第十八話|ホラー映画
リビングはほんのりと暖かい灯りに包まれ、
テレビの光が壁に揺れながら映し出される。
チャンネルが切り替わるたび、明滅を繰り返していた。
**曉雨**は一人掛けソファの隅に丸まり、
両足をふわふわのブランケットに押し込んでいる。
まるで自分だけの巣に潜り込んだ小動物のように。
最初は画面を見つめていたけれど、
**筱月**の手元でリモコンが何度も押されるうちに、
その視線はだんだん焦点を失っていった。
「これ、退屈……これはうるさい……うーん、じゃあこれは?」
筱月は首をかしげながら、軽やかにチャンネルを切り替える。
画面は走馬灯のように流れていく。
——その瞬間。
突然、真っ白な顔が画面いっぱいに映し出された。
空洞の眼窩、歪んだ口元。
甲高い叫び声とともに、幽霊が飛び出す。
曉雨の身体がぴたりと固まった。
呼吸が一瞬、止まる。
声も出さない。叫びもしない。
ただ、ゆっくりと——ほんの少しずつ——体を起こす。
数秒後、何事もなかったかのようにブランケットをめくり、
裸足のままカーペットを踏みしめ、
静かに筱月の座る長いソファへと移動した。
驚いた子猫が避難するように。
彼女の腕をぎゅっと掴み、半身をぴたりと寄せる。
そして、そっと肩口に頭を預けた。
筱月は見下ろす。
髪が首元をくすぐり、馴染みのシャンプーの香りがふわりと漂う。
口元をゆるく上げ、わざと声を低くする。
「ん?怖いの?」
「ち、違うし!」
曉雨は即座に否定する。
けれど声はいつもより少し柔らかく、耳先がほんのり赤い。
「ただ……こっちの方が居心地いいだけ。」
強がりが可愛い。
自分でも気づかないまま、腕はしっかり筱月の腰を抱きしめている。
頬は肩にぴったりとくっついて、まるで安全な壁を作るみたいに。
筱月はくすりと笑い、
リモコンを軽く押す。
——画面は再びホラー映画へ。
薄暗い廊下をカメラがゆっくり進む。
不穏な音楽が低く響く。
「ちょっと——!」
曉雨が顔を上げて睨む。
その目には抗議と恨めしさがいっぱい。
まるで捨てられた子犬。
筱月は首をかしげ、無垢な顔で瞬きをする。
「え?怖くないんでしょ?じゃあ続き見ようよ~」
軽い口調。
けれど瞳の奥は笑いで満ちている。
(さっきまでツンツンしてたのに、
今はこんなに縮こまって抱きついてくるなんて。)
内心ではすでに大笑い。
彼女は曉雨の耳元に顔を近づけ、
そっと囁く。
「怖いなら、もっとぎゅってしていいよ。」
心の中では、もう決めていた。
——夜中に起こされて「トイレ一緒に来て」と言われても。
——小さな灯りをつけてほしいと頼まれても。
——幽霊がどれだけ作り物っぽいか延々と語られても。
全部、うんって言う。
むしろ、望むところだ。




