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水晶魚【すいしょううお】  作者: 今西薫
【第1章】
16/28

15

決して忘れていたわけではないのですが、書き忘れておりました。


ここ数回(パティが再びやってきてからは、夜です。外は暗いです。

普段なら、街灯にはガス灯があるだけで、全然明るくありません。

そんなんじゃ絶対に、通りの向こうの屋根の上を走る人間を見分けることができません。

なので、祭りだ祭りだ!とあっちゃこっちゃに明かりを灯してたんでしょうねえ…。


ということで、ここ数回分にいくつか言葉を足しておきます。

2011.8.17 23時30分頃に初めて読まれる方にはほとんど関係ないことですが、一応お知らせいたします。

 宿を後にして、ダグラスは壁に体をこすり付けるようにして、公園広場へ向かった。

 ジャックが予想通り流されたのなら、そのコースを行けば途中で拾えるだろうし、最悪、公園広場で探せるだろう、と思ったからだ。

 もし、運悪く、通りの向こう側を彷徨っているのなら、行き違いになることも考えられるが、その時はその時だ。公園まで行けば、あの爆発音の謎も解けるだろう。そんなふうに考えながら進んでいた。

 頭の隅にあるのは、ディルの日記の中身だ。

 まだすべてを読んだわけではない。

 が、何が起こったのかは理解できた。

 水晶魚すいしょううお――。

 昨日の夜、ジェインが語ったおとぎ話。あの話を聞いた時には、ただのおとぎ話なのだと思ったのだ。

 幼い娘と妻を置いて出て行った男のことを伝えるのを躊躇い、おとぎ話にすり替えて伝えたのだと。

 が、事態が進むにつれ、その存在は大きくなっていっていた。

 思わず上司に言ってしまうほどに。

 

 ジェインの父親が願ったのは、盲目の妻の目を見えるようにすることだった。

 彼女は生まれてからずっと目が見えなかったわけではないらしい。だが、ジェインの父と出会った時には、もう光を失っていた。

 ジェインの父が妻の目に光を取り戻そうと思ったのは、彼女が生まれてからだった。

 可愛い、愛らしい娘。その姿を見せてやりたいと。

 そして、家を出た。

 しばらくして、ジェインの母は、目が見えるようになったらしい。

 だが、それも僅かな期間だったようだ。しばらくして、ジェインは母――サラを失う。

 そこから、ディルは何が起こったのかを調べ始める。

 日記は、日記の体裁をとりながら、事例の収集調査と考察、推論が綴られていた。

 調べていくうちに判ったのは、水晶魚の卵は、決して願いをかなえるだけのものではないということ。

 いくつかの例から共通点を拾えば、血縁者に女児がいること。四年に一度かなえられていること。母親か姉が、近しい血縁者の女性が姿を消すこと。最終的にはその女児も姿がなくなること。などという。

 読みながら、ジェインのおかれている状況とも似通った点が多いことに気付いた。

 そして、ディルはその頃から、ジェインにあらゆることを教える決心をする。

 炊事、洗濯はもちろん、野宿のようなこともこなせるように。

 定期的に避難訓練のようなこともしている。簡単な護身術も教えようとしていたようだが、ジェイン自身がなかなか思い切った動きができずに上手くいかない、などと愚痴めいたことも書いてあった。

 パティがほぼ完璧だというのも間違いない。

 彼女自身は事実を知らされていないようだが、おそらく荷物はいつも用意してあったのだろうし、手際よく詰め込むことも慣れたものなのだろう。


 だから。

 そう繋げることには多少の抵抗はあったが、ダグラスはどこか確信めいて思っていた。

 だから、この爆発も無関係な話ではないのだろう、と。

 爆発でパニックに陥った人々により、大きな事故が起こらないようにと配慮された、屋台を使った堰き止め。

 併せてこれも、ジェインに何がしかの関係がある。そんなふうに考えて進んでいた。


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