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断罪  作者: RIO
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十一話 綺麗な思い・歪んだ思い

自室に戻った恵子は自分のベッドに座りうつむいていた。

気分も同じように凹んだ状態だ。

ついみんなの前で取り乱してしまったのが恥ずかしくて仕方がなかった。

そもそもあんなのは自分らしくないと思う、自分はもっと堂々としてて、それがあんなふうに修の言葉一つで取り乱して、自分の弱い部分がみんなに見られるのがこんなに恥ずかしいなんて思わなかった。

「はぁー」

何よりあんなふうに場の空気を壊したことが恵子は辛かった。

「みんな私の事へんだと思ったかな?」

「そんなことないよ」

パタンとドアを閉めながら百合は言う。

「どこ行ってたの?」

「うんちょっと食堂に」

「食堂?」

「うん、元気のない恵子ちゃんに差し入れ」

ジャン!と言いながら百合は手に持っていたお皿を恵子に差し出す、白色の清潔なお皿その上には綺麗なウサギ型に切られたリンゴが乗せられていた。

「これは?」

「あはは、本当はいけないんだけどね。ほら、美味しいもの食べたら幸せな気持ちなるでしょ?だから、恵子ちゃんを元気づけるもの探してたらコレがあってつい」

えへへと笑う百合。

「私のために?」

「うん。とか言って私が食べたかっただけだったりして」

ひょいとリンゴをひと切れ掴むとそのまま口へと運ぶ百合、シャクと心地よい音が部屋に広がる。

「百合ちゃんってリンゴ好きだったんだ」

「うん、世界で一番好きな食べ物だよ」

「へぇーじゃあ、世界で一番好きなものはなんなの?」

そんな少し意地悪な質問をする。

それに対し百合は恵子でも驚くくらいに真っ赤になりむせかえった。

「ちょ、変なこと急に言わないでよ」

「ごめん」

その予想外の反応に恵子は内心驚きを隠せない。

この反応からして百合に好きな人がいるのは間違いなくその事実は恵子に衝撃を与る。

なんだか百合に置いていかれたかのような妙な孤独感がある。

百合の好きな人、それが誰なのか気になりはしたが、これ以上聞くのは百合に悪い気がしたので恵子はおとなしく差し出されたリンゴを口に運ぶのであった。

シャクリというみずみずしい歯ごたえとともに甘酸っぱい味が口に広がった。


カタカタとキーボードを鳴らす音、それとともに画面にはとある言葉が入力される。

三丸町幼児殺人事件。

検索すると、それに関連した記事が画面上に表示される。

その中から適当なものをクリックし記事を開く。

カチカチという音のあと画面が切り替わり記事が表示される。

表示されるのは文字ばかりのページ。

白い背景に映し出される黒い字はパッと見、大量の虫が画面にへばりついているようにも見えて少し身構えてしまう。

もちろん、それは単なる錯覚であり、実際は虫なんてものはいない、多分ここ最近寝れなかったため疲れていたのだろう。

気を取り直し画面の内容に集中する。


内容は以下のとおり。

事件は、二週間前とある山林で発覚した。

発見者は近くに住む50代の男性、日課の散歩中に掘り返された土の山を発見し不審に思い近づいたところ青いビニールシートに包まれた少女の遺体を発見した。

少女は近所に住む田畑早苗、五歳であることが判明した。

遺体は衣服が脱がされ体には暴行の跡があった。

死因は窒息死、ロープのようなもので首を絞められたと思われる。

警察当局は捜査を継続中。


記事はそこで終わっていた。


「まだ犯人捕まってないんですか?それ」

画面を覗き込むように話しかけてきたのは同じ時実養護施設の職員であり鳩山静希の隣に席を置く男、藤尾朔太郎だった。

藤尾朔太郎、施設の中では現在最年長の職員である彼は、そのふくよかな肉体と温厚な性格から子供たちからはもっぱら菩薩様なんていうあだ名をつけられている。

このことはもちろん本人の耳にも入っているのだが、当人はそれをいたく気に入った様子でわざわざ髪をスキンヘッドにしたほどであった。

本人曰く『こっちのほうが子供ウケがいいでしょ』だそうだ。

この行動からも彼の人の良さが滲み出ているのだが、そんな彼に鳩山は苦手意識を持っていた。


(なんていうか、臭いんだよなこの人。加齢臭ってやつか?それに馴れ馴れしい)


「ああ、そうみたいですよ。この近辺で起きたものですし怖いですね」

「ええ、子供たちが心配ですよ。ああ、そうだ。明日から私たちで子供たちの送り迎えをするなんてのはどうでしょう?いや、なんなら授業中の監視も」

「それは流石にやりすぎかと。それに送り迎えではありませんが集団下校や見回りは学校の方で行われているようですし、むしろこの施設の警備を強化したほうがいいじゃないかと思いますけど」

「ぬっ、それもそうですね。ならばこうしてはおれませぬ!今すぐ行動しなければ!!」

そう言うやいなやその巨体を揺らしながら何処かへと駆け出す、藤尾。

(何なんだあの人は?落ち着きが全くないしあれで本当に僕よりふた周りも上なんだろろうか?僕と同い年の神山さんの方がよっぽどしかりして見える)


やっぱりあの人は苦手だと鳩山は改めて思った。

「それにあんなふうに詰め寄られて、もしボロが出たらどうするんだよ」

内心、冷や汗をかいていたことを悟られていないか今更不安になる。

なんで自分がこんなにビクビクしなければならないのかと、よくよく考えると怒りがこみ上げてくる。

鳩山が怒りを覚える相手それが誰に対してか、そんなことは決まっている、例の事件の被害者、田畑早苗に対してだ。

そもそも、あの事件は彼、鳩山静希からしてみれば不幸な事故以外のなにものでもなかった。


(ああ、本当にあの時はついてなかった。あの日はいつものように、いやいつもより早く家の方に帰宅したんだったな。そしたらあの子、田畑早苗がまだ家の近くでボールで遊んでいて、その姿があまりに愛らしかったんで、ついつい連れて帰ってしまった。言うならばこれは発作のようなものだ、自分の意志じゃどうしようもできないし止めるなんてできるようなものじゃない。僕が幼女にときめいてしまうのは多分病気のたぐいなんだと思う、自分では抑えきれない衝動それを病だと言うならばだけど。けどもしそうなら僕に罪はないはずだ、だって風邪をひいて人に迷惑をかけたとしてもその人を責めるのは間違っているのだから。悪いのは病人ではなくてあくまで病気のほう。なら、僕は悪くないはずだ。これは病気なんだから。そもそも、あの日だって僕はあの子をさらいはしたものの少しイタズラをして家に返そうと思ってたんだ。なのに)


「なのにあの子は・・・」


呟きながら鳩山はあの時のことを思い出す。

あの三丸町幼児殺人事件の真相を。


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