No.14 機嫌取り
趣味です……良かったら読んでってね
夏休みも中盤に差し掛かる頃、俺はほぼ毎日楓さんに会いに行った。
「あはようございます。今日も来てくれたんですね」
「あぁ、俺も暇だしな」
「それって暇だから、暇を潰しに会いに来ているという解釈で大丈夫ですか?」
「いや、そんなことあるわけない」
楓さんは俺をジーとじれったい目で見つめた。
「本当です!」
俺が少し強調しすぎたのか、楓さんは驚いたように目を見開いた。
「なら家に上がってください」
「お邪魔します」
今日の楓さんは不機嫌だなと思いつつ、家に上がらせてもらった。
「お茶出しますのでここで待っていてください」
俺はリビングのソファーに案内され座らせてもらった。
「今日は何をしますか?」
「今日は午後から散歩しに行こうと思っているんだが、どうだろう?」
「散歩の意図は何ですか?」
「町の風景を見たら記憶を取り戻せるかなぁと」
(これは失敗だったか……)
楓さんは不満げな顔をしている。
「う~ん、散歩もいいですけど外暑くないですか?」
「まぁ確かに」
「なら今回は映画を見ましょう」
急な楓さんのリクエストに驚いた。
「何か見たい映画でも?」
(まぁだいたいわかるけど……)
「ホラー映画です!」
楓さんは満面の笑みを浮かべた。
(やっぱりかぁー--)
俺は予想通りの答えに、悔しさを痛感した。
(まぁここは楓さんに乗ってあげよう……)
「楓さん今回は何をみるんですか?」
「今回は伯くんに選んでもらいたいです……」
楓さんから手渡されたリモコンを受け取り、作品一覧を眺めていた。
ホラー系が苦手な俺にとって、普段絶対見ないであろう作品を選ぶのは俺の心で激しく葛藤していた。
「あ! 私これ見たいです」
そして俺は作品を半強制的に選択した。
そこから立て続けに映画を5、6本見て映画は見終わった。
楓さんに干された俺は、気力がなくなりぐったりしていた。
「本当に苦手ですね」
楓さんが上品に笑う声が聞こえる。
(あれ? まぶたが……)
俺は疲れ切って楓さんの前だというのに眠ってしまった。
伯が寝ていることを察した楓が掛け布団を伯に掛けた。
伯が目を覚ますと楓は読書していた。
「えぁ! まじごめん!」
「いいんですよ」
俺は上半身を起こし眩しく感じるまぶたをこすった。
「そろそろ帰ります。迷惑かけてすまなかった」
慌てて帰る支度をし、リビングのドアを閉める前に楓さんに手を振ってドアを閉めた。
自分が寝ている間にいびきや歯ぎしりなどをしていないか、恥と心配をしながら家に帰宅した。