二十二話 少年少女と海 終
駅の改札口を抜けた頃、時刻はもう午後7時を回っていた。
「思ったより遅くなったな」
満天の今にも落ちてきそうな星の海の下、その地表を青く染める光の下、その男は恵子を待っていた。
恵子はその男を認識し微笑み男もまた同じように微笑み返す。
「待っててくれたんだ」
「夜道は危ないからね。まったく、遅くなるなら連絡しろってあれほど言っておいたのに」
「ごめん。遊びに夢中になりすぎて」
「まぁ君らしいよ」
そう苦笑する彼の腕に恵子は自らの腕を絡ませる。
「今日おばさんたちは?」
「いないよ。結婚記念日で旅行行ってる。兄貴と姉貴もばあちゃんちに帰省中だし」
「じゃあ・・・」
「うん、今日はふたりっきりだね。嬉しいよ」
「ば、バカ!そんなはっきり言うな」
顔を赤らめ彼の横腹を小突く恵子、それが愛らしく彼は一層微笑み意地悪な質問をしてみた。
「恵子は嫌だった僕と二人っきり?」
「そ、そんなわけないじゃん!」
「じゃあなんで小突いたりしたの?」
「う、それは」
「それは?」
「恥ずかしかったから。言わせんなバカ」
そしてまた小突かれる。
「痛いな」
「うるさい」
むせるような暑い暑い熱帯夜、それでも二人は互いに引き寄せた体を離すことなく寄り添いながら彼の自宅へと向かうのであった。
桐村修が自室に帰り着いたとき時刻は既に午後8時を十分ほど過ぎていた。
今彼は町が用意した共同施設で生活している、門限は八時ぎりぎり間に合わず先程まで寮長に叱られていたところだ。
「ふ~」
深いため息をつき倒れるようにベッドに寝そべる。
「疲れた」
心底そう思う、今日は楽しかったがホント疲れた、どうも百合がいるとテンションが上がりすぎて必要以上にはしゃいでしまう癖が自分にはあるようだと修は反省する。
「風呂だるいな」
けだるい怠惰感に体が包まれていく中、ブーブーと唐突に携帯が鳴った。
(そういえば、電車乗った時にマナーモードにしたままだった)
手にとってみるとメールが一通届いていた。
差出人は甲光凪紗となっていた。
[ヤッホー、初メールだよ♥今日は楽しかったねぇ~!!桐村くんは楽しめた??みんなはしゃいでいて疲れたっしょ!私はもうヘロヘロだよ~、おかげで今日はぐっすり寝ていい夢見れそう。これもみんなのおかげだね☆今度連絡するからまた遊ぼう]
あまり女子とメールなんてしたことのない修からすれば新鮮なこの文、結局送り返せたのは、
[俺もスッゲー楽しかったよ。マジまた遊びに行こう!!]
そんな返信だけだった。
「ああ、ねむ」
手に持った携帯電話をベッドの端へと投げやり、そのまま深い眠りへと付く修であった。




