表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

(二)小説を再現する恋人たち

 

 図書館で何度も会うたびに、小説を再現するデートをしようということになった。


 5月の桜並木を桜吹雪が舞う中、2人が歩くシーンは小説の序章として際立つ記述であった。

 ここのシーンとは、桜吹雪の鮮やかで色彩豊かな描写と桜の甘い香りの表現がって、恋人の心の様子と風景の豊かさを美しく演出していた。ここの記述は読み始めて最初に2人の心が共感するシーンであった。


 タケルと彼女は、小説のこのシーンと同じ体験をすべく、今度の土曜日に会う約束をしていた。


 土曜日になり、郊外の千本桜のある街道の中を二人で散策し始めていた。

 5月も桜の満開後の散り始める頃であった。

 一面桜色のどこを見ても桜のこの観光地は二人の最初の小説の再現デートにとっては、絶好のロケーションであった。


 どこを見ても雲ひとつない春の晴れの気候で暑くも寒くもなくて心地よく、桜のな香りが、気分や感情をさらに裕福にしてれた。


 初めて見る千本桜の美しさに感嘆する彼女のに彼が寄り添うように呼応する

 場面では、彼が彼女の心を桜のように優しく包み込む心が読み取れるワンシーンが心を惹く、恋人たちが共感しやすい名シーンとなっている。


 風景描写が春の桜の満開の様子を色鮮やかに巧みに表していて、二人の心通う様子を

 麗しく際立たせている。


 セリフの間に読み取れる、恋人の心の動きが、読者を感涙させるのだった。

 再現デートでは、千本桜の桜吹雪の中を歩くと、2人のセリフも自然と小説と同じになってていくのであった。

 感情と心が桜の美しさに導かれるのか、2人の交わす言葉は桜の花びらの如く、流麗で恋人にとって全てしい、美しさを伴っていた。


「桜の咲くこの綺麗な季節は今しかない......」

「この季節だけの君だから、今だけの君を大切にしたい......」

「流れる桜の中、君とデートできるのは二度とないこの世の奇跡なんだ....」

「桜の豊かな香りは、2人のこころの表れさ.....豊かなこころはあなたの若さの象徴よ」





 タケルと彼女は、数ヶ月後、小説のまた違ったシーンを再現しようと、2人の気に入っていたあるシーンを思い出していた。


 スキーツアーに恋人で参加した時のエピソード。

 伝説的な彼女の話を通して、お互いにいろんなことを知り合っていく様子は、自然現象と現実が交錯し幻想的な思いを起こさせる、幾分ファンタジー的で彼女の賢さと彼の心の強さを伺わせる冒険的な恋愛体験である。


 ツアー先のゲレンデで、天候が悪くなり始めていたので、ゲレンデのカフェで、軽食にピザを注文した2人。

 彼女のピザは注文通り運ばれくるが、彼のピザは在庫が不足していて

 こなかった時のシーンがあり、彼は少し寂しい思いをするが、彼女からピザを半分に分けて、彼女の見事な優しい感情、で、彼の寂しさがカバーされ、彼が一層彼女を好きになる。



 この冬のスキーゲレンデの場面は、新雪のパウダースノーが、視界良好の青空とコントラストを成していて際立って、新雪の白色は彼女の心、青空は彼の心を表している。


 しかししばらくすると、青空は急に様相を変え始める。

 風と吹雪が強まり、視界はほとんど見えなくなっていく。

 彼女と彼の心の現れである、雪と青空の間に、誰でもない何かが二人を阻むかのようである。

 そこでゲレンデの中腹にある、カフェに2人は休憩に入る。

 窓際のガラステーブルの向かい合う席に案内される。

 彼と彼女は別々にピザを注文する。

 彼はナポリ風ピザ、彼女はシーフードピザを注文した。

 シーフードピザはすぐに席に運ばれてきたが、ナポリ風ピザは人気が高く、

 なかなか席に運ばれてこない。

 そうしている間に時が過ぎていく。

 彼は少し寂しさを感じていた。

 彼女は賢くて優しく、シーフードピザを彼に分ける。


 その時の彼女の

「ナポリ風ピザは人気が高いのよ。」

「あなたの好み、私がよく知っているわ。」

「そうじゃなきゃね。一番ですもの。」

「シーフード風でよかったら、半分あげるわ。」


 彼女の優しさに、彼は寂しさから回復していた。

 彼女の優しさを一段と認めるようになっていた。


 そのころにはゲレンデの天候は、吹雪がやみ、元どおりの、新雪と青空が戻っていた。

 上空には傘のかかった太陽がかせており、恋人の心の表れのようだ。



 このお好みのシーンをデートで再現しようとスキーツアーに申し込んだ。

 スキーツアーの催行日は1週間後であった。

 専用の団体バスで行き先は東日本地方のスキー場であった。

 催行日当日は天候も順調で予定通りの開催で、時程も予定通りだった。


 標高1100m程の雪山のゲレンデは、いつもより天候がよく、気温は0度、湿度も低かった。

 青空はいつもより青さを増していて、空気は凜々(りんりん)として気分が洗われるような、絶好のスキーだった。

 ゲレンデ上には昨日から降り積もっていた新雪がパウダースノーとして白さを際立たせていた。

 時折、新雪の中の雪の結晶が太陽光にキラキラと反射しているのが見える。


 雪山のは天候が変わりやすく、青空が見えていても10分後には吹雪となることが多い。

 その間の晴れた青空は、スキーヤーにとっては滑降するのに適した特に珍しいシチュエーションなのであった。


 綺麗な青空の広がる、キラキラ光るゲレンデの広い中腹あたりで二人で会話を交わしていた。


 恋愛小説の隠喩の表現の内容について、


「この青空が急に荒れ始めるのは、男らしい心の強さの表れとなんだと思うわ。」

「何かで機嫌を悪くしたから、心が少し荒れたんだと思う。」

「誰にでもそういうことはあるものよ。」

「ゲレンデにあるカフェは機嫌を直すための保養所に例えられると思う」

「ナポリ風ピザは、全ての競争を意味し。」

「シーフード風ピザは海の象徴だと思う。」

「海によって競争は解決されて、海の自然作用によって気象条件が良くなったの。」


 彼女の小説についていつも思っている例えと感想はこうであった。


 そうしていると、いよいよ天候が曇り気味になっていった。

 山の経験者には予兆がすぐわかるので、急いで視界に見える、カフェへと急いで行った。

 カフェは予想外にいていた。楽々と席に座り、シーフードピザとナポリ風ピザを注文した。

 プリペイド式になっており、それぞれ自動券売機でチケットを購入した。


 予想通り、吹雪になり、視程は1メートルほどに限定されるようになった。

 二人ともほっと一息ついていた。


 タケル「雪山ってこんなものなのかなぁ」

 彼女「そうねぇ。予想がつかないことも多いわよ。慣れと経験と勘が必要だわ。」

 会話をしているうちに、彼女のシーフードピザが席に運ばれてきた。


 ウィイトレス「お待ちどうさま。シーフード風ピザです。」

 タケル「ナポリ風ピザはまだでしょうか。」

 ウェイトレス「ナポリ風ピザは、ただいま、注文が多数でございます。しばらくお待ちいただけますでしょうか。」


 タケルは少し待ってみることにした。

 しかしなかなかこないので、雰囲気が段々と寂しくなっていった。

 彼女も待っていたが、ピザが冷めるので


「じゃあ、私のシーフード風ピザ、半分にしましょうよ。」

「それでいいかしら。」

「ああ。」


 タケルは、少し笑みを浮かべながら、美味しそうにピザをった。

 シーフード風ピザはサイズが結構大きく、半分のボリュームでも十分な食べ応えだった。


 彼女「こういうお話があるんだけど」

 タケル「どんなお話?」


 彼女「冬の雪山にんだお話よ。」

「ある若い男性の話で、普段はおとなしい優しい性格なんだけど、天候条件で性格が変わるの。特に雪の猛吹雪になると、性格がまるで別人のようになるのだそうよ。」

「その時だけ、何かに飢えたように何かを求めるの。」

「何かに満足するか、気象条件が良くなると、その性格はまた元に戻って優しくておとなしい性格に戻るそうなの。」


 タケル「ホラー映画にありそう。」

 タケル「雪おんなにも似ているね。」


 彼女「この話はどいういうことかしらね。」


 タケル「それは誰でも同じさ。極限状態にあると誰でもそうなるものさ。

 登山は常に極限にあって、自己と極限との戦いさ。」


「気象条件は神様が決めることで、彼はそれに従った、神の使いさ。いわゆる天使なのさ。」

「自然はその話の中の彼には反しないんだ。」

 なんでって、神の使いに試練を与えたのだから。」

「その自然は異性かもしれないし、違っても同じような存在に違いない。」

「恋人を自然の象徴に重ねて、神様は彼らに試練を与えたのさ。」


 彼女はタケルの話す内容の感慨深さにかれ始めていた。


 彼女は、感慨深い内容に、少し物思いに取りかれていた。

 タケルの普段見ない性格を見たように思えた。


 彼女「二人の仲が長く続くといいわ。」

 タケル「同じさ。」


 少しの沈黙があり。


 ♪♩.......

 店内にはジャズ風のBGMが静かに流れている。


 彼女「話変えましょ。」

 タケル「ナポリ風ピザがこれほど人気があるとは思わなかったよ。」

 彼女「ナポリ風は今の流行なのだそうよ。」


 ピザを食べ終わる頃には、ゲレンデもすっかり青空をかせ、スキーヤーも多くなり始めていた。


 彼女「さあ、行きましょう。」

 タケル「ああ。」

 タケルは満足そうに笑顔を浮かべた。



 スキー旅行から帰った後も、度々(たびたび)2人はいつもの図書館で交流していた。




 次に2人のお気に入りの共感した小説の1説は、2人で映画館で映画を鑑賞したシーンでした。


 映画館からの帰りで、霧雨の中、街灯に照らされている2人が手を繋ぎ仲睦まじく歩く様子は、演劇舞台のスポットライトでショーアップされた2人の姿が明るく映し出されたようで、その光景がとても美しく、恋人たちにはかなり印象深い一説のようです。



 このシーンをデートで再現するために彼女は、2人分の映画館の前売りチケットを購入した。

 どのタイトルでも1タイトルだけ鑑賞することのできるフリーチケットというものにしたのだった。

 そのほうが好みもあるし、選択ができて便利だからだった。

 映画館の窓口で


 彼女「フリーチケット大人2枚。」

 窓口の係員「今なら50円増しでドリンクサービスが付きますが、いかがなさいますか。」

 彼女「ドリンク付きにします。」


 映画チケットになっている磁気カードが係から渡され、


 窓口の係員「お支払いはセルフレジでお願いします。」


 セルフレジにカードを通して、料金を支払い、カードに「お支払い済み」の

 情報が書き込まれた。


 当日映画館の入場ゲートにこのカードを通して入場する。

 有効期間は発行から14日間と表示されている。


 メールで彼女とタケルは連絡を取り合い、スケジュールの調整を行なった。


 彼女「今週の土曜日の午後の部はどうかしら。時間は11:00映画館ロビーで待ち合わせ。上映開始11:30 終映13:30」

 タケル「ちょっと待って。メモ帳を見て今週の土曜日の予定を見てから、今週の土曜日はの午後は時間空いてるよ。」

 彼女「じゃあ、今週の土曜日の11:00に映画館のロビーで待ってるわ。」

 タケル「わかった。楽しみにしている。」


 あっという間に土曜日になった。


 彼女はライトグリーンのトレンチコートに、ベージュ系生地に薄いグレー系チェック柄のジャケットに白いロングスカート、靴は歩きやすいようにパンプス。


 タケルは、縦縞のブルー系ストライプ柄のワイシャツにウールのダウンジャケット、ジーンズ、靴はブラック系のウォーキングシューズ。



 タケルが11:00前に映画館のロビーに入ると、すでに彼女はロビーの椅子で待っていた。


 今期の上演映画は7種類あった。

 7種類の中からどれを観ようかと迷っていた。


 ソフトな内容が彼女は好みで、タケルは彼女に合わせると言っていた。

 芥川文学を映画化したアニメ映画も良いように思ったが、直木賞文学の映画化作品も

 興味深かった。

 どちらにしようかと、少し話し合った。

 二人とも小説をよく読んでいるので、芥川文学を映画化した作品を鑑賞することにしたのだった。

 上映の内容は、2編に別れていた。前編50分、休憩10分、後編40分の上映時間だった。

 終映後、2人でロビーで雑談していた。


 映画の内容の余韻に少しっているのだが、彼女は冷静に内容を覚えていて、感想や批評をタケルに述べていた。


 古典文学のアニメ化された内容は、映画としてしく面白かったと、満足そうに微笑んでいた。出典はよくわからないが、どこかで読んだ内容とそっくりで、あっという間に時間が過ぎたと、楽しげに話していた。


 タケルは、考えさせられる内容で不思議な感覚がしたと、神妙そうな様子だった。


 時刻はすでに17:23で、すでに日が暮れていた。

 時折、小雨が降っていた。


 12月の小雨は冷たいが、二人でいると心は暖かった。

 大きな白い傘に二人で入り、バス乗り場まで徒歩で10分ほど歩いた。


 歩きながら、鑑賞した映画の内容を二人で振り返りつつ、映画のシーンを思い出しながら、回顧していた。

 映画の内容が、今までに読んだ小説の内容と似ていると話していたが、それは彼女が、小学生のときに、学校の図書館で読んだ小説の内容だったと、タケルに打ち明けてくれた。


 街路樹のみどり色に、街灯の色が複数重なり合って、二人を演劇のスポットライトのように追っている様子が、霧雨と交差して、絶妙な映画のワンシーンの演出を見事に作り上げていた。

 自然現象が絶妙に調和して、ダイナミックな人生の演劇を見ているかのような印象だった。


 恋人は自然の中の主人公であり、煌びやかな街灯の光と街路樹の深い緑色が、恋人の心の様子を表しているようである。


 恋人達のは全て現代における新作の格言に等しい、どの時代においても認められる名言であるに違いなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ