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ミスティ・アーレンは悪役令息である

 眩い光を感じながら目を覚まし、意識が覚醒すると同時に手探りで枕元に置いてあった手鏡を探し出す。そうして自分を、自分の顔を鏡で確認し、夢ではなかったことに絶望した。鏡に映っているのは、やっぱりミスティ・アーレン。僕だ。昨日は半信半疑でこれは夢だと無理やり眠りについたけど、現実だった。


 どうやら僕は、二度目の生をミスティ・アーレンとして受けてしまったらしい。そして、おそらく昨日走馬灯のように駆け巡ったのは、信じ難いけれど、前世の記憶……スピリチュアル的な、非科学的な事柄だけど、でもスピリチュアルという単語も、昨日分からなかったゲーム、そしてオブジェクトという言葉がはっきり今は分かることからも、昨日の映像は、前世の記憶だ。


 平凡な家庭に生まれ育った父、平凡な家庭に生まれ育った母、そこから生まれた、極めて平凡な息子として、生きていた僕。


 純度の高い平凡かつ非社交的に育った僕には、社交的に育った弟がいた。平凡な四人暮らし。


 そんな僕はそのまま特に山も谷もなく男子高校生となった。毎日、学校に行ってバイト行ってゲームをして寝る。弟からは「ゲームしてなきゃ囚人と変わらねえ」「つまんなくねえの?」と言われていた毎日。でも、朝の登校の途中、目の前にトラックと轢かれそうな子供がいた。僕の平凡な人生の中で、初めて訪れた事件。


 僕は咄嗟に駆け出した。そして、必死に走って子供の肩を捉えた瞬間トラックは目と鼻の先だった。僕は短距離走の選手でもないし長距離走の選手でもない。瞬発力に優れてもいないし、特殊な訓練を受けているわけでもない。即死を覚悟した。


 しかし、平凡な僕でも、咄嗟に子供を突き飛ばすことは出来たのだ。


 人生初の張り手、押し出し、決まり手。綺麗に決まった。子供は驚いた顔をしていた。トラックが近づいてきた事実さえなければ僕の犯行は通り魔なので仕方ない。そして、人生初の取り組みに運を使い切った平凡な僕が、そのままトラックを空いた片手で受け止められるわけもなく、僕はそのまま轢かれた。厳密にいえばぶつかって跳ね飛ばされ、地面に強く体を打ち付けた。


 人生初の浮遊感を感じた直後の、激痛。そして運が悪かったのか、そういうものなのかは分からないが、痛みは一瞬では終わらず、突き飛ばされた子供が、めちゃくちゃに泣き喚き、その姿に安心しつつ、全身の猛烈な痛み、熱、頭蓋の不快感で苦しみながら意識は途絶えた。


 だから、多分そのまま死んだのだろうと思う。というかこうして、今別の人間として生きてしまっているし。


 とにかく、僕は自分が今までどう生き、そして死んだのかを昨日思い出した。


 享年、十七歳。人間の平均寿命の観点から見れば、短い生涯である。


 でも幸せだった。ゲームもあったし。


 ゲームはいい、全てが自由だ。空が飛べ、縦横無尽に駆け回り怪物を討伐出来る。


 剣や銃を振り回しても、どう考えても倫理観に欠ける品種改良を繰り返し、農作物で莫大な資産を得ても、服をすべて売りはたいて全裸で走り回っても捕まらない。


 でも、きゅんらぶの世界を現実として生きることに対しては、絶望しか感じられない。


 きゅんらぶ。


 育成、対戦、冒険もの、経営、ホラー、推理、自由度の高いものが好きな僕に、いやむしろそのジャンルしかプレイしていなかった僕に、友人が新規開拓という名の布教として貸してくれたのがこの世界に酷似しているゲーム。いやむしろその世界としか思えないゲーム。それが「きゅんきゅんらぶすくーる」だ。


 ロゴは明るいポップ体。きゅんときゅんの間には、女児向けアニメから出てきたような、可愛らしいピンクのハート、らぶとすくーるの間には、採れたての鮮血のような、惨たらしいハートが描かれている。


 今思うと親切なロゴだ。精神的なハートばっかり気にしてると物理的な心臓の方にかかわりますよ、という警告表示であるのだから。


 舞台は近世と中世のごった煮の世界。双方の都合のいいところを吸い取り、複雑なところは曖昧化。深い知識が無くても雰囲気で楽しめる時代設定や西洋的世界観だった。


 平民の主人公が、貴族の集う学園に入学し、ひょんなことと称されながらも製作者の意図する通りに、見目良し、性格に多少難のある令嬢たちと出会い、相手の望む言葉を与えて次々陥落させ社会的強者、富裕層との婚姻をゴールとするゲーム。


 というおおよそ脚色とロマンスを削ぎ落とした説明を友人から受けたが、説明書に書かれているあらすじも概ねその通りだった。


 勧められた当時、いくら友人の勧めと言えど、このゲームのプレイを僕は一度断った。僕は人付き合いは得意じゃない、当然の様に異性との交際経験も無い。それころか僕の基本的な交友関係は、家族と極少数の友人で形成されており、コミュ力なんてない。僕が万が一事件を起こせば、クラスメイトはインタビューで「あまり記憶がないですね」と答えるか「ずっと机の下を見ていることが多くて……いつかやると思っていました」と答えるに違いない学校生活を送っていた。


 身内である弟にすら「お前は人の気持ちが分からない」と再三注意されるほどだ。そんな人間が、ゲームと言えど人間を攻略できるわけがない。貸してくれてもいい感想は伝えられない、期待にはきっと応えられないと断った僕に、友人は笑ってこう切り返したのだ。


「これめちゃくちゃとんでもないやつだから絶対大丈夫だよ」


 何をもって大丈夫なのか全くわからない返答。さらに一切具体性を説明されず、「とりあえずやってみて、大丈夫だから」「安全だから」「皆やってるから」と押し切られた。


 今思い返せば絶対やってはいけないものの勧め方である。


 そして半ば押し切られるようにプレイすると、確かにとんでもない作品だったのだ。友人は、正しかった。


 攻略対象のキャラクター自体は、恋愛系のゲームをプレイしない僕でも「あーよく聞くやつ」という感じだった。


 優しくて清楚な優等生ヒロイン、清楚系から派生したちょっと真面目すぎるくらいの学級委員長系眼鏡ヒロイン、貴族でギャル……? と不安になりそうな、なおかつ露出の面でも不安になりそうなグラマラスヒロイン、オラオラ系ヤンキーっぽい女教師ヒロイン。


 僕はプレイにあたり、一番無難そうな眼鏡ヒロインと幸せな結末を迎えられるよう進め、無事クリアした。正直内容はよく覚えていない。次に癖が強そうなギャルヒロインを選択、そちらもクリアした。ギャルヒロインの性に対する奔放さを更生していた記憶だけで、あまり覚えていない。


 オラオラ先生はどちらかというと面倒見が良く、言葉遣いが粗暴なだけだった。内容の記憶は無い。


 ということで、僕は最後に、一番パッケージに大きくのっているメインヒロインっぽい女の子を攻略した。


 それまで一切とんでもない要素は見当たらなかったものの、僕は話が違うと友人を張り倒すなどの蛮行はしなかった。何故ならゲームというものは、クリア後が本番。ゲームをクリアするまでは万人向けに、そしてクリア以降普段からゲームをプレイする層に対して挑戦状のような、ハードモードなどとんでもない要素が解放されるというのが、ゲームの碇石だからだ。


 きっとゲームのとんでもない展開というのは、メインでは無くサブストーリーとか、別エンディングとか、全員クリアしたらとかで展開されるものなんだろうな。


 そう思い込んでいた僕は、油断しながら清楚ヒロインのストーリーに入った。しかしそれが駄目だった。そんな彼女のルートこそが、修羅の道だったからである。


 清楚ヒロインのストーリーでは、プレイしていると、ライバルの婚約者が登場する。いわゆる、清楚ヒロインを取り合う相手だ。


 その相手こそがこのゲームを、「とんでもないやつ」とするとんでもない女性……名は、ミスティ・アーレン。キャッチコピーは「悪逆非道を繰り返す最凶の令息」である。


 性格は、我儘で傲慢。見た目も釣り目の黒髪ウェーブヘアと、子供が見ても「悪役だ」と分かる親切設計デザインだが、ここに注目してほしい。「最凶の令息」だ。


 そう、「最も」「凶」なのである。何が凶かといえばその素行。彼は一般的なよくある恋敵の高慢で我儘な令息に留まらず、もはや傲慢の化身、凶悪性の権化、悪の擬人化として恋敵である主人公を妨害する。


 その仕打ちは常軌を逸し、実は彼女に村を焼かれたのではないかと思うほどで、主人公の物は当然のこと、関わった物は絶対破壊、関わった者は即排除。パーティーに主人公が現れたらナイフで刺す。そもそも参加前に拉致して暴行する。


 海に行けば崖から落とし、山に行けば谷底へ落としてしまう。


 何より恐ろしいのは、ここまでの悪行は決して比喩ではないというところだ。そして主人公は次のシーンでは無傷で全回復。特殊な訓練を受けているのか、もしくは戦闘兵器なのだろうかと疑ってしまうが、そこは主人公だからだ。主人公が死ねば困るからシナリオに生かされてしまっている。


 ミスティもここまで派手に立ち回れば、確実にその犯罪行為が白日の元に晒されることは確実だが、彼女は家柄や権力の全てをもってそれらを隠蔽する。そして彼女はそれだけに留まらない。主人公に心が傾いた清楚ヒロインを見て監禁したり、挙句の果てには暴力を振るったり暴行をする。普通の恋愛ゲームでは、ヒロインとモブのキスシーンなんてあってはならない。もしくは「寝取り」や「残酷なゲーム」と、ひとつのジャンル扱いされそうなものだが、きゅんらぶは普通の恋愛ゲームをうたいながらもヒロインを悪役のミスティが無理やり抱きしめたりキスをするという場面が死ぬほどある。こんなの普通のギャルゲ愛好家がプレイしたら怒るだろとにわかの僕でも不安になるくらいだ。


 そうして、やりたい放題のミスティに、ついに堪忍袋の緒が切れた主人公は学期終了が迫った三月、三年の先輩の卒業パーティーの会場にて、今までの彼の悪行を断罪する。今までの被害報告を発表するのだ。証拠付きで。


 しかし、ミスティはそこで改心することなく、パーティーから一週間ほど経った深夜、学校に主人公を呼び出し火を放って主人公を殺そうとするのだ。あの男は絶対に幸せになっちゃいけないと言って。


 正直、個々のルートの攻略対象イラストやボイスよりも、ミスティが主人公に向ける鬼のような形相や、憎悪のこもった声の方が印象が強い。


 そんな犠牲にした屍の上でダンスして高笑いしてそうな、いや、ほぼしていたミスティ。だからこそなのか、ミスティの末路はいつだって壮絶だ。投獄と死罪。自らの業を清算する結末。清楚ヒロインとミスティが結ばれる結末でも、最終的に捕まる。


 分かりやすい、勧善懲悪。悪は必ず罰せられる。見ていて清々しい気持ちになる人も多いかもしれない。けれど自分の身に降りかかるのだ。全然良くない。投獄とは名ばかりの死刑待ちだ。全然良くない。死ぬしかない。家ともども一寸先は闇。そして闇は闇でも、深い深い地獄の淵に落ちることが決定している。


 どうして、僕はミスティになってしまったのだろう。


 僕はゲーム中のミスティの蛮行を思い出す。


 これ絶対ギャルゲ愛好家怒ってるだろと普段見ないネットの評判を確認したところ、制作会社への批判ではなくミスティがどれほどの犯罪を犯したかのまとめや、悪口や罵倒集がまとめられていた。直球の犯罪者という呼称から性欲とか性的な揶揄まであった。もう少し悪口のあだ名ってひねるものだと思っていたけど、彼女の場合、全部直球、そのままだ。それほどひどいから。


 何だ、主人公じゃなかっただけセーフとでも思えばいいのだろうか。在学中に崖から落とされないだけましか。彼女の驚異的生存能力は人智を超えているけれど、それはゲームの世界だからこそ。崖から落ちれば人は死ぬし、火を放たれても人は死ぬ。


 こうして、誕生日の夜を超え朝を迎えても、考えが全く整理できない。壊れた音楽再生機器の様に、思い浮かぶのは「何故どうして」ばかりだ。


「どうしましたミスティ様、御気分が優れませんか?」


 美しい鈴の音のような声に、何故どうしてのぐるぐるした螺旋思考から意識が再浮上した。僕の専属メイドであるメロが心配そうにこちらを伺っている。悩み過ぎてメロが部屋に入ってきたことも気付かなかった。ノックされて、多分反射的に返事をしていたのだろう。


「もう少しお休みになられますか?」


 切りそろえられ美しい弧を描くボブの銀髪が揺れ、メロの憂いを帯びたような瑠璃色の瞳が僕を映す。気品を感じさせる黒いメイド服からすらりと伸びた手足、色白の肌。要するに天使だ。愛おしさの象徴、まさにメロは愛の女神だ。好き。物静かで、落ち着いていて、控えめな人柄、外見と中身、そのすべてが最高の存在、メロ。僕より七歳年上、僕の享年と同い年のメロだ。


 最高の権化、それがメロ。僕の専属メイドであるメロなのだ。


 そうだメロがいた。もういいや。ここが地獄でも、死と隣り合わせでも、メロがいるならもうどうでもいいや。生まれ変わった先でこんな可愛いメイドがいる人生も中々無いだろう。


 だから──もう死ななきゃ。


 僕はベッドから起き上がると窓辺に向かい一思いに飛び降りようとする。


「何をなさっているんですか‼」


 普段物静かなメロが声を荒げた。


「放してメロ‼」


 僕は死ななければいけない。二次性徴を迎える前に。このままだとゲームのミスティみたいになる。そうしたら僕はきっとミスティみたいな思考になりメロを傷つけるし学園に入学したら婚約者を監禁して押し倒す。


 だから死ぬ。


 今ここで死ぬ。


 僕が僕であるうちに。


「おやめください‼ 逃げないでください‼」

「違う逃げようとしてない!」

「ならばどうして‼」

「死ぬ‼」

「何をおっしゃっているのですか‼」

「成長する前に死ぬ、僕が僕であるうちに‼」


 そう言ったのもつかの間、メロに思い切り後ろに引き倒された。仰向けでメロにのっかる形だ。慌てて離れようとするが背後からがっちりホールドされ逃げられない。


「放してメロ」

「放しません。絶対に。成長が嫌とはどういうことですか」


 そんなの言いたくない。しかしメロは僕を抱きしめる力をどんどん強めていく。これ逆だ。ゲームでミスティがヒロインを無理やり抱きしめてた場面の逆。僕が無理やり抱きしめられている。メロのこれは確保だけど。


「若様」


 躾するみたいにメロが言う。


「……」

「ちゃんとお話ししないと今日一日ずっとこうしますよ」


 そうなるとメロの身体が危ない。ずっと僕に下敷きにされてるわけだし。


「こわい」

「何が怖いのですか、全部、怖くなくして差し上げますよ」

「男にならなきゃいけないのがこわい」


 自分で言ってて情けない気がしてきた。昨日から怖い。昨日までは大丈夫だったけど未来が怖い。ミスティみたいになりたくない。前世の僕は性的なことに関して多分普通……人並みだったけどミスティは多分違う。今の僕はなんともないけど自分が自分じゃなくなってミスティみたいに加害側にいくのがすごくこわい。


「若様は女性になりたいのですか」

「そういうわけじゃない。なんか、男として進んでいくことがこわい」

「ならば進まなくていいではないですか」

「え」

「貴方がそれで死にたくなるのなら男にならなくていいです」

「でも放っておけばなるんだよ……そうしたらメロを傷つけるかもしれない……」

「なら、傷つけられないよう若様を檻に入れておきます。それにこうして貴方を捕まえておくので問題ございません」

「メロ……」

「大丈夫です。どんなふうに成長しても若様は若様です。それでも恐ろしいのなら男の子じゃなくします。それに怖いことをすることを恐れているのなら、もう若様はされましたよ」

「え」

「朝から飛び降りなんて、怖いです。やめてください」


 メロはぎゅっと僕を抱きしめる。


「ご、ごめんなさい……」

「許しません。一生このままでいようか悩んでいます」


 そうなるとメロの腰とか背中が痛んでしまう。

 

「え、えっと、ちょっと頭が働かなくて、朝、混乱して……、もうしない、もうしないよ」


 僕は慌てて言い訳した。メロは後ろから僕の顔を覗き込むようにした後、僕を抱えたままスチャッと立ち上がる。


「では、朝食の前に紅茶をお淹れしましょうか」


 メロは僕をベッドに座らせると、素早くティーカップとソーサー、そしてポットを用意した。彼女の姿をじっと見つめ、そして考えてはっとした。


 きゅんらぶでは、ミスティによる蛮行だけでなくアーレン家も悪事により投獄される。僕が死んでもアーレン家の悪事をなんとかしないと、愛らしさの擬人化と言ってもいいこのメロを、あろうことか路頭に迷わせることになってしまうのでは。


 ひやりと、背筋に冷たいものが伝った。駄目だ。現実逃避している場合じゃない。そんなことになればメロは一瞬で悪い不浄の者たちの餌食にされてしまう。聡明で凛とした僕のメイドが汚されてしまう。それに大らかで聖母のような暖かい母と、その母に愛を語っては何故か玉砕する父も、投獄されてしまうのだ。そうだ。僕だけじゃない。殺されるのは僕だけじゃない。


 何としてでも、何をしてでも、アーレン家の破滅は回避しなければならない。


 でも、まだ救いはある。生まれてこのかた、特にゲームのミスティの様な行動はしていないことだ。今まで細く長く、堅実に、平和に生きてきた。ただちょっと社交性に難のある子供だっただけで、このまま過ごせば罪に問われることは絶対にないはず。


 成長の問題は──去勢すればいい。危険を失くす


 そしてミスティの罪状に関わる主人公の登場はミスティが十五の時、学校に入学する頃でまだ五年の猶予がある。入学までに別の学校を探したり留学したり、出来なくても、別の女性と婚約すればいいだけだ。



 何故ならミスティは清楚ヒロインの「婚約者」として登場した。しかし現在僕は清楚ヒロインと会ったことも無ければ、名前を聞いたことも無い。ようは今から五年の間に婚約イベントが発生するわけで、そんなイベント潰してしまえばいいのだ。


 そしてアーレン家の跡継ぎ問題は希望性にする。跡継ぎを募集する。本当は経営の才能があるのに次男んだからとか三男だからで鬱屈を抱えている誰かに任せる。



 大丈夫だと自分に言い聞かせるように頷いていると、メロは僕を心配そうな目で見つめる。


「……どうされましたか?」


「何でもないよ、大丈夫大丈夫。というか大丈夫にするから」


「……本日の婚約についても、含まれていますか」


「え」


「レイ・ノクター様の屋敷へは、昼に出発する予定となっておりますが、遅らせますか?」


「……え、今日?」


 メロの言葉に、頭が真っ白になる。婚約が、今日……?


「はい」


「……今日?」


「はい」


「今日なの?」


 僕の返答に、メロは「そうですよ」と不思議そうに返事をする。


 ノクター家。


 そこは、ミスティの婚約者──レイ・ノクターの住まう屋敷だ。




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