No.19 夏休み最後の日
暇つぶし程度に覗いてってね
時が過ぎ夏休み最終日。
夏休みは一ヶ月と半月あるはずなのにほとんど楓さんの記憶を取り戻す手がかりがつかめなかった。
家にいてもしょうがないのでとりま楓さんの家に行くことに。
「楓さんこんにちは」
「こんにちはです」
天使がほほ笑む。
そこからしばらく楓さんと記憶について話していた。
楓さん自身は病院に通院しており、お医者さんと話しているらしい。
「伯くん……」
「ん?」
「お医者さんと話していて言われたの」
楓さんの真剣な表情に部屋の空気がやや鈍くなり、寒くなった気がした。
「私記憶を取り戻すことはできるらしいの、でも……」
「戻った記憶が今の記憶を上書きするらしいの」
「つまり?」
「今伯くんと話している記憶がなくなる……」
うれしいのか、悲しいのか複雑な気持ちが自分の中で葛藤していた。
「今日最終日ですがなにかやりたいことありますか?」
「うーん」
「そうですねぇ……私は花火がしてみたいです」
「いいねぇ」
俺は小学生以来の花火に少し惹かれている。
夏休みの終盤に花火をする人は少ないと思うが、そっちのほうが凛々しい。
「じゃあ午後の十九時にうちに来てください」
「わかった、花火はどうする?」
「私が用意しておきます」
「じゃあお言葉に甘えて」
時間があるので一度家に帰ることにした。
「ん?」
俺が目にかけたのは通っているスーパーだった。
(どうせだし……)
俺は買い物して家に帰った。
六時になり俺は家のドアを開け、今日で終わらすつもりの覚悟を決めている。
「楓さん行きましょうか」
今始めて聞いたが、どうやら海の砂浜で花火をするらしい。
手を引っ張られ砂浜というゴールまで近づいていく……
近づけば近づくほどに本当にこれでいいのかわからなくなる。
そのとき、浮かない顔をしているにことに気付いたのか楓さんが足を止めた。
「伯くんが考えていることは大体わかります」
「私の記憶の事でしょう」
「でもそんなに深く考えなくて大丈夫ですよ。私がもとの私になることを望んでるんです。少し悲しいですけど……」
楓さんは目に雫をためていた。
「え?」
「伯くん、泣いてくれるんですか?」
当たり前だ。俺にとってこの夏休みの間で仲が深まり、見放すことができない存在に楓さんはなっていた。
そのとき楓さんは俺の手を取った。
「伯くん、大丈夫です私が望んでいるんです」
楓さんは涙を浮かべているのが微かに見えた。
なぜだろうか。無性に楓さんを抱きしめている。
「ほんとごめん、あのとき助けられていれば……」
「そんなことないですよ、私は今とても幸せです」
高校生にもなってこんなに大泣きすると思ってなかった。
最後まで見てくれてありがとう!




