第一章 第1節 『好奇心旺盛な探索者たち』
丘の上を風が吹き抜け、彗星が大気にもたらした奇妙で甘い香りを運んでいた。
アラン・ウィンドザーは、草の上に敷いたシートを整え終えた。十五歳の彼は、シナモンのような温かみのある肌色に、遠征中であっても乱れのない艶やかな漆黒の髪を湛えている。黒のディテールが施された鮮やかなイエローのテクニカルジャケットは、本来火山探索者のための頑丈な装備だが、彼が纏うとどこかエレガントにさえ見えた。
「ベン、準備はだいたいできたぞ」
アランはバックパックから包まれたサンドイッチを取り出しながら言った。「これ以上待たされたら、パンがお前の拾ってる石ころみたいにカチカチになっちまう」
数メートル先、丘の斜面に刻まれた傷跡のような小さなクレーターの底で、ベンジャミン・ラーソンは顔を上げようともしなかった。彼は真鍮と銅線でできた、規則的な唸り声を上げる装置に没頭していた。金属的なクリック音とともに、装置が地面から内側で脈動する鉱石の破片を引き抜く。
アランと同い年のベンジャミンは、額の汗を拭い、その頬に輝く塵の跡を残した。
「ただの石ころじゃないんだ、アラン」
ベンジャミンは鉱石を密閉容器に収めながら答えた。「これは『共鳴結晶』だよ」
アランはサンドイッチを頬張りながら、友人が慎重に扱うその岩の塊を懐疑的な目で見つめた。
「で、実際それって何に役立つんだ?」
口を半分もぐもぐさせながらアランが尋ねる。「避難所にはもうエネルギーがあるだろ。こんな高いところまで光るガラスの破片を拾いに来るなんて、不必要なリスクだと思うけどな。アノマリーどもは、自分たちの庭に侵入してくる奴らに友好的じゃないだろ?」
ベンジャミンはようやくクレーターから這い出し、ズボンの埃を払って丸眼鏡をかけ直した。彼は結晶を見つめ、それから真剣な眼差しを友人に向けた。
「この鉱石には、火山のどの発電機にもない純粋なマナが凝縮されてるんだ、アラン。もし正しく回路を繋げれば、ただの明かりだけじゃ済まない。本物の『力』が手に入る。道具や障壁……あるいは、運任せにせず自分たちの力で戦える何かが作れるかもしれないんだ」
足元の地面が鳴動した。それは自然な地震ではない。まるで星の鼓動が不整脈を起こしたかのような、鈍く、規則的な地響きだった。
百メートルほど先で、丘が爆発した。大地が不規則な裂け目を見せ、そこから蒸気が噴き出す。
「……来たか」ベンジャミンが呟いた。彼は後ずさるどころか、その瞳を熱狂に輝かせている。
「『来た』って……どういう意味だよ!」アランは一歩下がり、サンドイッチを地面に落とした。「ベンジャミン、あれはただの地割れじゃないぞ!」
亀裂の深淵から、面取りされた巨大な結晶の塊が姿を現した。ヴェリディアの伝説に語られるほど巨大ではないが、十メートル近い巨体は、四本の鋭利な脚で歩く小さなビルのようだった。その体は半透明の赤色で、内部では荒れ狂う火炎のエネルギーが周囲の空気を熱で歪ませている。
「完璧だ……」ベンジャミンはもどかしげな手つきで鞄を開き、レンズと銅板が複雑に組み合わさった装置を取り出した。「アラン、三分くれ。たった三分でいい!」
「三分だと!? あんなのに狙われたら、三秒でこの世から消されちまうぞ!」アランのうなじを冷や汗が伝う。
「気を引いてくれ! 教わったことを使え! あいつの目を逸らすんだ!」ベンジャミンはすでに膝をつき、レンチでネジを回し始めていた。
アランは小声で毒づいた。深く息を吸い込み、血管を流れるマナの奔流を感じ取る。両手を合わせると、指先から白い光が溢れ出し、鋭い螺旋を描いて回転し始めた。
「おい、このガラス野郎!」アランが叫ぶ。その声はわずかに震えていた。
彼は両腕を前に突き出した。手の中から、光の粒子を孕んだ圧縮空気の突風が放たれる。攻撃はアノマリーの結晶の胸部に命中し、金属的な音を響かせた。――ギィィン! ギィィン!
怪物はベンジャミンへの進撃を止め、眼のない頭部をアランの方へと向けた。放たれる熱量が増し、周囲の草が一瞬で萎れていく。
「そうだ! こっちを見ろ!」アランは距離を保つために円を描くように走りながら、さらに強力な一撃を放った。「ベンジャミン、そのガラクタが動かなかったら、化けて出てやるからな!」
アノマリーが咆哮した。それは水晶が砕け散るような不快な音だった。怪物は槍のような脚を深く地面に突き立てながら、アランに向かって突進を開始した。




