13
ジャックは道に迷っている…というより、人に流されて中央の公園まで来てしまっていた。しかも、祭壇から結構近い位置で、よくこんな隙間が残っていたなと、不思議に思うような位置だった。
唯一の救いは、マックスが傍らにいることと、大人ばかりでなく子どもも多いので、犬を連れて歩いていても、周りが配慮してくれるということ。
ジャックは身動きがとれずただ流されるままの状態で、マックスから離れないように背中に手を置いて移動していた。
ようやく動きが止まっても、今自分がいる場所が公園のどのあたりかも判らないので、きょろきょろして、現在位置と退路を探す。
その様子を不審に思ったのか、すぐ後ろにいる男が声をかけてきた。
「坊や、どうしたんだい?」
「ちょっと流されてここまで来ちゃったからさ、どうにかして公園から出られないかと思って」
見上げると、人の良さそうな男と目が合った。人の好さそうな顔立ちで、目を細めて笑んでいる。
「君は、祈りの子どもになりたいわけではないのだね?」
男は少し驚いたように言ってから、ふむと思案顔になる。
「そっちの大きな犬は、君の連れかい?」
「うん」
「そうか。その犬がいなかったら、私が君をかついで外まで行くこともできるが、それは難しそうだね」
ジャックは肯く。自分一人でもそんなに軽いわけではないのに、四〇キログラムを超える犬を一緒に担いでいくのは難しいだろう。
「君は、本当にいいのかい?」
「うん、まあ…」
マックスの排泄が目的で、それがまだである、ということはなかなか言いづらい。このままここでさせるわけにもいかないし、とにかく、人込みから逃げ出さねばならない。
「では、右手を出して。左手はその犬をしっかりと持って…」
言われるがままに、右手を出すと、しっかりと握られた。
「手をつなぐから。離してはダメだからね」
「え? おじさんはいいの?」
「この年じゃ、祈りの子どもに選ばれるわけではないからな」
じゃあ、何のためにこんなところに居るのだろう。子どもがいるなら、引率者と思って思えないことはないが、子ども連れでないのなら、ここにいる意味は? と、そんなことを思う。
男は、器用に対面する人たちとくるりと向きを変えながら歩く。
ジャックは、置いて行かれないように、必死で握られた手に神経を集中した。
「祈りの子どもに選ばれた子どもには、願い事が適うと言われている。君には願い事もないのかな?」