新生案
【蘇生処置待機中】
プラチナ河水たまり帝国皇帝・チャゲオアネス・飛鳥
基本情報…
性別:男性
年齢:56
身長:150
体重:40
職業:皇帝
誕生日:7月16日(トリニティ核実験の日、または【大賽日】・閻魔大王の縁日であり「地獄の釜の蓋の開く日」)
…
名だたる蛙貴族たちはその日、夜遅くまで【我々の考える最高の皇帝陛下】について激論と激闘を繰り広げた。
「お小遣いくれる皇帝陛下がいいです」とウタマロ。
「ミミミー…それいーですねーさんせーい。ミーンミーン」とセミマロ。
「石炭を握ってダイヤにできる陛下」とムチマロ。
「身長なんかは変えられるのですかね?あの様子なら…倍ぐらいにしても?」とウタマロ。
「いっぱいご飯食べさせるとどこまでも育つ体質にしよっか?」とイワマロ。
「うーん…」とヒコマロ。
「どしたん?」とキヨマロ。
「確か、超古代の知識では、小さければ小さい程強いという信仰があったような」とヒコマロ。
「ミミッ!?じゃあ、身長が虚数の値で現世には影しかないとしたら無敵?ジジジッ」とセミマロ。
「季語が無い」とヒトマロ。
「ううむ…」と記録を取りながらフミマロ。しまりのない会話が続くだけで、何らの具体案もまとまらず、今現在の死にやすい皇帝陛下を一体どうすれば強靭化出来るのかには繋がらない、議長としてどうすれば良いのか。
「うぬぬ…」考え込みながら、手元に取り出した情報端末で【我々の考える最高の】と検索しようとして先回りして【ぼくのかんがえたさいきょうの】が表示された。
(もうこれでいいでしょうかねえ…)
「私は、垂直に十メートルは飛び上がれて、走れば百メートルを二秒で、撃てば百発百中のガンマンな陛下が良いですねぇ」
フミマロはその場の全員に聞こえるよう言った、すぐさまムチマロが「それいいよな、そういうの」と反応する、「ジジジッ、赤いマフラーしてて、ボロボロのマントとか、ミジジジッ」とセミマロも続く。
およそ技術者長が聞きたかったのは、皇帝陛下が生物学的限界を超えて陛下としての職務を執り行うのに最適な
能力の拡張性についてに違いない、外交上の文化交流のためにもっと芸術的感性が鋭い方がよいとか、行事のために長距離移動が多いので歩行に関する身体構造に耐久性が欲しいとか。
しかし蛙貴族たちの発想はそうした話とは別な角度にズレていた。
★以下、その晩まとまった案の概要
防弾になる髪(ダイヤぐらいの固さにできる、滝をイメージした半透明、画像を表示できる、長さを変えられる)
額に土偶のと同じタイプの神話的スタイルの遮光器ゴーグル
かっこいいマフラー
かっこいいマント
蛙としての張り付き力を出すグローブ
蛙としてのジャンプ力を出す高下駄
必殺技
…こんな感じである。
便せんに纏められた内容を手渡された技術者長は「最大限やってみます」と返事をした。
翌朝、心臓と脳の再形成と脈動。
皇帝飛鳥の新たな肉体がゼロからの再構築を始めた。