12.
思いもしなかった言葉だったのか。
学科長の顔には当惑の色が浮かんでいた。
わずか11歳の子供が言うべきことではないからだろう。
「まあ、私の精神状態を見てください。お客様が来たのに飲み物も出していない。学生だからコーヒーはちょっと、茶でもどうですか?」
茶を淹れる間に考える時間を稼ごうとしているのだろう。
「これは済州島から来たもので、味が全然違いますよ。」
魂のない声。
ただ口から出るままに話して…内心では私の言葉の真意を探っているのだろう。
それなりに考えがまとまったのだろうか。
茶を淹れてきた彼が椅子に寄りかかりながら尋ねた。
「私は高貴な方々の事情はよく知らないのですが。現康では学生時代から事業を始めるんですか?」
「いいえ。」
「でもさっき事業と……。」
私の様子をうかがう学科長。
祖父が指示したのかと聞きたいのだろう。
現康の三世代目だから、はっきりとは言えない…歯がゆくてたまらないだろう。
「ジフン君、どうしても事業というのは大人の領域ですよね?もしかして…家の方が事業のアイデアを耳打ちしてくれたり…何か支援があったり……。」
「いいえ。全くないです。」
「じゃあ、本当に純粋にジフン君が一人で企画した事業だと?」
「はい。」
その言葉を信じるべきか…学科長は困惑している顔だった。
「誤解しているかもしれないので聞きますが、気を悪くしないでください。」
こくり。
「その…ちょっと早すぎる話かもしれないけど、承継…つまり何かを引き継ぐという意味ですよね。うん…ジフン君が何かを受け取りたいんだけど、それに見合った実績が必要なら…そんな複雑な事情の中に…私が入るのはちょっと…え?」
「そんなことじゃないんです。」
「じゃあ、何ですか?」
「何って、お金ですよ、お金。」
「え?」
「お金を稼ぐために事業をするのに、他に理由が必要ですか?」
お金はたくさんあるじゃないかという目つき。
「私のお金じゃないです。」
「それはそうだけど…時間が経てば自然にジフン君のものに……。」
この人は何を言っているんだろう。
それをいつまで待てばいいんですか?
私の意図を読み取ったのか。
彼はあきれた顔をした。
自分が現康に生まれていたら、一生遊んで暮らすだろうという顔。
『私の計画も同じようなものだけど。だからといって目の前の200億ウォンを見逃すわけにはいかないでしょう?』
学科長は私の心の中を読みたかったが。
「うーん。」
うまくいかず、再び口を開いた。
「では最後に一つだけ聞きます。」
「……?」
「事業的な支援が必要なら…家の方に頼る方がいいですよね?わざわざ私を探してきた理由は……。」
「お話ししたじゃないですか。お金のためです。」
「え?」
「人数が増えると分けなければならないでしょう。」
「ああ、そういうことか。」
学科長は再び頭をかいた。
私はできるだけ大まかに説明を始めた。
「アメリカに人を送りたいんです。何かを探さなければならないので。」
「アメリカというのは私たちの国とは違って…とても広いですよ。ある程度は具体的に……。」
「情報が命なので。」
「私が拒否するかもしれないから、適当なところまでしか言わないんだ?」
「そうです。」
「うーん。」
「私を探してきたということは美術品関連のものの可能性が高い。」
「……。」
「何人くらい送る必要があるんですか?」
「それを判断するのが教授の役割です。」
「あ…何人必要か把握して、適切な人数を集めてほしいと?」
「はい。コンサルティングの目的は解決策を提供することですから。」
「前から思っていたけど、難しい言葉をよく知っているね。はは。」
学科長はわざとらしく時間を稼いだ。
現康と関わるのが慎重なようだ。
現康の後継者問題と関係があるのではないかという疑いが依然としてあり。
美術品を通じた不正資金の調達、資金洗浄などを心配しているのかもしれない。
だからだろうか。
「ジフン君……。」
彼は声を長く伸ばしながら言った。
「今日はこの場で確答はできないと思います。どうしても講義をしていると、いろいろと考慮しなければならないことが多いので。」
「わかります。」
「遠くから来たのに良い話ができなくてすみません。」
すみませんなんて。
私はむしろこの慎重な態度が気に入った。
もし現康と関わる機会だと欲に目がくらんで即座に引き受けていたら?
『むしろこちらから断っていたでしょう。』
私が求めるのは徹底した慎重さだ。
石橋を叩いて渡るときに、毎回疑って叩く徹底さ!
「十分に考えてお返事ください。」
「ありがとう、ジフン君。」
私は頭を下げて席を立った。
そのまま研究室を出ようとしたとき。
言い忘れたことがあるようにゆっくり振り返って聞いた。
「あ、教授、新しい作品はいつ出ますか?」
「……?」
「新しい作品が完成したら、ぜひ見たいです。」
私の言葉に学科長の喉が大きく動いた。
同じ頃、ブチョン、ユウォン半導体の前。
「副会長が買収したいというのはここですか?」
パク・ヨンハクの言葉に秘書室長が一歩前に出て答えた。
「そうです。創業者のキム・ユウォン博士はモトローラ、東芝で技術開発を担当し、5年前に独立してユウォン半導体を設立しました。」
「財務構造は?」
「すぐにでも倒産してもおかしくない状況です。」
「独自技術があるんですよね?」
「はい。国内唯一の3インチウェーハ加工設備を備えていますが、大量生産に難航しています。」
「投資が必要だ?」
「はい。多くの企業が関心を示しましたが、莫大な資金が必要なため、みんな舌を巻いている状態です。」
「ふーん。」
「パク・ジョンイン副会長の私財では到底足りません。」
「結局他の人に頼らなければならないわけだ。」
「副会長の持ち株を売らない限り、その方法しかありません。」
他人に頼る瞬間。
自分の取り分は著しく減ってしまう。
「子供ですら自分で全部食べようとするのに…父親というのは人のために働くようなものか?」
「お、お子さん…ですか?」
そんなことがあるかのように、パク会長は手を振った後だった。
「ジフンは最近何をしている?」
「あ、はい。ソウル大学美術学部のチョ・スドク教授によく会っているようです。」
「チョ・スドク?」
報告の準備をあらかじめしていたかのように。
カチャッ。
秘書室長が車のトランクから画集を取り出した。
「ソウル大の教授だそうですが、画家として名を馳せたわけではありません。」
パク会長が画集を一ページずつめくっている間、秘書室長もゆっくり話した。
「周囲に聞いたところ、長い間作品活動に熱意を見せていないそうです。」
「教授任用が人生最高の業績ということだな。」
「はい。絵に大きな進展がないという評価が支配的です。」
パク・ヨンハクは同意するかのように無関心に画集を閉じた。
「チョ・スドクによく会うということは…ジフンがやろうとしている事業は美術関連のものか。」
「そう思われます。」
共同事業者を見ればその人の器もわかるものだ。
孫の選択が失望したのだろうか。
パク会長の口元に苦笑が浮かんだ。
まあ、まだ11歳の子供だ。
祖父に頼らないだけでも立派なもの。
『最近あの子があまりにも驚かせるからだろうか……。』
パク会長は四年生の子供に大人の基準を当てはめるようになった。
「チョ・スドクか……。」
「もう少し調べましょうか?」
「いや、もう見る必要もないだろう。」
そう言いながらも。
「……。」
パク会長の顔には最後まで隠しきれなかった期待が混じっていた。
秘書室長も気づかなかったチョ・スドクの真価を…孫が見抜いたのなら?
そんなことありえないだろう。
わかっているけど。
『本当に確かなものは、必ず一人で食べるように教わった。』
『これはおじいちゃんと分けるわけにはいかないと思います。』
『わかってくれますよね?』
孫の言葉が何度も耳に残るのは仕方がないことだった。
一方、ソウル大学美術学部、チョ・スドクの研究室。
パク・ジフンが去った後、チョ・スドクは自分の地位をゆっくりと探っていた。
ソウル大学美術学部西洋画科学科長。
韓国美術界ではこれ以上ないキャリアだ。
名刺を渡せばみんなが彼を尊敬の目で見るほど。
しかし、チョ・スドクは終わりなく上を目指す男だった。
問題は、そんなチョ・スドクの上には常に一人の美術家がいたということだった。
韓国抽象画の伝説、キム・ファンギ。
そのため、チョ・スドクは常に首を傾げて上を見上げるしかなかった。
いつかキム・ファンギを追い越そうと。
いや、韓国美術の伝説を自分の足元に置こうと。
ソウル大学で教鞭を執るようになったのも、純粋にキム・ファンギのためだった。
ライバルがホンイク大学美術学部の教授になったので、チョ・スドクもそれに準ずるタイトルを持つ必要があったのだ。
教授としておおよそ似たような経歴を持っていると思った頃。
しかし、キム・ファンギはまたしても遥か彼方へと進んでしまった。
韓国で最も高価な絵画10点のうち、なんと9点がキム・ファンギの作品だったのだから。
画家としての業績は比較にならないレベルだった。
しかも、韓国美術の伝説は61歳でこの世を去ってしまった。
手を伸ばしても決して届かない、あの空の星になってしまったのだ。
その日以来。
チョ・スドクは海を漂う難破船となった。
当然の結果だった。
芸術そのものに忠実だったキム・ファンギとは異なり…チョ・スドクの美術はただ競争のための道具だったからだ。
その後どう生きてきたのかはわからない。
お金を追いかけて…権力に頼って…右往左往。
確かなのは、目標が消えた後に完全に筆を折ってしまったことだ。
以前描いた作品を時折発表して教授職を維持するのが精一杯だった。
それなのにどうして。
『教授、新しい作品はいつ出るんですか?』
現康の小僧はどうしてそんなことを言ったのだろう?
ただの偶然?
社交辞令で言ったことを一人で真剣に受け止めたのか。
そうだとしても……。
彼はすべてを知っているかのような目でチョ・スドクを見ていた。
いや、その時だけではない。
パク・ジフンは常にそんな目をしていた。
まるで二度目の人生を生きている人のように人生全体を知り尽くした目。
チョ・スドクはかつてそんな目と向き合ったことがある。
若いキム・ファンギを初めて見たあの日。
すべての世界が詰まっているかのように透明だったその目。
キム・ファンギの目は世界のどんなキャンバスよりも巨大に見えた。
もしかしたらキム・ファンギの大作「宇宙」は、彼の目の中ですでに完成していたのかもしれない。
「くそ。」
キム・ファンギの亡霊からようやく逃れたと思ったのに…わずか11歳の小僧が…同じ目をして現れた。
それなのにどうしてだろう。
難破したと思った船の前に。
遥か遠く、島が姿を現したような感じだ。
あそこに何があるのかはわからない。
『現康の後継者争いに無関係に巻き込まれるんじゃないか。オーナー家の不正資金作りに利用されるんじゃないか。』
不安な気持ちが先立つが。
ドキドキ。
明確な引き寄せを無視することはできなかった。
キム・ファンギに再び会ったらこんな感じだろうか?
チョ・スドクは妙な感情に苦笑するしかなかった。
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