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作業用ロボットの整備工が感電死した結果www

「あっちーなー!」

蒸し暑い室内で作業に没頭する俺、天野司(あまのつかさ)は自作の海底探査用作業ロボットの点検中である。


もちろん冷房はMaxにしているが、地球温暖化の影響で室外の気温は45度を超えている。室内もなんとか30度まで下げることができている。、

それは、室内では作業用の工具がブルンブルンと動き大量の熱を発しているからでもある。


当然ながら顔から汗を吹き出し作業を続け、やっとメンテナンスが終了した。


海底から海草や石を採取して持ち帰る作業用ロボ。周囲1mに円形の高次元障壁を形成し、中にある二酸化炭素を酸素へ返還する変換機も装備した優れもの。

バッテリーの駆動時間は5時間ほどだが、その間は快適に海底探査が可能となる。


そんな自慢のロボを早速試乗する。

そして朦朧とする俺はうっかり……本当にうっかりだがレーザー溶接機へとつながっている高圧線を踏んでしまったのだ。


バキリと保護管が割れた音を聞き、「やっべ!」と言った時にはもう体の芯までビリッビリで逃げ出すこともできなかった。


あー、俺は死ぬんだな。そう思った時、脳内で不思議な声を聴いた。


――― 高エネルギー反応を確認

――― ステータス形成、ガガガ、一部エラー、影響は軽微についきスキップ

――― 勇者と成りえる素質として対象者[天野司(テンノツカイ)]をデリエストラ王国へ召喚

――― スキル[魔力供給]を付与

――― 称号[女神の加護]を付与

――― 転送を開始します


これが、走馬灯というやつか。いや違う。

そう思いながらも俺の意識は完全に途切れた。




思い起こせば小さいころから俺はバトラーに成りたかったんだ。


小さな工場の長男として生まれ、小さい頃からモニター越しに繰り広げられるバトラー達の戦いに目を輝かせていた。

そしていつか俺も……そう思ってロボット工学への道へ進んだ。


目にもとまらぬ速度で繰り出すジェットパンチ、放たれる高圧レーザー、高電圧の雷を発生させながら叩きつけられるバトルアックス、それを高次結界により相殺し、高電磁ソードで一刀両断する……


高性能なロボットを操り戦わせるバトラーは憧れの象徴であった。


だが俺は、そんな世界には進むことはできず作業用ロボット作成に没頭した。そして売り上げた金を研究に全プッシュしてはカツカツの生活を送っていたのだ。パーツでも何でも良いから、新しい何かをバトラー協会に認めて貰えなければバトラーにはなれない。


辛くはあったが夢を追い続ける楽しい毎日だった。

そんな俺も人生も今日で終わる。


そう思っていた……




「おい!大丈夫か?」

体をゆすられ起きる俺の目の前には、髭モジャおっさんの顔がドアップで移り「うふゃ!」と悲鳴を上げた。


そして後部座席に頭をぶつけ「うごぉぉぉ!」と痛みに涙した。


「お、おい……ほんとに、大丈夫か?」

「ほっときなよダル。それに何かそのおっさん臭いよ?腐ってるんじゃないの?」


痛みで悶えながらもその会話を聞いていた。

さっきのおっさんはダルというのか?だがそれよりも……


「誰が腐ってるじゃ!」

クワっと目を開け魂の叫びを目の前の女に、女に……


コスプレ?

目の前には髭もじゃおっさんと、猫耳と尻尾が動くコスプレ少女がいた。


てかおっさんの比率もおかしくないか?身長は見たところ150cm程度だろう?だがその腕は丸太のように太く……まるで、ファンタジー映画のドワーフのような……


「そうか。これは夢か」

そう思っていたのだが、目の前のおっさんと猫少女を見て、リアル過ぎると思わざるえない。


「生きてんじゃん」

「元気そうだな」

そう言って目の前の2人は顔を見合わせている。


「何か知らんがゴッツイ鎧も着てる、いや乗ってる?まあ良いがここら辺は魔物も出るから仮眠するなら気を付けろよ。じゃあな」

「いや、ちょっと、ちょっとだけ待ってくれんか?」

状況がうまく呑み込めない俺は、帰ろうとする2人を慌てて呼び止める。


「どうした?体調わりーなら一旦街に帰って仕切り直しした方が良いぞ?」

「ああ、そうだな。街かー?そういやここはどこだ?さっきまで研究所という名の古びた我が家にいたのだけれど……」

周りを見渡すとここはどう見ても森だった。


「研究所?お前、王宮錬金術師様か?」

「えー、こんな臭いおっさんが?でもまあ、あいつ等は変人が多いって聞くし……そうなの?」

やっぱり何かがおかしい。


夢じゃなければこれはんんだ?


「あの、つかぬ事を聞きますが日本という国に聞き覚えは?」

「日本?ニャル、知ってるか?」

「ダルが知らないことを知っているとでも?」

「だそうだ」

なるほど。腐っても世界の日本国と言われたそれを知らないなんてな……


「じゃあ、ここはなんという国で?」

「国?街とか森じゃなくて国?」

「ダル、やっぱこいつ頭おかしくなってるんじゃないの?」

「いやいやいや!確認だから!確認のためだから!ちょろっと教えて欲しいなーって。さっき俺、電気ビリビリってなっちゃって記憶が朦朧にーみたいな?」


2人が怪訝そうに見てくるが、ダルと呼ばれた男が口を開く。


「ここはキリルの2キロほど北の森。そしてこの国はデリエストラ王国だ。これでいいか?」

「OKOK分かってる。そう、もうわかってるよ。これは夢、じゃなきゃ異世界ってー奴か!よーし俺も男だ腹を括ろう!この異世界で力強く生きてやる!」


そう思って拳を握り締めていたのだが、「だめだねこいつ。いこーいこー」「そうだな。まっ、がんばれよ」と言って歩きだす2人。

慌てて2人を呼び止めようと手を伸ばし……


ガシン!ガシン!

自慢のロボが動き出した。


レバーを操作していないのに……


それなりに出た大きな機械音に2人が振り返る。


「おまっおまっ!なんだよそれ!」

ガシン、ガシン、音が続いているよ?


「ニ”ャー!なんだにゃー!」

あっ猫語ですか?ありがとうございます。手を地面について威嚇するようにこっちを見ているニャル。


「いや、なんか動いちゃって……」

止めた方が良いかな?と思ったとたんに停止するロボ。我が意思を読み取り反応する高性能な凄い奴!いつのまに?


「これ、ゴーレムか?」

「ゴーレム?あの超貴重な魔道具の?一台で豪邸が買えたりする高価な魔道具の?こんな草臥れたおっさんがまさかのお金持ち?」

「誰が変人草臥れ異臭おっさんじゃ!」

俺の突込みにニャルがビクっとしながら「そこまで言ってないじゃん?」と頬を掻いていた。


「これは俺の作ったロボ。本来はこのレバーを動かすんだけどな。どういう訳か勝手に動いちまったわ!不思議なこともあるもんだなっ!」

「いや自分で作ったんだろ?魔力操作を付与したんじゃねーのか?」

「魔力操作、だと?」

ダルの言葉になんてファンタジー!と思ったがやっぱりここは異世界か?剣と魔法のファンタジー?ちょっと胸が阿波踊りしちゃう!


そんなこんなで落ち着いて自己紹介。


ダルと呼ばれているたおっさんは、ダールバイトというドワーフ族の冒険者だそうだ。そしてニャルはニャイールという猫人族の冒険者。


天野司(あまのつかさ)だ。ツカサでいいぞ」

「分かったツカサ」

「よろしくツカサ」

最初から名前呼びのフレンドリー対応。


とりあえず街まで一緒に行くということになり街までの道を歩く。

ガシン、ガシン、ガシン、ガシン……


うっせーな。なんとかならんかこの音は?と言いつつも、気になるのは燃料だ。ここには高密度バイオレアメタル溶液なんてないだろうし……燃料がなければただの鉄。いやスチールだけどな。


そしてそれはすぐにやってきた。

元々試乗用に少ししか入っていなかったからな。


もう燃料は無しよと、早く餌をくれよとビーと鳴く。


ピーピーピーピー。

その音に2人もビクリとして振り返る。


「あー、燃料無くなったわ」

「燃料?」

「ああ。こいつのエサみたいなもんかな?」

「なんとかならんのか?」

ダルの言葉に唸る。まったく何も思いつかない。そう言えばとロボから降りて探したが電源スイッツも有るべきところについて無いな。常にONになってるのか……それより燃料どうしよう。


「置いてっちゃえば?重くて盗られなさそうだし……」

「なんでだよ!バラバラにされたらどうすんだ!」

ニャルの無慈悲な言葉につっこむが、燃料がなければ正直無用の長物なんだよな?


「その燃料とやらはなんだ?魔石か?それならいくつか……」

「やめときなよ?このおっさん金持って無さそうだし!」

魔石?やっぱファンタジーだよな。魔石かー。ん?そう言えばさっき脳内で魔力供給とか言ってなかったか?


うーん。分からん。


「なあ、魔力供給ってスキルがあるかもなんだが、どう使ったら良いかも分からん。どうしたら良いと思う?」

「スキルがあるなら使えばいいだろ?」

その使い方が分からんと言うのじゃが?そう思って可愛さアピールの首をかしげてみる。


「あー、じれってーな。ステータス見せてみろ!」

「ステータス?」

「ああ。それみりゃ一発だろ?」

「どうやって?」

2人の動きが止まった。


「お前、まさかとは思うが……」

「ワタリビト?」


あー、そう言うのいるんだねー。何となく察したさ。


「渡り人って異世界から来たって奴?」

コクコクうなづく2人に合わせ、俺も一度うなづいた。


「あ、そうか。可哀想にな」

「まあ、元気出せよおっさん」

「なんだよ!異世界からきたから何が可哀想だってんだ!」

2人は顔を見合わせため息をついた。


「ワタリビトはな、魔力がないからこの世界では最底辺の奴隷扱いなんだ」

「試しにステータスって言ってみな。その意味が分かるから」

おお!きたよステータス!だが最底辺?チートでヒャッハーじゃねーのか?戸惑いながらも心の中で唱えてみると……


――――

天野司(テンノツカイ) 人族 Lv1

気力 10 魔力 0

- - - -

スキル[魔力供給]

称号[女神の加護]

――――


目の前に出てきた黒い窓のような物に映し出される文字を見て膝をついた。


「おお、魔力はやっぱ0だな」

「女神の加護持ちだね。ワタリビト確定じゃん」

2人がそれを覗き込み感想を言い出した。だが俺はそれよりも……


「なんでルビが誤植ってんだよ!」

2人がビクリと驚く。


「名前?あ、おっ、んあっ?」

「テン……テンノツカイ、様……」


ふたたびステータスを確認した2人が震えながら膝をついた。


「ちょ、え?どうしたんだよ!」

「いえ、知らぬこととは言え無礼を……」

「お許しください!」

そう言われてルビが間違っている名を再度確認する。


テ・ン・ノ・ツ・カ・イって天の使いみたいなもんか?

そう感じたがこの状況はあまり良くない。きっと何か良からぬものに巻き込まれる。異世界転生あるあるだろう。そんな嫌な予感に冷や汗が止まらなかった。


「これは違う!本当はアマノ、ツカサ!何かの間違えだよ!」

「いや、ですが……」

「ねえ」

中々立ち上がってくれない2人に困惑するが、正直早く街まで行きたい俺は無い知恵を絞り出す。そして……


「ばれちゃ仕方ねえ。そうだよ、俺は神の使い様だがこのことは内密にな。そして、良ければ俺を助けてくれ!」

「「はい!よろこんで!」」


そして再起動した2人が、ステータスから魔力供給があることを知ると「このゴーレムに手をかざして発動するように祈れば良いのではないでしょうか?」と言われ、「そんなバカなことあるか!」と思わず叫んでしまった。


びくつく2人を他所に、まあワンチャンあるかな?と思ってやっていたら燃料タンクが半分回復した。これで2時間ちょいは動けるようだ。2人には驚かせたことをちゃんと謝罪しておいた。

だが魔力が無いのにどうやって?と思った俺は、ステータスを確認する。

気力が5になっていたのを確認し、「半分も持ってくのかよ!」と叫んでしまった。どうりで一気に身体がだるくなったと思ったよ。


それでもロボが動けるようになったんだ。

俺は再びロボに乗り込みガシン、ガシン、と動き出す。すると突然2人が叫ぶ。


「ツカサ様!」「危ない!」


2人が叫んだ声にビクリとして身を屈める。

そうこうしている間に、すぐ近くで「ぎゃん!」という鳴き声が聞こえ慌ててそちらに視線をむけた。


ロボの周りにはシャボンのような空気の膜ができており、その横には黒い狼のようなものがひっくり返っていた。高次元障壁が勝手に発動したのだろうけど、すげーな……


「さすが、天の使い様の神器!」

「すごい!」


何やらまだ膝をつき祈っている2人。

だが俺は、その直後に脳内に響いた声に戸惑っていた。


――― レベルが上がりました。

――― スキル[高速機動A]を付与


高速機動A……

その名が俺の知ってるものと同じものなら、バトラーの初級装備の1つではないか!初級とは言え憧れのバトラー装備……作業用ロボであるこいつにも装備できると言うのだろうか?


半信半疑の中、ステータスを開いてみる。


――――

天野司(テンノツカイ) 人族 Lv2

気力 15/20 魔力 0

- - - -

スキル[魔力供給][高速機動A]

称号[女神の加護]

――――


そして、ロボに手をあて[高速機動A]を使おうと願うとロボの足元に見知ったパーツが装着され、気だるさと共に膝をついた。気力は10削られたのでそのせいだろう。


だが憧れのバトラー装備!遂に俺もバトラーになったんだ!

その喜びをかみしめていた。


「ツカサ様。魔狼はどうする?」

「魔狼?」

「そう、あれ」

ダルとニャルが高次障壁によりひっくり返っている黒い狼を指差している。


「どうしたらいい?食べる?それとも埋めたり焼いたり?」

「魔狼は安いが、ギルドに買い取ってもらえるぞ」

「そうそう。あの大きさなら1000ジュエルぐらいかな?」


お金の価値もさっぱり分からない俺は、2人にその辺の仕組みを説明してもらった。


どうやら異世界あるあるな冒険者ギルドも存在するようで、魔物はそのギルドに買い取ってもらうのだとか。1000ジュエルなら夕飯代にはなるだろうと。

報酬はギルドカードに入れなきゃならないということで、支払い関係もほとんどそれを使うらしいし、身分証明にもなるようなので俺も早速作らなくてはと思った。


とりあえず魔狼はロボにでも積んで、と思ったらダルが持ってる袋にすっぽりと入ってしまった。まるで青いタヌキのポケットのようだ。俺も欲しいなスペアポケット。


「よし!じゃあ行くか」

「あ、ちょっとまって?」

ニャルが俺にそう言うと、周りをきょろきょろしだした。また魔狼でもいるのか?


「あ、ツカサ様、火蜥蜴です。弱いですが火を吐くのでお気をつけを」

そう言って指差した方を見ると、ドスドスと這ってくる黒い……ワニっぽいけど蜥蜴なのか?一瞬オレンジの火を吐く愛らしいあれを思い浮かべたが違うようだ。


「大丈夫さ。俺のロボは高次障壁で完全防御だからな!イケー!ロボパンチだー!」

降りていても動くので火蜥蜴に向かって突撃するように命じてみる。


[高速機動A]で足回りは良くなったからな。腕のアームの動きは遅いが当たらずとも最悪は高次障壁があれば体当たりでも倒せるだろう。

そう思って見守ると、ロボはガガガと音を立て素早い動きで火蜥蜴に突進していった。


途中で火蜥蜴は口をパカリと開け、ボッという音と共に火の玉のようなものを吐き出してきた。

そしてその炎は高次障壁を……素通りしてロボの左足に被弾。ロボの左足は破損してしまった。


「なん、だと……」

余りの事に膝をつく。そんな俺を置いてけぼりにニャルが飛び出し、火蜥蜴の首を丸みの帯びた長いナイフののような武器で切り落としていった。


俺はロボのところまで這うように進み、破損した左足を撫でていた。

破損した影響かバッテリーは4分の1まで減っていた。


それにしても、高次障壁は物理にしかきかんということか?それならそれで魔狼だけが出るところで戦えば良いのか?そんなとこがあるか知らんけど。


「ツカサ様、何をするにも気力も回復させなくてはいけないでしょう。街へ帰りましょう」

「そうですよ。帰って対策を考えましょう」


2人のアドバイスもあり、俺はガガッガシン、ガガッガシン、と可笑しな音をたて進むようになってしまったロボと一緒に街へと戻った。

幸い魔物には遭遇することはなく、街へとたどり着き、奇異な目で見られながらも冒険者登録をして冒険者となった。




あれから1週間。


ダルの部屋に居候しながらレベルを上げた。

気力は5時間ほどで全快となった。気力を10消費してロボの足を直した。そしてさらに5消費して[高速機動A]の破損した方を修復することができた。泣いた。


それから、稼ぎはかなり落ちるが、キリルの街中にある小さな遺跡に赴く。ここなら物理攻撃しかないようで、暫くここでレベルを上げたら良いと言われ、2人も付き添ってくれるようだ。


俺はボロに乗り込み遺跡の入り口付近からガガガと移動をして……10分後に吐いた。[高速機動A]による振動がひどい。


だがその間に10匹ほどのゴブリンを押しつぶし、レベルは2つ上がった。


――――

天野司(テンノツカイ) 人族 Lv4

気力 35/40 魔力 0

- - - -

スキル[魔力供給][高速機動A][予備バッテリーA][停止機能]

称号[女神の加護]

――――


[予備バッテリーA]は稼働時間を伸ばすための装備だ。背中に装着するランドセル型のものでこれで駆動時間が倍になった。そして普段から消費するバッテリーが地味にきつかったが[停止機能]によりその問題は解決した。


何気にスイッチOFFにできず朝一はバッテリー無くなってたからね。朝一気力で補充しないと動けないとか正直かなり困ってたところだ。


高次障壁はかなり優秀で、遺跡を少し進んだオークにも打ち勝つことができた。攻撃手段がないので倒すのはダルたちに任せることになったので、打開策がでるまでレベル上げでゴブリン退治に勤しんだ。




そしてさらに1週間。

レベル5で[収納空間A]、レベル6で[高速パンチA]が使えるようになった。


――――

天野司(テンノツカイ) 人族 Lv6

気力 48/60 魔力 0

- - - -

スキル[魔力供給][高速機動A][予備バッテリーA][停止機能][収納空間A][高速パンチA]

称号[女神の加護]

――――


[収納空間A]は1平方メートル程度の収納空間があるバッテリーの横に装備できるものだ。もちろんそんな装備はバトラーの装備にはない。異世界ならではの装備だろうな。

[高速パンチA]をアームに装着し素早いパンチが撃てるようになった。これでオークも撃破できるだろうう。そう思って遺跡の奥へと進んで行った。


そんな俺の今の悩みは体力の無さだ。

ロボには乗れない。あれから何度か挑戦したが、どうしても振動で気持ち悪くなってしまう。だからいつもロボやダルたちに必死に食らいつく様に走った。そして気力が勝手に減ってゆく。


そんな俺もレベル7となりガッツポーズをした。

オークを撃破した俺は次々に襲い掛かってくるオークを倒しまくる。動かなければ気力は減らない!そんな当たり前なことに大喜び。そしてレベルアップしてガッツポース。


レベル7で獲たのは[機乗ユニットA]だった。

早速装備して乗り心地を確認する。ガガガと移動するがまったく振動を感じない乗り心地にまた泣いた。


そのままオークを倒しに、と移動すると、するにオークと遭遇。そのオークが接近して殴りかかってくる恐怖に悲鳴を上げる。怖すぎる。後ろで控えていた時は感じなかった魔物の恐怖に震え、倒し終わるのを目をつぶって耐え忍んだ。




戦い続ける俺は、遂にレベルが10の大台となった。このぐらいから冒険者としてはひよっこ卒業だと言われる。


これまでの事を振り返る。


オークとの戦闘にもなんとか慣れ、目をつぶることは無くなった。

遺跡をさらに奥へと進み、オーガには高次障壁が砕かれ胴体から右肩に懸けて大きく破損したこともあった。その時は幸いにも俺に肉体的ダメージは無かったが、精神的ダメージにより3日間引き篭もってしまった。


その間もダルとニャルには優しく世話をされ、申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、2人はそんなこともあるさと笑って許してくれていた。

復活した俺は安全なオークでレベルを上げ続け、やっとの思いでレベル10になったので遺跡を卒業し、ダルたちが普段狩場としている森の奥地へと赴いていた。


――――

天野司(テンノツカイ) 人族 Lv10

気力 92/100 魔力 0

- - - -

スキル[魔力供給][高速機動A][予備バッテリーA][停止機能][収納空間A][高速パンチA][熱源探知][煙幕弾][超振動ブレード][魔道障壁]

称号[女神の加護]

――――


[煙幕弾]は気力5を使って周囲に煙幕を放つ玉を打ち出す。視界を奪えばあとは[熱源探知]で探りながら右手に装着した[超振動ブレード]で叩き切る。

今まで素通りしていた属性付きの攻撃も[魔道障壁]を瞬時に発動させることで防ぐことができる。発動時の気力5のコストは痛いが何度も使うものでは無いのでうまく活用していた。


森の奥地では魔狼や火蜥蜴の他、土猪や雷鷲、単目鬼などに悲鳴を上げながら抗う日々。少しは度胸がついたようでレベルをドンドン上げ、やっと2人にも恩返しができるほど稼げるようになってきた。


レベルが15になるとすでに2人に何もさせることなく無双してゆく。


「さすがツカサ様!」

「もう、私たちでは敵いませんね」


そう言って宿の一室で膝をつく2人。


「そんなこと言うなよ」

そう言って2人をなだめつつ、ロボの戦術は完全ソロで特攻するスタイルだから仕方ない。そう思って2人に別れを告げる。


その夜、一人で飲む酒はとてもしょっぱく感じた。




それから1年。

王国の主要都市、デリストで大迷宮に潜り続ける。


[収納空間B]には大量の食糧。

1週間はこもりっきりになっては地上に戻る。


そんな生活の中、俺は城へと呼び出された。

そして国王に勇者と聖女という美男美女のカップルに同行し、魔王を倒してほしいとお願いした。


「無理です。俺はソロしかできないので……」

そう言って断った。


俺には回復は不要だし、共闘で誤爆して勇者を切り刻む未来しか見えなかったからと説明はした。

だが国王は激怒し不敬だと拘束されそうになった俺は、背中の[ジェットA]で城の窓から飛び出し、唖然として初動が遅れた勇者たちから何とか逃げ切った。



これは、お尋ね者となり逃げ出し、迷子の末に魔王を高出力レーザーキャノンで粉砕する俺の冒険譚である。

そんな俺の、夢だった異世界バトラー生活は続く。

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