9・雪の上に舞い降りたお嬢さま。
~氷介視点~
バラバラと大きな音を立てながら、ヘリコプターは停止している。
「何…? 何で、浮かんで…―!? あ…」
ヘリコプターの横の戸がガバッと開き、小さな影が雪の地面へ飛び出した。
その小さな影は地面へ落下してくる。 教室からは絶叫が響いた。
「あああっ! お、落ちちゃう―……え?」
ブワッ!
その小さな影の背から、大きくたこのように風船らしきものが広がり、
地面へゆっくりと降下してくる。
「え…? え?」
それは、緑の髪をした少女だった。
桃色の瞳と同じくらいにピンク色の頬、フリルのついたドレスに身を包んでいた。
少女は動揺する氷介の前に着地した。
「ふうー、到着です! あら…? ―!! まあ…!」
少女は氷介の困惑した顔を見ると、パッと顔を輝かせてその手を取った。
「えっ!? あ、あの…ええ!?」
「貴方ですね?! 【狼の双子】さん! ああ~…お会いしたかったのですよー!」
「え? え? な、何でボクなんかに…って何でそもそもボクの事知ってるの?」
「あっ! すいません! 自己紹介が遅れてしまいました。」
少女はパンパンとスカートを叩いて佇まいを正すと、
教室からのぞく生徒たちににっこりとほほ笑んだ。
「皆さん、おはようございます。 長野から来ました、緑谷フウカと申します!」
~氷也サイド~
氷也はそれに近づき、声をかけた。
「何やってんだよ。 お前。」
「うわあっ!? な、何だお前かよ…って!! 何でお前までこの学校なんだよ!!」
「サッカークラブスカウトと同時に通うことになったんだよ!
まあ…いいじゃねえかよ。」
「よくねえよ!!!」 「あんまりカッカすんなって! ―冬紀。」
~熊?~
ガラッ!
「…あ?」
そこは使われていない、ほこりをかぶった教室だった。
「間違えちまった…か?」
熊は、茫然とその場に立ち尽くしていた。