17.
ジョ・スドクは目の前の絵を念入りに見つめた。
作家が誰なのかはわからない。
おそらく貴族の依頼で描かれた肖像画だろう。
「ルネッサンス風の画風を見ると…少なくとも400年は経っているということだな。」
まさにその通りで、古い油絵特有のひび割れが至る所に生じていた。
油絵は少なくとも100年に一度は修復目的のリタッチが必要だ。
しかしこの絵はその期間をとっくに過ぎたようだった。
「ひび割れた油絵でこれほどのオーラを感じるなんて?」
間違いなく普通の作品ではないということだ。
「いや、こんなことをしている場合じゃない。」
ジョ・スドクはハッとして急いでデューラーの作品を探した。
10分ほど倉庫を懸命に探していると。
「…あ!」
テーブルの引き出しの中にデューラーのドローイングを見つけた。
「そう、これだ。」
安堵のため息をついたジョ・スドクは、次にパク・ジフンの顔を思い浮かべた。
今日はここまでだ。
「まずは報告しよう。」
ジョ・スドクは急いで倉庫を出た。
ソウル、ハンナムドン。
ジョ・スドクの電話がかかってきたのは午後1時頃だった。
私はボストン時間に合わせておいた時計を別に準備していた。
そちらは夜11時を過ぎていた。
(デューラーのドローイングを確認し、無名作家のかなり優れた作品まで発見しました。本当に素晴らしかったですよ。)
新しい作品だ。
この部分で興奮しないのは人間ではない!
だが。
「落ち着け。」
たとえそこにモナリザがあっても、相手が売らなければ意味がない。
だから今必要なのは絵の持ち主に関する情報だ。
(その建築家ですが、間違いなく野球狂ですね。どれくらいかというと……。)
手帳に書き留めたことを順に読み上げているのだろうか。
ジョ・スドクは止まることなく10分ほど話し続けた。
その中で一番記憶に残ったのは、小さいサイズのキャッチャーミット。
もう一つ挙げるとすれば、本棚にぎっしり詰まっている分厚い大学ノートだった。
「試合内容を記録しているようだと言いましたか?」
(はい、間違いありません。そういうノートが少なくとも20冊はありました。)
それほどならほとんど狂気だな。
「倉庫はどうでしたか?」
(野球用品が子供のように大事にされているのに対して、倉庫にある絵はゴミ箱を漁る鳩扱いです。まさにその程度でした。)
私は受話器を持ったままじっと考え込んだ。
断片的な情報を一つにまとめて物語にすること。
それがまさに私が一生やってきた仕事だった。
「本人が集めた美術品なら…倉庫にあんなに積み上げるわけがない。」
言い換えれば、誰かからもらった可能性が高いということだ。
「ふむ。」
そこまで放置するならいっそ捨てるほうがましだ。
しかし簡単に決心できないということは?
「遺品である可能性も否定できない。」
少なくとも5分は一人で考え込んでいただろう。
驚くべきことに。
「……。」
ジョ・スドクは一言も発しなかったという事実。
何か問題があるのかと尋ねることも、なぜ黙っているのかとせかすこともなかった。
私が口を開くまでただ黙って受話器を持っていただけだった。
私の判断を待っているということだろうか。
本心はわからないが、彼は私を11歳の子供として扱っていなかった。
そう、それだけは確かだった。
そうして10分ほどさらに考えを巡らせた後だった。
「先生、私がボストンに行きます。」
(え?)
「行くんです、ボストンに。」
(い、今すぐですか?)
「いいえ。すぐには行きません。準備することがいくつかあるので。」
(ああ。)
「その間、先生にお願いしたいことがあるのですが。」
私は簡単に指示事項を伝えた。
かなり足を使う仕事だ。
ジョ・スドクはなぜかとは尋ねなかった。
だから私は冗談のように言った。
「どうせ仕事は大学院生がするんだから、いろいろ聞かないんですか?」
(そういうのもありますね。)
「正直な答えは?」
(代表の指示に何を疑問を持つ必要があるんですか?そんなことするなら最初からここに来なかったでしょう。)
全幅の信頼。
前世では一度も聞いたことがない言葉だった。
私が二度目の人生を生きているということをしみじみ実感する瞬間だろうか。
「とにかく、すぐに合流します。」
(とにかくって…年配の人みたいな話し方ですね?)
うん。
「お、おじいちゃんと話していると…つい真似してしまうみたいです。」
そうして急いで通話を終えた後。
私は通学を手伝ってくれていた運転手さんを探しに行った。
「とても忙しいですか?」
「いいえ、そんなことありません。」
「じゃあ、ちょっと手伝ってもらえますか?」
「もちろんです。言ってください。」
私はジョ・スドクにしたように簡単に説明を添えた。
すると運転手さんは小さく笑いながら言った。
「まあ、そのくらいなら電話一本で解決できますよ。すぐにクァンジュに行ってきます。」
「できるだけ多くの資料を集めてください。」
「そうですね。あるものないもの、全部かき集めてきますよ。」
ふう。
大きな準備は終わった。
残るはアメリカ行きの許可を得ることだけだ。
「パク・ジョンイン副会長の番号は何だったかな。」
私は電話の横に置かれていたノートを急いで開いた。
パク・ジョンインの別名は「隠遁の経営者」だった。
彼は外部の活動をほとんどしなかった。
グループの社長団会議がある日も代理人を出席させることが多かった。
それもそのはず、パク・ジョンイン副会長を見ると、メディアはもちろん株主も皆口を揃えてこう聞いた。
「パク・ヨンハク会長が築いたヒョンガンをどのように発展させるお考えですか?」
「2代目ヒョンガンのビジョンは何ですか?」
「21世紀に備えるヒョンガンの主力事業を教えてください。」
要するに「父の業績を超える方法」を示せということだ。
パク・ジョンインは次第に隠遁を選んだ。
ヒョンガンの未来戦略が完成するまでは決して一線に出ないと決めたのだ。
株主もその方を支持した。
まだ先代会長が健在ではないか。
当分はパク・ヨンハク体制が続くことを皆が望んでいる様子だった。
自発的なものと、そうでないものが半々で、パク・ジョンインは別邸に籠もり次世代のビジョンに思いを巡らせた。
そうして出した答えがエレクトロニクスだった。
彼はまず市販されている製品を全て使ってみた。
短ければ1ヶ月。
長ければ1年まで。
各社の長所と短所を自ら体験した。
それだけではない。
良い製品があればなぜそれが良いのか、基板を分解して研究に没頭した。
それでもわからないことがあれば、ヒョンガンのエンジニアを訪ねて講義まで受けた。
それを5年間繰り返した結果。
国家の未来が半導体にかかっていると確信するようになった。
ヒョンガンがソナスと競争する企業に成長するためには、今後20年は半導体に全てを投入しなければならなかった。
問題は金だった。
会社の基盤を揺るがすほどの投資金。
どの株主がそれを賛成するだろうか。
とはいえ方法が全くないわけではなかった。
先代会長が直接出て半導体の時代を宣言すれば?
株主は泣く泣くどうにか従ってくれるだろう。
しかしパク会長はそれを許さなかった。
半導体の時代が来ることには同意しながらも、株主の同意だけは息子が自ら取り付けることを望んでいたのだ。
それが能力を証明する道だと考えたのだろう。
そのおかげでパク・ジョンインは不眠不休で資金確保に悩んでいた。
だからだろうか。
電話が鳴った途端、パク・ジョンインは急いで手を伸ばした。
さっきまで機械をいじっていたため手袋に油がべっとりついていたが、彼は気にしなかった。
「パク・ジョンインです。」
(副会長、ユ・ジェウク常務です。)
「どうなりましたか?」
(社債で用意できるのは…おっしゃった金額の半分程度です。)
「……。」
予想はしていた。
「では私の持ち株を売るのはどうでしょう?」
(半導体関連の大規模投資計画が伝わると…系列会社まで全ての株価が急落しています。今すぐ処理するのは損失が大きすぎます。)
「どれくらいの損失ですか?」
(正常評価額の少なくとも40%の損失が予想されます。)
「だからといって他に方法があるわけでもないでしょう。そうではありませんか?」
(副会長、こんなことを申し上げるのは恐縮ですか。)
「……?」
(会長に状況を説明して…一部支援を受けるのが……)
「駄目だと何度言えばわかるんですか?」
物静かな彼が声を荒げたので。
(申、申し訳ありません。)
ユ・ジェウク常務も急いで言葉を引っ込めた。
「他の方法はないかもっと探してみてください。執務室にずっといますので方法が見つかればいつでも連絡してください。」
(はい、わかりました。)
そうして通話が終わった後。
虚しい気持ちを紛らわせるためにパク・ジョンインが基板を見ていると。
電話が鳴った。
もしかして言い忘れたことでもあったのか。
彼が受話器を取ったとき。
(お父さん、ちょっと会えますか?)
思いがけない声が聞こえてきた。
息子のパク・ジフンだった。
俺は芝生の道を歩きながら一人考えに耽った。
「これ、いけるかな?」
たかだか11歳の子供がアメリカに行かせてくれと言うんだ。
どんなに従業員が同行すると言っても…
「ちょっと無理だよな。」
ちっ。
おじいさんに頼めば一気に解決するだろうけど。
「それじゃ親の立場がなくなるな。」
どんなに急いでも順序というものがある。
いわゆるトップダウン報告システム!
そう、無駄に兵役を終えたわけじゃない、ふむふむ。
無駄に恨みを買う必要はないという現実的な思いもあるが…俺はパク・ジョンイン副会長に良い印象を持っていた。
ヒョンガンを世界的な企業に育てた経営者だから?
まあ、それも完全に否定はできないけど。
正確に言えば前世で読んだ一つの逸話のおかげだった。
30代半ば、パク・ジョンインが食品系列会社に配属されたときのことだ。
新メニュー開発業務を総括していた時代。
彼は決裁する15日前から必ず食パンと水、ビタミン、ミネラル補充剤だけを摂取したと言われている。
そうして舌を敏感にした後、ブラインドテストを通じて添加された材料をすべて当ててから書類にサインをしたそうだ。
なぜそこまでするのか。
後に、パク・ジョンインはこう述懐した。
『自分は能力を評価されるために一時的に通過する場所かもしれないが…そこに勤める社員にとっては一生を捧げる職場だ。自分のミス一つで彼らの居場所を台無しにすることは絶対に許せなかった。』
インタビューを見た当時は大げさに言っているのだろうと思った。
しかしパク・ジョンインに実際に会った後!
「それ以上でもそれ以下でもない。」
パク・ジョンイン副会長に対する好感はさらに高まった。
妥協を許さない生真面目さ。
ビジネスマンとしては非常に魅力的なポイントだが。
それが…俺にまで及んだら?
「アメリカ行きどころか外泊も無理だろうな。」
どうすることもできない。
どうにか説得するしかない。
あれこれと考えが頭の中で交錯しているその時。
「どこへそんなに急ぐんだ?」
庭の一角から聞こえてきた声。
俺が何か間違って聞いたのか?
驚いて振り返ったその場所には。
「……?」
まさにパク・ヨンハク会長が立っていた。