学が出来たわけでも運動が出来たわけでもなかったが、何かと今日は記念日だからと親孝行してくれる子だった。

そんな星斗が死んだのが半年前のことバイト帰りに車に引かれて死んだ相手は飲酒運転だった。

そして相手もそのまま車ごと電柱にぶつかり死んだ。

痛ましい事故だ。

誰かがそういった、叫びそうになった、目の前が真っ赤になった。

アレは事故なんかじゃないオレの息子は殺されたんだ、ルールを守らない身勝手な人間に殺された。

そう言いたかった。

けど、そんなこといまさら言っても仕方がない、息子は帰ってこないし憎むべき相手も死んでしまいもういない。

何もかもがどうでもよくなって、仕事をやめ無気力に過ごす日々。

気付けば妻は出ていき残ったのはいまだ消えることのない怒りだけ。

もういっそう死んでしまおうか?

そうしたらこんな苦しみ全部終わる。

そんな破滅的願望を抱いていた時だった、彼らが来たのは。


その日、呼び鈴に誘われるがまま玄関を開けると見知らぬ顔の人物たちが立っていた。

『あの、どちら様ですか?』

その問いかけに一人がにこりと微笑し答えてくれた。

『初めまして、住瀬章夫さん。自分たちこういった団体なのですが』

そいつは一枚の用紙をこちらに渡してきた。

水色と白を基調としたその紙には、

『罪をなくそう。人類浄化の会?』

『はい、実は私たち人類の罪を洗い流す活動をしているんです』

『はぁ…』

正直、意味が解らなかった。

そう、呆ける私に再び微笑みかけると。

『ここは冷えますね。中で話をしましょう』

『お邪魔します』

『失礼』

と告げ、彼ら問答無用で自宅の中へと入りこんでしまった。



彼らの話を要約するとこうだった。

彼らは犯罪または理不尽な現実の被害者たちの集団であり、その目的は同じような傷を負う者のケアを行うというボランティア活動を行っているとのことだった。

そして、私のこともとある筋から聞きこうして会いに来たのだという。


『心のケアね。君たちがそれを?』

『ええ、傷をいやすことが出来るのはその傷を知る者だけです。つまり、私たちですね。どんな傷も同じ仲間と過ごせば塞がります。傷を分け合うのです』

『傷のなめあいともいうよね、そういうの。傷をいやせるのは傷を知る者だけだって?随分わかったようなこと言うじゃないの。傲慢だね』

分かったような口を利く目の前の人物に反感を覚え大人げない態度をとってしまう。

そんな私に対して彼らはしゅんと大人しくなる。

『すみません。少々口が過ぎましたね。住瀬さんの言う通り、私たちが言ってることはおこがましいことかもしれません。なぜなら、傷を真に癒せるのはその傷を真に知るもの、つまり住瀬さん自身に他なりませんから。ですから自分たちにできるのは手助けだけ』

『なら、帰ってくれ!君たちにできることは何もない』

押し出すように彼らを家から連れ出す。

『もうここには来ないでくれ』

そんな私に対して彼らの答えは『また来ます』だった。



そしてその言葉は実現される。

彼らは毎日のように私のもとを訪ねてきた。

先日のような勧誘ではなくまるで昔ながらの友人のように彼らは私に接してくれた。

話をしたり、料理を作ってくれたり、おすすめの本を教えてくれたりとそれは世間を拒絶していた私からすればまるで息子との日々が戻ったかのような輝きだった。

そして、その日々の中で彼らも私と同じように本当に心に傷を負っていることを知った。

ヒルと名乗ったその子は生まれてすぐ両親を亡くし親せきからも捨てられたという経緯をたどり、アクセルと名乗った子は家族を暴漢に殺されたという。

それは私と経緯こそ違うものの家族を理不尽に失ったという点では共通しており、私が彼らに近親感を覚えるには十分だった。

自分で傷のなめあいと言っておきながら私は彼らが自分のもとへ来るのを心待ちにするようになっていき、だんだんと彼らに依存していった。

それは弱さだという自覚はあったがもう歯止めが止められなくなり、彼らもそんな私を受け入れてくれた。

私はその優しさに甘えた甘えて甘えて深みにはまりいつの間にか私は人類浄化の会の一員となっていた。


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