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短編集  作者: 梅雨子
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それは、走る女の心の声 (2011.3.10 現代日常)




 何年ぶりだろう――?

 こんなに焦燥に駆られながら、心の底から求めるのは。


 頭の片隅でそう考えながら、私は走った。

 滲み出る冷や汗は、もはや脂汗にかわりそうだった。

 途切れる息、ドクドクとうるさい鼓動。


 私は早くあそこへ行かねばならなかった。

 寸分の猶予も、ない。

 ……迷うことなど、ない。

 私はあそこへ走る。

 街の中、アスファルトの道路をただひたすらに。

 ――助けて、と言って、誰が助けられるだろう?

 知っている。誰も今の私を救えないと。知っているから、私はあそこに走るしかない。


 後悔ばかりが溢れる。

 奥歯を噛みしめ、眉間に皺を寄せた。


 走る一歩一歩が悲鳴をあげていた。

 それも拳に力をこめて、やり過ごした。


 お願い。

 お願い……。

 お願い――。

 間に合って――!

 叫びそうになる思いで心の中祈ると、その扉が視界に入った。


 瞬時に私は泣きそうに微笑んだ。


 私は目指す。

 その扉の向こうを。


 そして――私は公衆トイレの扉を開けた。




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